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アノ時代の記憶と世代を超えるHipHopカルチャー

先日、地方にお住まいの常連さんが久しブリに渋谷の店へ遊びに来てくれた。

「おっ、久しブリですね!」

ナンていつもの感じでハナシしていたら、

「昨日、Wu-Tang Clanのライブ行ってきたんですよ!」

とのコト。

そう、29年ぶりの来日公演。しかも最後の来日とも言われていたWu-Tang Clanのライブを観に上京してきたそうです。

オイラ自身はそこまでライブへ足を運ぶタイプではないんだけど、今回の来日は事前からかなり話題になっていたので当然知っていました。SNSでも相当盛り上がっていたし、ライブ限定グッズを買うために3〜4時間並ぶみたいに人気だったらしい。

いやいや、スゴい時代ですよね(笑)

で、その常連さんに

「盛り上がってました?」

と聞いたら、

「ヤバいくらいメチャクチャ盛り上がってましたよ!」

とのコト。

さらに印象的だったのが、

「40〜50代くらいのお客さんがめちゃ多かったですね」

というハナシだった。

まあ、そりゃそうですよね。

Wu-Tang ClanがHipHopシーンへ与えた衝撃は、90年代をリアルタイムで体験した人達にとっては特別なモノがありますからね。

初めてアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』を聴いた時の衝撃は、マジでヤバかったですからね。

ザラついたビート。荒削りなのに異常に中毒性のあるラップ。NYのストリートの空気感。あの危険な匂い。Wu-Tangの曲を聴けば90年代のあの時代の思い出が脳裏にガガガーーーーっ!とめぐりまくりますよね。

アレは単なる流行った音楽ではなく、HipHopの価値観そのものに影響を与えたカルチャーだったと思います。

だから今回のライブには、当時夢中になって聴いていた40〜50代が大集合したんだと思います。

まさに「おっさんホイホイ」状態ですね〜(笑)

でも今回、オイラが面白いなと思ったのはそこだけじゃないんですよ。

常連さんのハナシによるとライブ会場には20代くらいの若い人も結構いたらしいとのコト。

コレ、実はかなり興味深い現象だと思うんですよね。


青春時代に聴いた音楽は、一生消えない

「三つ子の魂百まで」というコトワザがあります。

幼い頃に身についた性質は一生変わらない、というイミですね。

個人的はコレ、音楽にもかなり当てはまると思うんですよ。

特に10代後半から20代前半に浴びるように聴いた音楽って、単なる好きな曲では終わらないんですよね。

ファッション。

コトバ遣い。

遊び方。

仲間。

街の景色。

その頃の空気。

全部セットになってバッチリと記憶されている。

だから人は、青春時代の音楽を聴くと、一瞬であの当時へ戻れると思うんですよね〜カラダはおっさんのままですが気持ちだけ20代みたいなカンジですが(笑)

Wu-Tang Clanの曲を聴いているというより、90年代当時の自分を再生している感覚に近いんじゃないかな…。

当店でも、昔聴いていた12インチを探しに来るお客さんはホントに多いんですよ。

「この曲、昔クラブでよく聴いてたんですよ」

「当時お金なくて買えなかったんですよね」

「オリジナル盤、やっぱり欲しくなっちゃって」

そんな会話は日常茶飯事です。

でもコレって単なる懐古趣味ではないと思うんですね。

人は音楽を通して、「自分がどういう時代を生きてきたか」を確認している部分もあるんじゃないかなって思うんですよね。

だからあの当時のレコードは面白いんでしょうね…データじゃなく、モノとして存在しているからこそ、その時代の空気ごと所有している感覚がありますからね。


でも今回のWu-Tangは、ただの懐メロライブではなかった

先にも書きましたが今回のライブが面白かったのは、40〜50代が多いお客さんのそこへ20代くらいの若い世代も混ざっていたコトです。

コレってかなり珍しいんじゃないかな。

特にHipHopというジャンルでは…なぜならHipHopって、本来かなり時代性の強い音楽だと思うんですよ。

その時代の街の空気。

ファッション。

コトバ。

社会背景。

全部と強く結びついている。

だから普通は、リアルタイム世代のものになりやすいと思います。

なのに、Wu-Tang Clanは若い世代にも届いている。

その大きな理由のひとつが、おそらくDisney+のドラマ『Wu-Tang: An American Saga』だと思います。

あのドラマ、単なる音楽ドラマじゃないんですよね。

90年代NYの空気。

貧困。

ストリート。

仲間意識。

成り上がり。

DIY精神。

そういうカルチャー全体を物語の中で丁寧に描いている。

だから若い世代は、Wu-Tangを昔のHipHopとしてではなく、ひとつの物語として体験できるみたいな感覚になっているんでしょうね。

コレって、スゴく重要だと思うんです。


今は曲より物語が音楽を再ヒットさせる時代

最近、本当にこういうケース増えましたよね〜。

Queenの『ボヘミアン・ラプソディ』。

近々公開されるMichael Jacksonの映画。

NetflixやDisney+の音楽系ドラマ。

昔のアーティストのヒストリーが映像化され、その流れで楽曲が再評価されるケースってめちゃ多いですよね。

これは完全に音楽産業的にも狙ったプロモーションになっていると思うんですよ。

でも、単なる商売だけでもないのかもしれない…。

実際、今って過去の音楽が再発見されやすい時代だと思うんですよ。

昔はラジオやMTVが音楽との出会いを作っていたんですよね。

でも今はSpotifyを開けば無限に音楽が出てくる。

さらに1日に何万曲も追加される世界でもあります。

若い人からしたら、曲が多すぎて「何を聴けばいいかわからない」状態でもあるのかもしれません。

だから今、人はその音楽に文脈を求めているっていう部分もあると思うんですよ。

そのミュージシャンがどんな人生を歩んだのか。

どんな街で生まれたのか。

なぜその曲が作られたのか。

どういう時代だったのか。

そういう背景込みで音楽を知りたがっている。

つまり今は、曲単体ではなく、物語が音楽を広げる時代なんでしょうね。


「過去の音楽」が掘り返されているワケではない

ココ、勘違いされやすい部分なんだけど、オイラは今起きている現象って、「昔の音楽を掘り返している」というより、「昔の音楽に新しい入口を作っている」感覚の方が近いと思っているんですよね。

リアルタイム世代にとってWu-Tangは「青春」だけど、若い世代にとっては「発見」だと思うんですよ。

同じ音楽を聴いていても、見ている景色がゼンゼン違うみたいなね。

40〜50代は、自分の過去を見ている。

20代は、自分が知らなかった90年代カルチャーを見ている。

でも、両方とも熱狂している。

コレって実はスゴいことだと思うんですね〜ある意味、カルチャーが世代を超えて継承されている瞬間とも言えますよね。


レコード人気の再燃も、実は同じ構造

こういった状況って、実はレコード人気にもかなり共通していると思うんです。

最近は若いお客さんの来店が本当に増えたってコトはこのブログでも何度か書きました。

しかも面白いのが、ただ安い中古盤を探しているワケじゃないんですよ。

わざわざレコード店を訪れてオリジナル盤を探していたりする。

モチロン音質へのコダワリもあると思いますが、でもそれだけじゃない。

タブン、「アノ時代の時間」を買っている部分があるんじゃないのかなって思うんです。

例えば90年代のUSオリジナル12インチ。

そこには当時のクラブカルチャーやDJ文化の空気が刻まれている。

ジャケットの質感。

レーベルデザイン。

盤の匂い。

スリーブの擦れ。

全部含めて、その時代のリアルなんですよ。

コレね…Spotify等のストリーミングでは味わえない感覚です。

だからレコードは単なる再生メディアではなく、ある意味で「カルチャーの保存装置」になっているんだと思うんです。


DJイベントでも「クラシック」が強い理由

最近のDJイベントの様子を観ていても感じるんですよ…やっぱり盛り上がるのはクラシックなんだなぁ〜って。

90年代HipHop。

R&B。

DIsco。

House。

モチロン新譜もプレイされている。

でも、結局フロアが一番反応するのは、みんなのカラダへ刷り込まれている曲だったりするんですよね。

イントロが鳴った瞬間、

「うわっ!」って空気がイッキに変わる。

アレって単なる懐かしいじゃなくってカラダが覚えているんですよね。

そして若い世代は、その熱量を見てカルチャーを知る。

「なんでこの曲でこんな盛り上がるんだろう?」

そこから掘り始める。

これはすごく健全なカルチャー継承なんじゃないのかなって思うんです。


音楽は、時代ごとに役割を変えながら生き続ける

今回のWu-Tang Clan来日公演の様子を見て、改めて思ったのは、ホント青春時代の音楽は、一生残るってコトなんだなぁって。

でも本当に強い音楽は、それだけじゃ終わらなくって次の世代にも、新しい「青春」を作るんでしょうね。

40〜50代にとっては記憶。

20代にとっては発見。

同じWu-Tangでも、意味が違う。

でもそれでイイっ。

むしろカルチャーって、そうやって形を変えながら受け継がれていくものなんだと思うんですよ。


レコードの溝には、音だけじゃなく時間が刻まれている

オイラは毎日、渋谷の店で大量のレコードを触っているワケです。

でも時々思うんですよね…レコードの溝に刻まれているのって、単なる「音」だけじゃないなって。

その時代の空気。

人の熱量。

クラブ。

街。

ファッション。

若さ。

憧れ。

そういう時間そのものが曲と一緒に刻まれている。

だから人は、何十年経ってもレコードを探し続けるんじゃないかなと思うんですよ。

もし最近レコードが気になっている人がいたら、ぜひ一度レコード店を訪れてみてください。

知識なんて全然なくて大丈夫ですよ。

むしろ、「なんか気になる」くらいが一番楽しい入り口だったりするので。

レコードって、ただ昔の音楽を聴くものじゃない。

知らなかった時代やカルチャーへ触れる入口でもあるんですよね。


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以前、どうして若い頃に聴いた音楽は、年齢を重ねた今になっても聴き続けてしまうってコトについてブログ記事に書いたコトがあります。

その時の記事は、コチラ

なぜ人は若い頃に聞いた音楽を好むのか?


この現象を「レミニッセンス・バンプ (回想バンプ)」っていうのですが音楽に於いては10代〜20代に聴いた音楽が20年とか30年の時間の経過を経て回想バンプが40〜50代にかけてグッと盛り上がるそうです。

音楽がその回想バンプのスイッチになっているってカンジなんでしょうね。

レコードに関しても「最近レコードが流行っているみたい」というニュースを見聞きしたコトで「そういや20代の頃、タンテ2台もってよく家でDJしていたな〜」っていう記憶を思い出して「久しぶりにちょっとレコード屋に行ってみようかな〜」って人も多いんですよね。

今回のWu-Tang Clanの来日公演は、音楽が持つ不思議なチカラを改めて感じさせてくれました。

ある人にとっては青春の記憶であり、ある人にとっては新しい発見でもある。

その両方が同じ場所で交差していたからこそ、あれだけ特別なライブになったのかもしれません。

レコード屋の仕事をしていると、そんな「音楽が世代をつなぐ瞬間」に時々立ち会います。

もしかするとレコードの魅力も、音の良さやモノとしての価値だけではなく、そうした時間や記憶まで受け継いでいけるところにあるのかもしれませんね。


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