
インバウンド時代に12インチ専門店主が感じているコト
2025年も、気がつけば年の終わりが見えてきましたね。
東京・渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店をやっている当店にとって、今年は間違いなく「これまでとは違う1年」でした。
売上もコロナ禍明けから比べるともっとも多かったし、ナニよりもこれまでで一番多くの枚数のレコードが店頭から旅立っていきました。
でも──
売れれば売れるホド、心のドコかに引っかかる感覚が残るようになったのも、また事実なんですよね。
売上は結構イイのに、なぜか素直に喜べない
レジで会計をしながら、スカスカになったレコード棚を見つめていると、フト頭をよぎるのは、
「コレ、本当に喜んでいい状況なんだろうか?」
という疑問でした。
売上が伸びているのは間違いないんですよね〜でも同時に、レコードが異常なスピードで減っているコトも、現場に立っているとまざまざとカンジてしまう。
「売れている=良いコト」
その単純な図式では片付けられない違和感が、今年はずっと頭の片隅にありました。
免税店化と、想定外に当たったインバウンドの波
当店は、2018年に2020年に開催される、東京オリンピックを見据えて免税店化しました。
「これから外国人が増えるだろう」という、わりと単純な読みです。
結果はご存知の通り、コロナでその見込みは完全にハズれました。
ところが、コロナ禍が明けてから状況は一変します。
2024年は、とにかく海外からのお客さんがメチャ増えたんですよね。
そして2025年は、その勢いがさらに増しています。
ニュースでは、2025年11月時点で、すでに前年(2024年)の訪日外国人数を超えたと報じられていました。
政府はインバウンドを「成長産業」と位置づけ、2030年には訪日客6,000万人を目指しています。
この流れは、一時的なブームではないようです。
海外から見ると、日本のレコードは「4割引〜半額」
海外から来たお客さんとハナシをしていると、ある共通した感覚が見えてきます。
彼らにとって、日本の商品は自国の物価感覚で見ると「だいたい4割引から半額くらい」にカンジられている、というコト。
これは感覚論ではなく、ビッグマック指数のような物価比較で見ても、かなり実態に近い数字です。
当然、レコードもそれに近い感覚のようです。
日本人からすると「まあ妥当かな」というレコードの価格が、彼らの目には「この状態で、この内容で、この値段?マジかっ!?激安やんけっ!」と映っているみたいです。
だから、1人で10枚、20枚という買い方が当たり前になる、時には30枚、50枚とまとめて買っていく人も結構いる。
その光景を見ながら、オイラは「スゴい勢いだなぁ」と思う一方で、ドコか落ち着かない気持ちにもなっていました。
Discogsが世界標準価格になった時代の歪み
今のレコード市場を語る上で、Discogsの存在は避けて通れません。
気がつけば、世界中の人がレコードの価格相場を確認するためにDiscogsを見る時代になっています。
だけど、ココには明確なズレがあります。
Discogsの価格って世界的なニーズでだいたいコレくらいの相場観…みたいな値付けになっています。
一方、ヤフオクの落札価格は「日本」という限られたマーケットでのそのレコードが求められるニーズがその落札価格になっているコトが多いです。
一概には言えませんがDiscogsの世界マーケットで販売されている価格よりもヤフオクの日本マーケットで販売されている価格の方が安いケースが多いようにカンジます。
Discogsの価格が、そのまま日本の市場にフィットするワケではない…というコトです。
実際に、ヤフオクの落札価格とDiscogsの販売価格を見比べると、
「同じ盤なのに、こんなに違うのか」と驚くことは珍しくありません。
最近では、ヤフオクに出品したレコードが、落札代行業者を通じて海外へ流れていくケースも増えています。
コレは、海外のレコードコレクターたちが自分では入札出来ないヤフオクに落札代行業者を通して購入しているというコトですね。
海外のレコードコレクターは代行業者に落札手数料と日本からの送料を払ってでもDiscogsから購入するよりもお得であるというコトなんでしょうね。
一方オイラ自身、レア盤が出品されていないか時々eBayをチェックしているのですが「コレはっ!」って思うレコードをウオッチして入札してもことごとく競り負けちゃうんですよね。
コレは要するに日本のレコードマニアの購入力が世界のレコードマニアの購入力よりも弱いってコトなのかもしれませんね。
トーゼンeBayで入札している人もそのタイトルの相場観を分かった上で入札しているワケです。
コレはあるイミ、Discogsの販売価格が完全に世界のレコードマーケットに影響しているコトになるんでしょうね。
日本は、かつて世界屈指のレコード消費国だった
実は日本は、70〜90年代にかけて、世界でもトップクラスのレコード消費国でした。
当店がメインで扱う洋楽の12インチシングルも、国内盤・輸入盤ともに大量に流通していた時代があります。
そして日本人は、レコードをとても大切に扱ってきました。
保管は丁寧で、盤もジャケットも状態がメチャ良いものが多い。
だからこそ、「世界中の人が探している音源」が、日本に残っていた。
──残って「いた」と、過去形で言いたくなるホド、今その状況は大きく動いています。
売れている。でも、確実に減っている
当店が渋谷で開業した2000年頃、DJブーム真っ只中の時代、あの頃もレコードはよく売れていました。
でも、不思議とその当時は「レコードがなくなる」という感覚は、一度もなかったんですよね。
供給が止まるとか、枯渇するとか、そんな心配は全く全然なかったんです。
ところが状況はガラリと変わって今は違う…。
当店のような小さな12インチシングル専門店ですら、
「レコードの減り方が異常だな…」って肌でカンジるワケです。
オイラの感覚では、日本から海外へ流出しているレコードは、1日に数万枚単位に達しているのではないかと思っています。
レコードは売れている…でも、確実にレコードは減っている。
この2つが同時に進んでいるのが、いまの状況なのではないかって思っているんですよね。
レコードは本当に枯渇するのか?
ん〜コレ、完全にゼロになることはないでしょう。
でも、人気盤や定番曲の盤、コレクターニーズが高いオリジナル盤は、確実に見つかりにくくなっていくんじゃないかなぁ。
メチャ探しても全然出てこない…見つからない。
そうなれば、必然的に価格は上がる。
その結果、「欲しいけど買えない」という状況が、特に日本の若い世代や、新しくレコードに興味を持った人たちの前に立ちはだかるんじゃないかなぁって思うんですよね。
コレって文化として見たとき、決して健全な状態とは言えないかもって思う部分もあるんですよね。
レコード人気はバブルなのか?
「レコードって、今バブルでしょ?」
って時々そう言われるコトもあります。
確かに、短期間で価格が跳ね上がったジャンルやアーティストもありますし、SNSやDiscogsの評判がダイレクトに価格へ反映される今の市場には、投機的な側面もあるのは事実でしょうね。
まぁ〜でもオイラは、少なくともあと2〜3年、このレコード人気は続くと見ています。
アナログレコードというフィジカルなフォーマットの強さ、DJ文化の再評価、そして「音楽体験」としてのアナログの魅力は、そうカンタンに消えるものではないと思います。
ただしっ!
「ナンでもユルくカンタンに売れる時代」は確実に終わりつつあると思います。
これからは、選ばれるレコードと、そうでないモノの差が、よりハッキリしていくハズじゃないかなって思っています。
Next Recordsとして、これから考えているコト
お店を営んでいて売上が伸びるのは、やっぱり正直うれしいですよ。
でも、レコード好きとしては、どうしてもフクザツな気持ちが残る。
だからオイラは、Next Recordsとして、
「ただレコードを並べて売る店」から、
「価値を設計する店」へシフトする時期に来ているんじゃないかなぁってカンジています。
なぜこの盤が重要なのか。
なぜ12インチシングルなのか。
なぜ今、これを聴く意味があるのか。
そういったそのレコードをコレクションするイミや価値を、キチンと伝えていきたいなって思っています。
レコードは、ただのモノじゃない
レコードは…
音楽であり、記録であり、文化であり、時代の空気そのものであると思うんすよね…ちょっと大層なイイ方ですが(笑)
日本に残ってきたレコードは、偶然ソコにあったワケじゃなくって大切にされてきた結果、ソコにあった。
だからこそ、レコードが売れている今、両手放しで喜べない。
この違和感を、レコード店主として2025年の今のオイラの気持ちをココに書き残しておきたかった的なカンジです。
まぁ〜10年後に読み返していて「あぁ…2025年にこんなコト思っていたんだなぁ」って2035年のその時の状況と比べてみるのも興味深いですね〜というか10年後に当店が生き残っているのかっていう方が気になりますケドね(笑)
REBIRTH / EVIL VIBRATIONS (SATURDAY MIX)
REBIRTH / EVIL VIBRATIONS (SATURDAY MIX) の試聴
next recordsのサイトでREBIRTHのレコードを探してみる
というワケで、もしこの記事を読んで、
「12インチシングルってどんなカンジなんだろうちょっと聴いてみようかな」とか
「渋谷に行ったら、Next Recordsを覗いてみようかな」って
そう思ってもらえたなら、それが一番うれしいです。
レコードは、まだ終わっていないっ!
でも、放っておいても守られるものでもない。
オイラは、この店で、この12インチシングルというフォーマットで、もう少し、この文化と踏ん張って付き合っていくつもりです。
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