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久しぶりにお店に訪れてくれたお客さん

先日、とても印象に残る出来事がありました。

「いらっしゃいませ〜。」

いつものようにお客さんをお迎えし、そのお顔を見た瞬間、「あっ!」って思わず声が出そうになりました。

20年以上前から当店をご利用いただいていたお客さんが久しぶりにご来店してくれました。

最後にお会いしたのは、おそらく15年ほど前です。

当時、そのお客さんは約1000枚にも及ぶ12インチシングルメインのコレクションを当店で買い取らせていただきました。

「もうレコードはいいかな…。」そう言ってコレクションを手放され、それ以来、お会いするコトはありませんでした。

だからこそ、その人が再びお店を訪れてきてくれたコトがホントに嬉しかったのです。

「メチャ久しぶりですね!」ってそんな他愛もない会話から始まり、気がつけば当時の渋谷のレコード街のハナシやDJブームの頃の話題で盛り上がっていました。

そして、そのお客さんはレコード棚をゆっくり眺めながら、

「あ〜、これ持っていましたよ。」

「うわぁ〜メチャ懐かしいなぁ。」

と、1枚1枚を手に取っていました。

その姿を見ていて、オイラはあるコトを考えていました。


あの頃、多くの人がレコードから離れていった

2000年前後、渋谷には毎日のようにレコードを探し歩く人が大勢いました。

DJブームの真っただ中…レコードは音楽を聴くためだけではなく、DJにとっては欠かせないツールでもありました。

人気DJがプレイした曲を探し回り、レア盤を手に入れ、休日になれば仲間とレコード店を何軒も巡る…そんな時代でした。

しかし、その後大きな転機が訪れます…PCとコントロール・バイナルを使ったデジタルDJシステムの登場です。

レコードのような感覚でデジタル音源を操作できるようになり、DJの現場は急速にデジタル化していきました。

レコードでなければできなかったコトが、ノートパソコン1台でできるようになったのです。

同じ頃、当店にもレコードを手放すお客様が急激に増えました。

仕事が忙しくなった。

仲間と集まらなくなった。

結婚した。

子どもが生まれた。

レコードを聴く時間がなくなった。

理由は人それぞれでしたが、多くの方が口にしていたのは、「もうレコードはいいかな。」という、とても静かなコトバでした。

でも、今になって思うのです…本当に「レコードはもういい」と思っていたのかなぁって。


人は趣味をやめるのではなく、休ませているのかもしれない

長年お店に立っていると、いろんななお客さんと出会います。

熱心に毎週通ってくださる人や何千枚もコレクションを持っている人、DJとして活躍する人。

そして、ある日を境にお店に来なくなる人。

最初の頃は、しばらくご来店がないと「レコードに飽きたのかな…」と思っていました。

でも長年見てきてカンジるのは、少し違うというコトです。

レコードそのものに飽きたのではなく、レコードを楽しめる環境が変わった、人生の優先順位が変わったみたいなそういう人がホトンドだったように思います。

趣味は人生と一緒に動くと思うんですよね

仕事が忙しい時期、家庭を築く時期や子育てに追われる時期…そんな時期には、好きだった趣味から少し距離を置くコトってやっぱりありますよね。

でも、それは終わったワケではなくって、ココロのどこかで静かに眠っているだけナンじゃないかなぁって思うんですよ。


「手放したレコードを、もう一度買い直したいんです」

今回のお客さんとの会話で、一番印象に残ったコトがあります。

「手放したレコードを、もう一度買い直したいんですよね〜」

この一言を聞いた瞬間、オイラは少し考え込んでしまいました。

一度売ったレコードを、また買うって合理的に考えれば、あまり効率の良いハナシではありません。

でも、人の気持ちって合理性だけでは説明できませんよね。

レコードが欲しかったのではなく、そのレコードと過ごしていた時間を、もう一度自分の人生の中に迎え入れたかったのではないのかなって思ったんですよ。

そのお客さんはレコードを手放した頃、独身でワンルームマンションに住み、仕事も駆け出しみたいなカンジだったそうです。

そして15年後…結婚し、住まいも広くなり、仕事でもキャリアを積み、自分の時間をコントロールできるようになっていました。

「仕事も落ち着いてきたので、もう一度レコードを聴いてみようかなと思って。」

そのコトバが、ナンかとても自然に聞こえたんですよね。

人生のステージが変われば、趣味との向き合い方も変わる…オイラはこの出来事を通して、あらためてそう感じたんですよね。


レコード棚は、小さなタイムマシン

今回のお客様は、店内を回りながら、昔持っていたレコードを何枚も手に取っていました。

「これ持っていました。」

「確かコレ、昔ネクストさんで買いましたよ。」

そんなコトバが次々に出てきます。

レコード棚を見ているというより、ナンか昔の自分をたどっているようにも見えました。

オイラは長年店に立っていますが、こういった光景を今までに何度も見てきたんですよ。

だから思うのですよね〜レコード店は、レコードを売る場所であると同時に、人生の記憶と再会する場所でもあるんじゃないのかなって。

しかも不思議なことに、曲を再生しなくても、ジャケットを見るだけで当時の記憶がよみがえることがあります。

「あの頃、よく聴いたな。」とか「あのイベントでメチャ流行っていた。」や「あの友達と毎週レコード店をハシゴしていたなぁ〜」なんてカンジで思い出すことってよくあると思うんです。

音楽は、記憶と強く結びついています。

だからレコードを手に取ることは、人生の一場面をもう一度開くことでもあると思うんです。


戻ってきた人たちに共通していたコト

実は、このお客さんだけではなくってココ最近、昔レコードを楽しんでいた人が再びお店を訪れるケースが少しずつ増えているんですよ。

ニュースでレコード人気を知ったとかSNSでレコードを見かけた、とかそんな小さなキッカケで、「ちょっと覗いてみようかな。」と来店される人が多いんです。

でも、皆さんに共通していることがあります。

それは、昔のようにあまりガツガツしていないコトです。

昔は、

「レア盤を探す。」

「誰より早くプロモ盤を手に入れる。」

「DJで使う。」

そんな目的が大きかったと思います。

トコロが今は違っていて

「家でゆっくり聴きたい。」

「昔好きだった曲をもう一度聴きたい。」

「休日にコーヒーを飲みながら楽しみたい。」

そんな声をよく聞くんですよね〜ナンか年齢を重ねるコトで、レコードとの付き合い方も変わっていったようなカンジですね。


今のレコード人気は、昔とは少し違う

90年代から2000年代初期のレコードブームは、DJカルチャーが中心でした。

要するにDJをするためにレコードが必要だったんですよね、だからレコードがメチャ売れたワケです。

一方、今はサブスクで何千万曲も聴ける時代です。

それでもレコードを選ぶ人が増えています。

オイラは、その理由は「体験」にあるんじゃなかなってと思っていてこのブログでもそういったコトを書いたことがあります。

スマホで再生ボタンを押せば、すぐ音楽は流れます。でもレコードは違います。

レコード店へ行く。

棚を眺める。

1枚ずつ手に取る。

ジャケットを眺める。

レコードを買って家へ持ち帰る。

盤面に針を落とす。

この一連の時間そのものが、レコードの魅力につながっているんじゃないかなって思うんです。

音楽を消費するのではなく、音楽を味わうみたいな感覚ですね。

今のレコード人気は、そんな価値観に支えられているような気がしています。


人はなぜ、一度やめた趣味に戻るのだろうか

15年ぶりに再会したお客様が帰られたあと、オイラはしばらくその日のコトを考えていました。

「手放したレコードを、もう一度買い直したいんです。」というその一言が、ずっと頭から離れなかったんですよね。

冷静に考えれば、一度手放したものを買い直すという行動は、とても合理的とは言えません。

時間もお金もかけて集めたコレクションを整理し、レコードに区切りをつけたハズでした。

それなのに、15年という時間を経て、再びレコード店へ足を運び、「もう一度始めたい」と思った。

この出来事を振り返りながら、オイラは「人はナニに惹かれて趣味を続けるのだろう」って考えるようになりました。


人はレコードそのものではなく、「レコードを通して得られるもの」に惹かれている

接客していると、「レコードが好き」という一言では説明できないお客さんをたくさん見てきました。

新しい音楽に出会う喜び。

探していた1枚を見つけた時の達成感。

仲のイイ友人達と音楽について語り合う時間。

お気に入りのレコードを部屋で眺める満足感。

レコードという趣味は、実は音楽だけではなく、こうしたたくさんの心理的な価値によって支えられているんだと思います。

だから人生の中で、仕事や家庭等の変化で新しい環境に身を置いたりすると、それらの価値を別の場所で得られるようになります。

すると自然とレコードから距離ができる…これは「レコードに飽きた」というより、「レコードを通して得ていたものが、人生の別の場面で満たされるようになった」と考えたほうが自然なのかもしれません。


趣味は終わるのではなく、眠っているだけなのかもしれない

店頭では、多くのお客様が趣味を「卒業」する姿も見てきました。

でも最近は、その考え方がちょっと変わってきたんですよね。

むしろ趣味は「卒業」というよりも「休眠」するものなのではないかって思うんですよ。

子どもの頃に夢中だったプラモデル。

学生時代に弾いていたギター。

若い頃に乗っていたバイク。

何十年も触れていなかったのに、ある日突然もう一度始める人は決して珍しくないと思います。

レコードもそういうのと同じだと思うんです。

好きだった気持ちが消えたのではなく、人生の優先順位が変わっただけ…そして、時間や気持ちにゆとりが生まれたとき、その趣味は静かに目を覚ますみたいなカンジですね。

今回のお客さんもまさにそうだったのではないでしょうか。


年齢を重ねると、趣味との向き合い方は変わる

若い頃は、「もっと集めたい」「もっとレアな1枚を手に入れたい」という気持ちが強い人も多かったと思います。

オイラ自身もそんな時代を経験してきました。

レア盤を探し、人気DJがプレイしたレコードを追いかけ、誰よりも早く手に入れること自体に価値を感じていたりしました。

そこには競争や承認を求める気持ちも少なからずあったと思います。

でも、今回のお客さんが手に取っていたのは、昔自分が持っていたレコードでした。

「コレ、持っていました。」

その一言に、昔のような競争心はありません。

あったのは、自分の人生と重なる音楽への愛着だと思うんですよね。

年齢を重ねることで、人は他人に認められることよりも、自分自身が心地よい時間を過ごせることに価値を見いだすようになるんじゃないのかなって思ったんですよ。

だからこそ、レコードとの付き合い方も「集める趣味」から「味わう趣味」へと変わっていくのでしょうね。


レコードを買い直したかったというよりも自分の人生の続きをはじめたかった

オイラは、「手放したレコードをもう一度買い直したい」という言葉の意味を考え続けています。

それは単に同じ盤を所有したかったわけではないハズです。

きっと、そのレコードを聴いていた頃の自分、その音楽とともに過ごした時間、その頃に感じていた楽しさを、今の人生の中にもう一度迎え入れたかったんじゃないのかな…。

もちろん、人は過去には戻れません。

でも、趣味は過去へ戻るための道具ではありません。

今の自分だからこそ、昔とは違う楽しみ方で向き合えるものです。

だからオイラは、「リターン派」と呼べるようなお客様が増えていることを、とても自然なことだと思っています。

人生には、趣味から離れる時期もあります。

そして、もう一度その趣味が必要になる時期もあります。

レコードは、そのタイミングを静かに待っていてくれる存在なのかもしれません。


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レコードは人生のピース

長年レコード店を続けてきて、レコードってただの音楽メディアではないんじゃないかなって思うんですよね。

「あなたにとってレコードってどういった存在ですか?」って訊かれたらイロイロと考えて行き着いたひとつの考えは、「人生のピース」であるという答えです。

1枚のレコードには、その時代の景色があります。

一緒にいた友達がいます。

夢中になっていた自分がいます。

だから、曲を聴かなくても、ジャケットを見るだけで記憶がよみがえることがあります。

レコードは音楽を記録しているだけではなくってその人の人生の一場面まで、一緒に閉じ込めているように思うのですよ。

だから、15年前に手放したレコードを、もう一度買い直したいという気持ちも、オイラにはとても自然なことに感じられました。

それは過去に戻りたいということではなくって、今の自分だからこそ、もう一度あの音楽と向き合いたい…そんな気持ちなんじゃないのかなって思ったんですよね。

もし、このブログを読んでくださっているあなたが、昔レコードに夢中だった1人なら、

押し入れの奥に眠っているレコード。

昔よく通ったレコード店。

夢中で探した1枚のコトを少しだけ思い出してみてください。

あの頃と同じように何百枚も集める必要はありませんし、毎週レコード店へ通う必要もありません。

たった1枚でイイのでその1枚をターンテーブルに乗せて、盤面にゆっくり針をのせてみてください。

きっと聴こえてくるのは、音楽だけではなくってあの頃の自分と、今の自分が静かにつながる音も、一緒に聴こえてくるハズですよ。


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