
オイラは毎日、店頭に並んでいる12インチシングルの中から1枚を選んで、Instagramにレコメンド記事を投稿しています。
紹介する曲の背景やそのアーティストのプロフィールとかをウィキペディアや公式サイト等で調べて、自分なりの解釈を交えながら紹介する時間は、正直いって結構まぁまぁ楽しかったりします。
で、調べ物をする中で、フト気づいたコトがあります。
「アレ?この曲ってカバーだったのか…」って。
しかも、そういうケースってホントに多いんですよね。
まぁ〜オイラの浅い音楽知識では、そういうのも仕方がナイのですが…(笑)
で、思ったんですよ…表現者であるプロのアーティストが、どうして他人の曲を歌うのだろうって。
アルバムの1曲として収録するならまだしも、シングルカットされている場合も少なくないんですよね〜アーティストにとってシングルってのは、セールスの顔でもあるワケですよ、そうイミではいわば勝負曲だとも言えます。
なのにどうして、他人が作った曲 & 物語を自分の代表曲にするのか…。
今回は、そんな疑問を出発点に、カバー曲についてオイラなりにじっくりと考えてみたいと思います。
なぜプロはカバーするのか?
最初は単純に、商業的な理由だと思っていたんですよね。
すでに知名度のある曲をカバーすれば、元曲の認知度に乗っかるコトができるしね。
レコード会社の戦略としては、カバー曲をリリースするコトってアル意味で合理的な判断だともいえます。
新人アーティストがヒット曲をカバーして注目を集める例は枚挙にいとまがないですよね。
でも、それだけなんでしょうかね〜。
オイラはレコードを眺めながら、もう少し深い理由があるのではないかとカンジるようになったワケです。
まず前提として、アーティスト・ミュージシャンにはいくつかのタイプがいると思います。
自分で曲を書くソングライター型。
歌や演奏で楽曲を最大限に輝かせるパフォーマー型。
そして、その両方を兼ねるタイプ。
プロの世界では、「自作曲でなければ価値がない」という考え方は必ずしも主流ではないと思います。
むしろ「この曲を最も輝かせられるのは誰か」という視点の方が重要になるコトも多いんじゃないでしょうか。
音楽は「創る」芸術であると同時に、「解釈する」芸術でもあると思います。
例えばJazzのスタンダードを思い浮かべてみると、同じ曲を何十人ものミュージシャンが演奏しています。でも、どれも同じにはならないですよね。
テンポ、フレージング、音色、グルーヴ…そこに宿るのは、その曲をプレイしている演奏者の人生そのものです。
カバーとは、他人の曲を借りる行為ではなくって「自分のフィルターを通して語り直す」行為なのかもしれないって思ったワケです。
そしてもうひとつ、カバーはリスペクトでもあるとも言えます。
個人的には音楽は系譜だと思っているんですよね。
例えばSoulはゴスペルから、RockはBluesから、HipHopはSoulやFunkから生まれたワケです。
好きだから歌う。
影響を受けたから弾く。
それは継承であり、対話でもあると思うんですよね。
ちょっとロマンチックな言い方だと「カバー曲は、過去と現在をつなぐ橋」なんじゃないかなってレコード棚を整理しながら時々思ったりするワケです。
シングルという「勝負のフォーマット」
Next Recordsは12インチシングル専門のレコード店です。
シングルは、アーティストの名刺のような存在だとも言えます。
特にダンスミュージックの世界では、12インチは武器でもあります。
フロアでどう鳴るか、どう身体を動かすか…それが全てみたいなトコロってありますからね。
そんなフォーマットでカバーを出すというコトは、「この曲で勝負するっ!」という宣言に近いですよね。
アーティスト的にはココには葛藤もあるハズです。
他人の曲をやることへの抵抗。
オリジナルとの比較。
ファンからの評価。
それでもカバーを選ぶのは、その曲を「自分のモノにできる」と確信した瞬間なのじゃないかな。
そういった考えだと、元曲を聴いて「確かにこの曲、イイ曲だけどもっとこうすれば更にカッコよくなるんじゃないかな」とか思ったりするんでしょうね。
で、表現者の性分として自分の思うようなスタイルでこの曲をカバーする…で出来上がったカバー曲のを多くの人に聴いてもらいたくなる…「よしっ!シングルカットしてオレのカバー曲で勝負してやるっ!」みたいなカンジになるのかもしれませんね〜まぁ、かなり妄想が入っていますが(笑)
カバーがオリジナルを超える瞬間
では、カバーがオリジナルを超えるコトはあるのだろうか。
コレね〜結構多くあると思うんですよね。
ただし、超えるとは「売れた」という意味では決してありません。
曲の「意味」が更新されるコトだという解釈です。
同じメロディ、同じ歌詞でも、歌う人が変わればその物語は変わる…みたいなカンジです。
例えば男性目線のラブソングが、女性の視点で歌われた瞬間、その曲は別のメッセージを帯びてきます。
ジャンルが変われば、身体性も変わる。
ホッコリ和やかなFolkがキレキレのRockになり、しっとりと聴かせるバラードがエモーショナルなHouseになる。
ダンスフロアで鳴った瞬間、それまで静かに聴かれていた曲が踊れる曲に変わるみたいなイメージですね。
12インチ文化は、この「更新」を加速させたフォーマットだとも言えます。
ロングバージョン、ダブミックス、リミックス。
原曲を素材に、再構築する…これはコピーではなくって新たな再解釈であるワケです。
「カバーは、慣れ親しんだ物語を、別の語り部が語るようなものですよ」ってよく店頭でお客様に言ったりしています。
その曲の結末は知っている…でも、語り口が違えば、感動はまったく別モノのように変わる。
時代の鏡としてのカバー
カバーを聴き比べると、面白い発見に気が付きます。
同じ曲なのに、
70年代は生音主体、
80年代はシンセが前に出て、
90年代はビートが太くなる。
音の質感は、時代の鏡でもあるワケです。
個人的にはこれを「時間旅行」的感覚だと思っている。
ある曲のカバーをキッカケに元曲へ遡る、さらにその曲のルーツを辿るみたいカンジですね。
レコードは、音楽の歴史の地層みたいなものかもしれませんね〜。
カバーは葛藤の産物でもある
それでも、表現者としての葛藤はやっぱりアルんじゃないかな〜。
他人の曲をやることへの違和感や比較される怖さみたいなトコロってありますからね。
でも逆に言えば、オリジナルがあるからこそ、カバーは丸裸になるとも言えます。
そういったイミでは言い訳ができないワケです。
アーティスト的にはそこに覚悟があるのかもしれませんね。
だからこそ、カバーが成功したときの輝きは結構強いんじゃないかな。
レコード屋として思うコト
オイラの店には、オリジナルの元曲のレコードもあれば、カバーのレコードも扱っています。
同じ曲だけど市場価値はまったく違うんですよね。
でも音楽的価値はホント単純ではないですよね。
元曲を知らなかったお客様が、カバーから入ってルーツを辿る姿なんかを見ると、音楽の面白さを改めてカンジるワケです。
元曲とはジャンルや音色が全然違っていてもカバーは新たにその曲を聴く人たちの入口になるってコトも多いですしね。
そして時には、元曲よりもその人の人生に深く刺さるコトもあったりしますしね。
それって、スゴいコトじゃないですか。
次にカバーを聴くときは
次にカバー曲を耳にしたときに「どうしてこのアーティストは、この曲をカバーしたんだろう?」って少しだけ考えてみてください。
ヒット曲だから?
尊敬する先達へのオマージュ?
それとも、今の時代にこの歌詞を投げかける意味を感じたから?
背景を想像するだけで、その曲は一段と立体的になると思うんですよね。
で、オイラがぜひオススメしたいのは、聴き比べるコトです。
元曲とカバーを続けて聴いてみると、不思議なホド違いが浮かび上がってくる。
テンポは速いのか遅いのか。
キーは変わっているか。
イントロはアレンジの仕方。
ドラムは生か打ち込みか。
ベースラインは強調されているか。
特に12インチシングルの場合、ロングイントロやブレイクの処理、ビートの抜き差し、空間の使い方に、そのアーティストやリミキサーの美学が明確に出てきますよね。
「あ、この人はフロアで鳴らすコトを前提に再構築しているな」とか、
「原曲のメロディを残しながら、グルーヴだけを今っぽくしているな」とか。
そうやって耳を澄ませていくと、カバーは「答え合わせ」ではなく、「解釈の比較」になると思います。
そしてもうひとつ面白いのは、声の違いです。
同じ歌詞でも、
ささやくように歌うのか、
叫ぶように歌うのか、
淡々と語るのか。
声の質感、息遣い、間の取り方で、曲の物語はまるで違う方向へ進んでゆきます。
カバーは、慣れ親しんだ物語を、別の語り部が語ってくれるようなモノですからね。
さらに一歩踏み込むなら、「このカバーが出た時代」を想像してみるのも楽しいと思いますよ。
70年代の温かい生音。
80年代のシンセの煌めき。
90年代の太いビート。
2000年代以降の洗練された音圧。
同じ曲が、時代というフィルターを通してガラリと姿を変えるワケです。
ホント、カバーは時代の鏡でもあるってコトがよく判ります。
そして、最後にもうひとつ。
カバーから元曲へ、さらにそのルーツへと遡っていくコトもイイですよ。
「あ、このコード進行、もっと古い曲にも使われているな」
「このメロディ、Jazz由来だな」なんてカンジで掘っていくと、音楽は一本の線ではなく、巨大な樹のように枝分かれしているコトが判ってきます。
レコードプレーヤーの前に立ってレコード盤に針を落とすという行為は、音楽に真正面からストレートに向き合うというコトでもありますからね。
元曲は無名でカバーで世界的ヒットになった有名曲
ココまでカバー曲についてイロイロ書いてきましたが、じゃあカバー曲で元曲はソレホド有名じゃなかったのにカバーされたコトで世界中に知れ渡るコトになった曲ってナニ?って言うのが気になったので調べてみました。
Whitney Houston / I Will Always Love You (1992)
原曲:Dolly Parton / / I Will Always Love You (1974)
コレは、調べる前から「タブン、このカバー曲だろうな〜」って思っていた通りでした。
原曲は Dolly Parton が1974年に発表したカントリー・バラードです。
恋人への歌ではなく、当時のプロデューサーでありビジネスパートナーとの決別に際して書かれた曲だったそうです。
原曲は素朴で温かく、アコースティック主体であくまで「私的な手紙」のような楽曲です。
実は当初、映画の主題歌候補は別の楽曲だったそうです。
しかし権利の問題などで使用できなくなり、代替案を探していたトコロ、俳優のケヴィン・コスナーがDolly Partonの曲を提案したとされています。
やはりこの曲はプロデューサーの David Foster による大胆なアレンジの刷新がWhitney Houstonの圧倒的なヴォーカルワークと見事にハマったんでしょうね。
ちなみにWhitney Houstonのカバーが世界的にヒットしたコトで原曲を歌ったDolly Partonは嫉妬どころか、誇りに思っていたと言われてます。
Whitney Houston版の成功により、Dolly Parton自身の印税収入も大きく増えましたがDolly Partonはそれ以上に、「私の曲が新しい世代に届いた」というコトをとても喜んでいたそうです。
ここにカバー文化の理想形があると思うんですよね〜オリジナルへのリスペクト…そして原作者の祝福。
BLACKNUSS feat. NAI-JEE-RIA / THINKING OF YOU
BLACKNUSS feat. NAI-JEE-RIA / THINKING OF YOU の試聴
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オイラは今日も、インスタグラムへ紹介記事を投稿するために店頭から12インチを1枚選んでいます。
それがオリジナルであれ、カバーであれ、そこに宿る解釈を感じながらね。
今度、Next Recordsに来ていただいた時にカバー曲に思いを馳せながらレコード棚を覗いてみてください。
きっと、新しい物語に出会えると思いますよ。
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