commodores_lady_mex

相変わらず、アナログレコードの人気は衰える気配がありませんね。
このブログでもコレまでに何度か触れてきましたが、もはや「ブーム」というコトバでは片付けられないトコロまで来ている気がします。

やっぱり店頭に立っていると、そういった雰囲気を肌でカンジますね。
ココ数年でレコードに興味を持ち始めた新しいお客さん。
そしてもう一方で、1990年代から2000年代のDJブームのド真ん中でレコードを買い漁っていた世代の人たちが、まるでナニかを思い出したかのように戻ってくる。

「またレコード、聴きたくなったんですよね〜」

ナンてそんなコトバを聞くコトも、珍しくなくなりました。


20年ぶりの渋谷と、10枚のレコード

先日、印象的なお客さんにご来店いただきました。
「20年ぶりくらいに、渋谷でレコードを買ったんですよ」

そう言って笑ったその人の手には、すでに他店で購入したレコードが10枚ほど入ったお買い物袋がありました。

ナニ気ない雑談の流れで、そのお客さんがこう言ったんです。

「当時に比べたら、レコードってだいぶ安くなりましたよね〜」って。

ん〜正直、オイラはちょっと戸惑いました。
ココ数年、インフレや円安、そして世界的なレコード再評価の影響で、オイラ自身はレコードの価格が上がっているという実感しかなかったからなんですよね。

「え〜?そうですか?ドッチかというと、結構値段が上がってると思いますケドね」

そう返すと、その人は袋から1枚レコードを取り出しました。

「でも、これとか、昔は3000〜4000円くらいしてたのに、1000円でしたよ」って。


オリジナル盤か、ブート盤か、それは人それぞれの価値基準

オイラは、その盤を手に取った瞬間にオリジナル盤そっくりに作られたブート盤だってコトが解りました

ジャケットの雰囲気、レーベルの再現度、パッと見だと見分けがつかないくらいよく出来ているブート盤です。

ココで少し、オイラの本音を書きます。

オリジナル盤か、ブート盤か…。
ソコに何を求めるかは、人それぞれだと思います。
とりあえず音が鳴ればイイ、曲が聴ければイイ、それも立派な価値基準です。

だから個人的には、ブート盤を買う人を否定する気はありません。

ただ、心のどこかで「あぁ……」って、ちょっと残念な気持ちになるっていうのは正直なトコロであります。

そのお客さんが持っていた10枚のうち、数枚はブート盤でした。

ハナシぶりから察するに、本人はそれらをオリジナル盤だと思って買っているようです。

でも、その場で
「それはオリジナルじゃないですよ」
とは言いませんでした。

そんな無粋なコトを言ったトコロでその人の「今日の買い物体験」が良い方向に転ぶとは思えなかったからです。


視察という名のレコード掘りで見えた景色

数日後、中古レコード販売の今の状況を把握するため、競合他店をいくつか回ってみました。
視察という名の、いつものレコード掘りです。

ドコのお店もそれなりにお客さんが入っていて賑わっていました。
そういう状況を観察して改めて、レコード人気は本物だなってカンジますね。

ただ、レコード棚を見ていて、どうしても拭えない違和感があったんですよね。

オリジナル盤、ブート盤、再発盤が、完全にごちゃ混ぜで並んでいる。

これは今に始まったことではありません。
昔からそういうお店は多かったんですが、今は明らかに違うんですよね。

もう明らかにブート盤と再発盤の割合がメチャ増えていたんですよね


あったはずのレコードが、ない理由

レコード店のエサ箱をチェックしていてカンジたのですが、数年前なら「どこの店にも1枚はあったよね〜」っていうお決まりのタイトルが、見当たらないんですよ。

その代わりに棚に並んでいるのは、オリジナルそっくりのブート盤や再発盤がエサ箱にガッツリ入っていたんですよね。

その光景を見たとき、オイラの頭に浮かんだのが、このコトバでした。

悪貨は良貨を駆逐する

このコトバ、みなさんはどんな意味で使っていますか?


「悪貨は良貨を駆逐する」という、よくある誤解

文字面だけ見ると、

「悪いものが出回ると、良いものの価値まで壊されてしまう」

そんな意味に思えますよね。
正直、オイラもずっとそう思っていました。

実はこれ、実際は違うんです

このコトバは、経済学でいう「グレシャムの法則」って言われているヤツで本当の意味はこうです。

価値の低いものが流通し、
価値の高いものは使われなくなる

つまり、価値がなくなるのではなくって使われなくなる、しまわれるというハナシなんです。


レコードに置き換えると、見えてくるもの

これをレコードに置き換えて考えてみます。

  • 悪貨=粗悪なブート盤・再発盤

  • 良貨=オリジナル盤

レコード人気が高まるホド、良質なオリジナル盤は市場に出回らなくなる。

それはナゼか。

価値が分かる人たちが、手放さなくなったからって考えられなくもないでしょうか。


逆グレシャムとしてのレコードマニア

前置きが長くなりましたが、今回のテーマはココからです。

レコードマニアは、グレシャムの法則を“逆向き”に生きているんじゃないかなって思ったんですよね。

市場で安く流通しているモノではなく、価値を感じたモノを、あえて市場から引き上げる。

転売しない。
使い潰さない。
レコード棚に入れて、何度も聴く、そして保管・コレクションする。

これは非合理に見えるかもしれません。
でも、文化的にはとても合理的な行為なのかも…つまり体験としての保全なんじゃないかなってコトです。


25年、オリジナル盤だけを扱ってきて思うコト

オイラは2000年に、渋谷でNext Recordsという中古レコード店を始めました。

創業当時メインで扱っていたのは、80年代半ば〜90年代後半にリリースされたレコードです。
つまりその時点で、リリースから15年〜25年くらい経った古いレコード盤です。

レコード店をはじめた時からすでに25年が経過しています。
2026年の今では、創業当時扱っていたレコードは発売から40年〜25年が経ったコトになります。

オイラの店は、創業当時からオリジナル盤のみの販売にコダワッてきました。

ブート盤や再発盤は扱わない…それが、店のスタンスです。

で、レコード店をはじめた当時は比較的カンタンに見つかったタイトルが、今ではホトンド出てこないってケースが近年はメチャ多くなってってコトを切実にカンジています。

どうして市場に出てこなくなったのかっていうとまぁ〜廃棄されたレコードもあるとは思いますがそれ以上に世界中のレコードマニアの棚に、静かに収まったからナンじゃないかなって思っているんですよね。


良いレコードが減ったのではない

「良いレコードって、もう残ってないですよね?」ってコレ、よく訊かれるんですよね〜。

オイラは、残ってないんじゃなくってもう「流通しなくなった」だけなんじゃないのかなってカンジています。

それが、今起きているコトなんじゃないかなって思うんですよ。

レコードの人気が上がったコトによってレアなレコードや多くの人が欲しいタイトルは、世界中のマニアがコレクションとして保有し、市場に出さなくなったんじゃないかなって思っています。

たまぁ〜に人気タイトルやレア盤は、店頭に並んでもスグに売れちゃいますしね。

結果として、店頭のレコード棚には価値の低い盤だけが残る。

これ、まさに先に書いたグレシャムの法則と同じ構造ですよね。


で、レコードは、いつ市場に戻るのか?

時々、こんなコトも考えます。

マニアやコレクターの棚にしまわれたレコードは、いつ再び市場に出てくるのか?

タブン、それは今のレコード人気が沈静化したときになりそうかなって…。

ブームが落ち着き、「今スグに売らなくてもイイ」と思える人が減ったとき、
ゆっくりと市場に戻ってくるんじゃないかな〜って思っています。

まぁ〜それがいつ頃になるのかってコトは誰にもわかりませんケドね。


COMMODORES / LADY (YOU BRING ME UP)
COMMODORES / LADY (YOU BRING ME UP) の試聴
next recordsのサイトでCOMMODORESのレコードを探してみる

悪貨は良貨を駆逐する。
その本当の意味は、

良いものホド、
軽々しく使われなくなる

というコトなのかもしれません。

レコードマニアは、その法則を理論ではなく、日常の行動として実践している存在なんじゃないかなって思います。

価値を感じた瞬間に、市場から引き上げ、自分の人生の一部として保管するみたいなカンジかな。

あるイミ、オイラはそういうレコード手渡すシゴトをしているんだと思っています。


とは言えこれからも当店はオリジナル盤だけを店頭に並べてゆきますケドね。

もし「ちゃんとした音で、ちゃんと聴いてみたい」って思ったら、ゼヒ、渋谷のお店やWebサイトを訪れてみてください。


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