
■ 渋谷の店頭で感じる、世界のレコード熱
2026年4月現在、アナログレコードの人気は現状まだまだ続いているようです。
ん〜いや、「続いている」というより、むしろ以前よりも広がり方が変わってきているかも…ってそんな感覚すらあります。
Next Recordsは渋谷という場所柄もあって、日々いろんな国からレコード好きが訪れていただきます。
ココ最近は本当に海外のお客さんが多くて、日によっては日本人のお客さんよりも外国からのお客さんのほうが多い、ナンてことも珍しくありません。
店頭でのやり取りを見ていると、当店の商品構成って日本人よりも海外から来た人のほうが刺さっているんじゃないか…ナンて思う瞬間もあったりします。
モチロンそれは嬉しいコトなんですが、同時にちょっと不思議な感覚でもあります。
そんな中で、最近ひとつ気になる変化があるんですよね〜それは一般のお客さんに混じって、明らかに「買い付け目的だな」と分かる人たちが来るようになってきたんです。
バイヤーである彼らはとにかく店内での動きがまったく違うんです。店の在庫を最初から最後までチェックしていくし、ジャンルも横断的に見ていく。そして何より特徴的なのが、来店時点ですでにレコードバッグがパンパンなんですよね。つまり、当店に来る前に他の店でもシッカリ買い付けてきている。
その光景を見ていると、オイラ自身が店を始めた頃、海外に買い付けに行っていた時のことを思い出して、ナンとも言えない気持ちになるんですよね。
■ 1通のメールが投げかけてきたもの
そんな日常の中で、先日ちょっと興味深い出来事がありました。イギリスのディーラーから1通のメールが届いたんです。
内容はシンプルで、「日本の中古レコードを大量に仕入れたい」「卸売に対応しているか」「将来的には長期的なパートナーシップを築きたい」といったもの。
入手したいジャンルとしてはHipHopやHouseといった、いわゆるクラブミュージックが中心でした。
要するに、「レコードを卸してほしい」というオファーです。
コレまでにも海外からの問い合わせは何度かありましたが、その多くは「自分たちのレコードを扱ってほしい」という売り込みでした。今回のように「仕入れたい側」として連絡が来たのは初めてのコトです。
このメールを読んだとき、率直に思ったんですよね〜ソレは…
「どうして日本に来て買い付けないんだろう?」ってコトです。
■ 現場での仕入れという行為の意味
実際に店頭に来ている海外バイヤーを見ていると、彼らの動きはとても分かりやすいです。
自分のマーケットで「差額が抜ける盤」だけを的確に選んでいく。
これは単純な作業ではありません。その人がどれだけ音楽を知っているか、どれだけ市場を理解しているか、そのすべてが表れる行為なんですよね。
オイラも昔は同じように海外のレコード店を廻って、ひたすら掘って、選んで、持ち帰っていました。現場でしか分からない空気や、盤の状態、ちょっとした違和感、そういったものを総合的に判断していく。
だからこそ、「メールでレコードを卸売してほしい」というスタンスには少し違和感があったんです。
ただ、今の時代を考えると、その理由もナンとなく見えてきます。
■ かつての価格差で成り立っていた時代
2000年前後、オイラがレコード店を始めた頃は今とはまったく状況が違いました。
海外ではすでにレコードの役目は終わったものとされていて、CDが主流になっている状態。
一方で日本では90年代半ばからDJカルチャーの広がり、HipHopやHouse、Discoの中古レコードにしっかりとした需要がありました。
つまり、国という単位で見る地域によって需要が大きく異なっていたんですよね。
だから海外に買い付けに行くと、向こうも長年動かなかったアナログレコードの在庫をオイラたちが大量に買うものだから本当に喜ばれるし、しかも価格も安い…コチラとしては「こんなに安くていいの?」というくらいの感覚でした。
当時はシンプルに、
「安く仕入れて、日本で売る」
コレだけで成立していた時代です。
とはいえ、決してカンタンではなくそれなりの苦労はありましケドね。
■ 世界がひとつの市場になった現在
トコロが今はどうか。
世界中でレコードの人気が再燃し、どの国でも同じように需要があります。
そして何より大きいのが、DiscogsやeBayの存在です。
これによって、レコードの価格や人気は完全に可視化されました。
どこの国でも同じ情報を見て、同じように判断する。つまり、どこで買っても価格はある程度揃ってしまうようになりました。
この状況では、かつてのように「地域差で利ざやを抜く」というビジネスは成立しにくくなります。
■ それでも卸の話が来る理由
では、ナゼ今のように価格も情報もグローバルで共有されている状況の中で、それでも「卸してほしい」というハナシが出てくるのかってコトですよ。
この点はもう少し踏み込んで考える必要があると思うんですよね。
ひとつはやはり「効率」というキーワードです。今の海外ディーラーにとって、日本に来て何日もかけてレコードを掘るという行為は、コストとリスクの両方を伴うものになっています。
航空券や滞在費はモチロン、限られた時間の中でどれだけ良い盤に出会えるかはまったく保証されていない。しかも、すでに他のバイヤーが回った後の棚を掘るコトになるケースも多いワケです。
そう考えると、「現地で掘る」よりも「すでに仕入れと選別を終えている店からまとめて買う」という発想は、ビジネスとしては非常に合理的なんでしょうね。
つまりこれは、単にレコードを仕入れるというよりも、
👉 「選盤そのものを外注する」
という考え方に近いかもしれませんね。
当店のように、日々の買取や仕入れの中で何千枚というレコードに触れて、その中から「使える盤」「良い盤」を抜き出している店は、ある意味でフィルターの役割を担っている部分もあったりします。
そのフィルターを通過したレコードだけをまとめて仕入れられるのであれば、確かに効率は良いですよね〜コレは理屈としてはよく分かります。
ただ、その一方でこうも思うんです。
効率化を優先するのはビジネスとして正しいかもしれない…でも、そのお店の選盤を丸ごと外注してしまう行為って、その店の存在ってナンなんだろう?って。
レコードが好きで、このカルチャーに魅力をカンジて自分で店を始めたハズなのに、自分の腕の見せドコロであるはずの「選ぶ」という行為を他者に任せてしまう…ソレって、ナンカ味気ないなぁとも感じるんですよね。
モチロン、規模を拡大していく上で効率化は避けて通れない部分もあると思いますし、全てを自分でやるのが正解とも限らないと思います。
ただ、レコードというものが単なる商品ではなく、「選ぶコト」そのものに価値がある文化だとするならば、その核の部分を手放してしまうコトには、少し違和感を覚えるんですよね。
だからこそ今回のようなオファーは、単なる取引のハナシというよりも、
👉 「レコードをどう扱うのか」
👉 「ナニを価値として提供するのか」
という、もう一段深いトコロを考えさせられるキッカケでもあるのかなと思っています。
■ 利益相反というシンプルな現実
ココで一度、かなり現実的なハナシに戻ります。
今回のような「卸してほしい」というオファーを考えたとき、まず最初に立ちはだかるのが、極めてシンプルな構造です。
👉 オイラたちは「良い盤を自分の店で売りたい」
👉 相手は「良い盤をできるだけ安く仕入れたい」
この時点で、完全にベクトルは逆を向いていますよね。
レコード店を営んでいれば、コレはもう常識的に分かっているコトだと思うんですよね。
特にオリジナル盤の12インチのように、再生産されることのない中古レコードという市場においては、良質な盤というのは「有限」です。
つまり、
👉 「良い盤を卸す」という行為は
👉 「自分の売り物を他店に渡す」というコト
になるワケです。
コレって言い換えると、
👉 元売りと販売側で“取り合いになる構造”
なんですよね。
大量生産される商品であれば、卸売というのはごく自然な流れですし、商取引としても当たり前に成立します。でもレコード、とくにレアなタイトルに関しては事情がまったく違いますよね。
どこの店だって、S級やA級の盤は喉から手が出るホド欲しい。むしろ、それをどうやって確保するかが店の価値そのものになっていると言ってもいいと思います。
そう考えると、
👉 「良い盤を安く卸してほしい」
という前提であれば、そもそもハナシは成立しません。
じゃあ、どうしてこういうオファーが来るのか。
ココで少し考え方を変えてみると、もしかしたら今回のハナシは、
👉 「良い盤をよこしてほしい」
ではなく、
👉 「過剰在庫になっている盤を譲ってほしい」
というニュアンスなのかもしれません。
実際、メールの文面を見ても、具体的にどのレベルのクオリティの盤が欲しいのかは書かれていないんですよね…HipHopやHouseといったジャンル指定はあるものの、その中でどのレンジのアイテムを狙っているのかは曖昧なままです。
この曖昧さが、今回のハナシの難しさでもあり、同時に「わずかな可能性」が残る部分でもあるとカンジています。
■ それでも残る“わずかな可能性”
とはいえ、完全に成立しないかというと、そうでもないかなぁ〜って思う部分もあります。
例えば、日本ではそこまで評価されていないけれど海外では需要がある盤や、中価格帯で回転の早いタイトルなど、評価や回転のズレがある部分に関しては取引が成立する余地はあります。
ただしそれはあくまで限定的で、ビジネスの軸になるようなものではないでしょう。
そういったタイトルを卸売出来るレベルの枚数をセレクトしてまとめて卸すというコチラ側の作業のコトまで考えると、時間も手間もかかるので正直面倒ですよね。
買取査定して査定対象からハズレた価値の低いメインストリーム系のタイトルやブート盤やキズ盤を箱単位でドカっと送っても良いのであればコチラ側にとっては実においしい取引になるのですが、相手側は「ゴミレコばっかり送って来やがったっ!コンチクショーっ!」ってトーゼンなりますよね。
ソレじゃ、将来的には長期的なパートナーシップはゼッタイに築けないでしょう。
■ オイラの結論と、これからのレコードビジネス
今回のオファーについて、オイラの結論はシンプルです。
今回はお断りします。
理由はやはり、良い盤は自分の店でしっかりと販売したいからですよね。
当店は店頭販売とオンラインの両方で国内外のお客さんに届けるコトができているので、卸すほどの余剰は正直ありませんしね。
ただし、当店のオンラインサイトから一般のお客さんと同じように購入していただく分には、モチロン大歓迎なんですが、ソレは買ってくれないでしょうね〜。
そして今回のやり取りを通じて改めてカンジたのは…
レコードは「ドコで買うか」ではなく「ダレが選ぶか」の時代に少しずつですが変化しつつあるのかなって思ったんですよね。
ERYKAH BADU / ON & ON
ERYKAH BADU / ON & ON の試聴
next recordsのサイトでERYKAH BADU のレコードを探してみる
かつてのように価格差だけで勝負する時代ではなく、ナニを選び、どう届けるか…みたいなそのプロセスそのものに価値が見出されてきたような気がします。
オイラはこれからも、その「選ぶ」という部分に出来るだけコダワリ続けていきたいと思っているんですよね。
レコードは単なるモノではなく、文化であり、体験であり、ストーリーっていう側面もありますからね。
だからこそ、針を落とした瞬間に「コレだっ!」と思える1枚を、これからも店頭で、そしてオンラインで届けていきたいでなぁ〜と思う次第であります。
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