渋谷で12インチシングル専門の中古レコード店を営んでいるnext recordsです。
喧騒の街でもある渋谷も宇田川町ぼ超外れに立地している当店は、夜になると結構静かに落ち着いた雰囲気の時もあったりします。そんな店の前のレストランのネオンがボンヤリと灯る中、1人の若いお客さんにご来店していただきました。
20代くらいの若いお客さんは、手には別の店で買ったレコードが入ったビニール袋…店頭のレコード棚をそこそこに眺めた後、少しモジモジしながらオイラに声をかけてきました。
「すいません…ちょっと聞きたい事があるんですが…」
ん〜このクダリ…そこからのハナシの流れが、実は以前にも何度かあった問い合わせとまったく同じで思わず笑ってしまった。
若い世代の「戸惑い」
お客さんのハナシはこんなカンジ。
・1年ほど前から趣味でレコードを買い始めた。
・気になる盤をレコード店やフリマアプリで購入している。
・ところが、他店で数百円で買った盤が、ウチの店では数千円で売られているのを見た。
・その違いが気になって、このブログ「渋谷レコード店日記」を読み、どうやら「オリジナル盤」と「ブート盤(フェイク商品)」があるコトを知った。
そんなカンジの内容で今日、自分が持っているレコードがオリジナルかどうか見て欲しい、とのコト。
もうホント、数ヶ月前に同じコトを訊かれてオリジナル盤とブート盤とだいたいの見分け方を解説したんですケドね。
その時の記事はコチラ
「オリジナル盤/ブート盤の見分け方を実践解説」
オイラ的には結構詳細に書いたつもりなんだけど、その見分け方ってやっぱりレコード毎に異なりますからね〜フツーの人からしたら解りにくいのかもしれません。
で、今回はレコードを5枚見せてもらったのだけれど…残念ながら全部がブート盤や再発盤でした。
オリジナル盤と異なる相違点を解りやすく説明すると彼は「え、じゃあボク、騙されてたんですか?」とちょっと憤慨しつつ、どこか残念そうでもあった。
そもそも、なぜブート盤は作られるのか?
オイラ自身、長くレコードを扱ってきているけれど、この問いは業界の根深いテーマだと思うんですよね。
ブート盤が作られる理由は大きく3つあると思います。
1.需要と供給のギャップ
人気のあるレコードほどオリジナル盤の流通量はトーゼン少なくなりますよね。欲しい人が多いのになかなか手に入らない。そんな市場に目をつけて「じゃあ作っちゃえ」と考える業者が出てくる。コレは、レコードだけに限らず多くのアイテムでありますよね。
2.短期的な利益
正規のライセンスを取らずに盤を作ればコストは格段に下がる。安く仕入れて高く売れるから、儲かるワケです。
3.文化保存という「言い訳」
「名盤を再び世に出すのは文化的に意味がある」「オリジナルが高すぎるから安く流通させてあげる」という理屈を掲げて、正当化するケースもある。
ただ、どんな理由を並べても正規の権利者に無断で作られたものは「海賊盤」であり、違法であるコトに変わりはない。
業者は違法とわかっているのか?
結論から言えば、ブートレッグ盤を作っているホトンドの業者は違法性を理解している。
要するにヤバいと思いながらもやっちゃうんでしょうね。
ただし彼らの心理はこんなカンジじゃないかなぁ。
・「みんなやってるから大丈夫」
・「正規再発盤がナイんだから仕方ない」
・「元が高すぎるから、安価で売り出すのはむしろ消費者のため」
・「リプロダクト盤って名前にすればグレーで済む」
つまり、罪悪感をやわらげながら商売を続けている。
消費者はなぜ買ってしまうのか?
ココも消費者のちょっと変わった心理が働いていると思うんですよ。
・知っていて買う人:安いから。とりあえず聴ければいいから。本物は高すぎて手が出ないから。
・知らずに買う人:初心者は知識がない。写真や説明が巧妙で「正規盤っぽく」見える。カンタンに手に入ったコトを「ラッキー」と都合よく解釈してしまう。
これ、心理学でいう「確証バイアス」でしょうね。自分に都合のイイ情報だけを信じたくなるみたいな心理になるんでしょう。
騙されて買ったときの心理
コレは人によって違うケド、だいたいこんな反応になるんじゃないかな。
・「ショックだ…」という落胆。
・「ふざけるなっ!」という怒り。
・「やっぱり知識不足だった…」というちょっとしたハズかしさ。
・でも時には「音が聴けるし、まあイイか…」と自分を納得させるコトもある。
人は「騙された」コトを認めるのが結構ツラいから、後から理由をつけて気持ちを整理するのかもしれませんね。
呼び方を変えるとどうなる?
最近は、ブート盤や海賊盤のコトを「リプロダクト盤」「リプロ盤」というコトバに置き換えて表現されているみたいですね。コレ、結構心理的な効果は大きいんじゃないかなって思います。
・「海賊盤・ブートレッグ盤」:違法・悪質・犯罪的なイメージ
・「リプロ盤」:復刻・リメイクのような柔らかい響き
同じものでもコトバを変えると、人の受け止め方とイメージってガラッと変わりますよね。
これはマーケティングでいう「フレーミング効果」そのものですね。
大手レコード店がどうしてそういったブートレッグ盤を売るのか?
CDやデジタル音源を違法に流通させたなら即訴訟になるのに、なぜアナログレコードだけは見逃されているのか?
あくまでも推測だけどタブン、こういったコトが考えられると思います。
・そもそもアナログレコードの市場規模が小さいため、権利者がそこまで本気で動かない。
・古い音源は権利関係が複雑で、誰が差し止めるのかハッキリしない。
・「音楽文化の保存」という口実が通りやすい。
だから大手も「リスクは低い」と判断してブートを売ってしまうみたいなカンジじゃないでしょうかね。つまり海賊盤・ブートレッグ盤を販売しちゃうコトを決して「是」としているのではなくあるイミ「黙認」しちゃっているんじゃないでしょうね…タブン。
Next Recordsとしての考え
ウチもレコード屋だから、「売れるモノを置きたい」という気持ちがゼロじゃない…でも、やっぱりお客さんがガッカリするような売り方はしたくないんですよ。
ブート盤でも、お客さんが「これはブートだ」と理解したうえで買うなら、それはひとつの選択肢だと思います。
でも、問題はそのコトがちゃんと説明がされていないコトなんじゃないかなぁって思うんですよ。
知らずに買って後でショックを受ける人を増やしてしまうのは、販売する側として誠実じゃないと思うワケです。
だからウチの店はあえて「オリジナル盤専門」というコダワリの立て看板をあげたいって思うんですよね。
ホンモノのオリジナル盤でないレコードをコトバを言い換えて販売するんじゃなくってオリジナル盤であるコトをキチンと保証して買ってもらえるようにしたいって思うワケです。
モチロン、時間をかけて丁寧にクリーニングや盤質チェックをして、独自のレコメンドも添えて、ただの「モノ」としてじゃなくそのレコードの「ストーリー」ごとお届けしたなぁって思うんですよね。
PEVEN EVERETT / I CAN'T BELIEVE I LOVED HER
PEVEN EVERETT / I CAN'T BELIEVE I LOVED HER の試聴
next recordsのサイトでPEVEN EVERETTのレコードを探してみる
ブート盤が作られる背景には「需要と供給のギャップ」「利益追求」「文化保存の言い訳」というカンジの要素が絡んでいると思います。
業者は違法とわかりつつ、呼び方や言い訳で自分を正当化する。消費者は知識不足や心理的バイアスで買ってしまう。
そんな混沌とした状況だからこそ、Next Recordsは「ココで買えば間違いナイ!」って思ってもらえるレコード店でありたいなぁ〜って思う次第であります。
ん〜ナンかちょっと柄でもないコト書いてしまっちゃいました(笑)
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