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午前0時、なぜオイラにこんなリールを薦めてくるんだ?

オイラは毎日、店頭で販売しているレコードの中から1枚を選んでInstagramで紹介しています。

アーティストと曲名を書いて「本日のオススメ!」で終わりではなく、その曲が生まれた背景だったり、歌詞の意味だったり、当時どんな音楽が流行していたのかだったり、ときにはB面に収録された別バージョンの面白さだったり、そんなことをアレコレ調べながら、結構長ったらしい文章を書いています(笑)。

原稿そのものはだいたい午前中に書き終えるのですが、投稿するのは日付が変わる午前0時頃。

毎晩スマホのアラームを0時にセットしてあって、それが鳴ると、

「そろそろ投稿するか…」とスマホを開くのが日課になっています。

ある晩も、いつものようにInstagramを開いて、フォローしている人の投稿なんかをチラチラ眺めていました。

すると、オススメに1本のリール動画が出てきました。

AIで生成したような、それっぽい動画やイラストを使って、玩具メーカー タカラトミーの「トミカ」の販売戦略について解説している動画でした。

レコードとミニカー。

まあ、関係ナイですよね(笑)

トコロが、なぜか見てしまった。

その動画では、比較的安価なミニカーを入口にして子供に興味を持ってもらい、そこからミニカーを飾ったり収納したりして遊ぶ大型のパーキング玩具などへ購入をつなげていく、というようなビジネスの仕組みが解説されていました。

それが実際にメーカー側の意図した販売戦略なのかはオイラには分かりません。あくまで、そのリールではそう解説されていたというハナシです。

でも、「ナルホドね〜」と思った。

しかも、ちょっと不思議な偶然がありました。

というのもその数日前、店のスタッフが東京駅の八重洲にあるトミカのオフィシャルショップの前を通ったらしく、「ものスゴいお客さんでメチャ賑わっていたよ!」ナンてハナシをしていたんです。

モチロン、まさかスマホがオイラたちの会話を盗み聞きしてInstagramに送信した…ナンてことを言うつもりはありません(笑)

でも、そんな話をした直後にトミカのビジネス動画が出てきたものだから、

「ナンで、オイラにこれが出てくるんだ?」ってちょっと面白くなってしまったんですよね。

それからというもの、企業の成長の裏側とか、商品が売れる仕組みとか、いろいろな会社のビジネスモデルを紹介するリールが、ときどき表示されるようになりました。

考えてみれば、オイラ自身そういうビジネス書をたまに読むので、興味がアルかナイかと言われれば、アル。

だから、「よく出来てるなぁ、このアルゴリズム」と感心しました。

そして、もうひとつ感心したのが、出てくる頻度なんです。

ビジネス動画ばっかり20本も30本も連続して出てくるワケじゃない。

普通にInstagramを見ていると、ときどき、

「こんなのもどうです?」

というカンジで出てくる。

この「しつこくない感じ」が、なんともイイ塩梅なんですよ。

あれ? これってオイラが店でやっているコトと同じじゃない?

そこで、ふと思ったんですよ。

コレって、オイラが毎日Instagramでレコードを紹介しているのと、ちょっと似てるんじゃないか?って。

当店は、渋谷でオリジナル盤の12インチシングルだけを扱っている中古レコード店です。

現在、店頭には6000枚を超えるレコードがあります。

6000枚のレコードがあるんだから、あとは自由に掘ってください。

それでもイイんです。

実際、当店ではお客さん自身のスマホからQRコードを読み込んで試聴できるようにしているので、店員にいちいち「これ聴かせてください」と言わなくても、黙々と自分のペースでレコードを探せます。

そういう掘り方が好きな人も多いですしね。

でも、長年レコード店をやっていて感じるコトがあります。

音楽が好きな人ほど、自分の「好みのライン」を持っているんです。

好きなジャンル、好きな年代、好きなレーベル、好きなプロデューサー、好きなDJみたなカンジですね、モチロン、それは悪いことじゃない、むしろ自分の好みが分かっているからこそ、深く掘っていけますよね。

だけど数千枚のレコードを目の前にして自由に選んでもらうと、どうしても自分の知っているラインを中心に探すコトになります。

そのラインのほんの少し外側に、

「実はこの人、これも好きなんじゃないかな?」

という曲があったとしても、存在を知らなければ手に取ることすらない。

ネットがこれだけ発達した現在でも、これは同じです。

アーティスト名と曲名が分かれば、検索してYouTubeなんかですぐに聴けます。

でも、そもそも存在を知らない曲は検索できないんですよね。

だったら、店側から1日1枚くらい、

「こんなのもありますよ」

と差し出してみる。

毎日Instagramを見てくれている人が、

「どれどれ、今日はレコード屋のオヤジがナニを薦めてるんだ?」

くらいの気持ちで試聴動画を見てくれればイイ。

そして、たまたま、

「あ、コレ好きかも…」

となれば嬉しい。

考えてみれば、Instagramがオイラにビジネス系のリールを差し出してきたのと似ています。

オイラはビジネス動画を検索していなかった→でも差し出されたから見た→見たら面白かった。

自分から探していなかったものとの出会いって、こういうトコロから始まるんですよね。

売りたい。でも、押し売りはしたくない

とはいえ、オイラはレコード店の経営者です。

「音楽との素敵な出会いを提供したいんですっ!」なんてキレイ事ばっかり言っているワケにもいきません。

レコードは売れてほしい(笑)

Instagramで一生懸命紹介したレコードが売れれば、そりゃメチャ嬉しいです。

逆に、結構調べて長い文章を書いて、試聴動画まで用意してまったくナンの反応もなく売れなかったら、「ダメかぁ〜」って思います(笑)

画像やショート動画が中心のInstagramで、こんな長ったらしいレコード解説を書いている時点で、伝わりにくいコトは百も承知なんですケドね。

だから「買ってもらえたらラッキー」くらいの気持ちでもあります。

ただ、何カ月も店頭にあったレコードをInstagramで紹介した途端、速攻でお客さんに買ってもらえるコトがあります。

これは嬉しいっ!

単に、

「よし、在庫が1枚減った!」

というだけではなく、

「この曲の良さが伝わった!」

という嬉しさがあります。

実際、先日ご来店いただいたお客さんがスマホを見せながら、

「このレコードありますか?」と訊いてきました。

画面を見ると、オイラがInstagramで紹介したレコードです。

しかも1枚だけじゃなく、紹介したレコードを複数枚買っていただきました。

もしInstagramで紹介していなかったら、そのお客さんはソレ等のレコードの存在を知らず、購入するコトもなかったかもしれない。

これは商売としても嬉しいし、レコード好きとしても嬉しい。

じゃあ、もっとガンガン薦めればイイじゃないか。

「コレ、絶対買ったほうがイイですよ!」

「これは持っておくベキです!」

「今買わないとなくなりますよ!」

そうやって積極的に売り込んだほうが、セールス的には良いのかもしれません。

でも、オイラはどうしても、それをやりたくないんです。

「コレ、イイよ、聴いてみな!」が面倒くさかった

なぜオイラがオススメの距離感を気にするのかというと、自分自身が「オススメされる側」で面倒くさい思いをしたコトがあるからです。

昔、音楽に詳しい先輩なんかと一緒にレコード店へ行くと、

「コレ、良いよ。聴いてみな!」なんて薦められるコトがよくありました。

で、聴いてみる。

「ん〜、ナンかちょっと違う…」

これ、困るんですよ(笑)

相手は自分より音楽に詳しい…しかも親切で薦めてくれている。

だから、

「いや、自分はあんまり好きじゃナイですね〜」

で終わればいいのに、ナンとなく断る理由まで説明しなきゃいけないような気分になる。

超めんどくさい(笑)

これは店頭でも同じです。

お客さんから、

「こんな感じの曲でオススメないですか?」って訊かれるコトがあります。

コチラも嬉しくなって、

「じゃあ、コレは? これもイイ曲ですよ。あ、コレも聴いてみます?」なんて10枚、20枚と次々に聴かせてしまう。

でも、これは逆効果になるコトがあります。

短時間で、

良い曲か?

そうでもないか?

買うか?

買わないか?

という決断を次々に迫るコトになる。

聴く→判断する→断る。

聴く→判断する→断る。

これが続けば、お客さんだって疲れます。

そのうち、「こんなに聴かせてもらったんだから、何か買わないと悪いかな…」という気持ちまで生まれてしまう。

それはオイラの本意ではありません。

オススメって、多ければ多いホド親切というワケではないんですよね。

Instagramがオイラにビジネス系リールを延々と見せ続けなかったように、「ちょっと興味ある?」くらいで置いておく。

その距離が大切なんじゃないかと思っています。

レコード屋には、人力アルゴリズムがある

実店舗では、オイラたちは昔から「かけ売り」ということをやっています。
「レコード店のかけ売りとは?店内BGMでレコードが売れてしまうハナシ」

店内でお客さんがレコードを掘っている。

その様子をそれとなく見ます。

どんなアーティストを見ているのか。

どの年代なのか。

どんなジャンルなのか。

そこで、「この辺りが好きなのかな?」と考えて、店頭で販売しているレコードを何食わぬ顔でBGMとしてシレ〜っとかけるんです。

まずはド直球から。

反応が良さそうだったら、そこから横のジャンルへ広げてみたり、逆に同じ方向へもっと深く潜ってみたりする。

当てにいく1枚と、ちょっと冒険した1枚を、お客さんの様子を見ながら探り探りかけていく。

コレが結構面白いんですよ。

HipHopのレコードを掘っていたお客さんが、最終的にはオイラがかけたSoulやDiscoの12インチを買って帰るコトだってあります。

好きなHipHopで使われていたサンプリングネタをかけたら、

「あ、これって!」

となることもある。

あるいは、

「アレ? この曲知ってる…なんだっけ?」

と、忘れていた記憶が突然戻ってくるコトもある。

新しい音楽との「出会い」だけじゃなくって音楽との「再会」もあるんです。

そして面白いコトに、Aさんに向けてかけたつもりのレコードを、全然別のBさんが聴いていて、

「コレ、買いたいんですけどイイですか?」

なんてこともあります。

オススメの誤爆です(笑)

Instagramのアルゴリズムが利用者の興味を推測してコンテンツを薦めるのだとすれば、レコード店ではオヤジが店内を見ながら人力で似たようなコトをやっている。

ただし、人間だからハズすこともある。

むしろ、あえてちょっとハズすこともある。

「この人ならタブン、この曲、気にいるかも」だけではなく、

「普段こういうの聴かないかもしれないけど、まあ1回聴いてみてよ」という1枚をかけられる。

そして、その予想外の1枚が刺さったときが面白いんですよね。

12インチシングルは、ちょっと解りにくい

そもそも当店が扱っている12インチシングルというレコードは、一般的には少々マニアックな存在です。

LPなら知っている。いわゆるドーナツ盤の7インチシングルも知っている。

でも、「12インチシングルってナニ?」という人は意外と多いんですよ。

当店が12インチシングル専門店だと知らずに来店する人も少なくありません。

しかも当店は再発盤やブート盤ではなく、オリジナル原盤の12インチシングルだけを扱っています。

初めて来た人からすれば、

「なんだ、このヘンなレコード屋は?」というカンジかもしれません(笑)

でも12インチシングルには、12インチシングルならではの面白さがあります。

クラブミュージックの歴史と密接に結びついたフォーマットであり、LPとは違った長尺のExtended Versionや、DJプレイを意識したイントロ/アウトロ、Dub、Instrumentalなどが収録されているコトも多い。

同じ曲でもLPバージョンとはまったく違った表情を見せるコトがあります。

大きな盤面を贅沢に使ってカッティングされた盤には、音質面で魅力を感じるものもあります。

そして何より、12インチというフォーマット自体に、掘れば掘るほど面白くなるコレクション性がある。

でも、こういうことは「12インチシングル専門店です」と看板に書くだけでは、なかなか伝わらないんですよね。

1枚買って、家で聴いて、

「12インチって面白いな」って思ってもらう。

そこから、

「ほかにはどんな12インチがあるんだろう?」

となる。

トミカのリールを見ながら、オイラが「ナルホドね」と思ったのもココでした。

ミニカーとレコードはまったく違うけれど、「まず1つ所有してみるコトで、その世界の面白さが解ってくる」というトコロには、ちょっと共通点があるのかもしれません。

ただし、だからといって入り口として100円の激安レコードを店頭に大量に並べて集客しよう、とはオイラは思いません。

安さだけを入口にしたくないからです。

お店側が価値がないと判断したレコードを段ボール箱へ無造作に放り込み、「100円!」で売る、そういう販売方法があってもイイと思います。

でも、オイラがやりたいのはそれではないんですよ。

できることなら1枚1枚、

「このレコードの面白いところは、ココですよ」

と伝えて、それを欲しいと思ってくれる人へ丁寧に渡したい。

100円のレコードにそこまで手間をかけられない、という商売上の現実もあります。

だからオイラが作りたい入口は、

「安いから、とりあえず買ってみる」

ではなく、

「知らなかったケド、聴いてみたら良かったから買ってみる」なんです。

文字でしか知らなかった音楽に、想いを馳せた時代

オイラがこうやって文章でレコードを紹介しているコトには、たぶん自分自身の昔の体験が影響しています。

オイラが学生だった頃には、当然いまのようなネット環境はありませんでした。

アーティスト名と曲名を検索して、数秒後にはYouTubeで聴ける…そんなコトはできません。

レコードを買うときに参考にしたのは、音楽雑誌に載っているレコメンド記事だったり、レコード店のスタッフが手書きしたPOPだったりしました。

そこには文字しかない。

音楽なのに、音がない。

でも、その文字に大いに刺激されたんですよね。

丁寧に曲のことが書いてあると、

「どんな音なんだろう?」って想像する。

そして、

「聴いてみたい!」

「このレコードを手に入れたい!」

と、まだ聴いたこともない曲に想いを馳せる。

今考えると、不便です。でも、あの時間は超楽しかった。

現在は気になる曲をすぐ聴ける。それはものスゴく便利です。

だけど、聴いて「良い曲だな」と思ったあと、その曲が作られた背景やリリックの意味、当時の音楽シーン、参加ミュージシャン、プロデューサー、別バージョンの存在なんかを知ると、

「ああ、そういう曲だったのか」

と、それまで以上にその曲が好きになるコトがあります。

だからオイラは、Instagramでも長ったらしい文章を書いてしまうんでしょうね(笑)

個人的に大好きだから紹介する曲もある。

誰でも知っている有名曲だけれど、オイラ自身が背景をよく知らないから、調べるために選ぶこともある。

数千枚の中に完全に埋没している1枚を、

「これ、良い曲なんだけどなぁ」と引っ張り出すこともある。

A面ではなくB面に入っている知られざる曲を紹介したり、メインのヴォーカルではなく秀逸なDub Versionにスポットを当てたりすることもあります。

「今日はこれを売るぞ!」という理由で選ぶことは、実はホトンドありません。

どちらかというと、

「これ、1回聴いてみてよ」なんです。

レコード屋が売っているのは、レコードだけなんだろうか?

オイラはブログも20年以上続けています。

何度も、

「もう書かなくてもいいんじゃないか?」と思いました。

文章を書くコトが特別得意なワケでもありません。

それでも、なぜかやめられなかった。

その理由を考えると、

「店主がちゃんと説明しなければ、この店のコトを誰も解ってくれない」と思ったコトが始まりだったように思います。

オリジナル原盤の12インチシングルだけを扱う中古レコード店…世界的に見ても、かなり珍しい形態のレコード店だと思います。

でも、珍しいというコトは、裏を返せば「解りにくい」というコトでもある。

だから、

「当店はこういう店です」

「12インチシングルには、こういう面白さがあります」

と伝え続ける必要があると思ったんですよ。

ある意味、

「オイラがオリジナル盤12インチシングルの良さを伝えなかったら、誰が伝えてくれるんだ?」という使命感なのかもしれません。

…なんて書くと、ちょっと大げさですケドね(笑)

でも、20年以上ブログを続けてきて、

「いつもブログ読んでます!」と言って来店してくれる人がいる。

Instagramで紹介したレコードの画面を見せて、

「コレって、ありますか?」と言ってくれる人がいる。

初めて12インチシングルを買った人が、しばらくしてまた店に来てくれる。

そんなときオイラが最初に思うのは、

「よし、リピーターが1人増えた!」ではなくって

「12インチシングルの良さを分かってもらえた!」なんですよね。

モチロン、お客さんであるコトには変わりありません。

でも12インチシングルを好きになってくれた人は、同じ趣向や好みを共有できる仲間のようにも感じる部分も結構大きいんですよね。

世の中にはLPの魅力を伝えてくれるレコード店がたくさんあります。

だったらオイラくらい、12インチシングルの面白さをしつこ…いや、しつこくならない程度に(笑)、伝え続けてもイイんじゃないでしょうか。

そう考えると、レコード屋が売っているモノって、本当にレコードだけなんでしょうか。

欲しい盤を探して、見つけて、買う。

モチロン、それはレコード屋の大きな楽しみです。

でも、自分なら絶対見なかった棚から流れてきた曲に耳が止まる。

「今かかっているのナニですか?」と訊いてみる。

知らない曲だったけど、ナンとなく試聴してみたら良かった。

Instagramでたまたま紹介されていた1枚を聴いたら、自分の好みだった。

そうやって、自分1人で音楽を探していたら一生出会わなかったかもしれない1枚と出会う。

レコード屋の役割のひとつは、そんな「音楽と人が出会う入口」を作るコトなのかもしれません。

Instagramのアルゴリズムにトミカのリールを薦められて、そんなコトを改めて考えました。


LAURA BRANIGAN / SELF CONTROL
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オススメは、なければ出会えない。

でも、多すぎれば鬱陶しい。

だから、ちょうどイイ距離がある。

オイラも店頭やInstagramで、

「これを買って!」ではなく、

「こんなのありますよ。よかったら1回聴いてみてください」くらいの距離から、これからもレコードをオススメしてゆきたいと思っています。

その先で、

「ナンだこれ。イイじゃんっ!」

と思ってもらえたら、それが一番嬉しい。

そして、まあ…気に入ったら買ってくれたら、そりゃもっと嬉しいんですケドね(笑)



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