渋谷レコード店日記 - アナログレコードコレクションのススメ

東京 渋谷の12インチシングル専門の中古レコード屋next. recordsで日々思ったコトやレコードについて書いてます

タグ:渋谷レコード店日記

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レコード人気の再燃と、リアル店舗に戻ってきた「掘る楽しさ」

ココ数年、世界的なアナログレコード人気の高まりをリアルにカンジています。
Nex Recorodsは、渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を営んでいるのですが、扱っているレコードが12インチシングルのみというメチャ狭いレコードだけなのに最近はホント、世界中からお客さんが来店してくれるようになりました。

少し前までは、どちらかというとネット通販の売上の方が大きかったんですよね…当店はかなり早い段階からオンライン販売にも力を入れていたので、日本全国からネット経由で購入して頂いたいました。だから一時期は「店頭売上 < ネット通販売上」という状態がフツーだったんです。

トコロが最近は、その流れが少し変わってきました。

今はむしろ、「実際に店へ行ってレコードを掘りたい」という人が明らかに増えているなぁ〜ってカンジています。

店頭で夢中になって何時間も棚を掘り続ける人もいれば、「なんか良い曲ないかな〜」って偶然の出会いを求めながら試聴している人もいる。

そういう光景を見るたびに、レコード店主的にはナンだか嬉しくなるんですよね。

やっぱりレコードって、単なる「音楽ソフト」じゃないと思うんですよ。

ジャケットを手に取った時の感触だったり、ジャケットをめくる音だったり、店内に流れている音楽だったり、隣のお客さんが何をチェックしているのか気になったり…。そういう空気感も全部含めてレコード店なんだと思うワケです。

だから最近、「リアル店舗でレコードを探す」という行為そのものが、またひとつのカルチャーとして見直されているような気がしていて、レコード店を営んでいる立場としては本当に嬉しいんですよね。

だけど、そんな日々の中で、時々オイラ自身も説明のつかないような“モヤモヤ”を感じる瞬間があります。

「○○ありますか?」の一言に感じる、説明しづらい違和感

そのモヤモヤを感じる瞬間というのが、スマホ画面を見せながら、

「○○ありますか?」

って訊かれる時なんです。

モチロン、探しているレコードがある気持ちはよく解るっ。オイラ自身、レコード店の店主である前に、筋金入りのレコードコレクターでもあるので、「どうしても欲しい1枚がある」という感覚は痛いホド理解できます。

だけど、時々そのやり取りの中に、なんとも言えない違和感をカンジることがあるんですよね。

例えば、スマホの画面を見ると、かなり人気の高いレア盤だったりするんですよ。

時にはDiscogsの画面そのままだったり、Instagramで誰かが紹介していたレコードだったり。

もちろん、タイミングによっては在庫している場合もあります。

でも、そういう盤って基本的には回転も早いので、大抵はもう売り切れているコトが多いんです。

なので正直に「すみません、在庫ナイですね〜」とお伝えすると、

「どこに行けばありますか?」

って訊かれるコトもある。

いやいや…オイラも渋谷で長年レコード店をやっていますけど、渋谷中のレコード店の在庫を全部把握しているワケじゃないんですよ(笑)

なので「解らナイですね〜」と返事をすると、そのままお店を出ていく方も結構多い。

このやり取り、日本人だけでなく外国人でも同じです。

ココで毎回、なんとも言えないモヤモヤが残るんですよね。

店頭には常時5000枚くらいのレコードが並んでいる。Soul、Disco、House、HipHop、Boogie、Garage、New Wave、R&B等…。
世界中から探してきたオリジナル盤がレコード棚にびっしり並んでいるんです。

だけど、その5000枚のレコードには一切目もくれない。

スマホ画面の中の「答えの1枚」だけを確認して、「ありません」「じゃあ失礼します」で終わってしまう。

その光景を見るたびに、「なんでオイラはこんなにモヤモヤするんだろう?」って考えるようになりました。

実は「レア盤が欲しい人」にモヤモヤしているワケじゃない

誤解してほしくないんだけど、オイラは別に「レア盤を探している人」が嫌いなワケではありません。むしろ「レアなレコードを手に入れたいっ!」っていうその気持ちはめちゃくちゃ理解できるんですよ。

レア盤って、やっぱり特別なんですよね。

数が少なかったり、時代背景があったり、DJ達のプレイによって神格化されていたり、長年再発されていなかったり…そういう物語を背負ったレコードって、やっぱりコレクター心をメチャ刺激するんです。

だから「どうしても欲しい」という感情は自然なコトなんだと思います。

ただ、オイラが多分モヤモヤしているのは、“レア盤を探しているコト”そのものではなく、「ありますか?」って訊いて、「はい、ありますよ」でカンタンに終わってしまうコトなんだと思うんですよね。

もちろん商売なので、在庫があれば販売します…それは当然のコトです。

でも、レコード店側の感覚としては、人気の高いレア盤ってある意味「お店の顔」みたいなトコロがあるんですよね。それを初めて来たお客さんが、店頭のレコードを一切見ないままピンポイントでチェリーピックしていく。

しかも、そのスマホ画面のDiscogsでは普通に販売されていたりする。

正直、心の中では「今そのスマホでポチれば買えますよね…?」って思う時もありますよ(笑)

でも、タブンそれ以上にオイラが引っかかっているのは、「探す過程」を全部ショートカットしてしまう感覚なんだと思うんですよね。

レコード文化の醍醐味は「発掘」にあるかも

オイラがレコードを探し始めた頃って、今みたいにネット検索なんてありませんでした。

Discogsもない。YouTubeもない。Instagramもない。

だから、気になるレコードや欲しいレコードがあった時は、とにかく自分の足で探すしかなかった。

レコード店を何軒も何軒も回って、1日に何千枚もチェックする。でも、大抵はナニも見つからない。空振りなんて当たり前でした。

だけど、その中で突然探していたレコードに遭遇する瞬間がある。

レコード棚から1枚スッと抜いた瞬間、

「あれ…コレって…」ってなる。

そしてジャケットを見た瞬間、

「うおっ!! 来たっ!!」

ってホントに声が出る。

あの瞬間、脊髄にビリビリ電気が走るような感覚になるんですよね。脳からアドレナリンがドバドバ出ているのが自分でも解るくらいコーフンするっ。

しかもそれが何年も探していたレア盤だったりすると、本当にヤバいっ。

あの感覚って、多分レコードコレクター特有の快感なんじゃないかと思うんですよ。

そして、その「見つけた記憶」ってずっと残るんですよね。

ドコの店で見つけたのかとかどんな状況だったのかってカンジで。

レコードそのものだけじゃなく、ナンていうかその1枚と出会った瞬間まで含めてコレクションになっている。

だからオイラは、多分レコードそのもの以上に、「レコードとの出会い方」も大事にしているんだと思います。

ネット時代のレコード探しは、便利だけど少し味気ない

モチロン、今の時代の便利さを否定するつもりはありません。

今は世界中の在庫を検索できるし、昔なら一生見つからなかったかもしれないレコードが数クリックで買える。これはホントに凄い時代だと思う。

でも、その反面「発掘する」という感覚はかなり薄れてしまったかもしれない。

今は欲しい盤が先に決まっていて、その答えへ最短距離で向かう時代です。

だけど昔は違った。

棚を掘っている途中で、

「なんだコレ?」

って知らないレコードに出会う。

で、試聴してみたら、

「えっ、めちゃくちゃ良いじゃん!」

って衝撃を受ける。

むしろ、そういう偶然の出会いの方が多かった気がします。

だから、せっかくリアル店舗へ来ているのに、棚を一切見ないで「ありますか?」だけで終わってしまうのを見ると、「ナンかもったいないなぁ〜」って思ってしまうんですよね。

もしかしたら、そのお客さんがまだ知らない「人生を変える1枚」が、すぐ隣の棚に眠っているかもしれないのに…って思っちゃうワケです。

常連さんにレア盤を出したくなる理由

コレ、かなり本音なんだけど、常連さんにはレア盤を出したくなるコトがあります。

もちろん商売としては「お客さんを差別しない」が基本だとは思いますよ。

だけど、やっぱり販売している側も人間なんですよね。

毎回来店してくれるたびに一生懸命棚を掘っている人。
有名盤だけじゃなく、無名盤にも興味を示している人。
情報じゃなく、自分の耳で良い曲を探そうとしている人。

そういう人を見ると、「この人に喜んでもらいたいな」って自然と思う。

だから、

「コレ、探してましたよね?」

ってバックストックから出したくなる。

これって別に「常連だから偉い」ってハナシではなく、音楽への熱量に共感しているんだと思うんですよね。

レコード店って、単なる小売店ではあるんだけど、同時にレコード好き同士のコミュニケーションの場所でもあるんですよね。

だから、人対人の関係性の中でレコードが動くコトもあると思います。

オイラ自身、昔レコードを探していた頃に、懇意にしていた店員さんから、

「コレ、探してたでしょう?」

って差し出された経験があります。

アレ、めちゃくちゃ嬉しかったんですよね。

単にレコードを買っただけじゃなく、「自分の探していたレコードのコトを覚えていてくれた」っていう喜びも含まれているんでしょうね。

そういうのって、ネット通販ではなかなか味わえないリアル店舗ならではの体験ナンじゃないかなって思います。

タブン、「レコードとの出会い方」が好きなんだと思う

レコードの買い方に正解なんてありません。

欲しいレコードを効率良く最短距離で手に入れるのも悪くない。Discogsで検索して、そのまま購入する。それも現代のレコードカルチャーの一部だと思います。

だけど、何千枚もの棚を掘って掘って掘りまくった先で、偶然探していた1枚と出会う喜びって、やっぱり特別なんじゃないのかなって思うんですよね。

しかも、そうやって苦労して見つけたレコードって、自分の中で超スペシャルな1枚になる。

まぁ〜だから個人的には、レコードそのもの以上に「レコードとの出会い方」を大事にしているんだと思います。


ELTON JOHN / I'M STILL STANDING
ELTON JOHN / I'M STILL STANDING の試聴
next recordsのサイトでELTON JOHN のレコードを探してみる

レコード店に来たら、ゼヒ棚を掘ってみてください。

探していたレコードは見つからないかもしれない。

でも、その代わりに「アレ?なんだコレ…めちゃくちゃ良いじゃん…」っていう、自分でも予想していなかった1枚と出会えるかもしれない。

そして、多分そういう偶然の出会いこそが、レコードという趣味をどんどん深く、面白くしていくんじゃないかなってオイラは思うんですよね。


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■ ようやく終わった…けど、気持ちはちょっと複雑

2026年3月に下記の記事を投稿しました。

レコード屋の宿命?大量の在庫と戦う日々|倉庫をまたもや引越しするコトになった話


で、月をまたいで4月20日、ようやく旧物件の明け渡しが完了となりました。

3月のアタマころから始めて約2ヶ月にわたるレコードの移転作業でした。
ダンボールにして約350箱、枚数にするとざっと28000枚ホド。
コレだけの量を動かしきったワケだから、本来なら達成感に満ちていてもおかしくないんですが…オイラの中にあったのはドチラかというと「やっと終わったか…」という安堵と、そして少しの違和感でした。

今回の引越しは、物件オーナー側の建て替えという完全に不可抗力な理由です。
移転までに時間的には2ヶ月の猶予があったから、過去の引越しに比べればまだ余裕はあった方だと思います。

ただ、それでも正直に言うと、家賃の大幅なアップはマジでイタい。

移転に伴い様々な物件を調べてみてココ最近、渋谷の賃料はホントに肌感覚でもわかるくらい高騰しているなぁ〜ってカンジた。
でもオイラのように「事務所兼倉庫」として使うスペースって、直接売上を生む場所じゃないんですよ。

だからこそ思うんですよね…。
「この固定費、ちゃんと回収できるのか?」って。

とはいえ、経営者としてはやるしかない。
家賃に見合うだけの収益を作るっ!それが現実だし、それが使命。

ん〜…頑張らねばっ!と決意を新たにするのであった。


■ 引越しはやっぱり地獄だった

結論から言うと、やっぱり引越しは二度とやりたくない(笑)

とは言いつつもコレまでの13年間で事務所兼倉庫は2回移転しているんですよね。
今回で3回目…イヤ、多すぎでしょって自分でも思うんですが。

しかも移転って全部、自分の意思というより「やらざるを得なかった」ケースばっかりなんですよ。
カンゼンに不可抗力です。

それでも毎回やるたびに思うんですよね〜「もう絶対やりたくないっ!」って。

ただ、今回に関してはひとつだけ良かったこともある。

それは、引越しによって強制的に在庫を見直す機会ができたってコトです。

ん〜コレね、やろうと思ってもなかなかできないんですよね。
日々の業務に追われているとこういった「時間がある時にやろう」って思っていることって必ず後回しになる…というか後回しどころかずっとそのまま放置になっちゃう。
でも引越しはそれを許してくれないですからね〜全部、一度動かさなきゃいけないから。

強制的に全部のレコードを確認する作業が入るワケです。


■ 28000枚という現実

で、改めて数字にすると、レコード28000枚。

ダンボールで350箱ホド。

イヤ〜…よくこれだけ溜め込んだなって我ながら思うんですケド(笑)

でも面白いのは、これが棚に収まっているとそこまで多く見えないんですよ。
ま〜なんとなくだけどキチンと収まっているように見えるから。

トコロが、それをダンボールに詰め替えた瞬間、イッキに「物量」として襲いかかってくる。

次々とダンボール箱が積み上がってゆくあの感覚、スゴいですよ。

「え、こんなにあったの?」っていう。


■ 一番キツかったのは「棚からの解放」

今回の作業で一番キツかったのは、棚からダンボール箱への移し替えの作業なんですよね。

すでにダンボール箱に入っているものは、どんなレコードが入っているのかってコトをチラッと確認して運ぶだけだからまだマシなんですけどね。
でも壁一面に積み上がっているレコード棚にぎっしり詰まっているレコードを引き抜いて詰め直す作業は、本当にしんどかった。

ガバッと掴んで、引き抜いて、ダンボール箱に入れる。

これをひたすら繰り返す。

コレね、単調な作業なんだけどオイラの持病である「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」にジワジワと効いてくるんですよね。

でコレがもう、見事に悪化しちゃいました。

引越し期間中はずっと利き腕がジンジンと痛くてレコードを握るチカラがでなかった(泣)


■ ココロが折れかけたコンテナ倉庫での地獄

さらに追い打ちをかけたのが、コンテナ倉庫への移動。

新しい物件が狭くなった関係で、販売頻度の低い2軍・3軍のレコード約80箱を25km離れた場所に借りているコンテナ倉庫へ移動しました。
これを車で何往復もするワケです。

で、借りているそのコンテナが2階なんですよね〜1階は、やっぱ賃料が高いので節約して2階を借りています。

約20kgの箱を抱えて階段で上げるんですよ、でコレを80往復…。

しかもコンテナ倉庫内では最大6段まで積見上げます。

もうね、完全に引越し業者さながらですよ。

一番上に持ち上げるたびに
「おりゃぁっ!」って1人倉庫内で叫んでいましたからね(笑)

当然、翌日は全身筋肉痛。

あの瞬間はさすがに
「オレ、何やってるんだろう…」って思いましたね。


■ 新しい環境で起きた変化

今回の引越しで一番良かったのは、収納スタイルを大胆に変えたコトでした。

コレまではレコードが入ったダンボール箱をアングル棚に収納するというスタイルだったんですよね。

それを今回の引越しを機会にLEXBOX(レコード専用収納棚)で背表紙がちゃんと見える収納に変更したんですよね。

コレ、めちゃくちゃ良いですね〜というか当たり前ですが。

ナニが良いって、ソコにナニがあるのかってコトがちゃんと「見える」コトなんですよね。

「あ、このレコード売り切れてたな」ってすぐ気づけるし、探す時間が圧倒的に短くなった。

ただ、全部は入りきってない(笑)
まだ60箱はダンボールのままなんですよね。

コレをどうするかってのは今後の課題ですね。


■ 明るい部屋の落とし穴

移転先の新しい物件は、前よりも開放的で明るい。

ワンルームだけど壁一面が窓になっていても、しかも窓から見える景色は遮るものがまったくなくって見晴らしもイイっ!

気分的にはかなり良くなった。

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…が。

4月の時点で既に暑いんですよ。

デカい窓ガラスから日差しがガンガン入ってくる。

この物件を内覧した時は2月だったんだけど、大きな窓から光が差し込んで結構ポカポカして暖かかったんで「あ〜コレは、過ごしやすいな〜」って思っていたのだけど、まさか4月の時点で「暑いっ!」ってなるとは思わなかった。

ちなみにこのデカい窓の半分はすでに窓を遮るように前にレコードが天井近くまで積み上がってしかも遮光カーテンをしているにも関わらず暑いって…。

「コレ、夏どうなるんだ…?」っていう不安がすでにある(笑)

あと、マンション特有の問題もある。

玄関、台所、風呂、洗面台、クローゼット、洗濯機置き場に冷蔵庫のスペース、ベランダ。

もう全部いらないっ!

その分スペースくれって思う(笑)


■ 在庫という終わらない問題

今回の引越しでイチバン痛感したのはコレですね。

在庫管理の難しさ。

正直に言うと、事務所兼倉庫に保管されていたレコードって今まで全然管理ができてなかった。

「ドコにナニがあるか分からない在庫」が大量にあるっていう状態です。

「あのレコードってドコにある?」って訊かれても「タブン、あると思うんだケド、ドコにあるのか解らない」っていうにはソレ、ナイのと同じなんですよね。

確実に在庫があるレコードのハズなのに見つけるコトが出来ないために販売が出来ないってのは完全に機会損失なんですよね。

在庫管理ってコレ、物販をやっているんなら本来、ゼッタイにやるべきコトなんですよね。
でもレコードの枚数が膨大すぎてソコまで手が回らないからずっと後回しになっていたワケです。

ただ、今回の移転で「在庫管理の重要さ」っていうのを強烈に実感したんですよね。

ホント、これはやらないとダメだなって。


■ なぜレコード屋は在庫が増え続けるのか

これはもう明確で、中古レコードはカンゼンに「在庫ビジネス」だからです。

しかも一般のお客さんから買取をやっているとホント入荷のタイミングはまったく読めないのです。

さらに最近のレコード人気もあると思います。

昔は全然動かなかったタイトルが急に売れたりするケースもよくある。

そうなるとどうなるか。

「これ、もしかして来るかも?」って思うんですよ(笑)

で、仕入れる。

結果、増える。

当店は26年やってるけど、在庫は増え続ける一方です。

タブン、いや確実にコレからもレコードの在庫数は増えるでしょう。


■ レコードの在庫は多い方がイイのか?

これ、実にムズカシイ問題なんですよね。

店頭に関して言えば、販売スペースの関係で店頭に置けるレコードの上限はありますよね。
当店ならだいたい1万枚くらいが販売できるレコードの枚数の上限ですね。

でも、お客さんにとって重要なのはレコードの枚数じゃないんですよね。

イチバン優先すべきはその内容とクオリティです。

特に12インチシングル専門店ならなおさらです。

じゃあバックストックは?

正直、それに関しては答えはまだ出てないんですよ。

商品であるレコードの回転率重視か、それとも価値重視かっていうこのバランスは永遠のテーマですね。


■ それでも続ける理由

引越しは本当に大変だ、マジでやりたくない。

でも、それでも続ける理由はシンプルで「レコードと出会う場所」を作りたいからです。

渋谷というレコードが好きな人が必ず訪れる街で、実際に手に取って、選べる場所。

コレってやっぱり必要だと思うんですよね。

店頭でガシガシとレコードを掘るというデジタルじゃ代替できない体験や店頭でレコード盤に針を落とすあの瞬間のグワって音が鳴り出すあの体験を出来るだけ多くの人に伝えたい。

タブン、シンプルな理由なんだけどそれだけなんですよね〜。


■ タイムカプセルみたいなダンボール箱

今回一番テンション上がったのはコレ。

数年前に詰めて、一度も開けてないダンボール箱を発見したコトです。

開けてみたら…

「ヤバっ!マジかっ!?」って内容(笑)

今じゃなかなか仕入れられないレアなタイトルがそのダンボール箱からドバドバ出てきたんですよね。

コレは超絶ウレシイ、発見でしたね。

完全にタイムカプセル状態でした。

再発掘されたソレ等の内容から推測するとタブン、6〜7年前に仕入れたレコードだけどその時は店頭に在庫があったとかの理由でバックストック行きになったダンボール箱のようです。

6〜7年前の自分、ナイスすぎるっ!(笑)

で、スタッフからは
「コレ、隠してたでしょ?」って疑われましたが(笑)


■ 引越しは終わらない

まぁ〜イロイロとありましたが無事に空き物件の引き渡しを終えて事務所兼倉庫の移転はナンとか終わり、ホッと一息ついたトコロです。

がっ!

移転完了から1週間後に約100箱分(約5000枚)の買取査定が到着ぅーーーっ!

やっと片付いたと思った部屋がもうレコードだらけでパンパンになっちゃいました(笑)

…ヤバいなこれ、ホントにやっていけるのかこの場所で…って引越ししてまだ1ヶ月も経っていないのにもう黄色信号が灯っちゃいました。

ん〜でも、これがレコード屋。

増え続ける在庫と付き合いながら、どうやって価値を生み出すか。

それがこの仕事なんじゃないかなって思ったりもします。


■ レコード屋は「物量」と「ロマン」でできている

今回の引越しでレコード屋って、ただ音楽を売ってるわけじゃなくって、

物量と格闘して、
在庫と向き合って、
その中から価値を見つけていく仕事なのかもって改めて思った次第であります。


SLY CABELL / FEELIN' FINE
SLY CABELL / FEELIN' FINE の試聴
next recordsのサイトでSLY CABELL のレコードを探してみる

正直、効率だけ考えたらやらない方がイイ(笑)

でも、それでもやるのは

やっぱりレコードにはロマンをカンジているからなんだろうな〜なんて思いました。

そして、そのロマンを当店を通じてレコードを手に入れた人に届けたいっていう気持ちなんだろうなぁってカンジるワケであります。


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■ RSD前日に感じた、ちょっとした違和感

2026年4月18日、この日はレコード・ストア・デイ(RSD)でした。
毎年このRSDの日は、渋谷のレコード店界隈の空気が少しだけ変わるんですよね。

午前中の早い時間からレコード店の前に人が並び、開店後も店内では多くの人がレコードをワシャワシャと掘ったりしてちょっとしたお祭りみたいな雰囲気になります。

まぁ〜正直に言うと当店はRSDの協賛店ではないので、まったくの関係ナイので「あ〜ナンかやってるな〜」っていうカンジでそこまで強く意識しているワケでありませんケド。

例年通り、いつも通りの営業をしているってカンジですね。

トコロが今年は、前日の時点でちょっとした違和感がありました。

というのもお客さんから電話が何本か入ったんですよね。

「〇〇の入荷ありますか?」
「もし入るなら必ず購入するので取り置きお願いしたいんですが…」

そんな問い合わせが、複数回立て続けにあったんですよ。

で、その〇〇なんだけど、オイラまったく知らないアーティスト名だったんですよね〜(笑)
電話を切ったあとに調べてみたら、イケメン揃いのK-POPグループでした。

この瞬間、ちょっとした引っかかりがあった。

K-POPとレコード。
オイラの中では「ナンで?」って思うくらいホトンド結びつかなかった文脈だったんですよね。

でも同時に、こうも思った。

「ああ、レコードってココまで来たんだな…」って。


■ 渋谷の行列と、可視化されたブームの熱量

RSD当日、SNSを見ていると渋谷の大型店には開店前から長蛇の列の画像がポストされていました。
しかも並んでいるのは日本人だけじゃなくって外国人の姿もかなり多いんですよ。

ん〜あの光景は今のレコード人気を表す象徴な画像でしたね。

かつては一部のマニアやDJやコレクターのものだったレコードが、今や観光の目的にもなっている…つまり、レコードは「音楽メディア」であると同時に「カルチャー体験」になっているみたいな感覚ですね。

そんな中でつい先日、日本でもっともアクセス数が多いYahoo! JAPANのトップにもレコード関連の記事が掲載されていた。

「レコード生産が33倍に急増した理由」

この「33倍」という数字はインパクトがありますね〜ただ、マーケットの構造を冷静に見ると、もともと極端に縮小していた市場が戻ってきただけとも言えます。

つまり重要なのは数字そのものではなく、

「一度ホボ消えかけたアナログレコードというフォーマットが、再び社会の表舞台に戻ってきた」

という事実だと思うんですよね。

こういった現象がニュースとしての話題性になっているんでしょうね。


■ 現場の実感としてのレコード人気の継続

小規模で12インチシングル専門という極めて偏った品揃えのレコード店でもある当店でも、この流れはハッキリとカンジています。

特にココ1〜2年でレコードを聴き始めたばかりのビギナー層が増えてきたな〜って。
年齢でいうと20代前半から30代前半くらいの人が多いですね。日本人も外国人も両方この年齢層が際立っています。

面白いのは、12インチシングルがナンなのかを知らない人も多いコトです。

店に入ってきて、棚に並んだレコードを前にして立ち止まる。
ドコから見ればいいのかわからない…明らかに慣れていないっていうカンジが伝わってくるんですよね。

でも、その中で試聴して、コメントを読んで、少しずつ選び始める。

そしてナニのキッカケを掴んである瞬間に理解するんでしょうね。

「あ、コレって全部シングルなんだ…」って。

タブン、あんまり12インチシングルって見る機会が多くはナイんでしょうね。

でも、知っている曲とか見つけて「アレ?アルバムに収録されているのとちょっと違うかも?」ってなって興味を持ってもらえるみたいなパターンですね。

そこからリピートにつながるケースはかなり多いという印象です。

こういった流れを見ていると、レコード人気はまだ続いているって思うんですよね。
だけど、思うのは単純な拡大ではなく「質の変化」を伴っているんじゃないかなぁ〜って。


■ レコード市場は今どこにいるのか──成熟期という現在地

ココで少し視点を引いてみると、レコード市場は今ドコにいるのかというハナシになります。

いわゆるプロダクトライフサイクルで考えると、

導入 → 成長 → 成熟 → 衰退

という流れがある。
こういう図って見たコトあると思います。

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レコードの場合は一度衰退してからの“再成長”なので少し特殊だけど、オイラの感覚だと現状はおそらく

「成長期終盤〜成熟期初期」

に差し掛かっているんじゃないかなぁ〜って思うんですよね。

まだ人は増えている。売上も伸びている。
でも一方で、誰でも入れる市場になってきている。

これはかなり重要な変化で、「広がりきった市場は、次に『選別』に向かう」んじゃないかなぁ〜って個人的には思っているんですよね。

まぁ〜実際にはどうなるかはわかりませんが。


■ 流行はドコまで来たのか──「広がりきった」という状態

RSDの行列、SNSの拡散、メディア露出などなど。

ココまで来ると、レコードはもう「流行としては広がりきった」状態にあるんじゃないかなともと思うんですよ。

ただ、ココで勘違いしちゃいけないのは、流行が広がりきる=終わりではない というコトです。

むしろココからが重要で、「じゃあ、ナニが残るのか」が問われるフェーズに入んじゃないかなってカンジているんですよね。

ん〜コレね…1990年代から2000年代初期のあのブームのはじまりから終焉までを経験しているからこそ、そういったコトがメチャ気になるんですよね。

まったくあの時のおんなじ状況を辿るとは思ってなくて、必ず次のフェーズにマーケット自体が移行してゆくんだと思います。

だけどオイラの経験したブームは、多くの場合DJプレイが目的でレコードはツールとしての需要だったんですよね。

そういった状況で、ツールだけではなくレコード自体がコレクションとしてのニーズが付随したってカンジでしたからね。

結局、DJプレイはデジタルに移行したコトで広がりきったレコードニーズは縮小してゆくワケですケドね。


■ 「選別」という静かな変化が始まっている

で、思っているのが「選別」なんじゃないかなって。

最近の店頭を見ていると、その変化はすでに始まっているかもしれないコトはナンとなくであるがカンジているんですよね。

当店では、お客さんが探しているレコードって指名買いとレコード棚掘りの比率はだいたい4:6なんですよ。
しかもレコード棚を掘って良さげなレコードを探している人は明らかに時間をかけるようになってきているという印象もある。

試聴して、コメントを読んで、スマホでチェックして、悩んで、また戻ってくる。

一方で、SNSでバズった曲やヒット曲は依然として強い。

つまり今は、

 「受動的な消費」と「能動的な選択」が混在している状態なんじゃないかなって思うんですよね。

だけど、この状態は長くは続かないんじゃないかなぁ。
やがてどちらかに寄っていくと思うんですよ。

そしておそらく残るのは、

「自分で選べる人」

なんじゃないかな〜って思うんですよね。


■ レコードは商品か、それとも文化か

ココで改めて考えたいのが、レコードの本質です。

オイラの中では、レコードは単なる商品ではナイって思っているんですよね。

モチロン音楽を聴くためのメディアではあるのですが、でもそれだけじゃないっ!っていうカンジですね。

  • 手に入れたい
  • 持っていたい
  • 集めたい

そういう感情も含めて成立しているんだと思うのです。

つまり、

「レコードは『文化的消費』の側面が強い」メディアだと思うのであります。

そして文化というものは、流行とは違って残るモノなんだともカンジていたりします。


■ 文化として定着するために必要なコト

じゃあ、レコードが文化として定着するために何が必要かってコトですよ。

コレは自分の中では結構ハッキリとしていると思っていて、カンタンに言うと

「そのレコードの文脈を伝えるコト」

なんじゃないかなって思うんですよね〜もうコレに尽きるかもしれません。

曲の背景、その時代、アーティストの立ち位置みたいなそういう情報があるかないかで、同じ音でもまったく違って聴こえるって結構アルと思うんですよね。

まぁ〜感情的な部分も含めてですけどね。

だから当店ではシッカリとそのレコードのコメントを書くというコトにコダワッていたりします。
正直、在庫しているレコードすべてにその曲のコメントを付けるっていうのはめちゃくちゃ手間はかかりますが…(笑)

でもそれが誰かの「選ぶ理由」になるならやっぱり意味があると思うし、コメントがキッカケで聴いてみたら良かったから購入していただけたりしたら、やっぱり報われる気がしますしね。


■ 受動から能動へ──これからのレコードとの向き合い方

レコードを手にしたばかりの頃って、誰しも「ナニを選べばいいのか」って戸惑うものだと思うんですよね。

レコード店に来て、棚にずらっと並んだレコードを前にして、ドコから見ればいいのかもわからない。コレってホントに多くの人が通る道だと思うんですよね。

だから最初のうちは、世の中の流行やシーンの大きな流れに身を任せるのはごく自然なコトだと思います。
City Popが流行っていればそれを聴くし、Lo-Fiが流行っていればそれを探す…そうやって入口に立つのは、むしろ健全な流れだと思います。

でも、レコードの面白さって、その先にあると思うんですよね。

「自分だけの耳やセンス」を育てていくみたいなプロセス…ココにこそ、アナログレコードという文化の本当の醍醐味があるんじゃないかなぁ。

じゃあ、その「耳」ってどうやって育てるのか…。

コレはすごくシンプルで、「受け身で聴くだけじゃなくて、自分から掘るコト」もうコレに尽きると思うんです。

たとえば、自分が「いいな」と思ったアーティストがいたとします。
その人がどんな音楽に影響を受けているのかを辿ってみる。

あるいは、信頼しているDJがプレイしていた1曲があったら、そこから派生して同じレーベルやプロデューサーを調べてみる、みたいにしてそうやって「音の源流」を自分で辿っていく。

このプロセスがめちゃくちゃ大事なんだと思うんです。

ただ有名なレコードを知識として持っているだけじゃなくて、

「なぜそれが良いのか」を自分なりに感じ取る

ココまでいくと、音楽の聴こえ方がガラッと変わると思うんですよ。

そして気がつくと、誰かに勧められたものじゃなくて、

 「自分で選んだ1枚」

が増えていく。

この積み重ねが、その人のセンスになっていくんだと思う。


オイラはよく思うんですけど、レコードってただの音楽メディアじゃなくて、「出会い方で価値が変わるもの」だと思うんですよね。

流れてきた音をなんとなく聴くのも悪くない…でも、自分から掘って出会った音って、やっぱり別物なんですよね。

その違いを知った時、ただの「リスナー」だった人が、「自分の美学を持ったミュージック・ラバー」に変わる…そんな瞬間が訪れるんじゃないかなと思います。


■ 結論:流行の終わりではなく、選別の始まり

今のレコード人気は、確実に成熟期に入りつつある。

そしてブームはいつか落ち着く。
もうコレは避けられないでしょう。

でも、それは終わりじゃなくって、むしろ「選別の始まり」になるんじゃなかいかなって思います。

流行の中で手に取られたレコードの中から、本当に必要なものだけが残っていく。

その積み重ねが、文化になるんじゃないかな…って。


■ 最後に──レコードは出会い方で変わる

キット、知らないだけで、良いレコードは無数にあるんですよ。

でも、受け身のままだとそういったレコードって出会えないですよ。

なので、少しだけでイイから、自分から掘ってみてほしいな〜って思うんですよね。

レコード店がこんなコト言うのってなんだかポジショントーク的ではありますけど、レコード店に訪れて「〇〇ありますか?」って訊いて「ありません」って言われたら「さようなら〜」って帰っちゃうのは、なんだか折角の出会いの機会をのがしているような気がするんですよね。


レコードに針を落とす理由が「流行」じゃなくなった時、その人にとってレコードは、単なる音楽じゃなくて、ひとつの文化になるってやっぱりアルと思うんです。

そして当店は、その「最初の1枚」に出会うキッカケになる場所でありたいと思っているんですよね〜。


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■ 渋谷の店頭で感じる、世界のレコード熱

2026年4月現在、アナログレコードの人気は現状まだまだ続いているようです。

ん〜いや、「続いている」というより、むしろ以前よりも広がり方が変わってきているかも…ってそんな感覚すらあります。

Next Recordsは渋谷という場所柄もあって、日々いろんな国からレコード好きが訪れていただきます。

ココ最近は本当に海外のお客さんが多くて、日によっては日本人のお客さんよりも外国からのお客さんのほうが多い、ナンてことも珍しくありません。

店頭でのやり取りを見ていると、当店の商品構成って日本人よりも海外から来た人のほうが刺さっているんじゃないか…ナンて思う瞬間もあったりします。

モチロンそれは嬉しいコトなんですが、同時にちょっと不思議な感覚でもあります。

そんな中で、最近ひとつ気になる変化があるんですよね〜それは一般のお客さんに混じって、明らかに「買い付け目的だな」と分かる人たちが来るようになってきたんです。

バイヤーである彼らはとにかく店内での動きがまったく違うんです。店の在庫を最初から最後までチェックしていくし、ジャンルも横断的に見ていく。そして何より特徴的なのが、来店時点ですでにレコードバッグがパンパンなんですよね。つまり、当店に来る前に他の店でもシッカリ買い付けてきている。

その光景を見ていると、オイラ自身が店を始めた頃、海外に買い付けに行っていた時のことを思い出して、ナンとも言えない気持ちになるんですよね。


■ 1通のメールが投げかけてきたもの

そんな日常の中で、先日ちょっと興味深い出来事がありました。イギリスのディーラーから1通のメールが届いたんです。

内容はシンプルで、「日本の中古レコードを大量に仕入れたい」「卸売に対応しているか」「将来的には長期的なパートナーシップを築きたい」といったもの。

入手したいジャンルとしてはHipHopやHouseといった、いわゆるクラブミュージックが中心でした。

要するに、「レコードを卸してほしい」というオファーです。

コレまでにも海外からの問い合わせは何度かありましたが、その多くは「自分たちのレコードを扱ってほしい」という売り込みでした。今回のように「仕入れたい側」として連絡が来たのは初めてのコトです。

このメールを読んだとき、率直に思ったんですよね〜ソレは…

「どうして日本に来て買い付けないんだろう?」ってコトです。


■ 現場での仕入れという行為の意味

実際に店頭に来ている海外バイヤーを見ていると、彼らの動きはとても分かりやすいです。

自分のマーケットで「差額が抜ける盤」だけを的確に選んでいく。

これは単純な作業ではありません。その人がどれだけ音楽を知っているか、どれだけ市場を理解しているか、そのすべてが表れる行為なんですよね。

オイラも昔は同じように海外のレコード店を廻って、ひたすら掘って、選んで、持ち帰っていました。現場でしか分からない空気や、盤の状態、ちょっとした違和感、そういったものを総合的に判断していく。

だからこそ、「メールでレコードを卸売してほしい」というスタンスには少し違和感があったんです。

ただ、今の時代を考えると、その理由もナンとなく見えてきます。


■ かつての価格差で成り立っていた時代

2000年前後、オイラがレコード店を始めた頃は今とはまったく状況が違いました。

海外ではすでにレコードの役目は終わったものとされていて、CDが主流になっている状態。

一方で日本では90年代半ばからDJカルチャーの広がり、HipHopやHouse、Discoの中古レコードにしっかりとした需要がありました。

つまり、国という単位で見る地域によって需要が大きく異なっていたんですよね。

だから海外に買い付けに行くと、向こうも長年動かなかったアナログレコードの在庫をオイラたちが大量に買うものだから本当に喜ばれるし、しかも価格も安い…コチラとしては「こんなに安くていいの?」というくらいの感覚でした。

当時はシンプルに、

「安く仕入れて、日本で売る」

コレだけで成立していた時代です。

とはいえ、決してカンタンではなくそれなりの苦労はありましケドね。


■ 世界がひとつの市場になった現在

トコロが今はどうか。

世界中でレコードの人気が再燃し、どの国でも同じように需要があります。

そして何より大きいのが、DiscogsやeBayの存在です。

これによって、レコードの価格や人気は完全に可視化されました。

どこの国でも同じ情報を見て、同じように判断する。つまり、どこで買っても価格はある程度揃ってしまうようになりました。

この状況では、かつてのように「地域差で利ざやを抜く」というビジネスは成立しにくくなります。


■ それでも卸の話が来る理由

では、ナゼ今のように価格も情報もグローバルで共有されている状況の中で、それでも「卸してほしい」というハナシが出てくるのかってコトですよ。

この点はもう少し踏み込んで考える必要があると思うんですよね。

ひとつはやはり「効率」というキーワードです。今の海外ディーラーにとって、日本に来て何日もかけてレコードを掘るという行為は、コストとリスクの両方を伴うものになっています。

航空券や滞在費はモチロン、限られた時間の中でどれだけ良い盤に出会えるかはまったく保証されていない。しかも、すでに他のバイヤーが回った後の棚を掘るコトになるケースも多いワケです。

そう考えると、「現地で掘る」よりも「すでに仕入れと選別を終えている店からまとめて買う」という発想は、ビジネスとしては非常に合理的なんでしょうね。

つまりこれは、単にレコードを仕入れるというよりも、

👉 「選盤そのものを外注する」

という考え方に近いかもしれませんね。


当店のように、日々の買取や仕入れの中で何千枚というレコードに触れて、その中から「使える盤」「良い盤」を抜き出している店は、ある意味でフィルターの役割を担っている部分もあったりします。

そのフィルターを通過したレコードだけをまとめて仕入れられるのであれば、確かに効率は良いですよね〜コレは理屈としてはよく分かります。

ただ、その一方でこうも思うんです。

効率化を優先するのはビジネスとして正しいかもしれない…でも、そのお店の選盤を丸ごと外注してしまう行為って、その店の存在ってナンなんだろう?って。

レコードが好きで、このカルチャーに魅力をカンジて自分で店を始めたハズなのに、自分の腕の見せドコロであるはずの「選ぶ」という行為を他者に任せてしまう…ソレって、ナンカ味気ないなぁとも感じるんですよね。

モチロン、規模を拡大していく上で効率化は避けて通れない部分もあると思いますし、全てを自分でやるのが正解とも限らないと思います。

ただ、レコードというものが単なる商品ではなく、「選ぶコト」そのものに価値がある文化だとするならば、その核の部分を手放してしまうコトには、少し違和感を覚えるんですよね。

だからこそ今回のようなオファーは、単なる取引のハナシというよりも、

👉 「レコードをどう扱うのか」
👉 「ナニを価値として提供するのか」

という、もう一段深いトコロを考えさせられるキッカケでもあるのかなと思っています。


■ 利益相反というシンプルな現実

ココで一度、かなり現実的なハナシに戻ります。

今回のような「卸してほしい」というオファーを考えたとき、まず最初に立ちはだかるのが、極めてシンプルな構造です。

👉 オイラたちは「良い盤を自分の店で売りたい」
👉 相手は「良い盤をできるだけ安く仕入れたい」

この時点で、完全にベクトルは逆を向いていますよね。

レコード店を営んでいれば、コレはもう常識的に分かっているコトだと思うんですよね。

特にオリジナル盤の12インチのように、再生産されることのない中古レコードという市場においては、良質な盤というのは「有限」です。

つまり、

👉 「良い盤を卸す」という行為は
👉 「自分の売り物を他店に渡す」というコト

になるワケです。

コレって言い換えると、

👉 元売りと販売側で“取り合いになる構造”

なんですよね。


大量生産される商品であれば、卸売というのはごく自然な流れですし、商取引としても当たり前に成立します。でもレコード、とくにレアなタイトルに関しては事情がまったく違いますよね。

どこの店だって、S級やA級の盤は喉から手が出るホド欲しい。むしろ、それをどうやって確保するかが店の価値そのものになっていると言ってもいいと思います。

そう考えると、

👉 「良い盤を安く卸してほしい」

という前提であれば、そもそもハナシは成立しません。

じゃあ、どうしてこういうオファーが来るのか。

ココで少し考え方を変えてみると、もしかしたら今回のハナシは、

👉 「良い盤をよこしてほしい」

ではなく、

👉 「過剰在庫になっている盤を譲ってほしい」

というニュアンスなのかもしれません。

実際、メールの文面を見ても、具体的にどのレベルのクオリティの盤が欲しいのかは書かれていないんですよね…HipHopやHouseといったジャンル指定はあるものの、その中でどのレンジのアイテムを狙っているのかは曖昧なままです。

この曖昧さが、今回のハナシの難しさでもあり、同時に「わずかな可能性」が残る部分でもあるとカンジています。


■ それでも残る“わずかな可能性”

とはいえ、完全に成立しないかというと、そうでもないかなぁ〜って思う部分もあります。

例えば、日本ではそこまで評価されていないけれど海外では需要がある盤や、中価格帯で回転の早いタイトルなど、評価や回転のズレがある部分に関しては取引が成立する余地はあります。

ただしそれはあくまで限定的で、ビジネスの軸になるようなものではないでしょう。

そういったタイトルを卸売出来るレベルの枚数をセレクトしてまとめて卸すというコチラ側の作業のコトまで考えると、時間も手間もかかるので正直面倒ですよね。

買取査定して査定対象からハズレた価値の低いメインストリーム系のタイトルやブート盤やキズ盤を箱単位でドカっと送っても良いのであればコチラ側にとっては実においしい取引になるのですが、相手側は「ゴミレコばっかり送って来やがったっ!コンチクショーっ!」ってトーゼンなりますよね。

ソレじゃ、将来的には長期的なパートナーシップはゼッタイに築けないでしょう。


■ オイラの結論と、これからのレコードビジネス

今回のオファーについて、オイラの結論はシンプルです。

今回はお断りします。

理由はやはり、良い盤は自分の店でしっかりと販売したいからですよね。

当店は店頭販売とオンラインの両方で国内外のお客さんに届けるコトができているので、卸すほどの余剰は正直ありませんしね。

ただし、当店のオンラインサイトから一般のお客さんと同じように購入していただく分には、モチロン大歓迎なんですが、ソレは買ってくれないでしょうね〜。

そして今回のやり取りを通じて改めてカンジたのは…

レコードは「ドコで買うか」ではなく「ダレが選ぶか」の時代に少しずつですが変化しつつあるのかなって思ったんですよね。


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ERYKAH BADU / ON & ON の試聴
next recordsのサイトでERYKAH BADU のレコードを探してみる


かつてのように価格差だけで勝負する時代ではなく、ナニを選び、どう届けるか…みたいなそのプロセスそのものに価値が見出されてきたような気がします。

オイラはこれからも、その「選ぶ」という部分に出来るだけコダワリ続けていきたいと思っているんですよね。

レコードは単なるモノではなく、文化であり、体験であり、ストーリーっていう側面もありますからね。

だからこそ、針を落とした瞬間に「コレだっ!」と思える1枚を、これからも店頭で、そしてオンラインで届けていきたいでなぁ〜と思う次第であります。


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■ 渋谷に流れ込む世界中のレコード好きたち

春になって少し暖かくなってくると、街の空気もドコか軽やかになりますよね〜。
3月に入ってからというもの、当店にも海外からのお客さんがイッキに増えてきました。

後から知ったんですが、3月って日本に訪れる旅行者が1年通してみると3番目に多い月らしいですよ。

しかも東京の中でも渋谷は観光地として2年連続で1位で東京に訪れた旅行者の訪問率は約67.1%、つまり3人に2人が渋谷に来ている計算になるそうです。

さらに興味深いのが、海外のレコードコレクターやDJの間では渋谷は

「Mecca of Vinyl(レコードの聖地)」ナンて呼ばれているらしいんですよね。

オイラ自身、渋谷でレコード店を営んでいて外国のお客さんが多いのは肌でカンジていましたが、まさかココまでとは思っていませんでした。


■ ニッチすぎる店、それでも刺さる瞬間

ただ、オイラの営んでいるレコード店、Next Recordsはかなり特殊なレコード店です。

オリジナル盤のみ、12インチシングル専門、しかも中古。
このトリプル縛り、正直言って万人受けとは真逆です。

レコードを探している人はたくさんいるけど、オイラの店が応えられるニーズはホンの一部です。
アル意味、かなり偏った品揃えのレコード店です。

でも不思議なコトに、このオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店というコンセプトを理解してくれたお客さんにはものスゴく刺さるんですよね。

はじめて来たお客さんでも、当店の商品構成にハマると本当に熱心に掘ってくれるんですよ。

お客さんにもよりますが店頭に並べてあるすべてのレコードをチェックしてくれる人もいるくらいですからね。

そういった光景を見ていると、やっぱりレコードって面白いなって思いますね。


■ 「キュレーションが素晴らしい」というコトバ

そんなお客さんたちが、会計の時によく言ってくれるコトバがあります。

「このお店、キュレーションが素晴らしいね!」って。

最初は正直、いまいちピンときませんでした。
「品揃えがイイってことかな?」くらいの認識でした。

まぁ〜そう言っていただいた時のオイラの返事は毎回「サンキューベリーマッチ」なんですが。

でも結構な割合でよく言われるんですよね「キュレーションが良い」ってコトを。

でこのワード、何度も言われるので「ホントはどういった意味なんだろう…」ってなんとなく気になったので調べてみたんですよ。
するとどうやらこのコトバ、単なる褒め言葉以上の意味があるらしいってコトがわかりました。


■ 店的にはキュレーションしているつもりはなかった

とはいえ、オイラ自身はキュレーションなんて意識してやっていません。

あ〜ちなみにキュレーションってちょっと聞き慣れないコトバなのでカンタンに定義しておくとこんなカンジのイミです。

----------------------------------------

「キュレーション(Curation)」とは、膨大な情報の中から特定の視点やテーマに基づいて有益なものを選び抜き、そこに新しい意味や価値を加えて他者に共有することを指します。

----------------------------------------

当店では仕入れたレコードを実際に聴いて
「これイイ曲だな」「メチャ、格好良いな」
って思ったものを商品にして並べているだけなんですよね。

自分の店だから、自分がイイと思うレコードを店頭に並べておく。
それだけのハナシなんですよね。

逆に「この曲、イマイチだけど売るか…」っていうのはちょっと違うと思うんです。
そんなレコードをお客さんに薦めるのも変なハナシですしね。

でもどうやら、お客さんからするとそれが「キュレーション」に見えているらしい…。


■ 同じレコードなのに売れ方が違う理由

で、面白いエピソードがあるのですが、同じタイトルのレコードでも、当店では結構スグ売れるのに、他のお店ではずっと残っているコトがあるんです。

しかも当店の方が値段が高いコトもある。

これ、最初は本当に不思議だったんですよね。

ん〜ナンでこんなイイ曲なのにダレも買わないんだろうって。

しかもコレってウチの店よりも明らかに集客力のある有名店なんですよね。

でも最近、ちょっと思うんです…これはレコードそのものの違いじゃなくってそのレコードが「どういう文脈で並んでいるか」の違いナンじゃないのかって。


■ レコードを買っているようで、実は違うものを買っている

お客さんの買い方を見ていると、ハッキリと分かるコトがあります。

実店舗でもネット通販でも1枚だけ買う人は、その曲を探してきた人で「このレコードが欲しいっ!」っていう明確な指名買いのニーズによるものだと思うんです。
一方、5枚、10枚と複数枚のレコードをまとめて買う人はちょっと違っていてその場でコメントを読んだり試聴したりして判断して買っているように思うんですよ。

つまりそれまで全然知らない曲、もしくはなんとなくちょっと聴いたコトがある程度の曲でも「あ…この曲イイかも…」って判断して買っているんじゃないのかなって思うんですよね。

でもコレってよく考えるとスゴいことですよね。

普通なら知らないレコードってリスクがあると思うんですよ。
でもそれを買うというコトは、そのショップの品揃えやそのレコードの並びで購入してくれているんじゃないのかなって思ったんですよね。


■ キュレーションとは「選ばなくていい状態」

ココでようやくレコードにおける「キュレーション」というコトバの意味がナンとなく見えてきました。

キュレーションって、ただ選ぶコトじゃないんでしょうね。

ザックリいうと「選ばなくてもいい状態をつくること」なんだと思います。

理想を言えばこの棚にあるレコードは、ある程度大丈夫な曲が並んでいるって状態です。
そう思えるだけで、レコード選びはイッキに楽になるんじゃないかなって思ったんですよね。


■ ディグの楽しさとシンドさ

レコードって探す・掘る(ディグ)するのが楽しい文化です。

でも正直に言うと楽しいだけじゃなくて、シンドイ時もあると思うんですよね。

  • ハズレを引く…コレ、イイかもしれないって買ったらアテがハズレたとかよくあります。
  • 時間がかかる…目の間に数千枚の大量のレコードがあったらソレを全部チェックするのかとか…ちょっと気が遠くなります。
  • 判断に迷う…手にとったレコードを毎回、瞬時にOK・ダメの判断を迫られるのはなかなかストレスになるコトがあります。

こういう経験、誰でもあると思うんですよね〜レコードを掘って選ぶという行為は、本質的なのですが結構、タイヘンだったりするワケです。

だからこそ人は「信頼できる耳」的なアドバイスのようなコトを求めるんじゃないでしょうか。


■ 在庫の店と編集の店

世の中のレコード店には大きく2種類あると思っています。


● 在庫の店

たくさん並んでいて、自分で探す


● 編集の店

ある程度選ばれていて、そこから出会う


ドチラが良いとか悪いではなくて、役割が違うんじゃないかな。

在庫の店 / 編集の店 っていうイミで区別すれば当店は明らかに後者なんだと思います。


■ 伝わりにくさというもうひとつの側面

ん〜ただ、この「編集の店 」スタイルには弱点があるんですよね。

ソレはズバリ、「知らない人・解らない人には伝わりにくい」ってコトです。

「オリジナル盤12インチ専門」っていうだけでもかなりデカいハードルがあるのに、さらにその中から「選ばれたモノだけ」っていうのは、入り口としては決して広くない…というか狭めスギのようなカンジでもありますよね。

このブログでも何度も書いていますが、この当店のコンセプトはやっぱり理解されにくいってコトは切実にカンジています。


■ それでもやる意味

でも今回、当店に訪れてくれてレコードをお買い上げいただいたお客さんに「キュレーションが素晴らしい」と言われたコトで、少し見えた気がします。

実際に店頭に並べるレコードを聴いて選別しているというコトに関して特別なコトをしているつもりはなかったケド、そのセレクトされたレコードの並びに価値を感じてくれる人がいるっていうコトは率直にうれしいし、メチャありがたいって思います。


商品化前の実際に聴いての選別やそれぞれのコメントの執筆 & 試聴ファイルの録音って相当負担が大きいのですがそれがちゃんとイミがあるコトにつながっているんだなぁって思ったんですよね。

コレからはもう少しだけ意識して、コメントやタグ付けを工夫していこうかなと思っています。

いいレコードなのに埋もれてしまうのは、やっぱりもったいないですからね。

それに未知のレコードをお客さんに紹介するっていうのもレコード店の使命だとオイラはおもっていますからね〜。


■ レコード屋の役割とは

レコードはあくまでも「モノ」ですが、その出会い方によって価値が大きく変わってゆくと思うんですよ。

👉そのレコードとドコで出会うか

👉そのレコードがどう紹介されるか


それだけで、同じレコードが全然違って聴こえるコトって結構あると思うんですよね。
スキルのあるDJがプレイした曲が全部、カッコ良く聴こえるとか、そして無性にそのレコードが欲しくなるとかってケースとしてはよくあるパターンですよね。

そういう風に、もしウチのNext Recordsの店頭に並んでいるレコードが「ココの店のセレクトなら信頼できる」 って思ってもらえる場所になっているなら、それはメチャ嬉しいコトです。

レコード店でのキュレーションとは、決して選ぶコトではなく選ばなくてもイイ状態をつくるコトなのかなぁ〜ってコトをこの記事を投稿するコトでカンジた次第であります。

で、思ったのが実は人は音楽を探しているようでホントは「信頼できる選び方」を探している部分も結構あるんじゃないのかなぁ〜って。

モチロン良いレコードがある店でありたいのですがそれだけでなく更に良い「出会い方」があるレコード店でありたいな〜って思いました。

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