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26年、レコード店を続けてきて思うコト

渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を始めて今年で26年になります。

26年…ん〜改めて数字にすると結構長いですよね〜。

でも、店をやっている本人としては、正直そこまで「26年も続けたぞい!ドヤっ!」っていう感覚は全然ナイんですよね〜もうホント、毎日店を開けて、レコードを販売して、仕入れて、盤を磨いて、値段を付けて、お客さんと話して、また次の日店を開ける…というその繰り返しを続けていたら、いつの間にか26年経っていたという感覚のほうが近いですね。

ただ、長くレコード店を続けていると、時々「店を続けてきた時間」そのものを強く実感する瞬間があったりします。

先日、オーストラリアから来た30代くらいのお客さんとハナシした時も、まさにそんな瞬間でした。


海外から渋谷へ、レコードを掘りに来る人たち

そのお客さんは以前にも何度か来店してくれていたらしく、日本に訪れた時は毎回必ずNextへ訪れているとのコトでした。

ちなみに記憶力がショボショボなオイラは、まったく覚えていなかったですが…。

免税販売だったのでパスポートを見せてもらったのだけど、そこには物凄い数の入国スタンプが押されていましたね。

「かなり日本に来てるんですね〜」ってそう声をかけると、彼は笑いながらこう言った。

「レコードを日本に買い付けに来てるんですよ」

あ〜ナルホドなぁ〜って思いました。

最近、海外から来るお客さんは本当に多いというハナシはこのブログではさんざん記事に取り上げています。

アメリカやヨーロッパはもちろんだけど、オーストラリアからのお客さんもメチャ増えている印象です。当店調べだとオーストラリアは国籍別来店数確実にベスト3にランキングしているくらいですからね。

オイラ自身、以前から「オーストラリアってかなりレコード人気が高いんだろうな」という感覚は持っていた。

実際、店に来るオーストラリア人のお客さんはみんな熱量が高いんですよ…レコードを単なるファッションや流行としてではなく、文化としてしっかり楽しんでいる人が多い印象が伝わってきますしね。

そして一般のレコード好きだけでなく海外のディーラーやバイヤーにとって、日本の中古レコード市場はいまだにかなり魅力的な存在なようです。

特に90年代から2000年代にかけて、世間ではCDがメインの音楽メディアにも関わらず日本には大量の輸入されたレコード盤が流通していましたしね。

しかも日本人は比較的レコードを丁寧に扱う人が多いしね、だから海外から見ると日本には状態の良いレコードが大量に存在しているように見えるワケってコトですね。

フツーにレコード好きで日本に訪れる人だけでなく、買い付け目的で来日する人も一定数いるんでしょうね〜あんまり自分から「買い付けに来ました〜!」って自分から言う人は多くありませんケドね。

実際、オイラが気がついていないだけでの買い付け目的で海外からレコードを探しに来る人は多いと思います。

でも、その日驚いたのは、彼が単なるフツーのレコード好きではなかったコトでした。


「アナタのお店を参考にしました」と言われた日

「実は3ヶ月くらい前に、自分のレコード店を始めたんです」

そう聞かされた瞬間、オイラは思わず「おぉ!ナイスっ!」と声を上げた。

ココ1年くらい彼は、日本へ観光に来ていたワケではなく、自分のお店をオープンさせるためにレコードの仕入れのために何度も来日していたそうです。

それだけでも十分興味深かったのだけど、そのあと彼が言ったコトバに、オイラはさらに驚きました。

「実は、お店を始める時にアナタのお店をかなり参考にしたんですよ」

ん〜コレは本当に意外だった。

26年間店を続けてきたけれど、「アナタの店を参考にした」と直接言われたのは初めてだったんですよね。

ん〜まぁ、同業者からそんなコトを言われちゃうと正直な気持ち、ちょっとウレシイですね〜。

でも同時に、どこか不思議な感覚もありました。

オイラ自身、自分の店をそんなふうに見たコトがあまり無かったからなんですよね。

オイラにとってこの店は、毎日の仕事場であり、生活そのものでもある…レコードを仕入れて、店頭に並べて、お客さんと音楽のハナシをして、また次のレコードを探すという、その積み重ねを26年間続けてきただけで、「理想の店を作ろう」とか「誰かに影響を与えよう」とか、そんなコトを意識してきたワケではないからです。

だけど、オーストラリアの若い店主は、そんなオイラの店を見て、「こんな店をやりたい」とカンジていた…。

その事実は、なんだか妙に胸に残った。


12インチシングル専門店への憧れ

しかも彼も、オイラと同じく12インチシングルが大好きだとのコト。

「本当はアナタのお店みたいに、12インチシングル専門店にしたいんですよ」

そう言ったあと、彼は少し困ったような表情を浮かべながら続けた。

「でも、実際にやるとなると難しいんですよね」

そのコトバを聞いた時、オイラはものすごくリアルな悩みだな〜って思いました。

彼の店はまだ始まって3ヶ月。今はアルバムも扱っているし、7インチも置いている。CDも扱っていてジャンルもある程度広げてレコード店をやっているそうです。

その理由はシンプルでした。

商品構成を絞りすぎると、お客さんが減ってしまうから。

つまり彼は、

「自分の理想の店を作りたい」

という気持ちと、

「でも現実には売上も必要」

という問題の間で揺れているワケです。

コレはホントに難しい問題だと思います。

しかも厄介なのは、この問題に「コレが正解だっ!」という明確な答えがナイことです。

理想を優先すれば、間口は狭くなる。

間口が狭くなれば、当然お客さんも減る可能性がある。

だから経営のコトを考えれば、もっと多くのお客さんに届く商品構成にしたほうがイイ。

でも、そこを広げすぎると、今度は「自分が本当にやりたかった店」からどんどん離れていく。

個人店をやっている人なら、この感覚はきっとよく分かると思う。

コレってレコード店に限らないですよね。

洋服屋でも、飲食店でも、雑貨店でも、結局みんな同じトコロで悩んでいるんじゃないでしょうかね〜。

自分が好きなアイテムだけで店を作りたい。

でも、好きなものだけでは店は続かないかもしれない。

その現実を前にすると、結構悩む店主は多いと思います。

彼もまさに、その入口に立っているように見えました。


「どうして12インチ専門店でやっていけるんですか?」

そしてハナシしているうちに、彼がオイラにこんな質問をしてきた。

「どうして、12インチシングルだけで26年もやっていけるんですか?」

かなりド直球の質問ですね〜(笑)

だけど、オイラはその質問に対して、意外なくらいうまく答えられなかった。

というより、改めて訊かれるまで、オイラ自身あまり深く考えたコトが無かったんですよね。

「どうして成立しているんだろう?」

そう考え始めると、逆に自分でもよく分からなくなってきた。

でも、しばらく考えてみて思ったのは、やっぱり「時代と場所」が大きかったんじゃないかというコトでした。


2000年前後の渋谷とレコードカルチャー

オイラが店を始めたのは2000年前後。

今とはレコードを取り巻く空気がまるで違っていました。

まだCDが圧倒的に強かった時代だけど、一方でDJカルチャーはものすごく盛り上がっていて渋谷にはクラブがたくさんあったし、宇田川町周辺には大小さまざまなレコード店がひしめき合っていた。

当時の渋谷には、「レコードを探しに行く」という文化そのものが存在していたと思います。

全国からDJや音楽好きが集まり、何軒もレコード店をハシゴして巡っていた、それぞれのお店には毎週新譜が入荷し、EUやUSから輸入された12インチシングルが大量に積まれていた。

つまり、12インチシングルというフォーマット自体に、まだ圧倒的な需要があった時代でした。

だから、オリジナル盤12インチ専門店という営業スタイルも成立しやすかったのかもしれません。

でも今、同じことをゼロから始めたらどうだろう。

おそらく、かなり難しいと思う。

時代が違う。

音楽の聴かれ方も違う。

レコードの意味も変わった。

昔はあくまでもDJの「道具」だった12インチが、今では「趣味」や「コレクション」としての側面を強く持っている。

もちろん、今のレコードブームには素晴らしい部分もたくさんあると思います。

若い世代がレコードに興味を持ってくれるのは本当に嬉しいし、アナログという文化が再評価されているコト自体は素晴らしいコトだと思う。

でも、オイラが店を始めた頃とは、市場の成り立ちが全然違うんですよね。

だからオイラは、彼にカンタンに「こうすればいいよ」とは言えませんでした。


レコード店は「思想」が棚に出る商売

むしろ、

「このレコードをそのまま真似しなくてもいいと思うよ」

と話した。

というのも、店って単純に商品構成だけで出来上がるものじゃないと思うんですよね。

もっと言えば、レコード店って店主の思想がそのまま棚に出る商売だと思っている。

同じHouseを扱っていても、同じHipHopを扱っていても、店によって置いてある盤は全然違うと思うんですよ

値付けも違う。

盤質の基準も違う。

棚の並べ方も違う。

その違いって結局、店主の価値観なんだと思うんですよね。

つまり、レコード店の棚って、「その人がどんな音楽をどう愛してきたか」が全部出ると思うんですよ。

そういった意味ではレコード店ってすごく面白い商売だと思うんですよね。

単なる物販ではない。

そこには、その店主がどんな時代を通ってきて、何に衝撃を受けて、どんなレコードに夢中になってきたのかが、自然と滲み出るみたいなカンジですね。

お客さんも多分、そういう部分を敏感に感じ取っていると思います。

「なんかこの店好きなんだよな」

っていう感覚の正体って、結局そこの部分なんじゃないかな〜とも思うんですよ。


理想だけでは店は続かない

個人的には今でも、理想だけでは店は続かない…って思うんですよ。

だけど、理想がない店はただレコードを並べているだけの売場になる…とも思っているワケです。

ただ、誤解してほしくないのは、オイラ自身もその答えを見つけたワケではないというコトなんですよね。

26年、レコード店を続けているケド、実際は今でも悩みまくっているんですよ。

もっとこうしたほうがイイんじゃないか。

今の時代にこのやり方でいいんだろうか。

もっと違う商品を増やすべきなのか。

逆に、もっと絞るべきなのか。

ん〜ホントもう毎日のようにこんなコトを考えているワケです。

だから、オーストラリアの若い店主の悩みは、全然他人事に思えないですよね。

店を始めて2ヶ月でも、26年でも、本質的には同じコトで悩んでいるのかもしれません。

ソレって、なんだか面白いことだな〜とも思いますね。


誰かの理想の店になっていた

そして今回の一件で、やっぱりイチバン印象に残ったのは、当店が知らないうちに「誰かの理想の店」になっていたコトでした。

別にそんなつもりで店をやってきたわけじゃないんですケドね。

ただ、こんなレコード店があれば自分はウレシイなぁ〜って思うように好きなレコードを並べ続けてきただけなんですケドね。

でも、その積み重ねを見ていた人がいた。

しかも海の向こうで。

そう考えると、店って単に商品を売る場所じゃないのかもしれませんね。

ソコに流れている空気とか、棚のクセとか、ジャンルの別け方とか選盤の偏りとか、そういうもの全部含めて、店にはその人の生き方みたいなものが出ているみたいなカンジがしますね。

そして時々、それが誰かにとっての「理想」になるコトがある。

オーストラリアから来た若いレコード店主とのハナシは、そんなコトを改めてオイラに考えさせてくれました。


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「仕入れはどうやっているの?」って若いレコード店主に訊くと買い付けが半分くらいで、一般からの買い取りや特にレアなタイトルはDiscogsとかから仕入れているって言ってました。

「買い付けってドコに行くの?」って訊くと「ホトンド日本だよ」って…。

まぁ〜確かに今はメチャ円安だし、海外から見ると日本は物価がメチャ安く見えますからね〜しかもレコードの仕入れに関しては、アメリカやヨーロッパへ出向くよりも効率も良さそうですしね。

地元での買い取りに関しては、時々オファーがあるケド、良いタイトルは全然ナイって言っていました。

やっぱり12インチシングルに関しては80年代〜2000年代にその国でどれくらいのDJカルチャーが浸透していたのかっていうのがその国のレコードが存在している量に深くカンケーしていますからね。

そういった意味では、12インチシングルに関しては日本は、かなり特殊なのかもしれませんね。


30分くらい会話を交わしたんですが、彼がかなり日本語を話すコトが出来たので結構、深いトコロまでオーストラリアのレコード事情を聞くコトが出来ました。

「コレが私のお店です」ってスマホに保存されている彼のお店の写真や動画を見せてもらったのですが、メチャ広くてお洒落なレコードでした。

しかも、多くのお客さんがモリモリレコードを掘ってる様子の動画は、ちょっと羨ましかったかも(笑)

オープンして3ヶ月でこの盛況ブリ、しかもお店もお洒落でカッコいい…オイラが参考にしたいくらいですよ…マジで(笑)


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