
■ RSD前日に感じた、ちょっとした違和感
2026年4月18日、この日はレコード・ストア・デイ(RSD)でした。
毎年このRSDの日は、渋谷のレコード店界隈の空気が少しだけ変わるんですよね。
午前中の早い時間からレコード店の前に人が並び、開店後も店内では多くの人がレコードをワシャワシャと掘ったりしてちょっとしたお祭りみたいな雰囲気になります。
まぁ〜正直に言うと当店はRSDの協賛店ではないので、まったくの関係ナイので「あ〜ナンかやってるな〜」っていうカンジでそこまで強く意識しているワケでありませんケド。
例年通り、いつも通りの営業をしているってカンジですね。
トコロが今年は、前日の時点でちょっとした違和感がありました。
というのもお客さんから電話が何本か入ったんですよね。
「〇〇の入荷ありますか?」
「もし入るなら必ず購入するので取り置きお願いしたいんですが…」
そんな問い合わせが、複数回立て続けにあったんですよ。
で、その〇〇なんだけど、オイラまったく知らないアーティスト名だったんですよね〜(笑)
電話を切ったあとに調べてみたら、イケメン揃いのK-POPグループでした。
この瞬間、ちょっとした引っかかりがあった。
K-POPとレコード。
オイラの中では「ナンで?」って思うくらいホトンド結びつかなかった文脈だったんですよね。
でも同時に、こうも思った。
「ああ、レコードってココまで来たんだな…」って。
■ 渋谷の行列と、可視化されたブームの熱量
RSD当日、SNSを見ていると渋谷の大型店には開店前から長蛇の列の画像がポストされていました。
しかも並んでいるのは日本人だけじゃなくって外国人の姿もかなり多いんですよ。
ん〜あの光景は今のレコード人気を表す象徴な画像でしたね。
かつては一部のマニアやDJやコレクターのものだったレコードが、今や観光の目的にもなっている…つまり、レコードは「音楽メディア」であると同時に「カルチャー体験」になっているみたいな感覚ですね。
そんな中でつい先日、日本でもっともアクセス数が多いYahoo! JAPANのトップにもレコード関連の記事が掲載されていた。
この「33倍」という数字はインパクトがありますね〜ただ、マーケットの構造を冷静に見ると、もともと極端に縮小していた市場が戻ってきただけとも言えます。
つまり重要なのは数字そのものではなく、
「一度ホボ消えかけたアナログレコードというフォーマットが、再び社会の表舞台に戻ってきた」
という事実だと思うんですよね。
こういった現象がニュースとしての話題性になっているんでしょうね。
■ 現場の実感としてのレコード人気の継続
小規模で12インチシングル専門という極めて偏った品揃えのレコード店でもある当店でも、この流れはハッキリとカンジています。
特にココ1〜2年でレコードを聴き始めたばかりのビギナー層が増えてきたな〜って。
年齢でいうと20代前半から30代前半くらいの人が多いですね。日本人も外国人も両方この年齢層が際立っています。
面白いのは、12インチシングルがナンなのかを知らない人も多いコトです。
店に入ってきて、棚に並んだレコードを前にして立ち止まる。
ドコから見ればいいのかわからない…明らかに慣れていないっていうカンジが伝わってくるんですよね。
でも、その中で試聴して、コメントを読んで、少しずつ選び始める。
そしてナニのキッカケを掴んである瞬間に理解するんでしょうね。
「あ、コレって全部シングルなんだ…」って。
タブン、あんまり12インチシングルって見る機会が多くはナイんでしょうね。
でも、知っている曲とか見つけて「アレ?アルバムに収録されているのとちょっと違うかも?」ってなって興味を持ってもらえるみたいなパターンですね。
そこからリピートにつながるケースはかなり多いという印象です。
こういった流れを見ていると、レコード人気はまだ続いているって思うんですよね。
だけど、思うのは単純な拡大ではなく「質の変化」を伴っているんじゃないかなぁ〜って。
■ レコード市場は今どこにいるのか──成熟期という現在地
ココで少し視点を引いてみると、レコード市場は今ドコにいるのかというハナシになります。
いわゆるプロダクトライフサイクルで考えると、
導入 → 成長 → 成熟 → 衰退
という流れがある。
こういう図って見たコトあると思います。
レコードの場合は一度衰退してからの“再成長”なので少し特殊だけど、オイラの感覚だと現状はおそらく
「成長期終盤〜成熟期初期」
に差し掛かっているんじゃないかなぁ〜って思うんですよね。
まだ人は増えている。売上も伸びている。
でも一方で、誰でも入れる市場になってきている。
これはかなり重要な変化で、「広がりきった市場は、次に『選別』に向かう」んじゃないかなぁ〜って個人的には思っているんですよね。
まぁ〜実際にはどうなるかはわかりませんが。
■ 流行はドコまで来たのか──「広がりきった」という状態
RSDの行列、SNSの拡散、メディア露出などなど。
ココまで来ると、レコードはもう「流行としては広がりきった」状態にあるんじゃないかなともと思うんですよ。
ただ、ココで勘違いしちゃいけないのは、流行が広がりきる=終わりではない というコトです。
むしろココからが重要で、「じゃあ、ナニが残るのか」が問われるフェーズに入んじゃないかなってカンジているんですよね。
ん〜コレね…1990年代から2000年代初期のあのブームのはじまりから終焉までを経験しているからこそ、そういったコトがメチャ気になるんですよね。
まったくあの時のおんなじ状況を辿るとは思ってなくて、必ず次のフェーズにマーケット自体が移行してゆくんだと思います。
だけどオイラの経験したブームは、多くの場合DJプレイが目的でレコードはツールとしての需要だったんですよね。
そういった状況で、ツールだけではなくレコード自体がコレクションとしてのニーズが付随したってカンジでしたからね。
結局、DJプレイはデジタルに移行したコトで広がりきったレコードニーズは縮小してゆくワケですケドね。
■ 「選別」という静かな変化が始まっている
で、思っているのが「選別」なんじゃないかなって。
最近の店頭を見ていると、その変化はすでに始まっているかもしれないコトはナンとなくであるがカンジているんですよね。
当店では、お客さんが探しているレコードって指名買いとレコード棚掘りの比率はだいたい4:6なんですよ。
しかもレコード棚を掘って良さげなレコードを探している人は明らかに時間をかけるようになってきているという印象もある。
試聴して、コメントを読んで、スマホでチェックして、悩んで、また戻ってくる。
一方で、SNSでバズった曲やヒット曲は依然として強い。
つまり今は、
「受動的な消費」と「能動的な選択」が混在している状態なんじゃないかなって思うんですよね。
だけど、この状態は長くは続かないんじゃないかなぁ。
やがてどちらかに寄っていくと思うんですよ。
そしておそらく残るのは、
「自分で選べる人」
なんじゃないかな〜って思うんですよね。
■ レコードは商品か、それとも文化か
ココで改めて考えたいのが、レコードの本質です。
オイラの中では、レコードは単なる商品ではナイって思っているんですよね。
モチロン音楽を聴くためのメディアではあるのですが、でもそれだけじゃないっ!っていうカンジですね。
- 手に入れたい
- 持っていたい
- 集めたい
そういう感情も含めて成立しているんだと思うのです。
つまり、
「レコードは『文化的消費』の側面が強い」メディアだと思うのであります。
そして文化というものは、流行とは違って残るモノなんだともカンジていたりします。
■ 文化として定着するために必要なコト
じゃあ、レコードが文化として定着するために何が必要かってコトですよ。
コレは自分の中では結構ハッキリとしていると思っていて、カンタンに言うと
「そのレコードの文脈を伝えるコト」
なんじゃないかなって思うんですよね〜もうコレに尽きるかもしれません。
曲の背景、その時代、アーティストの立ち位置みたいなそういう情報があるかないかで、同じ音でもまったく違って聴こえるって結構アルと思うんですよね。
まぁ〜感情的な部分も含めてですけどね。
だから当店ではシッカリとそのレコードのコメントを書くというコトにコダワッていたりします。
正直、在庫しているレコードすべてにその曲のコメントを付けるっていうのはめちゃくちゃ手間はかかりますが…(笑)
でもそれが誰かの「選ぶ理由」になるならやっぱり意味があると思うし、コメントがキッカケで聴いてみたら良かったから購入していただけたりしたら、やっぱり報われる気がしますしね。
■ 受動から能動へ──これからのレコードとの向き合い方
レコードを手にしたばかりの頃って、誰しも「ナニを選べばいいのか」って戸惑うものだと思うんですよね。レコード店に来て、棚にずらっと並んだレコードを前にして、ドコから見ればいいのかもわからない。コレってホントに多くの人が通る道だと思うんですよね。
だから最初のうちは、世の中の流行やシーンの大きな流れに身を任せるのはごく自然なコトだと思います。
City Popが流行っていればそれを聴くし、Lo-Fiが流行っていればそれを探す…そうやって入口に立つのは、むしろ健全な流れだと思います。
でも、レコードの面白さって、その先にあると思うんですよね。
「自分だけの耳やセンス」を育てていくみたいなプロセス…ココにこそ、アナログレコードという文化の本当の醍醐味があるんじゃないかなぁ。
じゃあ、その「耳」ってどうやって育てるのか…。
コレはすごくシンプルで、「受け身で聴くだけじゃなくて、自分から掘るコト」もうコレに尽きると思うんです。
たとえば、自分が「いいな」と思ったアーティストがいたとします。
その人がどんな音楽に影響を受けているのかを辿ってみる。
あるいは、信頼しているDJがプレイしていた1曲があったら、そこから派生して同じレーベルやプロデューサーを調べてみる、みたいにしてそうやって「音の源流」を自分で辿っていく。
このプロセスがめちゃくちゃ大事なんだと思うんです。
ただ有名なレコードを知識として持っているだけじゃなくて、
「なぜそれが良いのか」を自分なりに感じ取る
ココまでいくと、音楽の聴こえ方がガラッと変わると思うんですよ。
そして気がつくと、誰かに勧められたものじゃなくて、
「自分で選んだ1枚」
が増えていく。
この積み重ねが、その人のセンスになっていくんだと思う。
オイラはよく思うんですけど、レコードってただの音楽メディアじゃなくて、「出会い方で価値が変わるもの」だと思うんですよね。
流れてきた音をなんとなく聴くのも悪くない…でも、自分から掘って出会った音って、やっぱり別物なんですよね。
その違いを知った時、ただの「リスナー」だった人が、「自分の美学を持ったミュージック・ラバー」に変わる…そんな瞬間が訪れるんじゃないかなと思います。
■ 結論:流行の終わりではなく、選別の始まり
今のレコード人気は、確実に成熟期に入りつつある。
そしてブームはいつか落ち着く。
もうコレは避けられないでしょう。
でも、それは終わりじゃなくって、むしろ「選別の始まり」になるんじゃなかいかなって思います。
流行の中で手に取られたレコードの中から、本当に必要なものだけが残っていく。
その積み重ねが、文化になるんじゃないかな…って。
■ 最後に──レコードは出会い方で変わる
キット、知らないだけで、良いレコードは無数にあるんですよ。
でも、受け身のままだとそういったレコードって出会えないですよ。
なので、少しだけでイイから、自分から掘ってみてほしいな〜って思うんですよね。
レコード店がこんなコト言うのってなんだかポジショントーク的ではありますけど、レコード店に訪れて「〇〇ありますか?」って訊いて「ありません」って言われたら「さようなら〜」って帰っちゃうのは、なんだか折角の出会いの機会をのがしているような気がするんですよね。
STEVE BENDER / THE FINAL THING の試聴
next recordsのサイトでSTEVE BENDER のレコードを探してみる
レコードに針を落とす理由が「流行」じゃなくなった時、その人にとってレコードは、単なる音楽じゃなくて、ひとつの文化になるってやっぱりアルと思うんです。
そして当店は、その「最初の1枚」に出会うキッカケになる場所でありたいと思っているんですよね〜。
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