渋谷レコード店日記 - アナログレコードコレクションのススメ

東京 渋谷の12インチシングル専門の中古レコード屋next. recordsで日々思ったコトやレコードについて書いてます

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「どうして20年以上も続いているんですか?」

先日、知人から新しく始めようとしているビジネスについて相談を受ける機会がありました。

アレコレとハナシをしているうちに、今度は逆にこんなコトを訊かれたんです。

「トコロで、オリジナル盤12インチシングル専門って、ものスゴく狭い商売ですよね。ソレなのに、どうして20年も続いているんですか?」

オイラは渋谷で中古レコード店をやっています。

店を始めたのは2000年なので、今年で26年目になります。

現在なら自分の店を、「オリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店」と説明できます。

LPでもない。CDでもない。再発盤でもない。オリジナル盤の12インチシングルが中心。

こうやって文字にすると、確かにかなり狭い商売です。

それで知人には、

「一般には分かりにくいオリジナル盤12インチシングル専門という絞ったアイテムを売っているコトが、12インチシングルが好きな一部の人に受け入れられたんじゃないですかね〜」みたいなことを答えました。

ん〜それらしいですよね(笑)。

でも後になって考えました。

コレって答えているようで、実は全然答えていないんじゃないか?って。

ナゼ、26年も続いたのか…店主であるオイラ自身、ちゃんと考えたコトがなかったんです。

そこでこの機会に、26年前まで遡って考えてみることにしました。

最初から「専門店」を作るつもりなんてなかった

まず思い出したのが、そもそもどうしてこの店を始めたのかということです。

オイラは以前、大阪の友人が営んでいた中古レコード店で通販部門を手伝っていました。

その店の方針転換によって仕事から手が離れたタイミングで、別の友人から、

「渋谷で一緒にレコード店を始めないか」と誘われました。

もともとレコード店には興味がありました。

とはいえ、自分1人で会社を作って店を始めよう、ナンてところまでは考えていなかったんです。

でも、その友人にはすでにレコード店を経営した経験がある。オイラには通販の経験がある。

「2人の経験を合わせれば、案外ウマくできるんじゃないか?」

Next Recordsは、そんな感じで始まりました。

では、開店にあたって緻密な市場調査をして、競合店を分析して、「これからは12インチに特化すべきだ!」と事業計画を作ったのか。

実は、全然そんなことはありません(笑)。

2人で決めていたのは、「自分たちが好きなレコードを売ろう」というコトくらいでした。

そして2人とも、強烈な12インチマニアであり、コレクターでした。

だから、「好きなレコード=12インチシングル。」

結果として、店には自然と12インチシングルばかりが並びました。

オリジナル盤についても同じです。

2人とも再発盤やブートレッグ盤には魅力を感じず、「自分たちの店に置きたい」とは思わなかった。

だから「オリジナル盤専門店にしよう」と会議で決めたワケでもありません。

好きなレコードを並べていったら、いつの間にかそうなっていたというカンジなんです。

12インチシングルは「好き」の純度が高い

そもそも、なぜオイラは12インチシングルがそんなに好きなのか。

アルバムもモチロン面白いです。

10曲くらい収録されていて、1枚を通して作品として聴く。それはアルバムならではの素晴らしさです。

でも、そのアルバムの中で、

「本当に好きなのはどの曲?」

と訊かれると、オイラの場合はだいたい1〜2曲なんです。

そして、その1〜2曲がシングルカットされているコトが多い。

だったらオイラにとっては、アルバムという複数の曲の中の「何分の1」として収録されているよりも、好きな1曲が主役になっているシングル盤のほうが、「好き」の純度が高いんです。

しかも12インチシングルは、DJカルチャーと密接につながった特殊なフォーマットです。

アルバムに入っているバージョンとは違う、DJプレイやフロアを意識したアレンジが施されているコトもある。

イントロやブレイクが長かったり、ベースやリズムが強調されていたりする。

そして12インチという大きな盤面に少ない曲数を収録することで、アルバムより音圧があり、迫力のあるサウンドを楽しめるものも多い。

好きな曲が、フロアでさらに格好良く響くように仕立てられている。

オイラはそこに魅了されました。

だから「12インチという市場に商機がある」と考えたのではなく、

単純に、

「12インチって、めちゃくちゃ格好イイよね」

というトコロから始まっているんです。

2000年、渋谷・宇田川町はレコードの街だった

店を始めた2000年頃の渋谷は、今とはかなり違いました。

すでに一般的な音楽メディアの主役は、レコードからCDへ完全に移っていました。

トコロが面白いことに、音楽を「聴く」ためのメディアとしては役割を終えつつあったレコードが、今度はDJが「プレイする」ための道具として再び強烈な存在感を持つようになったんです。

当時は空前のDJブーム。

それまでDJといえば、一部のプロがディスコやクラブでやるものというイメージでした。

それが一般の人でも楽しめる趣味になったんですよね。

でも普通の街のレコード店は、すでにCDショップへ姿を変えている。

そこでDJやDJプレイをしてみたいと思う人がレコードを買おうとすると、限られた繁華街で営業していたレコード店へ行くことになります。

その代表格が渋谷でした。

しかも渋谷にはクラブも多く、DJカルチャーとの結びつきが非常に強かった。

Cisco Records、Manhattan Records、Dance Music Recordsといった、当時のDJシーンで絶大な支持を集める大手レコード店が狭いエリアに存在し、その周りを囲むように小さなレコード店が点在していました。

一時期は宇田川町周辺だけで50店ホドのレコード店があったとも言われるくらいです。

世界中から新しいレコードがホボ毎日のように入荷する。

そんな最新の音楽が収録されたレコードをお目当てにプロのDJ、DJを趣味にしている人、レコードコレクターが集まってくる。

人気盤の入荷日には行列までできる。

世の中ではみんなCDを聴いているのに、宇田川町だけはレコード店のロゴが入ったショッパーを持った人たちが大量に歩いている。

今思い返しても、すごい光景でした。

そんな状況ですから、2000年に店を始めたオイラにも将来への不安はホトンドありませんでした。

むしろ心配していたのは、海外へ買い付けに行っても、業者間の競争が激しくなって仕入れるレコードがなくなるんじゃないか、というコトでした。

ソレに店は始めてすぐに「軌道に乗った」とも感じていました。

今思えば、あれは一種のバブルだったんでしょうね。

でもバブルの真っ只中にいる人間には、それがバブルだとはなかなか分からない。

5年後、10年後のコトなんて考えていませんでした。

タブン、「今よりもっと売れて、店も大きくなっているかも?」くらいに呑気に思っていたんじゃないでしょうか。

「オリジナル盤」は、説明しないと伝わらなかった

開店当初、オイラたちは「オリジナル盤専門」を特別な売り文句にはしていませんでした。

ナゼなら、自分たちにとってはオリジナル盤を売ることが当たり前だったからです。

トコロが、商売をしているうちに問題が起きました。

過去に発売された人気のレコードには、当然ながら限りがあります。

欲しい人が1000人いるのに、オリジナル盤は数枚しか市場に出てこない。

そうなると大手店は需要に応えるため、再発盤やブートレッグ盤などを扱います。

大量に作れるので価格も安い。

一方、オイラたちは当時実際に発売されたオリジナル盤そのものに価値があると考え、希少性に応じた価格で販売している。

お客さんからすると、

「同じ曲なのに、ココの店では5千円。あっちは新譜のレコード店では1000円くらい。ナニが違うの?」となる。

ソリャ〜そうですよね、見た目もよく似ていて、針を落とせば同じ曲が流れる。

でも、

「コチラは、その曲が実際に世に出た当時にプレスされた盤なんですよ」

と丁寧に説明すると、納得してオリジナル盤を選んでくれるお客さんがいたんです。

そこで初めて気づきました。

自分たちにとって当たり前の価値は、伝えなければお客さんには分からない。

それから「オリジナル盤である」というコトを、キチンと前に出すようになりました。

つまり「差別化戦略としてオリジナル盤を選んだ」のではありません。

先に自分たちの価値観があり、お客さんとのやり取りを通じて、それを言葉にする必要があると気づいたんですよね。

現在の店のコンセプトは、そんなふうに後からカタチになっていったんです。

数年後、本当に風向きが変わった

トコロが2005年頃から、状況が変わり始めます。

キッカケの一つがDJ機材のデジタル化でした。

CDでDJプレイができるCDJは以前からありましたが、アナログレコードの操作性には強みがあり、当初はそれホド脅威に感じませんでした。

しかしDVS(Digital Vinyl System)が普及し始めた時、

「アレ? これは流れが変わるかもしれないぞ」と思いました。

DVSは、専用の信号が記録されたコントロールヴァイナルを使い、PC内の音楽ファイルをターンテーブルで操作できる仕組みです。

DJはレコードを扱うような感覚で、デジタル音源をプレイできるという画期的なシステムでした。

このDVSが普及してゆくにつれて海外で、新譜のレコードそのものが徐々にプレスされなくなっていったんですよね。

中古レコード店のオイラにとって、これは「上流から水が流れてこなくなる」ような感覚でした。

そして、コレは新譜を中心に扱っていた店から影響が見え始めました。

いつも賑わっていた大手レコード店からお客さんが減っていく、街を歩いていても、レコード店のショッパーを持った人が明らかに少なくなっていく…この変化は想像以上に急激でした。

2007年にはCisco Recordsが全店舗を閉鎖…モチロン衝撃の出来事でした。

でも、それ以上にオイラが怖かったのは、お客さんの熱量や価値観が、こんな短期間でガラッと変わるんだというコトでした。

変えたのはレコードではなく「買い方」だった

それでも、「12インチ専門をやめよう」と思ったことはありませんでした。

むしろ、周囲の店が閉店していくのを見て、

「ココで自分たちの得意分野の12インチシングルから様々なアイテムを扱う普通のレコード店になったら、もっと厳しくなるんじゃないか」って思いました。

後にCity Popの人気が高まっているコトも解っていました。

でも、オイラ自身が興味を持てないレコードをお客さんに、「これ、良いですよ!」と薦めることは、どうしてもできなかった。

一方で、変えなければいけないと思ったものがあります。

レコードそのものではなく、レコードの買い方です。

オイラのレコード販売のルーツは通販でした。

ネットがまだまだ普及する前だったので90年代後半の大阪時代の通販は紙のカタログです。

電話で注文を受けていると、お客さんからよく、

「ちょっと聴かせてほしい」と言われました。

知っている曲なら、タイトルだけで買える、でも知らない曲は、文字情報だけでは買いにくい。

そこで後にインターネットが普及してきたとき、EC上でレコードを試聴できるようにしました。

とはいえ数千枚ものレコードをPCに録音してデジタルデータ化するなんて、気が遠くなる作業です。

正直、「コレ…やらなきゃイケないのか…」ってカンジで腰は重かったです(笑)。

そんなとき、先に試聴システムを導入していた知人のレコード店から、

「絶対やったほうがイイよ! びっくりするくらいレコードが売れるよ!」と言われ、実行しました。

すると、本当に劇的に注文が増えたんです。

「知らないレコード」が売れるようになった

今ならYouTubeもSpotifyもあります。気になる曲があれば検索すればすぐ聴ける。

でも当時は、そんな環境ではありません。

そんな時代にECの商品ページで試聴ボタンをポチッと押すと、そのレコードの音が流れる。

このメリットはメチャ大きかった。

特に面白かったのが、誰もが知っているヒット曲ではなく、無名の曲やマイナーな曲が売れるようになったコトです。

アクセス解析を見ると、小さなレコード店の試聴ファイルなのに、短期間で数百回も再生されている。

「うわっ!ものスゴい勢いで聴かれているぞ!」と驚きました。

そして試聴は仕入れまで変えました。

以前なら、

「この曲、良いんだけど知名度がないから売りにくいなぁ」と仕入れをためらったレコードでも、

「聴いてもらえれば、この良さは解るかもしれない」と思えるようになったんですよね。

これは12インチというフォーマットとも相性が良かったと思います。

12インチの世界には、有名・無名だけでは測れない魅力的な曲が山ホドあります。

知らないから買えなかったレコードが、聴けることによって「欲しいレコード」に変わる。

レコード店にとって、これはかなり大きな変化でした。

26年間、変えまくった。でも、変えなかった

振り返ると、オイラの店は意外なくらい変化しています。

紙の通販カタログからPDFへ。

PCで試聴できるようにし、ECサイトを作り、携帯にも対応した。

SEOも自分なりに勉強しました。

創業当初から商品をデータベースへ登録することを徹底し、アーティスト名、曲名、画像、試聴データ、コメント、価格、販売履歴などを蓄積してきました。

やがて実店舗の在庫とECの在庫を同期させ、店にあるレコードをすべてオンラインでも見られ、全商品を試聴できるようにしました。

実店舗でレコードを売る基本的な方法は、昔からそれホド変わりません。

でもインターネットの世界は猛烈な速度で変わる。

だからECについては、その時代に合わせてかなり大胆に変えてきました。

トコロが、その一方で26年間ほとんど変えていないものがあります。

何を売る店なのか。

オリジナル盤12インチシングルです。

つまりオイラの店は、

26年間、変えまくった店であり、26年間、変えなかった店でもある。

もしかすると、この両方が必要だったのかもしれません。

「戦略なんてなかった」が、後から戦略に見えてくる

今回、26年間を振り返るキッカケになった言葉があります。

・プロデューサーの秋元康氏が語ったという、

「これからは最大公約数ではなく、最小公倍数的に考えてコンテンツを作ってゆく時代だ」

という趣旨の言葉です。

多くの人に薄く受け入れられるものではなく、まずある一点に強く刺さるものを作る。

それを知った時に、

「コレってうちの店にも当てはまるんじゃないか?」と思いました。

オリジナル盤12インチシングルという狭い一点を掘り続けた結果、DJ、コレクター、Disco、House、Hip Hopなど、それぞれ違う入口から人がやってくる。

でも、すぐに引っかかりました。

いやいや、オイラ、そんなコト意識して狙ってなかったぞ(笑)。

そこで知ったのが、経営学者ヘンリー・ミンツバーグの「創発的戦略(Emergent Strategy)」という考え方でした。

最初から完璧な戦略を作り、その通りに実行するだけが戦略ではない。

実際に行動し、環境の変化に対応し、小さな判断や軌道修正を積み重ねるコトで、後から振り返ると一つの戦略のようなものがカタチ作られていることがある。

コレを知った時に、

「あぁ、コレは自分の店に近いかもしれない」と思ったんです。

12インチ専門もそう。

オリジナル盤専門もそう。

通販も、試聴も、ECもそう。

26年前に現在の店の姿を設計していたワケではありません。

その時そのときに、

「コッチのほうがイイんじゃないか?」

「お客さんはココで困っているんじゃないか?」

「コレは変えたほうがいいな」

「でも、これは変えたくない」

って考えてきたんですよね。

その点と点が26年後の今から見ると、一本の線に見えているだけなのかもしれません。

それでも「26年続いた理由」はひとつにできない

では結局、ナゼこんなに狭い商売が26年続いたのか。

ココまで考えれば、格好いい答えが出そうなものですが…。

やっぱりオイラには、まだひとつには決められません(笑)。

オリジナル盤12インチ専門だったコトは、大きいと思います。

でも感覚的には、それだけで50%くらい。

渋谷という場所だったこと。

通販の経験があったこと。

ECへ比較的早く対応できたこと。

共同経営者やスタッフの存在。

そして時代のタイミング。

さらに、かなり大きいと思っているのが「運」です。

オイラより音楽に詳しいレコード店主はたくさんいました。

「この人はスゴいな」と思う店主もいたし、「この店、めちゃくちゃ良いな」と思った店もありました。

でも、そういう店がすべて20年間以上残っているワケではありません。

英語に、

Being in the right place at the right time.

ということわざがあります。

訳すと「適切なタイミングで、適切な場所にいる。」という意味です。

商売には、そういう要素が確実にあるとオイラは思うんですよね。

だから「オイラの経営判断が正しかったから20年以上続いた」なんて、とても言えません。

強いて言うなら、

その時々の変化を見ながら、小さく軌道修正を続けられた。

これが今のトコロ、一番しっくりくる答えです。

今では海外からレコードを買いに来る

そして、さらに不思議なコトが起きています。

2018〜2019年頃から、外国人のお客さんが目立って増え始めました。

オイラの店で扱う洋楽のオリジナル盤は、もともと北米やヨーロッパでプレスされたものが多い。

昔はオイラたちが海外へ行って、それを日本へ買い付けてきた。

トコロが今度は、その国の人たちがわざわざ日本へ来て、自分たちの国で作られたレコードを渋谷で買って帰る。

そういった様子をみて最初は、

「なんだか状況が変わってきたぞ?」と思いました。

外国人のお客さんがあまりに増えたので、税務署へ行って免税店の申請までしました。

レコードという物自体の魅力が世界で再評価され、日本には状態の良い中古盤や面白いレコードがある、という認識も広がっていったのでしょう。

現在では、店を訪れるお客さんの半分以上が外国人という日も珍しくありません。

2000年には、まったく想像していなかった光景です。

2000年のオイラに教えてやりたい

もし今、2000年の創業当時のオイラと5分だけ話せるとしたら。

まず、

「お前の店、26年後もやってるぞ」

と言ってみたい。

タブン、

「マジで? そんなにまだレコードの需要あるの?」

って言うでしょうね〜。

「アル!それどころか、お前、26年後もホボ同じような12インチ売ってるぞ」

「マジか?」

「しかも店に来るお客さん、半分以上外国人だったりするぞ」

「…えっ!?なんで?(笑)」

ん〜タブンそんな会話になると思いますね。

そして最後に、ひとつだけ伝えるなら、

「あと数年で、それまでの価値観がガラリと変わってキツくなる。でも、自分の行いを信じて進んでゆけ。そのまま進めば、26年後は案外悪くないぞ!」

と言ってやりたいですね。

好きなコトを商売にすれば成功する、なんてオイラには言えません。

専門性を高めて特化した店にすれば長く続く、とも言えません。

まして、最初から完璧な戦略を持っていたワケでもありません。

ただ、好きだから始めた。

やってみたら、お客さんから教えられた。

時代が変わったら、売り方を変えた。

それでも、自分たちが価値を感じるレコードは変えなかった。

そして、ちょっと運が良かった。

そんなことを26年間積み重ねたら、今も渋谷でオリジナル盤の12インチシングルを売っていました。

レコードに針を落とすときも、少し似ているのかもしれません。

針を落とすまでは、その1枚が自分にとって特別なレコードになるかどうかなんて分からない。

知らない曲なら、なおさらです。

でも、聴いてみなければ何も始まらない。

商売も案外、そんなものなのかもしれませんね。


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結局、オイラがこの長いハナシでいったいナニを言いたかったのか。

26年前、オイラは立派な戦略を持ってこの店を始めたワケではありません。ただ、自分たちが好きなレコードを売り始めただけでした。

それから26年。時代が変わるたびに売り方を変え、お客さんから教えられ、時には軌道修正しながら、それでも自分が「これは良い」と思うものだけは変えずにやってきました。モチロン、運にもずいぶん助けられました。

そして今回初めて、「なぜこの店は26年も続いたんだろう?」と本気で振り返ってみて思ったんです。

商売というのは、最初から正解が見えていて、その通りに進んでいくものばかりではないのかもしれません。

好きだからやってみる。やってみたらナニかに気づく。違ったら少し直す。それを繰り返しているうちに、振り返ったとき初めて「ああ、自分はこんな道を歩いてきたのか」と解る。

オイラの26年間も、タブンそんな感じです。

だから、26年前の自分に言ってやるなら、やっぱりコレです。

「あと数年でかなりキツくなるぞ。でも、自分の行いを信じて進んでゆけ。そのまま進めば、26年後は案外悪くないぞ!」(笑)


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「DJをやってみたい」と話していた若いお客さん

先日、お店で若いお客さんとハナシをしていたときのコトです。

その彼は、いわゆる「レコード世代」ではありません。

それでも何かのキッカケでレコードに興味を持つようになり、少しずつ買って聴くようになったそうです。

オイラは渋谷で中古レコード店をやっているので、こういう若い人がお店に来てレコードを見てくれるのは、やっぱり嬉しいものがあります。

別に「若者にもアナログの良さを分かってもらわなければっ!」ナンて大げさなコトを考えているワケではありません。

単純に、自分たちとは違う時代に音楽を聴いて育った人が、今になってレコードという古いメディアを面白がっている…それだけでも興味深いんですよね。

その彼の場合、レコードを聴き始めたコトがキッカケになって、学生時代の友人とまた交流するようになったそうです。

その友人もレコードが好きで、自宅でDJを楽しんでいたとのコト。

彼は友人のDJを聴くうちに、

「自分でもDJをやってみたい」と思うようになったそうです。

それまでレコードは、1枚ずつ取り出して盤面に針を落として「聴くもの」だった。

トコロがDJなら、ある曲から別の曲へつなぐコトができる。

2つのターンテーブルを使って曲と曲をミックスすれば、単体で聴いていた時とは違う流れやグルーヴが生まれる。

「レコードって、こういう楽しみ方もできるんだ」っていうコトを知ったワケです。

トコロが、そんな彼がある日、お店でこんなコトを言いました。

「DJをやってみたいと思ってたんですけど、ちょっと怖くなっちゃって…」

何があったのか事情を訊いてみると、その友人が実際に人前でDJをする機会があったそうです。

ミックスは上手い。

レコードもたくさん持っている。

90年代のアンダーグラウンドHipHopが好きで、自分なりの音楽の好みもシッカリ持っている。

トコロが、その友人がDJを始めると、それまで50人くらいいたフロアから、だんだん人がいなくなってしまったというんです。

彼はそれを見ながら、

「自分がDJをやって、あんな風になったらどうしよう…」

と思ったらしい。

あぁ、それは怖いよなぁ…ってそう思いました。

ナゼならオイラにも、似たような経験があるからです。

しかも客として見ていた側ではありません。

誰もいなくなったフロアを、DJブースの中から見ていた側です。

もう30年以上前のハナシです。

30年以上前、オイラも人前でDJを始めた

20代の頃、オイラがよく飲みに行っていたバーがありました。

とてもカジュアルなお店で、キャッシュオンデリバリーのラフなスタイルのバーです。

日本人のお客さんもいれば、日本で働いている外国人のお客さんもいて、いろいろな人が自然に混ざってお酒を飲んでいる。

オイラはその雰囲気が好きで、友人とよく遊びに行っていました。

そのバーにはターンテーブルが2台置いてありました。

当時のオイラはすでにかなりの枚数のレコードを持っていて、家では2台のターンテーブルを使ってDJの真似事をしていました。

そこであるとき、バーのマスターにお願いして、お店でもレコードをかけさせてもらうことになったんです。

とはいえ、そこはクラブではなく、あくまでバーです。

ダンスフロアがあるワケではありません。

お客さんがお酒を飲みながら会話を楽しむ、その空間のBGMとしてレコードを選ぶ。

少しノリのいい曲をかけると、お客さんがグラスを片手に身体を揺らしていたりする。そんなDJでした。

ありがたいことにマスターにもそれなりに評価してもらえたようで、そのうちお客さんが増える週末に毎回プレイを頼まれるようになりました。

それを半年くらい続けた頃でしょうか。

マスターから、

「今度、お店でダンスパーティをやるんだけど、DJやってみない?」と声をかけられました。

当日はプロのDJも入るので、オイラはいわば前座というかサポート役です。

でもオイラにとっては、初めて「人を踊らせるためのDJ」をする機会でした。

これは嬉しかった。

そして、たぶん相当舞い上がっていたんでしょうね。

初めてのダンスパーティだから、かなり準備した

当日まで、いろいろ考えました。

どんなレコードを持っていこう。

最初はこの辺から入って、途中でこういう曲をかけて、このあたりでテンションを上げよう。

この曲からこの曲へつないだらカッコいいんじゃないか。

そんなコトを考えながら、自分なりにかなり綿密に準備しました。

今考えれば、それまで半年ほど人前でDJをしてきたという自負も、少しあったのだと思います。

もちろんクラブDJの経験はありません。

でも毎週のようにバーでレコードをかけ、お客さんも楽しそうにしてくれている。

「まぁ、オイラもそれなりにできるだろう」ってどこかでそんなふうに思っていたのでしょうね。

そして当日。

オイラがトップバッターとしてDJブースに入りました。

お店にはすでに30〜40人くらいのお客さんが入っていました。

最初はまだパーティが始まったばかりですから、フロアが硬い。

まあ、そのうち誰か出てくるだろう。

そう思ってレコードをかけ続けました。

ところが、なかなか誰も踊らない。

10分。

20分。

30分。

相変わらず誰も出てこない。

お客さん自体はいるんです。

みんな飲んだり話したりしている。

でも、フロアだけが見事に空いている。

眩しいライトが誰もいないフロアを照らしていて、そこにオイラの選んだテンポの速い、ノリのいい曲だけがガンガン鳴っている。

「ヤバい……」

だんだん冷や汗が出てきました。

誰も踊っていない。もう逃げ出したかった

人間、焦るとダメですね。

「次こそは」

と思って別のレコードをかける。

でも誰も出てこない。

「じゃあ、これはどうだ」

やっぱりダメ。

そうすると今度は、選曲だけではなくミックスまで失敗し始めます。

頭の中がだんだん真っ白になってくる。

家で練習していた時には普通にできていたコトまで、全然できなくなる。

そして心の中に浮かんできたのは、

「もう逃げ出したい…」

という気持ちでした。

今となっては笑い話ですが、その時は全然笑えるような状態じゃありません。

自分が「いい」と思って選んできたレコードをかけているのに、誰も反応してもらえない。

しかも、目の前にその結果がずっと見えている。

DJというのは、なかなか残酷です。

レコードをかけた結果が、人のカラダの動きとしてダイレクトに返ってくるコトがあります。

もちろん、人が踊らない理由なんていくらでもあります。

時間帯もあるし、お酒を飲みたい人もいる。友達との会話が盛り上がっているのかもしれない。

だから「誰も踊らない=全部DJが悪い」と単純に言うコトはできないと思います。

それでも、あのときのオイラにはそんな冷静な分析をする余裕なんてありませんでした。

ただ、

「ダメだ…」

と思っていました。まぁ〜DJしているそんな焦っている様子がお客さんにも伝わっていたのかもしれませんね。

そんなオイラの様子を見ていたプロのDJが、

「変わろうか?」

と声をかけてくれました。

本来の持ち時間は1時間でしたが、オイラはそこで早々に交代しました。

たった3曲くらいで、景色が変わった

ココからが、さらにキツかった(笑)

交代したプロのDJは、まずマイクを持ちました。

軽口を叩きながらお客さんに挨拶をして、それからオイラとはまったく違うタイプの曲をかけ始めた。

すると3曲目くらいだったと思います。

お客さんが少しずつフロアへ出てきたんです。

身体を揺らし始める人がいる。

また1人出てくる。

そして30分くらい経った頃には、さっきまでの光景が嘘みたいにフロアが盛り上がっていました。

オイラはそれを横から見ていました。

さっきまで自分が何をやっても動かなかった人たちが踊っている。

コレは効きましたねぇ(笑)

でも、その光景を見て分かったコトもありました。

それまでオイラは、バーのBGMとしてのDJを半年ほど経験していました。

その時は、それなりにお客さんも楽しんでくれていた。

だから「DJができる」と思っていた。

でも、バーの空気を音楽で作るコトと、ダンスパーティで人をフロアへ誘うコトは同じではなかった。

当時のオイラは、その違いすらよく分かっていなかったんです。

今のオイラなら「もっとお客さんを見ろ」と言う

あれから30年以上経ちました。

オイラはプロのDJになったワケではありません。

今でも「DJとはこうあるべきだ」なんて偉そうに語れる立場だとは思っていません。

あくまでレコードが好きで、趣味としてDJを経験してきたレコード屋のオヤジです。

ただ、もしタイムマシンがあって、あの日DJブースで冷や汗をかいている20代の自分に一言だけ声をかけられるとしたら、こう言うと思います。

「もっとその場のフロアやお客さんをよく見ろよ」って。

あの日のオイラは、準備をしていなかったワケではありません。

むしろ、かなり準備していました。

問題は、その準備のほとんどが「自分が何をするか」だったコトです。

この曲をかけよう。

こういう流れにしよう。

ココでこんなミックスをしよう。

頭の中には自分の計画がいっぱい入っている。

でも、

「今日ここに来ている人たちは、どんな感じなんだろう?」

という視点が完全に抜け落ちていた。

初めてのダンスパーティで、自分にとってはちょっとした晴れ舞台だったから、舞い上がっていたのでしょう。

これはあくまでオイラ自身の失敗からカンジたことですが、自宅でレコードをつないで楽しむコトと、人がいる場所でDJをするコトには、ひとつ大きな違いがあります。

目の前に、自分以外の人がいるコトです。

当たり前なんですけどね(笑)

でも20代のオイラには、その当たり前が見えていなかったんだと思います。

それでも続けていたら「通じた!」夜もあった

そんな苦い経験がありながらも、オイラはレコードを聴くコトも、人前でかけるコトもやめませんでした。

すると当然、逆の経験もするようになります。

自分ではすごくイイと思っているケド、それホド知名度のある曲ではない。

そんなレコードをかけた時に、知らないお客さんから、

「この曲、カッコいいね!」

と言われたコトがあります。

また別のときには、

「キミ、めちゃ良い曲かけるね!」

と声をかけてくれたお客さんが、ビールをご馳走してくれたコトもありました。

その時は、自分でも納得できるプレイができていました。

だから嬉しかった。

でも今振り返ると、単に「DJを褒められたから嬉しかった」というだけではなかった気がします。

感覚として一番近いのは、

「通じた!」

っていう感覚なんですよね。

オイラがレコード屋でレコードを掘って、家で何度も聴いて、

「この曲、カッコいいなぁ」

と思ったものがある。

それを知らない誰かに聴かせてみる。

すると、その人も、

「これ、カッコいいね」

と言ってくれた。

自分の中だけにあった「この曲が好き」が、レコードを介して知らない誰かへ届いた。

これは1人でレコードを聴いているだけでは、なかなか経験できない喜びです。

もちろん「通じた!」があるなら「全然通じない…」もあります。

30年以上前のオイラが経験したのは、まさにソチラでした。

人前で音楽をかける以上、その両方があるのでしょう。

12インチシングルを「プレイする」という面白さ

これはレコード、特にDJカルチャーと深く結びついてきた12インチシングルの面白さにもつながります。

12インチシングルには、アルバムとはまた違う楽しさがあります。

同じ曲でもExtended Mix、Dub、Instrumental、Acapellaなどが収録されていたりする。

イントロやブレイクが長く作られていて、DJが次の曲へミックスしやすいバージョンもあります。

レコードを普通に1曲ずつ聴いているだけなら、

「こっちのバージョンはイントロが長いな…」くらいに思っていたモノが、DJをやってみると意味が変わって見えてくるコトがあります。

「ナルホド、ここ部分を上手く使って次の曲へミックス出来るのか」とか、

「このDubから別の曲につないだら面白そうだな」とか。

レコードに刻まれている音は同じなのに、聴き方が変わる。

これはメチャ面白いんですよね。

今はスマホ1台あれば、好きな曲を次々と再生できます。

それは便利だし、オイラだってデジタルで音楽を聴きます。

でもレコードの場合、1枚を棚から抜いて、ジャケットから取り出し、ターンテーブルへ載せ、針を落とす。

DJなら、その間に次のレコードを探す。

ジャケットを見ながら、「次、ナニをかけようかな〜」って考える。

そして2枚のレコードの間に、自分なりの関係を作ってみる。

1曲ずつなら何度も聴いたレコードなのに、前後の曲が変わるだけで妙に新鮮に聴こえるコトがあります。

オイラにとって、これもアナログレコードでDJをする面白さのひとつであると思います。

DJって、別にクラブだけでやるものじゃない

だから今回のお客さんのハナシを聞いていて、少しもったいないなと思ったんです。

彼がDJに興味を持った最初のキッカケはナンだったのか。

大きなクラブでDJが何百人もの人を踊らせている姿を見て、

「オレもあそこに立ちたい!」

と思ったワケではありません。

友人の家でDJを聴いたコトなんです。

だったら、まずはそこからでいいんじゃないでしょうか。

家でやればいい。

自分の好きなレコードを2枚並べて、

「コレとコレ、上手くつながるかな?」

と試してみる。

うまくいかなかったら、もう1回やる。

誰も見ていないんだから、いくら失敗したって構いません。

「この2曲、意外と合うな」

ナンて組み合わせを見つけるだけでも面白いと思うんですよ。

好きな曲を何曲かミックスして録音し、スマホに入れて自分で聴いてみるのもイイ。

通勤や散歩の時、自分で作ったミックスを聴いてみると、普通のプレイリストとはまた違った楽しみがあります。

DJというコトバを聞くと、どうしても「クラブ」「大勢のお客さん」「フロアを盛り上げる」といったイメージが先に来るかもしれません。

でも、それだけがレコードをプレイする楽しみではないと思うんです。

「聴く」から「プレイする」へ

レコード屋をやっていると、当然ですが「レコードを聴く」というハナシをするコトが多くなります。

この盤は音がイイ。

このプレスは珍しい。

この12インチには、この盤にしか入っていないミックス収録されている。

このベースラインがカッコいい。

そんなハナシをお客さんとするのは楽しいものです。

でもDJを少しやってみると、それまでとは別の耳でレコードを聴くようになるコトがあります。

「イイ曲だな」

だけではなく、

「この曲の前にはナニをかけたら気持ちイイだろう?」

「このイントロを使ったらどうなるだろう?」

「このブレイクから、あのレコードへ行けないかな?」

そんなコトを考えるようになる。

すると、それまで棚で眠っていたレコードが急に面白くなるコトもあります。

今までまったく聴かなかったバージョンが突然、カッコよく聴こえたり「こんな使い方があったのか」って気づくコトもあったりと。

これは、レコードの価値を値段や希少性とはまったく別の方向から発見するコトでもあります。

高価なレア盤じゃなくてもイイんです。

渋谷のオイラの店で何百円、何千円で見つけた1枚が、自分のDJの流れの中ではものすごく重要な1枚になるかもしれない。

ダレも知らないような12インチが、前後のレコードとの組み合わせによって突然輝くコトだってある。

そういう経験をすると、レコード屋の棚を見る目まで少し変わってきます。

「有名な曲を探す」だけではなく、

「コレ、どうやって使ったら面白いかな?」

っていう視点が加わるからです。

そうなるとレコード探しは、さらに沼です(笑)

レコード屋としては困ったコトに…イヤ、ありがたいコトに、でしょうか。

BEE GEES / YOU SHOULD BE DANCING
BEE GEES / YOU SHOULD BE DANCING の試聴
next recordsのサイトでBEE GEESのレコードを探してみる

怖さだけで、その扉を閉じなくてもいいんじゃないかな

今回のお客さんが見た光景は、確かに怖かったと思います。

自分が「DJをやってみたい」と思い始めたタイミングで、友人がレコードをかけたらフロアから人がいなくなってしまった。

「自分もあそこに立ったら同じコトになるんじゃないか」

そう思うのは自然です。

オイラなんて実際にそれをやりましたからね(笑)

ダレも踊らないフロアを前に冷や汗をかいて、「もう逃げたい」と思って、最後にはプロのDJに助けてもらった。

だから、「そんなの気にしなくていいよ」とは言えません。

気になります。

それにタブン、かなり凹みます。

でも、30年以上経った今だから思うコトもあります。

あの夜だけを経験してDJをやめていたら、オイラはその後の「通じた!」という瞬間も経験しなかったでしょうね。

自分がイイと思って選んだレコードを知らないダレかも「イイ」と思ってくれる。

あの喜びは、人前でレコードをかけたからこそ知るコトができましたしね。

とはいえ、今回のお客さんに、

「だから勇気を出してクラブでDJしなよ!」

と言いたいワケではありません。

DJとはこうするべきだ、なんてハナシでもありません。

オイラ自身、プロのDJではなく、ちょっとDJを経験してきたレコード屋の店主にすぎません。

ただ、レコードには「聴く」以外にも、まだイロイロな楽しみ方があります。

2枚のレコードをつないでみる。

順番を変えてみる。

ミックスして録音してみる。

友人に聴かせてみる。

そして、いつか人前でやってみたくなったら、その時に挑戦してみればいいと思うんですよ。

もしかしたらダレも反応してくれないかもしれない。

でも、もしかしたら自分が大好きなレコードに針を落としたとき、知らないダレかがカラダを揺らし始めるかもしれない。

そして、

「今の曲、ナンですか?」

って訊いてくれるかもしれません。

その時に初めて解るレコードの面白さもあります。

せっかく「レコードをプレイしてみたい」と思ったのなら、怖い光景を一度見ただけで、その扉まで閉じてしまわなくてもいいんじゃないかなぁって思うんですよね。

まずは家で好きなレコードを2枚、ターンテーブルにノセてみる。

そこからで十分ですだと思います。

「聴く」だけだったレコードを、自分で選んで「プレイする」。

その瞬間から、今まで何度も聴いてきた1枚が、ちょっと違った顔を見せてくれるかもしれません。

一度くらい、ターンテーブルの向こう側から音楽を楽しんでみるのも、なかなか面白いものですよ。


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午前0時、なぜオイラにこんなリールを薦めてくるんだ?

オイラは毎日、店頭で販売しているレコードの中から1枚を選んでInstagramで紹介しています。

アーティストと曲名を書いて「本日のオススメ!」で終わりではなく、その曲が生まれた背景だったり、歌詞の意味だったり、当時どんな音楽が流行していたのかだったり、ときにはB面に収録された別バージョンの面白さだったり、そんなことをアレコレ調べながら、結構長ったらしい文章を書いています(笑)。

原稿そのものはだいたい午前中に書き終えるのですが、投稿するのは日付が変わる午前0時頃。

毎晩スマホのアラームを0時にセットしてあって、それが鳴ると、

「そろそろ投稿するか…」とスマホを開くのが日課になっています。

ある晩も、いつものようにInstagramを開いて、フォローしている人の投稿なんかをチラチラ眺めていました。

すると、オススメに1本のリール動画が出てきました。

AIで生成したような、それっぽい動画やイラストを使って、玩具メーカー タカラトミーの「トミカ」の販売戦略について解説している動画でした。

レコードとミニカー。

まあ、関係ナイですよね(笑)

トコロが、なぜか見てしまった。

その動画では、比較的安価なミニカーを入口にして子供に興味を持ってもらい、そこからミニカーを飾ったり収納したりして遊ぶ大型のパーキング玩具などへ購入をつなげていく、というようなビジネスの仕組みが解説されていました。

それが実際にメーカー側の意図した販売戦略なのかはオイラには分かりません。あくまで、そのリールではそう解説されていたというハナシです。

でも、「ナルホドね〜」と思った。

しかも、ちょっと不思議な偶然がありました。

というのもその数日前、店のスタッフが東京駅の八重洲にあるトミカのオフィシャルショップの前を通ったらしく、「ものスゴいお客さんでメチャ賑わっていたよ!」ナンてハナシをしていたんです。

モチロン、まさかスマホがオイラたちの会話を盗み聞きしてInstagramに送信した…ナンてことを言うつもりはありません(笑)

でも、そんな話をした直後にトミカのビジネス動画が出てきたものだから、

「ナンで、オイラにこれが出てくるんだ?」ってちょっと面白くなってしまったんですよね。

それからというもの、企業の成長の裏側とか、商品が売れる仕組みとか、いろいろな会社のビジネスモデルを紹介するリールが、ときどき表示されるようになりました。

考えてみれば、オイラ自身そういうビジネス書をたまに読むので、興味がアルかナイかと言われれば、アル。

だから、「よく出来てるなぁ、このアルゴリズム」と感心しました。

そして、もうひとつ感心したのが、出てくる頻度なんです。

ビジネス動画ばっかり20本も30本も連続して出てくるワケじゃない。

普通にInstagramを見ていると、ときどき、

「こんなのもどうです?」

というカンジで出てくる。

この「しつこくない感じ」が、なんともイイ塩梅なんですよ。

あれ? これってオイラが店でやっているコトと同じじゃない?

そこで、ふと思ったんですよ。

コレって、オイラが毎日Instagramでレコードを紹介しているのと、ちょっと似てるんじゃないか?って。

当店は、渋谷でオリジナル盤の12インチシングルだけを扱っている中古レコード店です。

現在、店頭には6000枚を超えるレコードがあります。

6000枚のレコードがあるんだから、あとは自由に掘ってください。

それでもイイんです。

実際、当店ではお客さん自身のスマホからQRコードを読み込んで試聴できるようにしているので、店員にいちいち「これ聴かせてください」と言わなくても、黙々と自分のペースでレコードを探せます。

そういう掘り方が好きな人も多いですしね。

でも、長年レコード店をやっていて感じるコトがあります。

音楽が好きな人ほど、自分の「好みのライン」を持っているんです。

好きなジャンル、好きな年代、好きなレーベル、好きなプロデューサー、好きなDJみたなカンジですね、モチロン、それは悪いことじゃない、むしろ自分の好みが分かっているからこそ、深く掘っていけますよね。

だけど数千枚のレコードを目の前にして自由に選んでもらうと、どうしても自分の知っているラインを中心に探すコトになります。

そのラインのほんの少し外側に、

「実はこの人、これも好きなんじゃないかな?」

という曲があったとしても、存在を知らなければ手に取ることすらない。

ネットがこれだけ発達した現在でも、これは同じです。

アーティスト名と曲名が分かれば、検索してYouTubeなんかですぐに聴けます。

でも、そもそも存在を知らない曲は検索できないんですよね。

だったら、店側から1日1枚くらい、

「こんなのもありますよ」

と差し出してみる。

毎日Instagramを見てくれている人が、

「どれどれ、今日はレコード屋のオヤジがナニを薦めてるんだ?」

くらいの気持ちで試聴動画を見てくれればイイ。

そして、たまたま、

「あ、コレ好きかも…」

となれば嬉しい。

考えてみれば、Instagramがオイラにビジネス系のリールを差し出してきたのと似ています。

オイラはビジネス動画を検索していなかった→でも差し出されたから見た→見たら面白かった。

自分から探していなかったものとの出会いって、こういうトコロから始まるんですよね。

売りたい。でも、押し売りはしたくない

とはいえ、オイラはレコード店の経営者です。

「音楽との素敵な出会いを提供したいんですっ!」なんてキレイ事ばっかり言っているワケにもいきません。

レコードは売れてほしい(笑)

Instagramで一生懸命紹介したレコードが売れれば、そりゃメチャ嬉しいです。

逆に、結構調べて長い文章を書いて、試聴動画まで用意してまったくナンの反応もなく売れなかったら、「ダメかぁ〜」って思います(笑)

画像やショート動画が中心のInstagramで、こんな長ったらしいレコード解説を書いている時点で、伝わりにくいコトは百も承知なんですケドね。

だから「買ってもらえたらラッキー」くらいの気持ちでもあります。

ただ、何カ月も店頭にあったレコードをInstagramで紹介した途端、速攻でお客さんに買ってもらえるコトがあります。

これは嬉しいっ!

単に、

「よし、在庫が1枚減った!」

というだけではなく、

「この曲の良さが伝わった!」

という嬉しさがあります。

実際、先日ご来店いただいたお客さんがスマホを見せながら、

「このレコードありますか?」と訊いてきました。

画面を見ると、オイラがInstagramで紹介したレコードです。

しかも1枚だけじゃなく、紹介したレコードを複数枚買っていただきました。

もしInstagramで紹介していなかったら、そのお客さんはソレ等のレコードの存在を知らず、購入するコトもなかったかもしれない。

これは商売としても嬉しいし、レコード好きとしても嬉しい。

じゃあ、もっとガンガン薦めればイイじゃないか。

「コレ、絶対買ったほうがイイですよ!」

「これは持っておくベキです!」

「今買わないとなくなりますよ!」

そうやって積極的に売り込んだほうが、セールス的には良いのかもしれません。

でも、オイラはどうしても、それをやりたくないんです。

「コレ、イイよ、聴いてみな!」が面倒くさかった

なぜオイラがオススメの距離感を気にするのかというと、自分自身が「オススメされる側」で面倒くさい思いをしたコトがあるからです。

昔、音楽に詳しい先輩なんかと一緒にレコード店へ行くと、

「コレ、良いよ。聴いてみな!」なんて薦められるコトがよくありました。

で、聴いてみる。

「ん〜、ナンかちょっと違う…」

これ、困るんですよ(笑)

相手は自分より音楽に詳しい…しかも親切で薦めてくれている。

だから、

「いや、自分はあんまり好きじゃナイですね〜」

で終わればいいのに、ナンとなく断る理由まで説明しなきゃいけないような気分になる。

超めんどくさい(笑)

これは店頭でも同じです。

お客さんから、

「こんな感じの曲でオススメないですか?」って訊かれるコトがあります。

コチラも嬉しくなって、

「じゃあ、コレは? これもイイ曲ですよ。あ、コレも聴いてみます?」なんて10枚、20枚と次々に聴かせてしまう。

でも、これは逆効果になるコトがあります。

短時間で、

良い曲か?

そうでもないか?

買うか?

買わないか?

という決断を次々に迫るコトになる。

聴く→判断する→断る。

聴く→判断する→断る。

これが続けば、お客さんだって疲れます。

そのうち、「こんなに聴かせてもらったんだから、何か買わないと悪いかな…」という気持ちまで生まれてしまう。

それはオイラの本意ではありません。

オススメって、多ければ多いホド親切というワケではないんですよね。

Instagramがオイラにビジネス系リールを延々と見せ続けなかったように、「ちょっと興味ある?」くらいで置いておく。

その距離が大切なんじゃないかと思っています。

レコード屋には、人力アルゴリズムがある

実店舗では、オイラたちは昔から「かけ売り」ということをやっています。
「レコード店のかけ売りとは?店内BGMでレコードが売れてしまうハナシ」

店内でお客さんがレコードを掘っている。

その様子をそれとなく見ます。

どんなアーティストを見ているのか。

どの年代なのか。

どんなジャンルなのか。

そこで、「この辺りが好きなのかな?」と考えて、店頭で販売しているレコードを何食わぬ顔でBGMとしてシレ〜っとかけるんです。

まずはド直球から。

反応が良さそうだったら、そこから横のジャンルへ広げてみたり、逆に同じ方向へもっと深く潜ってみたりする。

当てにいく1枚と、ちょっと冒険した1枚を、お客さんの様子を見ながら探り探りかけていく。

コレが結構面白いんですよ。

HipHopのレコードを掘っていたお客さんが、最終的にはオイラがかけたSoulやDiscoの12インチを買って帰るコトだってあります。

好きなHipHopで使われていたサンプリングネタをかけたら、

「あ、これって!」

となることもある。

あるいは、

「アレ? この曲知ってる…なんだっけ?」

と、忘れていた記憶が突然戻ってくるコトもある。

新しい音楽との「出会い」だけじゃなくって音楽との「再会」もあるんです。

そして面白いコトに、Aさんに向けてかけたつもりのレコードを、全然別のBさんが聴いていて、

「コレ、買いたいんですけどイイですか?」

なんてこともあります。

オススメの誤爆です(笑)

Instagramのアルゴリズムが利用者の興味を推測してコンテンツを薦めるのだとすれば、レコード店ではオヤジが店内を見ながら人力で似たようなコトをやっている。

ただし、人間だからハズすこともある。

むしろ、あえてちょっとハズすこともある。

「この人ならタブン、この曲、気にいるかも」だけではなく、

「普段こういうの聴かないかもしれないけど、まあ1回聴いてみてよ」という1枚をかけられる。

そして、その予想外の1枚が刺さったときが面白いんですよね。

12インチシングルは、ちょっと解りにくい

そもそも当店が扱っている12インチシングルというレコードは、一般的には少々マニアックな存在です。

LPなら知っている。いわゆるドーナツ盤の7インチシングルも知っている。

でも、「12インチシングルってナニ?」という人は意外と多いんですよ。

当店が12インチシングル専門店だと知らずに来店する人も少なくありません。

しかも当店は再発盤やブート盤ではなく、オリジナル原盤の12インチシングルだけを扱っています。

初めて来た人からすれば、

「なんだ、このヘンなレコード屋は?」というカンジかもしれません(笑)

でも12インチシングルには、12インチシングルならではの面白さがあります。

クラブミュージックの歴史と密接に結びついたフォーマットであり、LPとは違った長尺のExtended Versionや、DJプレイを意識したイントロ/アウトロ、Dub、Instrumentalなどが収録されているコトも多い。

同じ曲でもLPバージョンとはまったく違った表情を見せるコトがあります。

大きな盤面を贅沢に使ってカッティングされた盤には、音質面で魅力を感じるものもあります。

そして何より、12インチというフォーマット自体に、掘れば掘るほど面白くなるコレクション性がある。

でも、こういうことは「12インチシングル専門店です」と看板に書くだけでは、なかなか伝わらないんですよね。

1枚買って、家で聴いて、

「12インチって面白いな」って思ってもらう。

そこから、

「ほかにはどんな12インチがあるんだろう?」

となる。

トミカのリールを見ながら、オイラが「ナルホドね」と思ったのもココでした。

ミニカーとレコードはまったく違うけれど、「まず1つ所有してみるコトで、その世界の面白さが解ってくる」というトコロには、ちょっと共通点があるのかもしれません。

ただし、だからといって入り口として100円の激安レコードを店頭に大量に並べて集客しよう、とはオイラは思いません。

安さだけを入口にしたくないからです。

お店側が価値がないと判断したレコードを段ボール箱へ無造作に放り込み、「100円!」で売る、そういう販売方法があってもイイと思います。

でも、オイラがやりたいのはそれではないんですよ。

できることなら1枚1枚、

「このレコードの面白いところは、ココですよ」

と伝えて、それを欲しいと思ってくれる人へ丁寧に渡したい。

100円のレコードにそこまで手間をかけられない、という商売上の現実もあります。

だからオイラが作りたい入口は、

「安いから、とりあえず買ってみる」

ではなく、

「知らなかったケド、聴いてみたら良かったから買ってみる」なんです。

文字でしか知らなかった音楽に、想いを馳せた時代

オイラがこうやって文章でレコードを紹介しているコトには、たぶん自分自身の昔の体験が影響しています。

オイラが学生だった頃には、当然いまのようなネット環境はありませんでした。

アーティスト名と曲名を検索して、数秒後にはYouTubeで聴ける…そんなコトはできません。

レコードを買うときに参考にしたのは、音楽雑誌に載っているレコメンド記事だったり、レコード店のスタッフが手書きしたPOPだったりしました。

そこには文字しかない。

音楽なのに、音がない。

でも、その文字に大いに刺激されたんですよね。

丁寧に曲のことが書いてあると、

「どんな音なんだろう?」って想像する。

そして、

「聴いてみたい!」

「このレコードを手に入れたい!」

と、まだ聴いたこともない曲に想いを馳せる。

今考えると、不便です。でも、あの時間は超楽しかった。

現在は気になる曲をすぐ聴ける。それはものスゴく便利です。

だけど、聴いて「良い曲だな」と思ったあと、その曲が作られた背景やリリックの意味、当時の音楽シーン、参加ミュージシャン、プロデューサー、別バージョンの存在なんかを知ると、

「ああ、そういう曲だったのか」

と、それまで以上にその曲が好きになるコトがあります。

だからオイラは、Instagramでも長ったらしい文章を書いてしまうんでしょうね(笑)

個人的に大好きだから紹介する曲もある。

誰でも知っている有名曲だけれど、オイラ自身が背景をよく知らないから、調べるために選ぶこともある。

数千枚の中に完全に埋没している1枚を、

「これ、良い曲なんだけどなぁ」と引っ張り出すこともある。

A面ではなくB面に入っている知られざる曲を紹介したり、メインのヴォーカルではなく秀逸なDub Versionにスポットを当てたりすることもあります。

「今日はこれを売るぞ!」という理由で選ぶことは、実はホトンドありません。

どちらかというと、

「これ、1回聴いてみてよ」なんです。

レコード屋が売っているのは、レコードだけなんだろうか?

オイラはブログも20年以上続けています。

何度も、

「もう書かなくてもいいんじゃないか?」と思いました。

文章を書くコトが特別得意なワケでもありません。

それでも、なぜかやめられなかった。

その理由を考えると、

「店主がちゃんと説明しなければ、この店のコトを誰も解ってくれない」と思ったコトが始まりだったように思います。

オリジナル原盤の12インチシングルだけを扱う中古レコード店…世界的に見ても、かなり珍しい形態のレコード店だと思います。

でも、珍しいというコトは、裏を返せば「解りにくい」というコトでもある。

だから、

「当店はこういう店です」

「12インチシングルには、こういう面白さがあります」

と伝え続ける必要があると思ったんですよ。

ある意味、

「オイラがオリジナル盤12インチシングルの良さを伝えなかったら、誰が伝えてくれるんだ?」という使命感なのかもしれません。

…なんて書くと、ちょっと大げさですケドね(笑)

でも、20年以上ブログを続けてきて、

「いつもブログ読んでます!」と言って来店してくれる人がいる。

Instagramで紹介したレコードの画面を見せて、

「コレって、ありますか?」と言ってくれる人がいる。

初めて12インチシングルを買った人が、しばらくしてまた店に来てくれる。

そんなときオイラが最初に思うのは、

「よし、リピーターが1人増えた!」ではなくって

「12インチシングルの良さを分かってもらえた!」なんですよね。

モチロン、お客さんであるコトには変わりありません。

でも12インチシングルを好きになってくれた人は、同じ趣向や好みを共有できる仲間のようにも感じる部分も結構大きいんですよね。

世の中にはLPの魅力を伝えてくれるレコード店がたくさんあります。

だったらオイラくらい、12インチシングルの面白さをしつこ…いや、しつこくならない程度に(笑)、伝え続けてもイイんじゃないでしょうか。

そう考えると、レコード屋が売っているモノって、本当にレコードだけなんでしょうか。

欲しい盤を探して、見つけて、買う。

モチロン、それはレコード屋の大きな楽しみです。

でも、自分なら絶対見なかった棚から流れてきた曲に耳が止まる。

「今かかっているのナニですか?」と訊いてみる。

知らない曲だったけど、ナンとなく試聴してみたら良かった。

Instagramでたまたま紹介されていた1枚を聴いたら、自分の好みだった。

そうやって、自分1人で音楽を探していたら一生出会わなかったかもしれない1枚と出会う。

レコード屋の役割のひとつは、そんな「音楽と人が出会う入口」を作るコトなのかもしれません。

Instagramのアルゴリズムにトミカのリールを薦められて、そんなコトを改めて考えました。


LAURA BRANIGAN / SELF CONTROL
LAURA BRANIGAN / SELF CONTROL の試聴
next recordsのサイトでLAURA BRANIGANのレコードを探してみる


オススメは、なければ出会えない。

でも、多すぎれば鬱陶しい。

だから、ちょうどイイ距離がある。

オイラも店頭やInstagramで、

「これを買って!」ではなく、

「こんなのありますよ。よかったら1回聴いてみてください」くらいの距離から、これからもレコードをオススメしてゆきたいと思っています。

その先で、

「ナンだこれ。イイじゃんっ!」

と思ってもらえたら、それが一番嬉しい。

そして、まあ…気に入ったら買ってくれたら、そりゃもっと嬉しいんですケドね(笑)



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12インチシングルのFAQ

渋谷の12インチシングル専門の中古レコード店next. recordsでは12インチシングルのレコードを買取をやっています!
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「33回転と45回転、ドッチが音イイんですか?」

最近、渋谷の店舗にご来店いただくお客さんを見ていると、

「最近レコードを聴きはじめました」

というカンジの若いお客さんが以前より増えてきたように思います。

当店はオリジナル盤の中古レコード、それも12インチシングルを専門に扱っているので、レコード店の中でもかなりマニアックな品揃えのお店だと思います。

だから初めてご来店いただいたお客さんが店内のエサ箱をぐるっと見て、

「知っているレコードが1枚もナイ…」となってしまうコトもあります(笑)。

だけど逆に、たまたま知っている曲を見つけて12インチシングルを購入し、自宅で聴いてみたら、

「ナンだコレ!? メチャ、音イイじゃん!」

となって、それから12インチシングルに興味を持って再びご来店いただくというそんなお客さんもいらっしゃいます。

コレは12インチシングル専門店をやっているオイラとしては、ホントうれしいですね。

そんな最近レコードを聴き始めたお客さんから訊かれる質問のひとつに、

「レコードって33回転と45回転がありますよね。ドッチのほうが音がイイんですか?」

というものがあります。

コレ、かなりイイ質問なんですよ。

オイラだったら、まずこう答えます。

「レコードの物理的な特性で言えば、45回転のほうが高音質で音溝を刻むために有利な条件を持っていると言われています」

すると、

「じゃあ45回転のほうがイイんですね!」

となりそうですが…ちょっと待ってください。

オイラは続けて、

「ナンだけど、33回転と45回転だったら45回転のほうが必ず良い音なのかというと、実際はそんな単純なハナシじゃないんですよね〜」と言います。

「エッ? ナンでですか?」ってやっぱりそうなりますよね。

実はココからが、アナログレコードの面白いトコロなんです。

今回は33⅓回転と45回転という、一見すると単なるレコードの「回転速度」の違いから、12インチシングルの音質、US盤とUK盤の違い、そして最後には、「そもそも良い音ってナンなんだろう?」という部分にまでちょっと掘り下げてみたいと思います。

33⅓回転と45回転って、そもそもナンの数字?

まずはレコードに詳しくない人のために基本的なハナシから。

一般的なLP、つまりアルバムは、ほとんどが33⅓回転です。

一方、小さな7インチシングル、いわゆる「ドーナツ盤」は45回転のものが多いですよね。

ちなみに以前、若いお客さんに、「ドーナツ盤」と言ったら、「ドーナツ盤? ナンですか、ソレ?」と訊かれたことがあります。

そりゃそうですよね〜今の若い人には「7インチ」と言ったほうが通じるのかもしれません。

別にドーナツで出来たレコードじゃありませんよ(笑)。

レコード中央の穴、センターホールが大きく開いていて、見た目がドーナツみたいだから「ドーナツ盤」と呼ばれているワケです。

さて、33⅓回転、45回転という数字は、レコードが1分間に何回転するかを表しています。

33回転とよく言いますが、正確には33と1/3回転です。

LPなら33⅓rpm。

7インチなら45rpm。

そういうイメージを持っている人も多いと思います。

ところが、当店でメインに扱っている12インチシングルになると、この法則が通用しません。

同じ直径約30cmの12インチ盤なのに、33⅓回転のものもあれば45回転のものもある。

しかも同じ曲なのに、US盤は33⅓回転、UK盤は45回転なんていうことまであります。

初めて12インチシングルを買った人が、

「ナンで?」

と思うのも当然ですよね。

45回転のほうが音質面で有利になる「線速度」のハナシ

では、ナンで一般的に45回転のほうが音質面で有利と言われるのでしょう?

ここで出てくるのが、「線速度」というワードです。

いきなり理科の授業みたいになってきましたね(笑)。

でも考え方自体は、それほど難しくありません。

33⅓回転と45回転なら、45回転のほうがレコード盤は速く回転しています。

ということは、同じ1秒間でも45回転のほうが、より長い音溝がレコード針の下を通過することになります。

レコードに収録されている音楽は、この音溝に刻まれた細かな変化を針がトレースすることで再生されます。

だったら、同じ1秒分の音楽を記録するとき、使える溝の長さに余裕があるほうが有利ですよね。

45rpmは33⅓rpmより線速度が高くなるため、特に高域などを記録・再生するうえで有利な条件を持っています。

だから、「45回転は音質面で有利」と言われるワケです。

ココだけ聞くと、

「なるほど。じゃあ高音質で聴きたかったら45回転を買えばイイのね」

となりそうです。

だけどレコードは、そんなにカンタンじゃないんですよ。

だったら全部45回転にすればイイじゃん!

45回転には音質面で有利な条件があります。

だったらLPも12インチも全部45回転にしてしまえばイイじゃないかってそう思いますよね。

トコロが回転が速くなればなるほど、同じ大きさのレコード盤に収録できる時間は短くなります。

45回転では音溝をドンドン使ってしまうからですね。

逆に33⅓回転なら、同じ盤面を使ってより長い時間の音楽を収録できます。

アルバム(LP)というフォーマットにとっては、複数の曲を片面に収録できることが非常に重要です。

だから33⅓回転が適しているワケです。

12インチシングルにも同じことが言えます。

たとえば音質だけを優先して、

A面に1曲。

B面に1曲。

しかも45回転。

コレは音質を追求するうえでは、かなり贅沢な使い方です。

でも33⅓回転にすることで、

Original Version
Extended Version
Remix
Instrumental
A Cappella

なんて複数のバージョンを収録できる。

コレもまた12インチシングルの大きな魅力なんですよ。

Remix好きのオイラとしては、

「45回転片面1曲! 音質重視!」

という盤にもソソられますが、

「エッ!? このRemixも、このDubも入ってるの?」

なんていう33⅓回転盤にも猛烈にソソられます(笑)

つまり音質と収録時間は、ある意味トレードオフの関係にあります。

33⅓回転だからダメ。

45回転だから正解。

そんな単純なものではないんですね。

レコードは外側と内側でも条件が違う

さらにレコードには、もう1つ面白い物理的な制約があります。

レコードは円です。当たり前ですね(笑)

そして針は盤の外側から内側へ向かって、渦巻き状の音溝をトレースしていきます。

ココでちょっと想像してみてください。

大きな円を一周する距離と、小さな円を一周する距離。

当然、大きな円のほうが長いですよね、レコードも同じです。

同じ回転数で回っていても、盤の外側では1回転する間に針の下を通過する音溝の距離が長くなる。

ところが内側へ行けば行くほど円周が短くなるので、同じ時間でも針の下を通過する溝の長さが短くなります。

つまり盤の外周部分のほうが、内周部分より音を記録・再生するうえで有利な条件を持っているワケです。

反対に、レーベルのギリギリ近くまで音溝が刻まれている盤では、内周へ行くほど条件が厳しくなっていきます。

音溝が内側にまで来ると外側に比べて音が歪んでくるんですよね。

音楽をたくさん詰め込みたい。でも音質も維持したい。

レコードというメディアは、常にそういう物理的な制約とのせめぎ合いなんですよね。

レコード屋は盤面を見て「コレ、音良さそうだな」と思う

オイラは仕事柄、毎日のように大量の12インチシングルを見ています。

そうすると盤面を見ただけで、

「おっ、コレ音良さそうだな〜」

と期待してしまうことがあります。

たとえば片面1曲の収録で盤の端から中程くらいまでに音溝が刻まれていて、溝と溝の間隔が目で見てもハッキリ分かるくらい余裕がある。

こういう盤を見ると、

「コレ、イイ音で鳴るんじゃないの?」

って思っちゃうんですよ。

逆に曲自体は大好きなのに、片面に4バージョンくらいギッシリ収録されていて、レーベルの近くまで細かな音溝が続いている。

そうすると、

「イイ曲なんだけど、音質的にはちょっと厳しそうだな…」

と思うこともあります。

レコードを買うときにジャケット、レーベル、盤のコンディションを見るっていうのは普通ですよね。

でも12インチシングルにハマってくると、

「音溝を見る」

という楽しみまで出てきます。

溝の刻まれ方を見て、

「コレは45回転で片面1曲か……期待できるな」

なんて考える。

こうなると相当マニアックですケドね(笑)

でもコレがまた面白いんです。

ところが、実際に針を落とすと、

「アレ…?」となるコトもある。

反対に、スペック的にはそれほど期待していなかった盤から、「ナンだコレ!?」という音が飛び出してくるコトもある。

ココから先は、物理の教科書だけでは説明できない世界です。

レコードの音は回転数だけでは決まらない

45回転のほうが物理的に有利、音溝にも余裕がある、外周をメインに使っている…そういう条件が揃えば、高音質なレコードを作るためには有利でしょう。

だけど、それだけで最終的な音が決まるワケではありません。

そもそも、その曲をアーティストやプロデューサーがどういう音で鳴らしたかったのか。

レコーディングエンジニアがどういう音を作ったのか。

そして、その音源をレコード盤へ落とし込むときに、どんな判断が行われたのか。

カッティングの技術もあります。

使用された音源の違いもあります。

収録時間もあります。

カッティングレベルもあります。

いろいろな要素が重なって、最終的に1枚のレコードになる。

だからレーベルに、「45 RPM」と書いてあるからといって、

「ハイ、こっちの勝ち!」とはならないんです。

「ホントに45回転のほうが音イイの?」と思って聴き比べてみた

オイラ自身、物理的な理屈として45回転が有利なのは理解できます。だけど長年レコードを聴いていると、

「ホントに45回転のほうが音イイのかな?」と思うコトがありました。

だったら聴き比べてみればイイ、レコード屋ですから、幸いそういう機会には恵まれています。

同じ曲で同じバージョン。でもUS盤とUK盤で回転数が違う。

そんな12インチを、お店の同じオーディオシステムで聴き比べてみる。

ちなみに当店のオーディオは、かなりドンシャリ気味のセッティングです。

そんな環境でイロイロ聴いていると、特にUSプレスの33⅓回転盤で、低域の重量感や押し出しが、

「コレ、スゴいな…」と感じる盤が出てきます。

そこで気付くワケです。

理屈は理屈なんだなぁって。実際にスピーカーから出てくる音は、そんなに単純じゃないぞ、と。

Rufus & Chaka、針を落とした瞬間「ぐわっ!!」

その代表的な1枚が、

Rufus & Chaka / Do You Love What You Feel


この曲にはUSプレスの33⅓回転12インチと、UKプレスの45回転12インチがあります。

回転数だけ見れば、

UK盤=45rpm
US盤=33⅓rpm

です。

ココまでこの記事を読んだ人なら、

「じゃあUK盤45rpmのほうが有利なんでしょ?」って思いますよね。

トコロがオイラが好きなのは、圧倒的にUS盤33⅓回転です。

レコード針を置いた瞬間、冒頭のドラムブレイクが「ぐわっ!!」っと前へ飛び出してくる。

その瞬間、「うおっ! キタっ!」となります。

音が鳴った瞬間に、身体をグッと音楽の中へ引っ張られるような押し出し感がある。

コレはUK盤と何度も交互に聴いて、

「コッチのほうがちょっとイイかな〜」なんていう微妙な違いじゃないんですよ。

US盤だけを単体で聴いても、

「この盤、メチャクチャ音イイなっ!」っていうレベルなんですよ。

オイラの経験でも、こういう盤はそんなに多くありません。

そして面白いのが、曲そのものまで良く聴こえてくることです。

モチロン元々素晴らしい曲ですが、音質の良さが曲の魅力をさらに押し上げているんですよね。

音が良いことで、

「この曲って、こんなにカッコ良かったのか!」って再発見させられる。

こういう瞬間があるから、レコードは面白いんですよね。

もしUS33⅓rpmとUK45rpmのドッチか1枚しか所有できないと言われたら、オイラはUS盤を選びますね。

理論上有利な45rpmではなく、33⅓rpmを選ぶ。

コレだけでも「回転数だけで音質は決められない」というコトが解ると思います。

じゃあ33回転のほうがイイの?…それも違うんです

ココまで読んで、「ナンだ、結局33⅓回転のほうがイイんじゃん!」と思った人。

違うんですよ(笑)

今度は反対の例です。

Michael Jackson / Billie Jean


あまりにも有名な曲ですね。

この曲にもUSプレスの33⅓回転12インチと、UKプレスの45回転12インチがあります。

そしてBillie Jeanに関しては、オイラはUK45回転盤の音が好きです。

Billie Jeanの音空間に自分が立っているような感覚

Billie Jeanは、そもそもアルバムに収録されている音自体もかなりイイと思います。

だけどUK45回転12インチをある程度の音量で鳴らすと、また違った感覚があります。

あの特徴的なイントロのドラム。

そこから徐々に音が重なっていきますよね。

UK盤45rpmで聴いていると、それぞれの音が単純に左右へ広がるだけではなく、立体的に配置されていくように感じる。

そして気が付くと、「Billie Jeanという曲の音空間の中に自分が立っている」みたいな感覚になるんです。

広がりがある。抜けがイイ。音が立体的。

オイラにとっては、「コレは気持ちイイな〜」と思える音です。

もしUS33⅓回転とUK45回転のドッチか1枚だけ残せと言われたら、Billie JeanについてはUK盤を残します。

トコロが当店の別のスタッフは違った評価をしていて「US盤のほうがイイ」と言うんです。

US33⅓rpmにはUK盤とは違う太さがあります。

特にイントロのドラム。ドンッと前へ押し出してくるようなインパクトがあって、ファットで迫力がある…クラブ的な鳴り方という表現が近いかもしれません。

オイラはUK45回転

スタッフはUS33⅓回転

同じ曲。

同じ店。

同じ再生環境。

それでも答えが分かれる。

コレって、かなり重要なコトだと思うんです。

「高音質」と「好きな音」は同じなのか?

ここで一度、「音が良い」というコトバについて考えてみましょう。

オイラ自身、長年このことを考えてきました。

そもそも「良い音」ってナンなんでしょう?

解像度が高い音?

高域がキレイに伸びている音?

低域が太い音?

音圧がある音?

抜けがイイ音?

音場が広い音?

ダイナミックな音?

全部「良い音」の要素として使われます。

でも、どれを一番重視するかは人によって違います。

本来なら、その作品の音を最終的に決定したアーティストやプロデューサー、エンジニアたちが、

「よし、この音にしよう」

と決めた音を、そのまま何の加工も加えず再現した音が「良い音」と言えるのかもしれません。

でも現実には、その音楽が再生される環境は千差万別です。

Aさんの家とBさんの家ではスピーカーが違う。

アンプも違う。

カートリッジも違う。

部屋の広さも違う。

スピーカーの置き方も違う。

聴く音量も違う。

そして、聴く人の好みまで違う。

そう考えていくと、「良い音」を1つの絶対的な基準だけで評価すること自体が難しくなってきます。

だからオイラは「実際に聴いた人が“良い音だなぁ”と思った音が、その人にとって良い音なんじゃないか」って思うようになりました。ちょっと理屈っぽいですケドね(笑)

Billie Jeanでオイラとスタッフの好みが分かれるのも当然なんです。

オイラはUK盤の広がりや立体感に惹かれる。

スタッフはUS盤の太さと押し出しに惹かれる。

どちらかが正しくて、どちらかが間違っているワケじゃないんですよ。

むしろ、「オレはコッチ!」と言えるコト自体が、レコードを聴き比べる楽しさなんじゃないでしょうか。

Tears For Fearsの45回転で感じた「キレイな音」

もう1枚、オイラが印象に残っている45回転の12インチがあります。

Tears For Fears / Sowing The Seeds Of Love


UKプレスの45回転盤です。

この曲がリリースされたのは1989年で時代的には、音楽メディアの主役がレコードからCDへ移り変わっていく頃ですよね。

このUK盤12インチも、かなり音がイイんですよ。

ただ、Rufus & ChakaのUS盤とは「良さ」の種類が全然違うんです。

Rufus & Chakaは、「ぐわっ!!」と前へ来る。

一方、Sowing The Seeds Of Loveは、ドラマティックに展開していく曲の細かな音が、まるで粒子になってスピーカーから広がり、自分の周囲を包み込んでいくように感じる。

純粋に「キレイな音だな…」と思うんですよ。

そして、その音によって曲の世界観へ引き込まれていくんですよね。

Rufus & Chakaの「迫力」。

Billie Jeanの「立体感」。

Tears For Fearsの「美しさ」。

全部異なる良さなんだけどオイラにとっては、全部「音がイイ」。

そう考えると、「高音質」というコトバだけでは説明しきれないものがあるんですよね。

US盤にはUS盤らしい音がある…ように感じる

長年いろいろな国でプレスされた12インチシングルを扱っていると、

「US盤とUK盤って、やっぱり音の傾向が違うよな〜」と感じることがあります。

ただ、ココは誤解してほしくないトコロです。

「US盤は必ずこういう音」

「UK盤は絶対こういう音」

と断言するつもりはまったくなくって、曲によって違うし、レーベルによっても違う、カッティングによっても違うのであくまでもオイラが大量の盤を聴いてきた中で持っている、ボンヤリとした印象です。

そのうえで言うと、UK盤やEU盤には華やかで広がりのある音に感じる盤が比較的あり、US盤にはUK/EU盤よりファットでふくよかな音に感じる盤があります。

特にUS盤の12インチには、「コレ、大きな音で鳴らしたら気持ちイイだろうな〜」って思わせる盤があるんですよ。

Promo Onlyの12インチが教えてくれるクラブの音

1970〜80年代の12インチシングルを見ていると、世間的には大ヒットした有名曲なのに、USでは一般販売用の12インチリリースされず、DJやラジオ局などへ配布されたPromo盤しか存在しないタイトルが結構あります。

12インチシングルというメディア自体が、DJやダンスミュージックの現場からのニーズによって発展してきた歴史を持っています。

そういうPromo盤を聴いていると、

「コレ、ダンスフロアで映える音だな」って感じるモノがあります。

一般家庭でボーカル曲を聴くのであれば、ボーカルが自然に浮き出て聴こえるようなバランスを好む人も多いでしょう。

でもダンスフロアでは、低音、中音、高音がメリハリよく鳴って、キックがカラダへ響く。

大きな音量で鳴らしたときに、曲の存在感がイッキに立ち上がる。

そういう音が気持ちイイ。

モチロン、制作側が実際にどんな意図でその盤を作ったのか確認できないものまで、「これは絶対ダンスフロア用にこういう音にした!」と断定することはできません。

ただ、長年そういう盤を実際に聴いていると、

「ダンスフロアで鳴らすコトを意識したんじゃないかな」と思わせるサウンドの12インチに出会うコトは確かにあります。

コレも12インチシングルならではの面白さだと思います。

そもそもオイラが12インチにハマったきっかけ

今でこそ渋谷で12インチシングルを専門に扱う中古レコード店をやっていますが、最初から12インチの音質について詳しかったワケではありません。

むしろオイラ自身も、最初は、

「同じ曲なら、どのレコードで聴いても同じ音でしょう」って思っていました。

12インチシングルをメインにコレクションする前は、普通にLPや7インチシングルを買って、自宅で聴いて楽しんでいたんです。

高校生の頃、いつも聴いているアルバムの中に、とても好きな曲がありました。

ある日、たまたまラジオを聴いていると、その大好きな曲が流れてきたんですよ。

トコロが、いつもとアレンジが違うんですよ。

「アレ?」曲が長い、しかも単純に後ろへ引き伸ばされているワケじゃない。

知っているハズの曲なのに、展開が違う。

それが12インチシングルに収録されたExtended Versionでした。

コレにはヤラれましたね〜「ナンだ、このバージョン!?」って。

当時の日本では、12インチシングルは今以上に一般の音楽ファンにとってメジャーな存在ではなかったと思います。

オイラはその曲の12インチが欲しくなって、輸入レコード店へソッコーで買いに走りました。

そして自宅へ持ち帰り、レコード針を落とした。

すると、いつも聴いていた自宅のオーディオから、それまでとはまったく違うような迫力の音が出てきた。

「ナンだっ!? この音はっ!?」って、本当に驚いたんです。

スピーカーもアンプも同じ、部屋も同じで曲も同じ…なのに音の印象が全然違う。

この体験によって、「同じ曲なら同じ音」というオイラの思い込みは、一発で壊されました。

「やっちまった!」が、さらに深い世界への入口になった

それからレコードを買うとき、12インチシングルを選ぶことが増えていきました。

輸入レコード店へ行くと、また新しい疑問が出てきます。

同じ曲なのにUS盤とUK盤がある、ジャケットも違う、レーベルも違う…だけど同じ曲が一緒に売られている。

でも当時は高校生で自由に使えるお金なんて限られています。

US盤を1枚買ったあとに「じゃあ比較用にUK盤も買おう!」なんてことは、なかなか出来ません。

ところがある日、すでにUS盤で持っている12インチを、ジャケットデザインが違ったため別のレコードだと思い込んで、UK盤でも買ってしまったんです。

家に帰ってそのことに気付いて、

「やっちまったっ!」ですよ(笑)

同じ曲を2枚買ってしまった。

お金のない高校生にとっては結構なショックです。

ところが、せっかく買ったのでとりあえず盤を見比べてみるとUS盤とUK盤で回転数が違うんですよ。

片方は33⅓rpmでもう片方は45rpmという表記です。

「へぇ〜、同じ曲なのに回転数まで違うんだ」と思いました。

でも当時のオイラは、「同じ曲だし、同じExtended Versionなんだから、音は一緒だろうな…」くらいに思っていました。

それでもせっかくだから聴き比べてみた。

すると、「エッ!?なんか音が違う。かなり違うぞコレ…」

自宅のスピーカーが別のものに変わったのかと思うくらい、音の印象がガラリと違ったんです。

今なら回転数、線速度、カッティング、マスタリングなど、いろいろな理由を考えることができます。

でも当時はインターネットもないし、レコードについて調べようと思っても、今みたいに検索すれば何でも出てくる時代じゃありません。

だから、「ナンで違うのか分からない。でも確実に違う」という経験だけが残ったんですよ。

そして、それがメチャ面白かった。

今考えてみると、間違えて同じ曲を2枚買ったあの「やっちまった!」が、オイラをさらに12インチシングルの深い世界へ連れていった出来事だったのかもしれません。

12インチシングルはDJだけのモノなのか?

12インチシングルというと、「DJが使うレコードでしょ?」と思っている人もいるでしょう。

確かに12インチシングルの歴史を考えれば、DJやクラブ、ダンスミュージックとの関係を切り離すコトはできません。

でもオイラは、DJをしない普通の音楽ファンにも12インチシングルをもっと聴いてほしいと思っています。

考えてみてください。

直径約30cm。

LPと同じ大きさの盤面です。

LPならそこへ片面5〜6曲くらい入れるところを、12インチシングルでは1曲しか入っていないことさえある。

30cmのレコード盤を、たった1曲のために使う。

コレってかなり贅沢だと思いませんか?

しかも、その1曲を大きなクラブのサウンドシステムでも鳴らせるようなレベルで作られた盤がある。

そんなレコードを自宅へ持ち帰って、自分のオーディオでじっくり聴けるってコレってある意味、メチャクチャ贅沢な音楽の楽しみ方だと思うんですよ。

「同じ曲を何枚も持ってどうするの?」への答え

レコードにそれほど興味がない人からすると、「同じ曲のUS盤とUK盤を両方持って、どうするの?」と思うでしょう。

オイラも高校生の頃なら、そう思ったかもしれません。

でも今なら、「同じ曲だから面白いんですよ」と答えるコトが出来ます。

曲が同じだからこそ、違いが分かる。

33⅓rpmと45rpm、US盤とUK盤、アルバムと12インチ、Original VersionとExtended Version…それぞれを聴き比べると、

「このベース、こんなに太かったのか」

「こっちはボーカルが前へ出てくるな」

「この盤は音が横へ広がるな」

「このドラム、メチャクチャ気持ちイイな」

ナンてカンジでそれまで気付かなかったモノが見えてくる。

そして、その違いに気付いた瞬間、大好きだった曲をもう一度新鮮な気持ちで聴けるんです。

コレがレコードコレクションの醍醐味の1つだと思います。

物理を知るのは「正解」を決めるためじゃない

今回、33⅓回転と45回転についてかなり細かく書いてきました。

線速度。

収録時間。

外周と内周。

音溝の余裕。

ここまで読むと、

「じゃあ高音質盤を見つけるための条件を全部覚えればイイのね」って思うかもしれません。

でもオイラは、そういうことを言いたいワケではありません。

知識は「このレコードが正解、このレコードは不正解」と決めるためのモノではないと思っています。

むしろ、「ナンでこの盤はこんな音がするんだろう?」と考えるためのヒントです。

45回転だから期待して聴いたら、本当にスゴかった…それも面白い。

45回転だから期待していたのに、33⅓回転盤のほうが自分には気持ち良かった…コレも面白い。

物理的な理屈を知っているからこそ、予想が外れたときに、「ナンでだ!?」となる。

そして別の盤を聴いてみたくなる。

レコードって、そうやってどんどん深みにハマっていくんですよね(笑)

33回転/45回転、結局ドッチがイイの?

まぁ〜コレまで長々と述べてきたトコロで最初の質問へ戻りましょう。

「33回転と45回転、結局ドッチがイイんですか?」

オイラの答えはこうです。

レコードの物理的な特性で考えれば、45回転には音質面で有利な条件があります。

でも、「45回転だから必ず良い音」ではありません。

Rufus & Chaka / Do You Love What You Feelなら、オイラはUS33⅓回転盤を選ぶ。

Michael Jackson / Billie Jeanなら、UK45回転盤を選ぶ。

そしてBillie JeanのUS33⅓回転盤を選ぶスタッフもいる。

つまり最後は、

「ドッチが高音質なの?」

ではなく、

「アナタはドッチの音が好きなの?」

なんですよ。

コレがオイラの今の答えです。


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家にある12インチを、もう一度見てみてください

もしこの記事を読んでいる人の家に12インチシングルがあるなら、一度レコード棚から取り出して盤面を見てみてください。

33⅓rpmですか? 

45rpmですか?

片面に何曲入っていますか?

音溝はレーベルの近くまでギッシリ刻まれていますか?

それとも外側から中程くらいまでを贅沢に使っていますか?

今まで、「この曲好きだな〜」とだけ思って聴いていたレコードでも、盤面を見ると新しい発見があるかもしれません。

そしてもし中古レコード店のエサ箱で、すでに持っている曲の別の国の盤を見つけたら「同じ曲持ってるからイラナイ」と戻してしまう前に、ちょっとだけ盤を見てみてください。

「アレ? オレが持ってるの33回転だったよな。コレ45回転じゃん…」

そんなコトがあるかもしれません。

その2枚が、まったく違う表情で鳴るかもしれない。

モチロン、ほとんど違いが分からない可能性だってあります。

それも含めて聴いてみないと解らない。

渋谷の当店には、そんな「同じ曲なのに違う」という12インチシングルがたくさんあります。

US盤。

UK盤。

EU盤。

Promo盤。

33⅓rpm。

45rpm。

一見すると細かくて面倒な違いです。でも、その面倒くささを楽しみ始めたら、もうレコードの深いところへ片足を突っ込んでいるのかもしれません(笑)

オイラ自身、高校生の頃に間違えて同じ曲のUK盤を買わなかったら、ココまで回転数やプレス国による音の違いを面白がっていなかったかもしれません。

「やっちまった!」と思った1枚が、新しい世界を見せてくれたってワケですね。

そういう偶然も含めて、レコードを買う楽しさなんだと思うんですよね。

33回転と45回転、ドッチがイイのか?って理屈を知ることはできます。

だけど最後の答えは、自分のレコードプレーヤーに針を落として、自分の耳で聴いてみないと解りません。

だからこそ面白いと思うんです。

そして、「この盤、ナンかメチャクチャ音イイな…」という1枚に出会った瞬間の楽しさは、やっぱり格別なんですよね〜。

レコードって、ホント奥が深いです。


この記事は、2022年に投稿した下記の記事に加筆、リライトして再編集しました。
「33回転/45回転 ドッチがイイの?」

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francoisk_fkep

「レコード屋の日常」は、毎日がちょっとしたドラマです。

「今日は何か良さげなレコードありますか?」って店頭に立っていると、お客さんから時々訊かれるコトバです。

確かにレコード店経営というシゴトは、毎日いろいろなレコードと出会います。

開店すると、常連さんがふらっと立ち寄ってくれたり、地方から旅行ついでに寄ってくださるお客さんがいたり、海外から日本のレコードを探しに来る方がいたり…。

そして時々、販売だけでなく「買い取り査定をお願いします。」ってレコードを持って来られるお客さんもいらっしゃいます。

レコードの査定というと、「値段を付けるだけ。」と思われるかもしれません。

でも実際は全然違っていて査定依頼をうけたレコードには、そのお客さんの人生がヒシヒシと伝わってきます。

そういう側面もあるのでレコードの査定は、単に「レコードを見るシゴト」というより、「その人の思い垣間見せてもらえるシゴト」でもあるかもってオイラは思っています。

コレまでに数多くのレコードの買い取り査定をさせていただきましたが、ホントにレコードって音楽が記録されているだけでなくその所有者の想いまで記録されているなぁ〜って思うことが多くありました。

だけど、ほのぼのとした思い出だけでなく、時にはその反対の、お客さんにとってメチャ残酷な現実をお伝えしなければならない場面もあります。

今回おハナシしするのは、まさにそんな出来事です。

この記事は誰かを批判したいワケでも、フリマサイトやオークションを否定したいワケでもありません。実際、そうしたサービスには正規のレコードも数多く出品されており、上手に利用すれば素晴らしいレコードとの出会いもあります。

それでも、コレクタブルなレコードの世界には「知っておいたほうがいい現実」があります。

オイラは、その現実を1人でも多くのレコードファンに知っていただきたいと思い、この出来事を書くことにしました。


レーベルがチラッと見えた、その瞬間でした。

ある日、40代くらいの男性のお客さんがご来店されました。

「1枚だけなんですが、査定をお願いできますか?」

もちろんですっ!オイラはニコニコ顔でレコードを受け取ろうとしました。

その時、お客さんがバッグからレコードを取り出した瞬間、レーベル部分がほんの少しだけチラっと見えたんです。

その瞬間、オイラの心の中では思わず、

「ウワっ!ものスゴいレア盤が出てきたな!」って思わずココロの中で声が出ました。

手にとってレーベルのタイトルを見た瞬間、オイラのアタマの中では査定金額よりも先に「コレ、久しぶりに見るなぁ。」という感情が湧き上がりました。

仮にココではそのレコードを「A」としておきますが、そのタイトルは、知る人ぞ知るレアな12インチシングルです。

当店でも数年に1枚入荷するかどうかというメチャ、レアなタイトルでココ3年程は、一度も入荷していません…。

正直、「コレは気合を入れて査定をしないとっ!」と思いました。

モチロン査定額もそうですが、こういうレコードを持って来られるお客さんは、他にも素晴らしいコレクションをお持ちのことが少なくありません。

「このご縁を大切にしたい。」そんなコトまで、一瞬で頭をよぎりました。

レコード店を営んでいると、1枚の査定がその後の長いお付き合いにつながることも少なくありませんからね。

そんな期待を胸に、そのレコードを受け取りました。

手に取った瞬間の違和感

トコロが、その期待は数秒後に違和感へと変わります。

「アレ…?」

オイラは長年、オリジナル盤ばかりを見てきました、だからなのかもしれませんがレコードを手に取った瞬間に時々説明できないような違和感を覚えるコトがあります。

オイラは冗談半分でこの違和感を「ブートレッグ盤センサー」と呼んでいます(笑)。

今回も、まさにそのセンサーがビビビッ!と反応しました。

ジャケットは古びたジェネリックスリーブ(無地の穴あきジャケット)。

中には経年によって薄茶に変色した紙製インナースリーブ。

どちらも数十年という年月を感じさせる自然な風合いです。

しかし、レコード本体のレーベル面はジャケットとは違い妙にキレイでした。

確実にジャケットと中身のレコード盤の時間経過がリンクしていないコトがそこからわかるくらいです。

だけどレコードのレーベル面を見た目だけでは、ほとんどオリジナル盤と見分けがつきません。

トコロが、センターホールの周囲にある円周状の段差を見た瞬間、

「コレは、おかしいな。」って思いました。

その「A」というタイトルのオリジナル盤は1970年代のUS盤プロモなのです。

本来、その時期のオリジナル盤USプレスで現れるハズのない特徴が「A」にはありました。

逆に、その段差はUK盤で見かけることが多いスタイルです。

モチロン、それだけで断定はできませんがオイラの長年の経験が、「ナニかがおかしい…。」と教えてくれていました。


Discogsで確信したこと

オイラはお客さんに事情を説明しながら、お店のパソコンでDiscogsを開いて一緒にリリース情報を確認しました。

すると、そこには査定依頼のこの「A」というレコードは2010年にUKでプレスされたUnofficial Releaseの情報が掲載されていました。

その瞬間、「ああ、やっぱり…。」という気持ちになりました。

実はオイラ自身、このタイトルにブートレッグ盤が存在するコトを知りませんでした。

それでも最初に違和感を覚えたのですから、自分でも少し驚きました。

ちなみにDiscogsでは、現在このようなUnofficial Releaseはマーケットプレイスで販売できない仕様になっています。

以前は、Discogsのマーケットプレイスでは、こういったUnofficial Releaseのレコードもバンバン普通に販売出来ていましたが時代とともにコンプライアンスへの意識も変わってきたんでしょうね、結構な割合でUnofficial Releaseなレコードの販売が出来なくなっています。


一番つらかったのは、お客さんの表情でした

オイラは意を決してお客さんへ伝えました。

「すいません…これはオリジナル盤ではないので、当店ではお買い取りできません。」

その瞬間、お客さんの表情が変わりました。

それまで落ち着いていた様子が一変し、緊張した面持ちになり、額には汗がにじんでいました。

このレコードを手に入れた経緯を伺うと、1年前にフリマサイトで約2万円ホドで購入されたそうです。

そのお客さんは、このレコードがレア盤であることをご存じでした。

だからこそ2万円という金額を出して購入したのです。

もし本物のオリジナル盤であれば、決して高い買い物ではありません。

むしろフリマサイトで相場より安く手に入れられたと思ったことでしょう。

オイラもその時に出品されていた商品ページを見せていただきました。

そこには「オリジナル盤」とも書かれていません…だけど「ブートレッグ盤」とも書かれていません。

価格だけを見ると、オリジナル盤より少し安い設定。

この情報だけでは、多くの人が「オリジナル盤なのかな」と受け取ってしまう可能性があります。

なお、出品者が故意にブートレッグ盤をオリジナル盤だと偽って出品したのか、それとも出品者本人もオリジナル盤だと思い込んでいたのかは分かりません。そこは事実だけでは判断できません。

だからこそ、この出来事はとても考えさせられました。


オリジナル盤にこだわる理由

オイラはオリジナル盤12インチシングル専門店を営んでいます。

「ナンでそこまでオリジナル盤にコダワルのですか?」と訊かれるコトがあります。

オイラにとって、オリジナル盤とは単に古いレコードではありません。

その時代に、その国で、その工場で、その音楽が世の中へ送り出された証そのものだと思っています。

モチロン正規の再発盤にも価値があります。

音楽を楽しむという意味では、多くの人にとって素晴らしい存在です。

しかし、それとブートレッグ盤はまったく別のモノです。

正規の再発盤は権利者の許諾のもとで作られた製品ですが、ブートレッグ盤はそうではありません。

中古のレコード市場には両者が混在して販売されているため、初心者ほど混乱しやすいのが現実です。

人気が高まり、需要が生まれても、採算の問題から正規再発されないタイトルは少なくありません。

その隙間を埋めるようにブートレッグ盤が作られてきたという歴史があります。

しかし、それがオリジナル盤と見分けがつきにくい形で流通し、結果としてレコードを愛する人やコレクターが誤認してしまうのであれば、とても悲しいコトだと思うんです。


フリマサイトやオークションは悪なのか?

ココで誤解していただきたくないコトがあります。

オイラは、フリマサイトやオークションを否定しているワケではないんですよ。

実際に正規品を誠実に出品されているセラーもたくさんいますし、便利なサービスであることも間違いありません。

ただ、個人売買では運営会社が1枚1枚の真贋を保証してくれるワケではありません。

最終的には売り手と買い手の間で判断する場面が多くなります。

だからこそ、レア盤を買うときホド慎重になってほしいのです。

「ヤバいっ!掘り出し物を見つけた!」

そう思う瞬間ホド、人は冷静さを失いがちです。

「今買わないと他の人に取られてしまう。」

そんな気持ちもよく分かります。

でも、そんな時こそ一呼吸置いてください。

商品説明をよく読む。

相場を調べる。

不明点は出品者へ確認する。

「これはオリジナル盤ですか?」ってその一言を質問するだけでも、判断材料は増えます。

もちろん画像だけでは判断できないケースもあります。

それでも、確認するという行動は決してムダにはなりません。


レコードを愛する人へ伝えたいコト

オイラは個人がブートレッグ盤と理解したうえで楽しむことまで否定するつもりはありません、音楽の楽しみ方は千差万別で人それぞれですからね。

ただ、「オリジナル盤だと思って購入したら、実は違った。」っていうのはこれは別のハナシです。

今回のお客さんは、本当にショックだったと思います。

オイラもその表情を見て、とても胸が痛みました。

査定できなかったコトではありません。

「大切なコレクションだと思っていた1枚」が、その日を境にまったく違う意味を持ってしまったコトがやはり悲しかったんですよね…。

もし購入前に相談していただけたら、何かアドバイスができたかもしれません。

もちろん100%見抜けたとは言い切れませんがそれでも、一緒に考えることはできたんじゃないかなって思うのです。
でも、ソコの至るにはオイラとお客さんの関係性も関わってきますケドね。


FRANCOIS K. / FK-EP
FRANCOIS K. / FK-EP の試聴
next recordsのサイトでFRANCOIS K.のレコードを探してみる

今回の件で伝えたいコト

レコードには音楽だけではなく、時代や文化、人の想いが刻まれていると個人的には思っています。

だからこそ、本当に気に入った1枚は、納得して手に入れてほしいって思うのです。

中古レコードの世界は、とても奥が深く、だからこそ面白い世界でもあります。

でも、その一方で、今回のような出来事が起こることも事実としてあります。

この記事を読んでくれた皆さんには、ぜひ「ブートレッグ盤という存在がある」という事実だけでも知っていただけたら嬉しいです。

そして、レア盤を購入するときは、価格だけで判断せず、分からないコトがあればレコードに詳しい友人や信頼できるお店や経験豊富なセラーに相談してください。

せっかく大切なお金で手に入れるお気に入りになる1枚です。

オイラは、皆さんにココロから納得できる1枚と出会ってほしいなぁ〜って思っています。

もしこの記事が、同じような思いをする人を1人でも減らすキッカケになれば、レコード店を営む者としてこれほど嬉しいコトはありません。



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