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小さなレコード店だからこそ見えるものがある

渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を営んでいるNext Recordsです。

店内は正直かなり狭いです(笑)

お客さんが5人も入れば結構いっぱいになるくらいのサイズ感…でも、その狭さって実は悪いコトばかりじゃないんですよね〜むしろ、長年店をやってきてカンジるのは、小さい店だからこそ生まれる空気感や距離感って確実に存在するというコトです。

店頭には約6000枚ほどのレコードが並んでいて、さらに販売前のストックが1万枚ホドあります。
毎日そのレコードたちに囲まれながら営業しているワケですが、ここ数年はアナログレコード人気の再燃やインバウンド需要の高まりもあって、ホントご来店いただけるお客さんが増えました。

昔は「レコードなんてもう売れない時代だよね〜」ナンて言われていた時期もありましたが、今では渋谷を歩いているとフツーにレコードが入ったショップのロゴマークがプリントされたビニール袋を手に持った人をよく見かけるようになりましたね。

そんな中で、最近オイラが改めて面白いなと思っているのが、当店で昔から自然にやっている「ある接客」なんですよね。

それが、オイラ達が勝手に呼んでいる「かけ売り」です。

「かけ売り」って何なのか?

普通、小売店で「かけ売り・掛売り」と言うとツケ払いのコトですよね。

でも当店で言う「かけ売り」は全然イミが違います。

レコードを「かけて」売る。

つまり、お客さんが好きそうなレコードを店内でさり気なくプレイして、その流れで販売につながることを、オイラ達は「かけ売り」と呼んでいます。

モチロンこれは当店だけが発明した特殊な販売方法ではなくて、昔からレコード店では自然に行われてきたコトだと思います。

でも、最近フト思ったんですよ…「アレ?もしかして今って、この“かけ売り”をやってる店って意外と少ないのかもしれないな」って。

この「かけ売り」って調べてみると海外では “store play” や “in-store play” という表現はあるみたいです。ただ、それはドチラかというと「店内で流れている音楽」という意味合いが強くて、当店でやっているような「接客としてのプレイ」とは少しニュアンスが違う気がするんですよね。

だから、日本では少なくとも「かけ売り」という言葉は当店独自の呼び方なのかもしれませんね。

でも、このコトバ、結構しっくり来てるんですよ。

レコード好きは目線でわかる

レコードが好きな人って、店に入ると結構スグにわかるんですよね。

レコードの棚をパラパラめくる速度とか、立ち止まるタイミングとか、ジャケットを持ち上げる瞬間とか、そういう細かい動きにその人の音楽の好みが滲み出るみたいなカンジで。

特に面白いのが、お客さんが「おっ!?」って顔をする瞬間です。

探していたレコードを見つけた時、人ってホントにわかりやすいんですよ(笑)

急に動きがピタっと止まる。

そして、ジャケットをじーっと見始める。

レーベル面を見たり、クレジットを確認したり、プロデューサー名やミックス名をチェックしたりする。

最近だと、スマホでDiscogsなんかのページを見て確認する人も多いですね。

あの瞬間って、もうその人の「レコード好き」が全部出てるんですよね。

当店はDJニーズの高い12インチシングル専門店なので、カウンター内にはターンテーブル2台とDJミキサー、いわゆるDJセットが置いてあります。

で、実は当店のスタッフは結構お客さんの動きを見ています。

もちろんジロジロ見るわけじゃないですよ(笑)あくまでもそれとなくってカンジで。

で、お客さんが手にとってチェックしているレコードを見て

「あ〜この人、Patrick Adams周辺好きそうだな」

とか、

「キャッチーなR&Bとかで反応してるな…」

とか、ナンとなく感じ取れるんですよ。

そして、そのお客さんが見ていたレコードに近い雰囲気の曲を、店内BGMとしてさり気なく流すんです。

ココで重要なのは、「さり気なく」という部分です。

あからさまにやると押し売り感が出ちゃいますからね。

だから自然に空気の流れとして鳴らす。

すると、だいたいお客さんがチラッとコチラを見るんですよね(笑)

「アレ?なんか今イイ曲かかってるな…」みたいな顔で。

「今かかってるコレって何ですか?」

そうやって2〜3曲くらい、お客さんが好きそうなラインの曲をプレイすると、かなりの確率で「今かかってるコレって何ですか?」って訊かれるんですよね。

で、

「〇〇のXXって曲なんですよ〜」

って答えると、

「へぇ〜コレ買えるんですか?」

って続く。

モチロン、店でかけてるレコードは全部販売用ですから、

「全然買えますよ〜」

ってなる。

こういう流れ、実はかなり多いんですよね。

しかも最近カンジるのは、この「かけ売り」が外国人のお客さんにメチャ刺さるというコトです。

オイラの体感ですが、日本人のお客さんを1とすると、外国人のお客さんは5倍くらい反応しているカンジです。

これはホントに面白い現象ですね。

外国人のお客さんは「音楽体験」を楽しんでいるのかも

レコード好きに国籍や人種はあまり関係ナイと思うんですよ。

でも、接し方や反応の仕方には結構違いがあります。

日本人のお客さんって、どこかお店のスタッフからの積極的な営業スタイルを警戒するトコロってあるんですよね〜ナンか買わなきゃいけなくなるみたいなカンジになったりして。

だから店員と一定の距離感を自然と保つトコロがありますね。

モチロンそれは日本的な美学でもあると思うんです。

でも海外のお客さんって、好きなものに対して本当にダイレクトです。

「What’s this!?」

「Amazing!!」

「I love this!!」

みたいなカンジで、その場でストレートに感情を出してくれる。

だから「かけ売り」との相性がスゴく良いんですよね。

先日も海外のお客さんに、

「どうしてオレの好きな曲がわかるの?」

って真顔で聞かれました(笑)

イヤイヤ、あなたが手に取ってたレコード見て推測してるだけなんですケドね。

でも、その「自分の好みを見抜かれている感覚」が面白いのかもしれません。

時には、

「もうこれ以上聴かせないでくれ!お金なくなる!」

ナンて笑いながら言われるコトもあります。

でも、あれって単純にレコードを買っているというより、店員とのコミュニケーション込みで楽しんでいる部分も結構あるんだと思うんですよね。

今のレコード店は「かけ売り」をしなくなったのかもしれない

で、最近フト思うんです。

もしかしたら、今ってこの「かけ売り」自体が珍しくなってるんじゃないかって。

大型店では、効率性や回転率が重視されます。

スタッフも忙しい。

お客さんとの距離も遠い。

モチロンそれは悪いコトではありません。

でも、小さなレコード店って、本来もっと人間臭い場所だった気がするんですよ。

昔のレコード店って、

「コレ好きならコッチも好きだと思うよ」

とか、

「このミックス、マジでヤバいよ」

とか、そういう会話が自然に飛び交っていました。

つまり、レコード店って単に物販の場所ではなく、音楽のコミュニティ的な部分もあったと思うんですよね。

でも今はネットで何でも検索できる時代でもあります。

Spotifyで試聴できる。

Discogsで相場もわかる。

YouTubeでは映像&音も聴ける。

そんな時代だからこそ逆に、リアル店舗でしか体験できないコトに価値が出てきている気がするんですよね。

「おすすめしてください」は意外とムズい

店頭でよくあるのが、

「何かオススメありますか?」

という質問です。

でも実は、これ結構難しいんですよね。

ナゼなら、その「オススメ」って店員目線なのか、お客さん目線なのかで全然違うからなんですよ。

スタッフ側からすると名盤でも、お客さんの気分にはハマらないコトもある。

逆に、オイラ的には地味な1枚でも、その人にとって人生の1枚になるコトもある。

さらに面白いのが、

「どういう曲が好きですか?」

って訊くと、意外と明確に答えられない人も多いんですよね。

特にレコード歴が浅い人ホド、その傾向があります。

音楽単位なら好きな曲は言えるんですよ。

でもアナログレコードという括りになると、どこから選べばいいのかわからないみたいですね。

だからこそ、「かけ売り」が効くのかもしれません。

説明ではなく、空気で伝える。

コトバではなく、音で提案する。

コレって、かなりレコード的なコミュニケーションだと思うんですよね。

レコード店は「音楽との偶然の出会い」を売っているのかも

ココ最近のご来店客数の増加とかからもしかしてレコード店って、物を売っているようで、実は「体験」を売っている部分がかなり大きいんじゃないかって最近よく思うんですよね。

レコード棚を掘る感覚。

偶然見つける喜び。

店内で流れてきた曲との出会い。

知らなかった音楽に突然「ビビビっ!」ってハマる瞬間。

こういう偶然性って、レコード文化の醍醐味だと思います。

アルゴリズムのレコメンドって便利ですよね…でも、便利すぎるがゆえに、予想外の出会いが減っているコトもあるかもしれません。

その点、レコード店って不思議ですよね…自分では探そうとも思っていなかった曲が、突然眼の前に現れるコトがあるみたいなカンジのコトって時々あると思うんですよ。

しかも、その記憶には店の空気や、その時かかっていた音、会話まで全部残っていたりする。

オイラ達はレコードを売っているつもりだけど、ホントはその店で音楽に出会った記憶込みで売っているのかもしれないかもって、時々思うんですよね。

非効率だからこそ価値がある

散々「かけ売り」の良いトコロを言っていますが、正直コレってかなり非効率です(笑)

お客さんを観察して、

反応を見て、

曲を選んで、

空気を読みながらプレイする。

AIみたいに一瞬で最適解を出せるワケじゃないんですよね〜ソレっぽいレコードを選んでプレイしているコチラも結構手探りでやっていたりします。

でも、だからこそ面白いのかもしれません…コレって結構、人間っぽいんですよね。

タブン今の時代って、効率化が進みすぎたからこそ、こういう非効率な体験が逆に贅沢になってきている気がしますね〜。

しかも、レコードって元々そういう文化なんだと思います。

手間がかかる。

場所を取る。

重い。

ノイズも入る。

それでいて結構、値が張る。

でも、それでも人はレコードを愛してしまう。

それって結局、便利だからではなく、体験として豊かだからナンだと思うんですよね。


ONYX / I WANT LOVE
ONYX / I WANT LOVE の試聴
next recordsのサイトでONYXのレコードを探してみる

というワケで今日もNext Recordsでは、お客さんが棚から取り出した1枚をさり気なく横目で見ながら、

「この人、タブンこういう音好きだろうな〜」

なんて考えながらターンテーブルに針を落としています。

もしかしたら、その瞬間こそが、レコード店という場所のイチバン面白い時間なのかもしれませんね。


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