渋谷レコード店日記 - アナログレコードコレクションのススメ

東京 渋谷の12インチシングル専門の中古レコード屋next. recordsで日々思ったコトやレコードについて書いてます

タグ:レコードビジネス

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6月の売上を見て、ちょっと焦った

毎月の月初になると、オイラと共同経営者である相棒のN氏と前月の売上を集計しながらミーティングをしています。

今月の売れ行きはどうだったのか、どういった内容のレコードがよく動いたのかってカンジのコトをハナシしているんですよね、まぁ〜長年、レコード店を続けていると、この時間は毎月のルーティンのようなものです。

そんなある日。

前月の売上データを見ながら、相棒のN氏がから

「6月の免税売上、めっちゃ減ってるぞ。」って指摘がありました。

当店では海外から旅行で来られたお客さんには免税販売を行っています、そのため、月全体の売上の中で「外国人旅行者のお客様がどれくらい購入されたのか」が数字でハッキリと解るんですよね。

で、データを確認すると、6月の免税売上は前月の5月と比べて40%以上もダウンしていました。

「えっ?」思わず画面を二度見しました。

渋谷の街を歩けば、相変わらず海外からの旅行者であふれています。ニュースでも「訪日外国人数は過去最高を更新」という話題が毎月のように流れていました。

オイラ自身もこのブログで、「本当に外国人のお客様が増えました。」っていうコトを何度も書いてきました。

実際、お店に立っていても日本語より英語で接客している時間のほうが長い日も珍しくありません。

そんな状況だったので、

「これからもしばらくは、この流れが続くのかな〜」なんてどこかで思っていたのかもしれません。

だからこそ、6月の数字は正直かなり意外でした。

もちろん、長年商売をやっていれば、月ごとの売上に多少の波がことは十分理解していますよ。

売上なんて毎月同じになるワケがありません、良い月もあれば悪い月もある、そんなコトは何度も経験してきました。

でも、40%以上ダウンという数字を見ると、さすがにココロがざわつきます。

「ナニがあったんだろう?」とか「何かしくじったかな?」ってアタマの中ではいろいろな考えが駆け巡りました。

でも、いくら考えても思い当たる節がないんでうよね。

ホームページの更新もいつも通り続けていましたし、Googleマップの情報もこまめにアップデートしてましたし、SNSもサボっていません。

むしろ集客に関しては、手を抜いたという感覚はまったくないんですよ、だから余計に分からない。

原因が分からないというのは、経営者にとって一番厄介なんですよね。

原因さえ分かれば対策はいくらでも考えられます。でも、理由が見えないと、どこを改善すればイイのかさえ分からないんですよ。

実は、この時点ではオイラが本当に不安にカンジていたことを、自分自身でもまだ整理できていませんでした。

「外国人のお客さんが減ったコト」が怖かったのか、それとも別のナニかだったのか。この時のオイラには、その答えがまだ見えていなかったんですよね。

「6月が悪かった」のではなく、「5月が良すぎた」のかもしれない

6月の数字を見たあと、しばらくその理由を考えていたんですよね。

「ナニが原因なんだろう。」って。

相棒N氏とも、「ナニか思い当たるコトってある?」そんなハナシを何度かしたんだけど答えは出ません。

店頭に立っていた感覚としては、6月になって急に海外からののお客さんが減ったという印象は特にないんですよね。

相変わらず渋谷には海外からの旅行者がたくさん歩いていましたし、お店にも外国人のお客さんは結構来店してくれてたしね、だから余計に不思議だったんですよ。

そこで、少し冷静になってココ数ヶ月の数字を見直してみると、あることに気付きました。

4月と比べると、5月は海外のお客様の売上が約15%ホド伸びていたんですよね〜つまり、6月が特別悪かったというよりも、5月が出来すぎだった可能性もあるワケです。

さらにJNTO(日本政府観光局)の統計を調べてみると、6月は夏休みシーズン前というコトもあり、訪日外国人数がやや落ち着く時期でもあるようです。

「あぁ、そういう季節要因もあるのか。」って少しだけ安心しました。

でも、不思議なことに心のモヤモヤは消えないんですよね…数字だけ見れば、それほど悲観する必要はないんですよ、アタマでは理解できる…それなのに、どこか引っ掛かっている。

「一体、何をそんなに心配しているんだろう?」ってその時、フト思ったんです。

もしかすると、不安なのは売上が減ったコトじゃないのかもしれない。

売上よりも気になった「売上の中身」

考えてみれば、この数年でお店の景色は大きく変わりました。

2000年にNext Recordsを始めた頃、お客様は100%日本人でした。

当時はDJブームの真っ只中でレコードはDJプレイのための道具という側面が強く、お店に来られるのもホトンドが国内のお客さんでした。

ところが、コロナ禍が明けると状況は一変します。

世界的なアナログレコード人気、そして円安、さらにインバウンド需要の急回復。

いくつもの追い風が重なり、お店には海外からのお客さんがどんどん増えていきました。

そんな中でオンライン・サイトの多言語化を進めたり、Googleマップの情報を充実させたり、SNSに毎日オススメレコードを紹介したりってカンジで自分達なりにできる準備も積み重ねてきました。

その成果もあってか、

「Googleマップを見て来ました。」

「インスタを読んで来ました。」

「日本へ来たら最初にこの店へ来ると決めていました。」

そんなコトバをかけていただく機会も増えました、ホントにありがたいコトです。

最近では、月によっては店頭売上の半分近くが免税販売になるコトもあるんですよね。

店内では英語で接客している時間のほうが長い日もあったり、海外のお客さんで賑わったりする日も珍しくありません。

「こんな小さな店に世界中から人が来てくれるなんて。」ってカンジで最初は純粋に嬉しかったんです。

でも、ある日ふと数字を見て思ったんですよ「コレって、もしかして外国人のお客さんに頼り始めているんじゃないか?」って。

もちろん、お客さんが増えること自体は嬉しいことです。商売をしている以上、売上が伸びるのはホントありがたいっ!

でも、その売上の中身が以前とは大きく変わってきている…そこにオイラは少しずつ違和感をカンジるようになりました。

「追い風」は、自分では止めることも吹かせることもできない

海外からお客さんが増えた理由を考えると、そこには自分たちの努力だけでは説明できないものがあります。

・円安。

・世界的なレコード人気。

・日本旅行ブーム。

・国際情勢。

こうした外部環境が重なったコトで、お店にも大きな追い風が吹いているんでしょうね〜もちろん、その追い風を受け止められるように準備してきた自負はあります。

やっぱりそれなりの努力はしてきたつもりなので、ナニもしないで今の状況になったワケではありません。

でも、それでも思うんですよね…追い風そのものは、自分のチカラではありません。というか風向きは、自分では変えられないし、吹く日もあれば、止む日もある。

そして、今回の6月の数字を見たとき、オイラが本当に怖かったのは、そのコトだったのかもしれません。

店頭に立っていると、世界中のレコード好きと出会う

2000年にお店を始めた頃、まさか海外のお客さんがNext Recordsの売上の中心になる日が来るなんて、想像もしていませんでした。

当時のオイラ達は、むしろ海外へ買い付けに行く側でした。

アメリカやヨーロッパへ足を運び、現地のレコードショップやディーラーから直接レコードを仕入れる。その頃は、旅費や経費をかけても海外のほうがレコードは安く、日本で販売しても十分商売になりました。

20年以上前でも海外のお客さんお店に来られるコトはたまにありましたよ。

でも、その多くは日本の販売価格を見て「こんな値段で売れるの?」って驚いていました。

「レコードを日本へ持ってきたら高く買い取ってくれるの?」なんて訊かれたコトもありました。

つまり当時は、日本が「買う側」ではなく、海外が「売る側」だったんですよね。

それが今では逆転しています。

「日本へ来たら、まずレコード屋さんへ行きたい。」そんな外国人旅行者がメチャ増えました。

しかも、お目当ては日本盤だけではなく、US盤やEU盤を探しに来るお客様もたくさんいます。

「自分の国では欲しい盤が見つからない。」とか「店が減ってしまった。」や「品揃えが昔ほど良くない。」って現地のレコード店の状況をハナシしてくれるコトもあります。

20年前のオイラがこの光景を見たら、きっと信じられないでしょうね。

同じレコードでも、見ている景色は違う

店頭に立っていると、日本のお客さんと海外のお客さんでは、レコードの選び方にも違いがあることに気付きます。

もちろん人それぞれなので一概には言えませんが、海外のお客様は決断がとても早いんですよ。

日本人なら、「ちょっと考えます。」とか「また来ます。」となりそうな高額なレア盤でも、「I'll take it.(これにするよ。)」ってカンジでスパーンと買っていただけるコトがあるんですよね。

また、面白いのは好みの違いです。

日本ではなかなか動かなかったタイトルが、海外のお客さんにはすぐ売れてしまうってケースもよくあります。

逆に、日本のお客さんが熱心に探される盤が、海外ではあまり反応がないコトもあります。

同じレコードなのに、国が違えば価値の感じ方も違う…店頭に立っていると、そんな文化の違いを毎日のようにカンジるんですよね〜これは、レコードという趣味の面白さでもあります。

「この店、最高だね!」

海外のお客様は、とてもストレートです。

店内でさりげなくそのお客さんが好きそうなレコードをプレイすると、「この曲、めちゃくちゃカッコいいね!」と言って、そのまま購入してくださることもあります。

ときには、「この店、本当に品揃えが最高だよ。」ってレコード店主にとって最高のコトバを言ってくれるコトあります。

もちろん商売ですから、レコードが売れることは嬉しいです、でも、それ以上に嬉しいのは、「この店へ来て良かった。」ってそうカンジてもらえたことが伝わる瞬間なんですよね。

12坪しかない、本当に小さなレコード店です。

扱っているのも、オリジナル盤12インチシングルという、レコードの世界でもかなりニッチなジャンルのみ…それでも、その小さな店の棚の中から、お客さんが何年も探し続けていた1枚を見つけてくれる。その瞬間に立ち会えることは、20年以上経った今でも「レコード店をやっていて良かった」と思える瞬間でもあります。

でも、その景色が当たり前になってはいけない

ココ数年、お店の景色はホントに大きく変わりました。

海外からお客さんが次々と訪れる…そんな毎日が続いていると、人は不思議なもので、それが当たり前の景色になっていきます。

でも、本当は違うんですよ20年以上お店を続けてきたからこそ分かります。

商売の景色は、決してずっと同じではありません。

DJブームもありました。

レコード不況もありました。

コロナ禍もありました。

そして今は、レコードブームとインバウンドという2つの追い風が同時に吹いています。

振り返れば、その時々で「これが当たり前だ」と思っていた景色は、いつの間にか変わってきました。

だから今の景色も、永遠ではない…ってそう思っている自分がいるんですよね。

外国人のお客さんが増えたコトは、本当にありがたいことです、でもその景色を「ずっと続く前提」で考えてしまうと、いつか足元をすくわれるかもしれない。

6月の売上を見てオイラが感じた違和感は、少しずつそんな考えへと変わっていったのです。

「追い風」は実力ではない。だからこそ、次の一手を考える。

オイラは昔から心配性です。たぶん、自分でも笑ってしまうくらい心配性です。

少しでも気になることがあると、「これ、大丈夫かな?」「ナニか対策できることはないかな?」と考えてしまいます。

一方で、共同経営者の相棒N氏は、オイラとは正反対で驚くほど楽観的なんですよ。

オイラが「このままだとヤバいかもしれない。」と言うと、

「まぁ何とかなるやろ。」なんて返ってくるコトもあります。

20年以上一緒に店を続けてきましたが、この正反対の性格が、結果的にはお店にとってちょうど良いバランスになっていたのかもしれません。

もしオイラ1人だったら、心配しすぎて前に進めなかったかもしれませんからね。

商売というのは面白いもので、悲観と楽観、その両方が必要なのかもしれませんね。

「もうダメだ」と思ったことは一度もない

時々、「長年も商売をやっていると、何度も危機があったでしょう?」って訊かれるコトがあります。

でも実は、「もう店を閉めるしかない。」ってそう思ったことは一度もないんですよね。

もちろん、不安な時は何度もありましたよ。

DJブームが終わった時もそうです。

オイラがお店を始めた2000年頃は、レコードはDJカルチャーの真っ只中でした。

ところが時代は変わり、DJはアナログからデジタルへ置き換わってレコード需要は大きく変化しました。

あの頃、「このままDJニーズだけに頼って店頭販売していたら厳しいかもしれない。」

そう感じて、ECへチカラを入れるようになりました。

また、東京オリンピック前にはGoogleマップの重要性を知り、少しずつ情報を充実させてきました。

結果的にオリンピックはコロナで延期になり、外国人旅行者も激減しましたケドね。

でも、その時に積み重ねていたコトが、コロナ禍明けに大きなチカラになりました。

ブログもホームページもInstagramも全部そうです。

振り返ってみると、「今すぐ成果が出るから始めた。」というより「将来役に立つかもしれない。」

そんな気持ちで続けてきたコトばかりです。

種を蒔き続けるしかない

今回の出来事を振り返っていて、自分でもひとつ気付いたコトがあります。

オイラは昔から、「未来のために種を蒔く。」っていうコトを無意識に続けてきたのかもって。

20年以上書き続けているこのブログも途中で何度も「もうやめようかな。」と思ったか分かりません。

毎週長文の記事を書くのは、本当に骨が折れます。

すると必ず相棒のN氏が、

「Next Recordsはやる気なくなったって思われるぞ。いいのか?」って喝を入れるんですよね…そのたびに、「ソレはちょっとイヤだな〜」って思い続けてきました。

今は動画全盛の時代です…正直、ブログなんて時代遅れだと思われるコトもあるでしょう。

でも20年以上積み重ねた記事は、お店の歴史そのものになりました。

Google検索で当店を見つけてくれる方。

ブログを読んで来店してくださる方。

その1つひとつが、少しずつ積み重なって今があると思うんですよ。

ブログだけで売上が伸びたわけではありませんし、Googleマップだけでもありません、ホームページだけでもありません…全部が少しずつ、それぞれは小さな種でした。

でも、長い時間をかけて育てたコトで、お店を支える1本一本の柱になってくれたってカンジですね。

太った牛と痩せた牛」というハナシ

オイラは商売をしてゆく上で時々思い出すハナシがあります。

ユダヤの知恵として知られる「太った牛と痩せた牛」という逸話です。

豊作の年があれば、不作の年もある。だから、豊かな時に蓄え、痩せた時に備える。

細かな解釈はいろいろありますが、オイラはこの考え方が昔から好きでした。

今のレコード業界を見ていると、世界的なアナログブームがあります。

そこへ円安やインバウンド需要まで重なっています。

小さな12坪のレコード店にも、その恩恵が確かに届いています。

これは本当にありがたいことです。

でも一方で、「コレはちょっと出来すぎじゃないか?」という気持ちもあります。

もし円高になったら。

もし世界経済が変わったら。

もし旅行者が減ったら。

その時、お店はどうなるのか…そう考えるのは、決して悲観しているからではありません。

長年レコード店を続けてきて分かったコトは「追い風は、いつか止む。」というコトです。 

これは悲しいハナシではなく、ごく自然なコトです。

だからこそ、追い風が吹いている今のうちに、風が止んでも走れるお店にしておかなければならない。

オイラが今回の記事を書こうと思った理由も、実はそこにあるのかもしれません。

6月の免税売上が40%下がったことを書きたかったわけではなくってその数字を見た瞬間、自分の中に芽生えた「このままでいいのかな。」という気持ちを、一度整理してみたかったんでしょうね。

そして書きながら、少しずつ分かってきました。

オイラが怖かったのは、売上がダウンしたコトではではなくって「追い風を、いつの間にか実力だと勘違いしてしまうこと。」だったのかもしれませんね。


BLAKE BAXTER / LA LA SONG
BLAKE BAXTER / LA LA SONG の試聴
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次の10年も、この店を続けるために

今回の記事を書き始めたキッカケは、6月の免税売上が前月より40%以上減ったコトでした。

でも、書き進めながら改めて感じたのは、その数字そのものよりも、自分の頭の中を整理したかったんだということです。

長年、レコード店を続けてきました…振り返ると、ホントにいろいろな時代がありました。

DJブームがあった。

DJブームが終わった。

レコード不況もあった。

ECへ大きく舵を切った時期もありました。

コロナ禍では、「この先どうなるんだろう」と誰もが不安でした。

そして今は、世界的なレコードブームとインバウンドというダブルの大きな追い風が吹いています。

その時々で、お店の景色は少しずつ変わってきました。

で、思ったのは「時代が変わるなら、お店も変わらなければいけない。」というコトです。

ブログにインスタ、HPのリニューアルと様々なコトをやってきましたがどれも最初から大きな成果が出たワケではありません。

むしろ、「これ、本当に意味あるのかな。」と思ったコトのほうが多かったくらいです。

でも、20年以上ブログを書き続けた今だからこそ言えます。

小さな積み重ねは、ある日突然、お店の大きな財産になります。

気付けばブログはお店の歴史になり、GoogleマップやInstagramもお店を知っていただく大切な入口になっていました。

結局、お店を支えてくれているのは、ひとつの大きな成功ではなく、小さな積み重ねなんですよね。

だから、今回の出来事でオイラが考えたコトも、とてもシンプルです。

インバウンドは、お店にとって本当にありがたい存在です。

でも、その一方で、「外国人のお客様が来なくなったら終わり。」って、そんな店にはしたくないんですよね。

国内のお客さんがいて、ECがあって、ブログがあって、Google検索から見つけてくださる方がいて、海外のお客さんも来てくださる…そんなふうに、いくつもの柱で支えられているお店のほうが、きっと強いって思うんですよね。

追い風は、もちろん歓迎です。でも、お店を支える土台はソコじゃない。土台になるのは、毎日の積み重ねです。

そして、その積み重ねを続けることが、次の10年、その先の10年へつながっていくんじゃないかなってって思うんです。



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26年、レコード店を続けてきて思うコト

渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を始めて今年で26年になります。

26年…ん〜改めて数字にすると結構長いですよね〜。

でも、店をやっている本人としては、正直そこまで「26年も続けたぞい!ドヤっ!」っていう感覚は全然ナイんですよね〜もうホント、毎日店を開けて、レコードを販売して、仕入れて、盤を磨いて、値段を付けて、お客さんと話して、また次の日店を開ける…というその繰り返しを続けていたら、いつの間にか26年経っていたという感覚のほうが近いですね。

ただ、長くレコード店を続けていると、時々「店を続けてきた時間」そのものを強く実感する瞬間があったりします。

先日、オーストラリアから来た30代くらいのお客さんとハナシした時も、まさにそんな瞬間でした。


海外から渋谷へ、レコードを掘りに来る人たち

そのお客さんは以前にも何度か来店してくれていたらしく、日本に訪れた時は毎回必ずNextへ訪れているとのコトでした。

ちなみに記憶力がショボショボなオイラは、まったく覚えていなかったですが…。

免税販売だったのでパスポートを見せてもらったのだけど、そこには物凄い数の入国スタンプが押されていましたね。

「かなり日本に来てるんですね〜」ってそう声をかけると、彼は笑いながらこう言った。

「レコードを日本に買い付けに来てるんですよ」

あ〜ナルホドなぁ〜って思いました。

最近、海外から来るお客さんは本当に多いというハナシはこのブログではさんざん記事に取り上げています。

アメリカやヨーロッパはもちろんだけど、オーストラリアからのお客さんもメチャ増えている印象です。当店調べだとオーストラリアは国籍別来店数確実にベスト3にランキングしているくらいですからね。

オイラ自身、以前から「オーストラリアってかなりレコード人気が高いんだろうな」という感覚は持っていた。

実際、店に来るオーストラリア人のお客さんはみんな熱量が高いんですよ…レコードを単なるファッションや流行としてではなく、文化としてしっかり楽しんでいる人が多い印象が伝わってきますしね。

そして一般のレコード好きだけでなく海外のディーラーやバイヤーにとって、日本の中古レコード市場はいまだにかなり魅力的な存在なようです。

特に90年代から2000年代にかけて、世間ではCDがメインの音楽メディアにも関わらず日本には大量の輸入されたレコード盤が流通していましたしね。

しかも日本人は比較的レコードを丁寧に扱う人が多いしね、だから海外から見ると日本には状態の良いレコードが大量に存在しているように見えるワケってコトですね。

フツーにレコード好きで日本に訪れる人だけでなく、買い付け目的で来日する人も一定数いるんでしょうね〜あんまり自分から「買い付けに来ました〜!」って自分から言う人は多くありませんケドね。

実際、オイラが気がついていないだけでの買い付け目的で海外からレコードを探しに来る人は多いと思います。

でも、その日驚いたのは、彼が単なるフツーのレコード好きではなかったコトでした。


「アナタのお店を参考にしました」と言われた日

「実は3ヶ月くらい前に、自分のレコード店を始めたんです」

そう聞かされた瞬間、オイラは思わず「おぉ!ナイスっ!」と声を上げた。

ココ1年くらい彼は、日本へ観光に来ていたワケではなく、自分のお店をオープンさせるためにレコードの仕入れのために何度も来日していたそうです。

それだけでも十分興味深かったのだけど、そのあと彼が言ったコトバに、オイラはさらに驚きました。

「実は、お店を始める時にアナタのお店をかなり参考にしたんですよ」

ん〜コレは本当に意外だった。

26年間店を続けてきたけれど、「アナタの店を参考にした」と直接言われたのは初めてだったんですよね。

ん〜まぁ、同業者からそんなコトを言われちゃうと正直な気持ち、ちょっとウレシイですね〜。

でも同時に、どこか不思議な感覚もありました。

オイラ自身、自分の店をそんなふうに見たコトがあまり無かったからなんですよね。

オイラにとってこの店は、毎日の仕事場であり、生活そのものでもある…レコードを仕入れて、店頭に並べて、お客さんと音楽のハナシをして、また次のレコードを探すという、その積み重ねを26年間続けてきただけで、「理想の店を作ろう」とか「誰かに影響を与えよう」とか、そんなコトを意識してきたワケではないからです。

だけど、オーストラリアの若い店主は、そんなオイラの店を見て、「こんな店をやりたい」とカンジていた…。

その事実は、なんだか妙に胸に残った。


12インチシングル専門店への憧れ

しかも彼も、オイラと同じく12インチシングルが大好きだとのコト。

「本当はアナタのお店みたいに、12インチシングル専門店にしたいんですよ」

そう言ったあと、彼は少し困ったような表情を浮かべながら続けた。

「でも、実際にやるとなると難しいんですよね」

そのコトバを聞いた時、オイラはものすごくリアルな悩みだな〜って思いました。

彼の店はまだ始まって3ヶ月。今はアルバムも扱っているし、7インチも置いている。CDも扱っていてジャンルもある程度広げてレコード店をやっているそうです。

その理由はシンプルでした。

商品構成を絞りすぎると、お客さんが減ってしまうから。

つまり彼は、

「自分の理想の店を作りたい」

という気持ちと、

「でも現実には売上も必要」

という問題の間で揺れているワケです。

コレはホントに難しい問題だと思います。

しかも厄介なのは、この問題に「コレが正解だっ!」という明確な答えがナイことです。

理想を優先すれば、間口は狭くなる。

間口が狭くなれば、当然お客さんも減る可能性がある。

だから経営のコトを考えれば、もっと多くのお客さんに届く商品構成にしたほうがイイ。

でも、そこを広げすぎると、今度は「自分が本当にやりたかった店」からどんどん離れていく。

個人店をやっている人なら、この感覚はきっとよく分かると思う。

コレってレコード店に限らないですよね。

洋服屋でも、飲食店でも、雑貨店でも、結局みんな同じトコロで悩んでいるんじゃないでしょうかね〜。

自分が好きなアイテムだけで店を作りたい。

でも、好きなものだけでは店は続かないかもしれない。

その現実を前にすると、結構悩む店主は多いと思います。

彼もまさに、その入口に立っているように見えました。


「どうして12インチ専門店でやっていけるんですか?」

そしてハナシしているうちに、彼がオイラにこんな質問をしてきた。

「どうして、12インチシングルだけで26年もやっていけるんですか?」

かなりド直球の質問ですね〜(笑)

だけど、オイラはその質問に対して、意外なくらいうまく答えられなかった。

というより、改めて訊かれるまで、オイラ自身あまり深く考えたコトが無かったんですよね。

「どうして成立しているんだろう?」

そう考え始めると、逆に自分でもよく分からなくなってきた。

でも、しばらく考えてみて思ったのは、やっぱり「時代と場所」が大きかったんじゃないかというコトでした。


2000年前後の渋谷とレコードカルチャー

オイラが店を始めたのは2000年前後。

今とはレコードを取り巻く空気がまるで違っていました。

まだCDが圧倒的に強かった時代だけど、一方でDJカルチャーはものすごく盛り上がっていて渋谷にはクラブがたくさんあったし、宇田川町周辺には大小さまざまなレコード店がひしめき合っていた。

当時の渋谷には、「レコードを探しに行く」という文化そのものが存在していたと思います。

全国からDJや音楽好きが集まり、何軒もレコード店をハシゴして巡っていた、それぞれのお店には毎週新譜が入荷し、EUやUSから輸入された12インチシングルが大量に積まれていた。

つまり、12インチシングルというフォーマット自体に、まだ圧倒的な需要があった時代でした。

だから、オリジナル盤12インチ専門店という営業スタイルも成立しやすかったのかもしれません。

でも今、同じことをゼロから始めたらどうだろう。

おそらく、かなり難しいと思う。

時代が違う。

音楽の聴かれ方も違う。

レコードの意味も変わった。

昔はあくまでもDJの「道具」だった12インチが、今では「趣味」や「コレクション」としての側面を強く持っている。

もちろん、今のレコードブームには素晴らしい部分もたくさんあると思います。

若い世代がレコードに興味を持ってくれるのは本当に嬉しいし、アナログという文化が再評価されているコト自体は素晴らしいコトだと思う。

でも、オイラが店を始めた頃とは、市場の成り立ちが全然違うんですよね。

だからオイラは、彼にカンタンに「こうすればいいよ」とは言えませんでした。


レコード店は「思想」が棚に出る商売

むしろ、

「このレコードをそのまま真似しなくてもいいと思うよ」

と話した。

というのも、店って単純に商品構成だけで出来上がるものじゃないと思うんですよね。

もっと言えば、レコード店って店主の思想がそのまま棚に出る商売だと思っている。

同じHouseを扱っていても、同じHipHopを扱っていても、店によって置いてある盤は全然違うと思うんですよ

値付けも違う。

盤質の基準も違う。

棚の並べ方も違う。

その違いって結局、店主の価値観なんだと思うんですよね。

つまり、レコード店の棚って、「その人がどんな音楽をどう愛してきたか」が全部出ると思うんですよ。

そういった意味ではレコード店ってすごく面白い商売だと思うんですよね。

単なる物販ではない。

そこには、その店主がどんな時代を通ってきて、何に衝撃を受けて、どんなレコードに夢中になってきたのかが、自然と滲み出るみたいなカンジですね。

お客さんも多分、そういう部分を敏感に感じ取っていると思います。

「なんかこの店好きなんだよな」

っていう感覚の正体って、結局そこの部分なんじゃないかな〜とも思うんですよ。


理想だけでは店は続かない

個人的には今でも、理想だけでは店は続かない…って思うんですよ。

だけど、理想がない店はただレコードを並べているだけの売場になる…とも思っているワケです。

ただ、誤解してほしくないのは、オイラ自身もその答えを見つけたワケではないというコトなんですよね。

26年、レコード店を続けているケド、実際は今でも悩みまくっているんですよ。

もっとこうしたほうがイイんじゃないか。

今の時代にこのやり方でいいんだろうか。

もっと違う商品を増やすべきなのか。

逆に、もっと絞るべきなのか。

ん〜ホントもう毎日のようにこんなコトを考えているワケです。

だから、オーストラリアの若い店主の悩みは、全然他人事に思えないですよね。

店を始めて2ヶ月でも、26年でも、本質的には同じコトで悩んでいるのかもしれません。

ソレって、なんだか面白いことだな〜とも思いますね。


誰かの理想の店になっていた

そして今回の一件で、やっぱりイチバン印象に残ったのは、当店が知らないうちに「誰かの理想の店」になっていたコトでした。

別にそんなつもりで店をやってきたわけじゃないんですケドね。

ただ、こんなレコード店があれば自分はウレシイなぁ〜って思うように好きなレコードを並べ続けてきただけなんですケドね。

でも、その積み重ねを見ていた人がいた。

しかも海の向こうで。

そう考えると、店って単に商品を売る場所じゃないのかもしれませんね。

ソコに流れている空気とか、棚のクセとか、ジャンルの別け方とか選盤の偏りとか、そういうもの全部含めて、店にはその人の生き方みたいなものが出ているみたいなカンジがしますね。

そして時々、それが誰かにとっての「理想」になるコトがある。

オーストラリアから来た若いレコード店主とのハナシは、そんなコトを改めてオイラに考えさせてくれました。


GENOBIA JETER / ALL OF MY LOVE
GENOBIA JETER / ALL OF MY LOVE の試聴
next recordsのサイトでGENOBIA JETERのレコードを探してみる

「仕入れはどうやっているの?」って若いレコード店主に訊くと買い付けが半分くらいで、一般からの買い取りや特にレアなタイトルはDiscogsとかから仕入れているって言ってました。

「買い付けってドコに行くの?」って訊くと「ホトンド日本だよ」って…。

まぁ〜確かに今はメチャ円安だし、海外から見ると日本は物価がメチャ安く見えますからね〜しかもレコードの仕入れに関しては、アメリカやヨーロッパへ出向くよりも効率も良さそうですしね。

地元での買い取りに関しては、時々オファーがあるケド、良いタイトルは全然ナイって言っていました。

やっぱり12インチシングルに関しては80年代〜2000年代にその国でどれくらいのDJカルチャーが浸透していたのかっていうのがその国のレコードが存在している量に深くカンケーしていますからね。

そういった意味では、12インチシングルに関しては日本は、かなり特殊なのかもしれませんね。


30分くらい会話を交わしたんですが、彼がかなり日本語を話すコトが出来たので結構、深いトコロまでオーストラリアのレコード事情を聞くコトが出来ました。

「コレが私のお店です」ってスマホに保存されている彼のお店の写真や動画を見せてもらったのですが、メチャ広くてお洒落なレコードでした。

しかも、多くのお客さんがモリモリレコードを掘ってる様子の動画は、ちょっと羨ましかったかも(笑)

オープンして3ヶ月でこの盛況ブリ、しかもお店もお洒落でカッコいい…オイラが参考にしたいくらいですよ…マジで(笑)


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