
■ お取り置きは「ただのサービス」じゃない
渋谷の街で12インチシングル専門の中古レコード店を営んでいると、毎日のようにイロイロなお客さんにご来店していただけます。
常連さんもいれば、初めて来店された人、そして海外からわざわざ足を運んでくれる人もいます。
そんな中で、よくあるやり取りのひとつが「お取り置きできますか?」というご依頼です。
中古レコード店ではもうおなじみのコトバなんだけど、この「お取り置き」って、実はメチャ人間らしい心理が詰まってるなぁと思うんですよね。
ホント、その場でお金を払って買えばスグに自分のモノになるのに、ナゼか「取り置いてほしい」と頼む。
そして、悲しいかな時々はそのままご購入いただけずにキャンセルになってしまう。
今日はそんな「お取り置き」をめぐる、お客さんとお店、それぞれのココロの動きを少し考えてみたいと思います。
■ ナゼ人は「お取り置き」をしたくなるのか?
レコードに限らず、人は「欲しいモノ」や「手に入れたいモノ」を見つけた時に、ココロの中でまず「これ、自分のものにしたい!」という所有欲が生まれますよね。
コレを「心理的所有」って呼ぶんだケド、要は「まだ買ってないけど、ココロの中ではもう自分のモノ」っていう状態です。
このとき、人は少し不安になる。
「今買わないと、誰かに取られるかもしれない」
でも同時に、
「本当にコレ、買っていいのかな」「今じゃなくてもいいかもしれない」という迷いも出てくる。
ん〜こういう気持ちってレコード店を訪れて気になるタイトルを見つけた時ってよく起きますよね。
で、買う or 買わない 以外の第三の選択として出てくるのが「お取り置き」という案です。
つまり、お取り置きというのは、
その「迷い」と「欲しい」の狭間で揺れるココロを落ち着かせる行為になっているのかもしれませんね。
一度「取り置いてもらった」と思うと、安心して一晩考えられるし、ココロの中では「とりあえず自分のもの」になった気がする…みたいな気持ちに落ち着くようです。
お取り置きは、「今すぐ決められないけど、手放したくもない」というナンダカ人間らしい揺れの象徴なんですよね。
■ お客さんの中で起きている3つの心理
オイラがこれまで見てきた中で、
お取り置きを頼むお客さんには大きく3つの心理が働いている気がします。
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理性の迷い:「他にも欲しいレコードがある」「給料日前だからちょっと考えたい」
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リスク回避:「その場の勢いで買って後悔したくない」「もう少し盤質がイイのがあるかも」
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感情の整理:「欲しいケド、買う理由を自分の中で納得したい」
お取り置きを頼むというのは、その迷いを「店」という安心できる場所に一旦預けているような感覚になるみたいですね。
「考える時間をもらう代わりに、信頼でつながる」的なカンジでしょうかね。
そこにお取り置きの人間的な温かさがあると思うんです。
■ お店としてのお取り置きの考え方
オイラの店では、できる限り柔軟にお取り置きに対応しています。
中古レコードって基本的に1点モノです。
だからこそ、「売れてしまったらもう出会えないかもしれない」という気持ちは痛いホドわかります。
個人的にもこういった経験は、コレまでに何千回も味わってきましたからね。
で、お取り置きの依頼を受けた時点で、オイラは「この人はマジでレコードが好きなんだなぁ」って思うんでしよね。
結果としてたとえキャンセルになっても、その人が「音楽・レコードに向き合う時間」を持ったということが、もう嬉しいんですよね〜ん…ちょっとカッコつけた言い方ですケドね。
ただ現実的には、
「お取り置きされたまま音沙汰なし…」というケースもゼロではない。
「楽しみにしてたんだけど、来なかったなぁ」と思うコトもある。
日本のお客さんの「お取り置き」に関しては、かなりの確率で「取り置きしてもらったレコード買いますっ!」って言っていただけるですけどね。
しかし、海外からのお客さんの場合はちょっと事情が違います。
■ 海外のお客さんとの「お取り置き」―文化のズレと人の心理
これは実際にあったハナシ。
閉店1時間前、イギリスから来たという自称DJのお客さんが初めてご来店していただけました。
HOUSEコーナーで夢中になってレコードを掘り、スマホで試聴しながら、カップリングのRemixも聴きたいとのコトなので店のオーディオでも10枚ホド試聴していただきました。
結局30枚近く選び、そのうち20枚ホドを「購入したい」というコトになりました。
試聴もたくさんしたし閉店時間を1時間ホド越えて接客しました。
しかしまだまだチェックしたいとのコト。
「明日、またお店に訪れるから買うからこのレコードを取り置いて」と言われた。
その時点で数万円の金額だしさらに積み増しもある予感…もちろんオイラも超嬉しかった。
「おお、これは相当本気だな」と思って、お店のHPがプリントされたショップカードを手渡ししてホテルに帰ってチェックしてみてくださいってお伝えして、快くお取り置き依頼を受けてお見送りしました。
で、翌日の再来店を楽しみにしていたんだけど──
結局、そのDJさんは現れなかった。
3日待っても来ず、レコードは売り場に戻すコトになりました。
実はこういうケース、海外からのお客さんでは珍しくないんですよね。
「明日買う」と言っても、旅行スケジュールの変更や荷物の都合で来られなくなったり、他の店で似た盤を見つけて満足してしまうコトもある。
でもそれ以上に大きいのは、文化的な“取り置き”の感覚の違いナンじゃないかなって思うんですよね。
日本では「取り置く=買う前提の約束」みたいなカンジなんだけど、
欧米では「とりあえず保留しといて」の延長線上みたいなイメージみたいです。
つまり、彼らにとっては「買う約束」ではなく、「検討中の印」くらいの感覚のような気がするんですよね。
■ 「取り置き放置」に潜む人の心──逃避と自己防衛
中には日本人のお客さんでも、「そのままキャンセル」というケースも稀にですがあります。
これも悪意ではなく、ホトンドが心理的防衛反応だと思います。
人は「期待を裏切った」とカンジると、罪悪感を持つ。
でも、その罪悪感が強いほど「お店に行きづらくなる」。
「買わなかったことを申し訳なく思う」
「なんとなく気まずいから連絡しづらい」
そうやって無言のまま関係を切ってしまう…ん〜このパターン、結構あるんですよね〜。
でもオイラからしたら、そんなに深刻に考えなくていいんですよ。
レコードって縁のモノですからね。
その時に買えなくても、また別のタイミングで「あの1枚」と出会えばいいんじゃないかなって思うんです。
だから、キャンセルしたって全然構わないし、むしろまたお店に来てくれてくれる方がウレシイんですよね。
■ お取り置きを「信頼構築の機会」として活かす
オイラは、お取り置きっていうのは「売れる・売れない」以上に、「お客さんとの関係を深めるキッカケ」だと思っているんですよね。
そのレコードを「買いたいっ!」って思ってる時点で、その人の音楽の温度は上がってるワケです。
その熱を信頼に変えるチャンスが、「お取り置き」なんじゃないかなぁ〜って思うんですよね。
例えば、
「この盤、次はなかなか出ないですよ」
「B面のRemixも結構カッコイイんですよ」
なんて、そんな会話を通して、お客さんとの距離が少し縮まるってその一言一言が、「ただの販売」じゃなくて「音楽の共有」につながると思うんですよね。
お客さん的にも「取り置きしてもらった」って気持ちが「自分の事情を汲んでもらった」みたいなカンジになるしお店的にも「お取り置きするコトでちゃんとお店に訪れてくれる」っていうお互いの信頼関係につながってゆく部分ってありますからね。
■ お取り置きを購入につなげる「心理トリガー」
コレまでの数十年の経験上、お取り置きから実際の購入につながるかどうかって、お店側の「ひとこと」で変わるコトが多い部分も結構あるんですよね。
たとえば…
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限定性トリガー:「このタイトル、前の入荷した時もすぐ売れちゃったんですよね〜」
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共感トリガー:「この盤を選ぶ人ってホント、センス良いですよ」
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所有後イメージトリガー:「夜中にこの曲聴いたら絶対にハマりますよっ!」
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安心トリガー:「もしやめても全然OKなんで、よく考えてくださいね」
こうした言葉は、押し売りではなく「安心の後押し」みたいなカンジですかね。
お客さんが「この店は信頼できる」と感じた瞬間、「買おうっ!」って気持ちになるみたいです。
まぁ〜オイラ自身もレコード店をホボ毎日訪れるマニアから自分でレコード店を営むくらいなった経験上、こういった気持ちは実体験としてメチャありますからね。
■ 「お取り置き文化」が教えてくれるコト
中古レコード店で働いていると、「人がモノを欲しくなる」というのは単純な経済行動じゃなくて、
「感情と時間の物語」なんだなぁ〜ってカンジるんですよね。
レコードを取り置く行為には、その人の「音楽との向き合い方」とか「自分との対話」が隠れているんじゃなかな。
だから、お取り置きがキャンセルになったって、それは「気持ちが変わった」だけのコト。
決して音楽への熱が冷めたワケじゃないって思うんですよね。
ってこういう気持ちにオイラ自身が落としドコロをつけているのもタブン、買ってもらえなかったコトに対して気持ちを落ち着かせるためにそう思っているのかもしれませんね(笑)
ん〜「商売を勉強させてもらいますっ!」てカンジですね。
■ 海外のお客さんとの今後のルールづくり
海外のお客さんとのお取り置きに関しては、
今後は少しだけルールを設けようと思ってます。
例えば、
「1日限りのホールド」
「希望があれば少額デポジットで1週間キープ」
そんなカタチのルールをはじめから決めておくことで、お互いに安心してやり取りできるんじゃないかな。
でもナニより大切なのは、そのお客さんがまた日本に来た時に再び「TokyoのNext Records」を思い出して訪れてもらえるコト。
だから、たとえ一度のキャンセルでも、関係を切らずに「また会える距離感」を残しておくのが理想かなぁって思うようにしています。
しかしっ!正直な気持ちは「買ってほしかったーーーっ!」って言うのは包み隠さずありました(笑)
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■ お取り置きは「信頼の入口」
「お取り置き」って、一見お店側の手間が増えるだけのように見えるけど、実はコレ「信頼を築く最初の入口」なんじゃないかなって思うんですよね。
キャンセルも含めて、ソコにあるのは人間らしい「迷い」「期待」「申し訳なさ」「嬉しさ」です。
それらを全部ひっくるめて、レコードというメディアの温かさと同じ「アナログな人間関係」だと思うんですよね〜あ〜コレ、結構イイ落ちが言えたような気がします(笑)
なので、当店はこれからもお取り置きを続けます。
1人ひとりの音楽のタイミングを尊重しながら、「またこの店で掘りたいっ!」って思ってもらえるようなレコード店でありたいのであります。
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