渋谷レコード店日記 - アナログレコードコレクションのススメ

東京 渋谷の12インチシングル専門の中古レコード屋next. recordsで日々思ったコトやレコードについて書いてます

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6月の売上を見て、ちょっと焦った

毎月の月初になると、オイラと共同経営者である相棒のN氏と前月の売上を集計しながらミーティングをしています。

今月の売れ行きはどうだったのか、どういった内容のレコードがよく動いたのかってカンジのコトをハナシしているんですよね、まぁ〜長年、レコード店を続けていると、この時間は毎月のルーティンのようなものです。

そんなある日。

前月の売上データを見ながら、相棒のN氏がから

「6月の免税売上、めっちゃ減ってるぞ。」って指摘がありました。

当店では海外から旅行で来られたお客さんには免税販売を行っています、そのため、月全体の売上の中で「外国人旅行者のお客様がどれくらい購入されたのか」が数字でハッキリと解るんですよね。

で、データを確認すると、6月の免税売上は前月の5月と比べて40%以上もダウンしていました。

「えっ?」思わず画面を二度見しました。

渋谷の街を歩けば、相変わらず海外からの旅行者であふれています。ニュースでも「訪日外国人数は過去最高を更新」という話題が毎月のように流れていました。

オイラ自身もこのブログで、「本当に外国人のお客様が増えました。」っていうコトを何度も書いてきました。

実際、お店に立っていても日本語より英語で接客している時間のほうが長い日も珍しくありません。

そんな状況だったので、

「これからもしばらくは、この流れが続くのかな〜」なんてどこかで思っていたのかもしれません。

だからこそ、6月の数字は正直かなり意外でした。

もちろん、長年商売をやっていれば、月ごとの売上に多少の波がことは十分理解していますよ。

売上なんて毎月同じになるワケがありません、良い月もあれば悪い月もある、そんなコトは何度も経験してきました。

でも、40%以上ダウンという数字を見ると、さすがにココロがざわつきます。

「ナニがあったんだろう?」とか「何かしくじったかな?」ってアタマの中ではいろいろな考えが駆け巡りました。

でも、いくら考えても思い当たる節がないんでうよね。

ホームページの更新もいつも通り続けていましたし、Googleマップの情報もこまめにアップデートしてましたし、SNSもサボっていません。

むしろ集客に関しては、手を抜いたという感覚はまったくないんですよ、だから余計に分からない。

原因が分からないというのは、経営者にとって一番厄介なんですよね。

原因さえ分かれば対策はいくらでも考えられます。でも、理由が見えないと、どこを改善すればイイのかさえ分からないんですよ。

実は、この時点ではオイラが本当に不安にカンジていたことを、自分自身でもまだ整理できていませんでした。

「外国人のお客さんが減ったコト」が怖かったのか、それとも別のナニかだったのか。この時のオイラには、その答えがまだ見えていなかったんですよね。

「6月が悪かった」のではなく、「5月が良すぎた」のかもしれない

6月の数字を見たあと、しばらくその理由を考えていたんですよね。

「ナニが原因なんだろう。」って。

相棒N氏とも、「ナニか思い当たるコトってある?」そんなハナシを何度かしたんだけど答えは出ません。

店頭に立っていた感覚としては、6月になって急に海外からののお客さんが減ったという印象は特にないんですよね。

相変わらず渋谷には海外からの旅行者がたくさん歩いていましたし、お店にも外国人のお客さんは結構来店してくれてたしね、だから余計に不思議だったんですよ。

そこで、少し冷静になってココ数ヶ月の数字を見直してみると、あることに気付きました。

4月と比べると、5月は海外のお客様の売上が約15%ホド伸びていたんですよね〜つまり、6月が特別悪かったというよりも、5月が出来すぎだった可能性もあるワケです。

さらにJNTO(日本政府観光局)の統計を調べてみると、6月は夏休みシーズン前というコトもあり、訪日外国人数がやや落ち着く時期でもあるようです。

「あぁ、そういう季節要因もあるのか。」って少しだけ安心しました。

でも、不思議なことに心のモヤモヤは消えないんですよね…数字だけ見れば、それほど悲観する必要はないんですよ、アタマでは理解できる…それなのに、どこか引っ掛かっている。

「一体、何をそんなに心配しているんだろう?」ってその時、フト思ったんです。

もしかすると、不安なのは売上が減ったコトじゃないのかもしれない。

売上よりも気になった「売上の中身」

考えてみれば、この数年でお店の景色は大きく変わりました。

2000年にNext Recordsを始めた頃、お客様は100%日本人でした。

当時はDJブームの真っ只中でレコードはDJプレイのための道具という側面が強く、お店に来られるのもホトンドが国内のお客さんでした。

ところが、コロナ禍が明けると状況は一変します。

世界的なアナログレコード人気、そして円安、さらにインバウンド需要の急回復。

いくつもの追い風が重なり、お店には海外からのお客さんがどんどん増えていきました。

そんな中でオンライン・サイトの多言語化を進めたり、Googleマップの情報を充実させたり、SNSに毎日オススメレコードを紹介したりってカンジで自分達なりにできる準備も積み重ねてきました。

その成果もあってか、

「Googleマップを見て来ました。」

「インスタを読んで来ました。」

「日本へ来たら最初にこの店へ来ると決めていました。」

そんなコトバをかけていただく機会も増えました、ホントにありがたいコトです。

最近では、月によっては店頭売上の半分近くが免税販売になるコトもあるんですよね。

店内では英語で接客している時間のほうが長い日もあったり、海外のお客さんで賑わったりする日も珍しくありません。

「こんな小さな店に世界中から人が来てくれるなんて。」ってカンジで最初は純粋に嬉しかったんです。

でも、ある日ふと数字を見て思ったんですよ「コレって、もしかして外国人のお客さんに頼り始めているんじゃないか?」って。

もちろん、お客さんが増えること自体は嬉しいことです。商売をしている以上、売上が伸びるのはホントありがたいっ!

でも、その売上の中身が以前とは大きく変わってきている…そこにオイラは少しずつ違和感をカンジるようになりました。

「追い風」は、自分では止めることも吹かせることもできない

海外からお客さんが増えた理由を考えると、そこには自分たちの努力だけでは説明できないものがあります。

・円安。

・世界的なレコード人気。

・日本旅行ブーム。

・国際情勢。

こうした外部環境が重なったコトで、お店にも大きな追い風が吹いているんでしょうね〜もちろん、その追い風を受け止められるように準備してきた自負はあります。

やっぱりそれなりの努力はしてきたつもりなので、ナニもしないで今の状況になったワケではありません。

でも、それでも思うんですよね…追い風そのものは、自分のチカラではありません。というか風向きは、自分では変えられないし、吹く日もあれば、止む日もある。

そして、今回の6月の数字を見たとき、オイラが本当に怖かったのは、そのコトだったのかもしれません。

店頭に立っていると、世界中のレコード好きと出会う

2000年にお店を始めた頃、まさか海外のお客さんがNext Recordsの売上の中心になる日が来るなんて、想像もしていませんでした。

当時のオイラ達は、むしろ海外へ買い付けに行く側でした。

アメリカやヨーロッパへ足を運び、現地のレコードショップやディーラーから直接レコードを仕入れる。その頃は、旅費や経費をかけても海外のほうがレコードは安く、日本で販売しても十分商売になりました。

20年以上前でも海外のお客さんお店に来られるコトはたまにありましたよ。

でも、その多くは日本の販売価格を見て「こんな値段で売れるの?」って驚いていました。

「レコードを日本へ持ってきたら高く買い取ってくれるの?」なんて訊かれたコトもありました。

つまり当時は、日本が「買う側」ではなく、海外が「売る側」だったんですよね。

それが今では逆転しています。

「日本へ来たら、まずレコード屋さんへ行きたい。」そんな外国人旅行者がメチャ増えました。

しかも、お目当ては日本盤だけではなく、US盤やEU盤を探しに来るお客様もたくさんいます。

「自分の国では欲しい盤が見つからない。」とか「店が減ってしまった。」や「品揃えが昔ほど良くない。」って現地のレコード店の状況をハナシしてくれるコトもあります。

20年前のオイラがこの光景を見たら、きっと信じられないでしょうね。

同じレコードでも、見ている景色は違う

店頭に立っていると、日本のお客さんと海外のお客さんでは、レコードの選び方にも違いがあることに気付きます。

もちろん人それぞれなので一概には言えませんが、海外のお客様は決断がとても早いんですよ。

日本人なら、「ちょっと考えます。」とか「また来ます。」となりそうな高額なレア盤でも、「I'll take it.(これにするよ。)」ってカンジでスパーンと買っていただけるコトがあるんですよね。

また、面白いのは好みの違いです。

日本ではなかなか動かなかったタイトルが、海外のお客さんにはすぐ売れてしまうってケースもよくあります。

逆に、日本のお客さんが熱心に探される盤が、海外ではあまり反応がないコトもあります。

同じレコードなのに、国が違えば価値の感じ方も違う…店頭に立っていると、そんな文化の違いを毎日のようにカンジるんですよね〜これは、レコードという趣味の面白さでもあります。

「この店、最高だね!」

海外のお客様は、とてもストレートです。

店内でさりげなくそのお客さんが好きそうなレコードをプレイすると、「この曲、めちゃくちゃカッコいいね!」と言って、そのまま購入してくださることもあります。

ときには、「この店、本当に品揃えが最高だよ。」ってレコード店主にとって最高のコトバを言ってくれるコトあります。

もちろん商売ですから、レコードが売れることは嬉しいです、でも、それ以上に嬉しいのは、「この店へ来て良かった。」ってそうカンジてもらえたことが伝わる瞬間なんですよね。

12坪しかない、本当に小さなレコード店です。

扱っているのも、オリジナル盤12インチシングルという、レコードの世界でもかなりニッチなジャンルのみ…それでも、その小さな店の棚の中から、お客さんが何年も探し続けていた1枚を見つけてくれる。その瞬間に立ち会えることは、20年以上経った今でも「レコード店をやっていて良かった」と思える瞬間でもあります。

でも、その景色が当たり前になってはいけない

ココ数年、お店の景色はホントに大きく変わりました。

海外からお客さんが次々と訪れる…そんな毎日が続いていると、人は不思議なもので、それが当たり前の景色になっていきます。

でも、本当は違うんですよ20年以上お店を続けてきたからこそ分かります。

商売の景色は、決してずっと同じではありません。

DJブームもありました。

レコード不況もありました。

コロナ禍もありました。

そして今は、レコードブームとインバウンドという2つの追い風が同時に吹いています。

振り返れば、その時々で「これが当たり前だ」と思っていた景色は、いつの間にか変わってきました。

だから今の景色も、永遠ではない…ってそう思っている自分がいるんですよね。

外国人のお客さんが増えたコトは、本当にありがたいことです、でもその景色を「ずっと続く前提」で考えてしまうと、いつか足元をすくわれるかもしれない。

6月の売上を見てオイラが感じた違和感は、少しずつそんな考えへと変わっていったのです。

「追い風」は実力ではない。だからこそ、次の一手を考える。

オイラは昔から心配性です。たぶん、自分でも笑ってしまうくらい心配性です。

少しでも気になることがあると、「これ、大丈夫かな?」「ナニか対策できることはないかな?」と考えてしまいます。

一方で、共同経営者の相棒N氏は、オイラとは正反対で驚くほど楽観的なんですよ。

オイラが「このままだとヤバいかもしれない。」と言うと、

「まぁ何とかなるやろ。」なんて返ってくるコトもあります。

20年以上一緒に店を続けてきましたが、この正反対の性格が、結果的にはお店にとってちょうど良いバランスになっていたのかもしれません。

もしオイラ1人だったら、心配しすぎて前に進めなかったかもしれませんからね。

商売というのは面白いもので、悲観と楽観、その両方が必要なのかもしれませんね。

「もうダメだ」と思ったことは一度もない

時々、「長年も商売をやっていると、何度も危機があったでしょう?」って訊かれるコトがあります。

でも実は、「もう店を閉めるしかない。」ってそう思ったことは一度もないんですよね。

もちろん、不安な時は何度もありましたよ。

DJブームが終わった時もそうです。

オイラがお店を始めた2000年頃は、レコードはDJカルチャーの真っ只中でした。

ところが時代は変わり、DJはアナログからデジタルへ置き換わってレコード需要は大きく変化しました。

あの頃、「このままDJニーズだけに頼って店頭販売していたら厳しいかもしれない。」

そう感じて、ECへチカラを入れるようになりました。

また、東京オリンピック前にはGoogleマップの重要性を知り、少しずつ情報を充実させてきました。

結果的にオリンピックはコロナで延期になり、外国人旅行者も激減しましたケドね。

でも、その時に積み重ねていたコトが、コロナ禍明けに大きなチカラになりました。

ブログもホームページもInstagramも全部そうです。

振り返ってみると、「今すぐ成果が出るから始めた。」というより「将来役に立つかもしれない。」

そんな気持ちで続けてきたコトばかりです。

種を蒔き続けるしかない

今回の出来事を振り返っていて、自分でもひとつ気付いたコトがあります。

オイラは昔から、「未来のために種を蒔く。」っていうコトを無意識に続けてきたのかもって。

20年以上書き続けているこのブログも途中で何度も「もうやめようかな。」と思ったか分かりません。

毎週長文の記事を書くのは、本当に骨が折れます。

すると必ず相棒のN氏が、

「Next Recordsはやる気なくなったって思われるぞ。いいのか?」って喝を入れるんですよね…そのたびに、「ソレはちょっとイヤだな〜」って思い続けてきました。

今は動画全盛の時代です…正直、ブログなんて時代遅れだと思われるコトもあるでしょう。

でも20年以上積み重ねた記事は、お店の歴史そのものになりました。

Google検索で当店を見つけてくれる方。

ブログを読んで来店してくださる方。

その1つひとつが、少しずつ積み重なって今があると思うんですよ。

ブログだけで売上が伸びたわけではありませんし、Googleマップだけでもありません、ホームページだけでもありません…全部が少しずつ、それぞれは小さな種でした。

でも、長い時間をかけて育てたコトで、お店を支える1本一本の柱になってくれたってカンジですね。

太った牛と痩せた牛」というハナシ

オイラは商売をしてゆく上で時々思い出すハナシがあります。

ユダヤの知恵として知られる「太った牛と痩せた牛」という逸話です。

豊作の年があれば、不作の年もある。だから、豊かな時に蓄え、痩せた時に備える。

細かな解釈はいろいろありますが、オイラはこの考え方が昔から好きでした。

今のレコード業界を見ていると、世界的なアナログブームがあります。

そこへ円安やインバウンド需要まで重なっています。

小さな12坪のレコード店にも、その恩恵が確かに届いています。

これは本当にありがたいことです。

でも一方で、「コレはちょっと出来すぎじゃないか?」という気持ちもあります。

もし円高になったら。

もし世界経済が変わったら。

もし旅行者が減ったら。

その時、お店はどうなるのか…そう考えるのは、決して悲観しているからではありません。

長年レコード店を続けてきて分かったコトは「追い風は、いつか止む。」というコトです。 

これは悲しいハナシではなく、ごく自然なコトです。

だからこそ、追い風が吹いている今のうちに、風が止んでも走れるお店にしておかなければならない。

オイラが今回の記事を書こうと思った理由も、実はそこにあるのかもしれません。

6月の免税売上が40%下がったことを書きたかったわけではなくってその数字を見た瞬間、自分の中に芽生えた「このままでいいのかな。」という気持ちを、一度整理してみたかったんでしょうね。

そして書きながら、少しずつ分かってきました。

オイラが怖かったのは、売上がダウンしたコトではではなくって「追い風を、いつの間にか実力だと勘違いしてしまうこと。」だったのかもしれませんね。


BLAKE BAXTER / LA LA SONG
BLAKE BAXTER / LA LA SONG の試聴
next recordsのサイトでBLAKE BAXTERのレコードを探してみる

次の10年も、この店を続けるために

今回の記事を書き始めたキッカケは、6月の免税売上が前月より40%以上減ったコトでした。

でも、書き進めながら改めて感じたのは、その数字そのものよりも、自分の頭の中を整理したかったんだということです。

長年、レコード店を続けてきました…振り返ると、ホントにいろいろな時代がありました。

DJブームがあった。

DJブームが終わった。

レコード不況もあった。

ECへ大きく舵を切った時期もありました。

コロナ禍では、「この先どうなるんだろう」と誰もが不安でした。

そして今は、世界的なレコードブームとインバウンドというダブルの大きな追い風が吹いています。

その時々で、お店の景色は少しずつ変わってきました。

で、思ったのは「時代が変わるなら、お店も変わらなければいけない。」というコトです。

ブログにインスタ、HPのリニューアルと様々なコトをやってきましたがどれも最初から大きな成果が出たワケではありません。

むしろ、「これ、本当に意味あるのかな。」と思ったコトのほうが多かったくらいです。

でも、20年以上ブログを書き続けた今だからこそ言えます。

小さな積み重ねは、ある日突然、お店の大きな財産になります。

気付けばブログはお店の歴史になり、GoogleマップやInstagramもお店を知っていただく大切な入口になっていました。

結局、お店を支えてくれているのは、ひとつの大きな成功ではなく、小さな積み重ねなんですよね。

だから、今回の出来事でオイラが考えたコトも、とてもシンプルです。

インバウンドは、お店にとって本当にありがたい存在です。

でも、その一方で、「外国人のお客様が来なくなったら終わり。」って、そんな店にはしたくないんですよね。

国内のお客さんがいて、ECがあって、ブログがあって、Google検索から見つけてくださる方がいて、海外のお客さんも来てくださる…そんなふうに、いくつもの柱で支えられているお店のほうが、きっと強いって思うんですよね。

追い風は、もちろん歓迎です。でも、お店を支える土台はソコじゃない。土台になるのは、毎日の積み重ねです。

そして、その積み重ねを続けることが、次の10年、その先の10年へつながっていくんじゃないかなってって思うんです。



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Next Records Shop at Shibuya Tokyo Japan.
We are a small record store but we welcome you with a huge selection of original pressed 12" singles.
If you visit Tokyo, please visit our record store!

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「レコード屋さんって、どうして男性のお客さんばかりなんですか?」

長年お店をやっていると、そんな質問を受けるコトがあります。

実はオイラ自身も、この疑問をずっと抱き続けてきました。

渋谷で中古レコード店「Next Records」を営み毎日店頭に立って国内外からやって来るたくさんのお客様と接してきました。

その中でずっと変わらない光景があります。

来店されるお客様のほとんどが男性、しかも40〜60代の方が中心です。

もちろん女性のお客様もいらっしゃいますし、近年のレコードブームで20〜30代のお客様も増えてきました。

それでも全体を見ると、やはり男性が圧倒的に多いんです。

しかもこの傾向は日本人だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど海外からのお客様も同じような割合です。

最初は「たまたまウチのお店だけかな〜?」と思っていました。

トコロがネットショップのアクセス解析を見ても、ホボ同じ結果でした。

アクセスの約95%が男性 年齢層も35〜54歳が中心。

店頭でカンジていた印象が、そのままリアルな数字として表れていました。

音楽を楽しむこと自体に男女差はないハズです。

それなのに、ナンで「レコード」という世界になるとココまで偏るのでしょうか。

今回は、20年以上レコード店を続けてきた1人の店主としてカンジてきたコトを書いてみようと思います。

モチロン、これは「コレが正解ですっ!」というハナシではありません。

現場で見続けてきた経験と、少しだけ心理学や消費者行動の考え方も交えながら、「もしかすると、こういうことなのかもしれない」というひとつの考察として読んでいただけたら嬉しいです。


レコード店を始めた頃は、こんな疑問は持っていなかった

当店は2000年1月に渋谷・宇田川町でオープンしました。

当時は、世の中がちょうど「音楽はCDで聴くもの」という時代でした。

レコードショップだったお店は次々とCDショップへ姿を変え、「レコードはもう終わったメディア」と言われていた頃でした。

トコロが、その一方で全く別の世界では、ある現象が起きていました。それがDJブームです。

クラブミュージックが盛り上がり、レコードは「音楽を聴くためのモノ」というより、「DJプレイをするための道具」として再び注目され始めていたんですよね。

当時のNext Recordsのお客様も、大学生から30代くらいまでの若い世代が中心でした。

レコードを買う目的も、とてもシンプルです。

「今度の週末にDJで使いたい。」

「クラブで流れていたあの曲が欲しい。」

「憧れのDJと同じレコードをプレイしたい。」

そんなお客様がホトンドでした。

オイラ自身も30代前半で年齢も近く、お客様とは同じ時代の空気を共有していました。

だから、その頃は「男性が多い」とか「年齢層がどうだ」といったコトは、全然意識していなかったんです。

ただ思い返してみると、お店を始める前から他のレコード店でレコードを掘っていた頃も、「レコード屋さんって男性ばかりだな」という印象は漠然と持っていました。

でも、それは「DJという趣味だから男性が多いんだろう」くらいにしか考えていませんでした。

その後20年以上お店を続けているうちに、お客様の顔ぶれが少しずつ変わってきます。

DJブームが落ち着き、今度は世界的なアナログレコード人気がやってきました。

昔DJをやっていた人だけではありません。

純粋にレコードを集めたい。

昔欲しかった1枚を探したい。

オリジナル盤を手に入れたい。

そんな目的で世界中からお客様が来店されるようになりました。

トコロが、お客様の目的は変わっても、ひとつだけ変わらないものがありました。

やっぱり男性が圧倒的に多いんですよね〜。しかも40〜60代が中心。

この頃からオイラは、「これはDJブームだから」という理由では説明できないのではないかと思い始めました。

「これは偶然じゃない」と思った瞬間

店頭に立っていると、人はどうしても自分の感覚で物事を判断しちゃいます。

だから最初は、「たまたまそう見えるだけかもしれない」と思ってたんですよね〜でも、その考えは少しずつ変わっていきました。

まず気付いたのは、他のレコード店でも同じ光景だったコトです。

中古レコード店へ行くと、棚の前で夢中になってレコードを掘っている人のほとんどが男性。

さらに、レコード・ストア・デイのようなイベントでも同じなんですよね…限定盤を求めて開店前から並ぶ長い列。そこに並んでいる人たちも圧倒的に男性。

複数のレコード店が一箇所に集まる「レコード祭り」のような催事でも、お客さんの中心は40〜60代の男性なんですよね。

コレは「オイラの店だから」ではありません。レコード文化そのものに見られる共通した傾向なんでしょうね。

そして決定的だったのが、ホームページのアクセス解析で、店頭では「男性が多い気がする」と思っていただけでしたが、数字はもっとハッキリと現実を示していました。

アクセスの約95%が男性。年齢層では35〜54歳が全体の中心。

店頭でカンジていた印象と、ネット上のデータがホボ一致したのです。

さらに海外からのお客様も同じ傾向でした。

国籍も文化も違う…それなのに、レコードを探しに来る人の多くは同じような年代の男性ばかり。

ココまでくると、日本特有の文化では説明できませんよね〜。

「これは人間そのものにナニか理由があるのではないか…」

そんなコトを考えるようになりました。

店頭で見えてきた「レコードコレクター」という人たち

20年以上店頭に立っていると、お客さんにはある共通した行動があるコトにも気付きます。

多くのお客様はひとりで来店されるケースが多いです。

常連さんなら、まず向かうのは「New Arrival(新入荷)」のコーナー。

そこを一通りチェックすると、今度は棚を端から端まで丁寧に見ていきます。

1枚1枚レコードをめくりながら、気になる盤を見つけると手を止める。

ジャケットを見て、レーベルを見て、クレジットを確認する。

最近ではDiscogsで相場や盤情報を確認しながら探す方も珍しくありませんね。

そして、その作業を30分、1時間、時にはそれ以上続けます。

あまりにも集中しているので、「今は話しかけないほうがイイかな」と思うコトもあります。

トコロが、ひとたび声を掛けると状況は一変します。

「実はこの盤、US Promo盤と正規盤ではミックスが少し違うんですよ。」

「このプレスはマトリクスが……」

「昔どうしても欲しかった1枚なんです。」

それまで黙々と棚を見ていた人とは思えないホド、熱く語り始めるんです。

この仕事を長くしていて思うのは、レコードコレクションという趣味は、案外人に説明しづらい趣味なのかもしれないというコトです。

家族にも理解されない、職場では話題にしづらい。

「そんなにたくさんレコードを持ってどうするの?」

そんなコトバを掛けられた経験のある人も多いでしょう。

だからこそ、レコード店では安心してハナシできる。

店主もスタッフも、その気持ちをカンペキに理解していますからね。

レコード店はレコードを買う場所であると同時に、「レコード好きである自分」を肯定できる場所でもあるのかもしれませんね。

そんな光景を、オイラは20年以上ずっと見続けてきました。

そして、その様子を見ているうちに、あるひとつの考えが頭に浮かぶようになりました…もしかすると、「音楽が好き」と「レコードが好き」は、似ているようで実はまったく別の趣味なのではないだろうかって。


音楽好きとレコードコレクターは、本当に同じ趣味なのだろうか

長年このシゴトをしてきて思うのは、「音楽が好き」と「レコードが好き」は似ているようで、実は少し違う世界なのではないかというコトです。

モチロン、どちらも音楽が好きだから始まります。

好きなアーティストがいる。好きな曲がある。それをもっと良い音で聴きたい。もっと大切にしたい。

その入口はみんな同じです。

トコロが、ある時期を境に趣味の方向が少しずつ変わっていきます。

例えば、

「再発盤でも十分なのに、どうしてもオリジナル盤が欲しいっ!」

「US盤とUK盤を聴き比べたい。」

「マトリクス番号が違う。」

「プロモ盤を探している。」

「〇〇Mixが入っている盤を手に入れたい。」

こうなると、もはや「音楽を聴く」という行為だけでは説明がつかなくなります。

同じ曲を何枚も持っている人もいます。

生産国違いで集める人。

ジャケット違いを集める人。

盤質だけに徹底的にこだわる人。

逆にジャケットはボロボロでも、盤だけ良ければ満足する人。

ピクチャージャケットが無ければ絶対に買わない人。

「USプロモ盤こそ最高だ。」

そんな信念を持っている人もいます。

もうココまで来ると、音楽を聴く趣味というよりも、ひとつのコレクション文化なんですよね。

しかも、そのコダワリは人によってまったく違うんですよね〜だから面白いのかもしれません。

店頭で接客していると、お客さん1人ひとりがまるで違う哲学を持ってレコードを探しているように見えるんですよね。

「どうしてそんなに集めるの?」

レコードコレクターなら、一度は訊かれたコトがあると思います。

「そんなにたくさん持っていて全部聴くの?」

「同じ曲を何枚も持ってどうするの?」

「サブスクで聴けるじゃない。」

もうホントどれももっともな意見です。実際、その通りなんです。

合理性だけを考えれば、今の時代はサブスクで十分です。

スマートフォン1台あれば、世界中の音楽がいつでもサクッとお手軽に聴けます。

昔のように何千円も出してレコードを買わなくてもいいし保管場所にも困らない。引っ越しも楽です。

でも、それでもレコードを買う人は減らないんですよね〜というか、むしろ世界中で増えている。

この矛盾はナンなんでしょうね。

オイラ自身も時々思うことがあります。

「部屋にこんなにレコードを積み上げて、一体オレはナニをしたいんだろう。」(笑)

でも、その答えは今でも分かりません。ん〜いや、正確には「答えなんてナイ」のかもしれませんね。欲しいから欲しい。ただ、それだけなんですよね。

何十年もレコードを集めていると、もはや理由を説明するコトすら難しくなってきます。

趣味というより生活。ライフワーク。いや、それ以上に毎日の習慣みたいなカンジです。

朝起きてコーヒーを飲むように、休日になればレコード店へ行って新入荷をチェックして気になる盤を手に取る、で気が付けば何時間もレコードを掘っているみたいなね

もう生活の一部になっちゃってます。

コンプリートできないからこそ終わらない

コレクションという趣味には、「全部揃えたい」という気持ちがあります。

切手でも、ミニカーでも、フィギュアでも、コンプリートという目標があります。

でも、レコードは違っていて終わりがないんですよ。

世界中で毎日のように中古レコードが市場へ出てきます。まだ一度も見たコトがない1枚がどドコかにある…まだ知らない名曲が眠っている。だから終われない。

もしかして終わらないコト自体が、この趣味の魅力なのかもしれませんね。

オイラ自身、中学生の頃からレコードを集めているので、コレクション歴はもう40年以上になります。

その間、もうホントに数え切れないホドのレコードを見てきました。

それでも今なお、「こんな曲があったのか。」や「こんなミックスが存在したのか。」なんてそんな新しい発見があります。

趣味というものは、全部知ってしまったら終わりかもしれません。

でもレコードは違っていて知らないコトが次から次へと出てくるんですよね〜だから何十年続けても飽きないんです。

欲しいレコードを一番手に入れる方法

オイラがサラリーマンだった頃のハナシです。

給料のほとんどはレコード代に消えていって食費も削りました、休日は朝から晩までレコード店巡り、さらに長期休暇になると海外へレコードを探しに行く。

今思えば、完全にレコード中心の生活でした。

そんな生活を続けていて、ある時フト思ったんです。

「欲しいレコードを一番手に入れる方法って何だろう。」って。

その時に出した答えが、

「自分がレコード屋になればいい。」でした。

今考えると、ずいぶんムチャで飛躍した発想です(笑)。

でも不思議なコトに、レコード店を営んでいる人には、似たような経歴の人が多いんじゃないでしょうかね。

みんな最初は1人のレコード好きで趣味が高じて、いつしかそれがシゴトになっていた…みたいなそんな人がホントに多いと思います。

普通に考えたら、趣味を仕事にすると飽きそうですよね〜トコロが逆なんです。

毎日レコードに囲まれているのに、いまだに新しい発見があるし、いまだに欲しいレコードがあるんですよ。

いまだに「コレは初めて見た!」という1枚に出会います。

20年間店を続けても、この熱はまったく冷めない…それどころか、年齢を重ねるほどレコードの世界は深くなっていくような気さえしています。


それでも、なぜ40〜60代の男性が多いのだろう

ココまで書いてきて、「じゃあ結局、どうして40〜60代の男性が多いの?」と思われる方もいるでしょう。

正直に言えば、オイラにも明確な答えは分かりません。おそらく、この問いに唯一の正解はナイと思います。

ただ、長年店頭に立ち続けてきて、「こういう傾向はあるんじゃないかな」と思うコトはあります。

心理学の世界では、平均的な傾向として男性は「システム化志向」がやや高いと言われているそうです。

物事を分類したり、違いを見つけたり、知識を積み重ねたり、収集したり。

モチロン個人差はありますし、女性コレクターもたくさんいます。

でも平均的な傾向として考えると、レコードという趣味は、その「違いを楽しむ」という感覚と相性がイイのかもしれません。

同じタイトルでも、US盤なのかUK盤なのか。オリジナル盤なのか再発盤なのか。プロモ盤なのか正規盤なのか。マトリクス番号はどうか。レーベルのデザインはいつ変更されたのか。

一般の人から見れば「全部同じレコードじゃないの?」と思われるコトでも、レコード好きにとっては1つひとつに意味があるんですよね、その違いを知れば知るホド面白くなるんですよ。

だから、いつまで経っても終わらないんでしょうね。

もうひとつ思うのは、ライフステージの変化も関係しているんじゃないかなぁ。

20代は仕事や恋愛、結婚、子育てなど、人生で最も慌ただしい時期かもしれません。時間も、お金も限られていますしね。

でも40代、50代になると少しずつ生活が落ち着いてきて、若い頃に欲しかったレコードを、ようやく買えるようになる…青春時代に聴いていた1枚を、もう一度探したくなるみたいなカンジですね。

そんなお客様をコレまでに何人も見てきましたからね〜。

だけど、ソレだけでは説明できないとも思っているんですよね〜ナゼなら、最近はレコード世代ではない20代のお客様も増えているからです。

彼らはCDよりもサブスクで育った世代です。それでもレコード店へ足を運びます。

しかも、ネットで簡単に買える時代なのに、わざわざお店へ来て棚を掘る。

最初は不思議でしたね、でも接客していると、少しずつ見えてきたものがあります。

若いお客様にとって、「レコード店へ行く」という行為そのものが、ある種の体験になっているようです。

どんなレコードに出会えるのか分からない。

店内に流れる音楽。

並んだジャケット。

店主とのナニ気ない会話。

ネットでは味わえない偶然との出会い。

それ自体がエンターテインメントになっているようにカンジます。

そう考えると、年代は違っても、レコードに惹かれる理由の本質は意外と同じなのかもしれませんね。

ライバルであり、仲間でもある

レコード店には、ちょっと不思議な空気があります。

お客様同士は基本的に知らない人です。

でも同じ棚の前でレコードを掘っていると、何となく相手が気になります。

「あの人、ナニを見つけたんだろう。」

「先にあの棚を見られたな。」

「その1枚、実は自分も気になっていたんだケドなぁ。」

レコード店では、他のお客様はある意味ライバルです。

自分が探している1枚を先に見つけられてしまうかもしれない…だから新入荷のコーナーへ真っ先に向かうし、棚を隅々までチェックする。

これはレコード好きなら誰もが経験したことのある感覚ではないでしょうか。

でも、その一方で不思議な連帯感もあります。

「あ〜この人、本当にレコードが好きなんだな。」ってカンジで何となく伝わってくる。

常連さん同士が顔見知りになり、自然とレコード談義が始まるコトもあります。

初対面なのに、「その盤、イイですよね!」の一言でハナシが盛り上がるコトも何度もみました。

レコード店という場所が、人と人をつないでいるんでしょうね。

レコード店は、レコードを売る場所である前に、同じ趣味を持つ人たちが集まる場所でもある…そんなふうに思っています。

ワタシ達は、本当は何を集めているのだろう

この記事を書き始めたキッカケは、「なぜレコードコレクターの多くは40〜60代の男性なのか」という素朴な疑問でした。

でも、書きながら改めて思ったのは、その問い以上に興味深いことがあるというコトでした…それは、

「人はなぜレコードを集めるのか。」という問いです。

オリジナル盤にこだわる人、Promo盤を探す人、ジャケットを大切にする人、盤質を最優先する人、生産国違いを集める人…こだわるポイントは人それぞれです。

でも、どの人にも共通しているのが…

「探すコトが好き。」

「見つけるコトが嬉しい。」

「手に入れた瞬間がたまらない。」

そして、その1枚には必ず物語があります。

ドコで見つけたのか。

誰から買ったのか。

何年くらい探したのか。

その一枚を手にした時、自分はどんな気持ちだったのか。

そのレコードを見ていると、その記憶まで一緒に思い出せるんですよね。

だからレコードは、単なる音楽メディアではなくって思い出を保存するアルバムでもあり、自分の人生の記録でもあるワケです。

もしかすると、ワタシ達はレコードを集めているようで、本当に集めているのは「体験」や「記憶」なのかもしれませんね。


YELLOW MAGIC ORCHESTRA / TIGHTEN UP
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あなたは、なぜレコードなのでしょう?

オイラは中学生の頃からカレコレ40年以上レコードを集めています。

人生の時間とお金の大半をレコードにつぎ込みそして気が付けば、その趣味が仕事になり、26年間レコード店を続けています。

それでも、今なお欲しいレコードがあるんですよね〜そして今なお新しい発見があります。

「こんなにレコードを集めて、オレはいったい何をしたいんだろう。」って時々、自分でも思うんですよね。

でも、その答えは分かりません…タブン、この先も分からないでしょうね。

ただひとつ分かっているコトがあります。

レコードを集める理由を理屈だけで説明するコトはできないということです。

合理性だけを求めるなら、音楽はサブスクで十分です。

それでもレコードが好きな人たちは今日もレコード店へ足を運び、1枚1枚レコードを掘っています。

目当ての1枚が見つからなくても、「今日は楽しかった」と言って帰る人がいます。

その姿を見ていると、レコードコレクションという趣味は、音楽を聴くためだけの趣味ではないのだと改めてカンジます。

そこには、探す楽しさがあり、偶然の出会いがあり、人との会話があり、自分だけの物語があります。

だから、何十年経ってもやめられないんでしょうね〜そして、コレからもきっとやめないでしょう。


で、この記事を読んでくださったあなたにも、ゼヒ訊いてみたいコトがあります。

もし音楽を聴くだけなら、サブスクで十分なハズです。

それでも、あなたはなぜレコードなのでしょうか。

オイラは、その答えをこれからも店頭で、お客様との何気ない会話の中から探し続けていきたいと思っています。


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このブログは、渋谷で唯一の12インチシングル専門のレコード屋、next recordsが、運営しています。

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26年間レコード店を営んで見えてきた、「人がレコードを買いたくなる日」の不思議

渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を始めて、今年で26年になります。

こうして長く商売を続けていると、「さすがにお客さんの動きくらい読めるんじゃないですか?」なんて訊かれるコトがあります。

オイラも開業したばかりの頃の新米レコード店主時代はそう思っていました。

何年も商売を続けていれば、「今日はこれくらい売れそうだな」という感覚が自然と身に付くものだろう、と。

ところが、26年経った今、胸を張って言えることがあります。

実は、未だによく分かりません。(笑)

モチロン経験則はありますよ。

今日は土曜日だから人が多そうだ。

月末だから財布の紐も少し緩むだろう。

天気もいいし、渋谷の街には人が溢れている。

週末に合わせて人気盤やレア盤もたくさん店頭へ並べた。

SNSでも紹介した。

メルマガも配信した。

オンラインショップにも公開した。

「よしっ!今日は忙しくなるぞ。」ってカンジで店を開ける前は、いつもそんなコトを思っています。

ところが、そんな日に限ってお客さんがホトンド来ない。

レコード棚には自信を持っておすすめできる盤が並んでいるのに、お店の中は静まり返っている。

「えっ…今日はナニが起こっているんだ?」

閉店後、今日1日の売上を見ながら、マジで頭を抱えるコトもあります。

逆に、まったく予想していなかった日に信じられないことが起こるケースもあります。

平日。曇り空。給料日前。小売店として考えれば、決して条件が良いとは言えない日です。

むしろ、「今日は静かな1日になりそう…」って思うような日です。

ところが、そんな日に限って、お店を開けた瞬間から空気が違うんですよ。

日本のお客さんが来る、そのあと海外からのお客さんも来る、さらにまた別のお客さんが来る。

1人帰ると、また1人入ってくるってカンジで次々と来店客が訪れる。

レコード棚の前では、いつも以上に時間をかけておすすめコメントを読んでいる人がいたり、スマホで作品を調べている人がいるし、試聴をお願いされる回数も増える。

「この曲、メチャいいですねっ!」

「これも聴いてみてイイですか?」

そんな会話が自然と増えていく。

そして、レジへ持ってくる枚数がいつもより明らかに多いんですよ。

1人のお客さんが10枚、20枚とレコードを抱えてレジへ向かう姿を見ると、不思議なコトに他のお客さんまで同じようにレコードを棚から抜き始める。

「あの人がそんなに買うなら、自分ももう一度見てみよう。」

そんな心理が働いているのかどうかは分かりませんケドね。

でも、長年店頭に立っていると、空気が変わる瞬間は確かにカンジるんですよね。

で、スタッフ同士でも目が合います。

「……今日、なんかキテるね〜」

そしてこう言うんです…「今日はレコード欲しい光線が出てるな。」って。

「レコード欲しい光線」という、店だけの合言葉

もちろん、本当に宇宙から怪しい光線が降り注いでいるワケではありません。

これはオイラたちスタッフの間で自然に生まれたコトバです。

当店は渋谷の人が多く集まるメインではなく少し離れた場所にあります。

2000年前後、DJブーム真っ只中の頃、この界隈には数え切れないほどレコード店が並び、「世界一レコード店が密集している街」とまで言われていました。

ところがブームが終わると状況は一変します。

デジタル音源でのプレイが主流になり、DJプレイとしてのアナログレコードの役目は終わりました。

そして渋谷界隈のレコード業界は長い冬の時代を迎えました。

リアル店舗よりネット通販へそんな流れも加速しました。

オイラのお店も、実店舗と通信販売の両輪で何とかその時代を乗り越えてきました。

それでも不思議だったのは、そんな逆風の時代にも、年に何度か「今日は一体どうしたんだ?」という日が必ずあったコトです。

開店から次々とお客さんが訪れる、しかも、お客さんはまったくの他人で知り合い関係ではではありません。

にも関わらず、示し合わせたようにレコード店に集まり次々とレコードを買っていく日。

まるで誰かが「今日はレコードを買う日ですよ」と合図を出しているような光景なんですよね。

その様子を見て、

「もしかして宇宙から『レコード買いたい光線』でも照射されてるんじゃない?」

そんな冗談をスタッフ同士で言い始めたのが、このコトバの始まりです。

光線が出ているなんてもちろん冗談ですよ、でも26年間店頭に立ち続けた今でも、このコトバ以上にしっくりくる表現をオイラは知りません。

最近は世界的なアナログレコード人気もあって、こうした「レコード欲しい光線」が出ているように感じる日が以前より増えた気もします。

ただ、ひとつだけ変わらないコトがあります。

それは、「どうしてその日に限って、みんなが一斉にレコードを欲しくなるのか、その理由だけは今でも分からない」というコトです。

だからこそ、この現象について、少し真面目に考えてみたくなりました。

人は本当に、それぞれ自由に買い物をしているのでしょうか、それとも私たちが気付かないだけで、「今日は何かを買いたい」と思わせる共通のスイッチが、ドコかに存在しているのでしょうか。

26年間レコード店を続けてきた現場の感覚と、人の購買心理を研究する考え方を重ね合わせながら、この不思議な現象について、少し掘り下げてみたいと思います。

経験則は確かにある。でも、その経験則だけでは説明できない。

商売をしている人なら、おそらく誰もが「売れそうな日」という感覚を持っていると思います。

オイラも毎朝、渋谷駅を降りてお店へ向かうまでの道で、街の様子を自然と観察しています。

「今日は人が多いな。」

「天気も良いし、なんとなく街全体が浮き足立っている。」

「今日は売れそうだぞ。」

そんなコトを毎日のように考えています。

実際、小売店にはある程度の法則があります。

週末は人が増える。

月末は財布の紐が緩みやすい。

連休やボーナスシーズンは買い物モードになりやすい。

みたいなカンジでこれは長年商売をしていなくても、多くの人が感覚的に理解しているコトでしょう。

だから当店でも、毎週金曜日の夕方には新入荷の商品をイッキに店頭へ並べます。

いわゆる「花金(死語ですね)」を意識した品出しです。

「仕事を頑張った自分へのご褒美に、週末はレコードでも探しに行こう。」

そんな気持ちになる人は少なくありません。

さらに月末には、人気盤やレア盤をいつもより多めに投入します。

SNSでも毎日のようにおすすめ盤を紹介し、メルマガも配信する。

オンラインショップにも同時に掲載するってカンジでお店としてできることは、できる限りやっています。

ところが、ココから先が本当に難しい…同じコトをしているのに、結果がまったく違う日があるんですよね。

ある月末の最終土曜日。

天気は快晴。

街にはたくさんの人。

「今日はかなり忙しくなるだろう。」

そう思っていました。オイラの経験則では100点満点の好条件が揃っている日です。

ところが…お客さんが来ない、ホントにまったく来ない。

渋谷の街にはあれだけ人が歩いているのに、お店だけ時間が止まってしまったような静けさです。

「あれ?ナンかおかしいぞ。」ってそんな感覚になります。

もちろん、商売ですからこういう日はあります。

26年もやっていれば、「今日はダメだったな」と気持ちを切り替える術も多少は身に付きました。

でも、それに慣れるコトはありませんよ。

閉店後、1人で売上を見ながら、

「今日は、ナニが悪かったんだろう…。」って考えます。

店頭の商品構成がイマイチだったのか。

SNSの内容がショボかったのか。

接客だったのか。

ナニか見落としがあったのか。

思いつく限り考えるのですが、本当にナニも思い当たらない日があるんです。

改善点が見つかれば、次につなげられます。でも、原因そのものが分からないんですよ。

これは経営者として、実はかなりツライことです。

極端な話、「今日は店先に鬼でも立っていたのかな。」とか「悪霊が店内を漂っていたんじゃないか。」ってそんな冗談を言いたくなるくらい、お客さんが入ってこない日もあります。(笑)

もちろん冗談ですが、それくらい理由が見当たらないんですよね。

ところが翌日になると、商品は昨日とまったく同じ。

天気はむしろ悪い。

それなのに、お客さんが次々と来店してレコードが飛ぶように売れる。

こんな経験を何度も何度も繰り返してきました。

26年前のオイラは、「長年商売を続ければ売上はある程度予測できるようになる」と思っていました。

でも現実は違いました。

少なくとも当店のような零細小売店では、その日の売上を完璧に読むコトなんてできません。

この仕事は、思っていた以上に「人の気持ち」を相手にしている商売だったんです。

人は本当に、自分の意思だけで買い物をしているのだろうか。

そんなことを考えているうちに、オイラはある疑問を持つようになったんですよね。

もしかすると、お客さん自身も、

「今日はどうしてレコードを買いたくなったのか。」ってその理由を説明できないのではないか…と。

もちろん、「今日はレコードを掘るぞ!」と朝から目的を決めて来店されるお客さんもいます。

遠方から渋谷を目指して来てくださる方もいます。

そういうお客さんは、最初からレコードを買うスイッチが入っています。

でも一方で、

「今日は服でも見ようかな。」

「食事をしようかな。」

ってそんな目的で渋谷へ来た人が、街を歩いているうちに、ふとレコード店へ立ち寄るコトもあります。

そして店内で流れている音楽を聴き、ジャケットを眺め、他のお客さんが熱心にレコードを掘っている姿を見ているうちに、

「ちょっと1枚買ってみようかな。」ってそんな気持ちになる人も少なくありません。

つまり、「レコードを買う」という行動は、お店へ入る前から決まっている場合もあれば、お店へ入ってから生まれる場合もあるというコトです。

その違いは、どこから生まれるのでしょうか…。

ココで少し、行動経済学という分野の考え方がヒントになるかもしれません。

行動経済学では、人は常に合理的に行動するわけではなく、そのときの気分や周囲の環境、他人の行動など、さまざまな影響を受けながら意思決定をしていると考えられるそうです。

例えば、誰かがレコードを何枚も抱えてレジへ向かう姿を見ると、

「そんなにいいレコードがあるのかな。」と気になってしまう。

これは「同調行動」と呼ばれる心理に近いものです。

また、店内で流れている音楽や、おすすめコメント、ジャケットのデザインにココロを動かされる。

それまで意識していなかった作品なのに、急に欲しくなる…これは「プライミング効果」と呼ばれる考え方とも重なります。

さらに、「このオリジナル盤は次にいつ出会えるか分からない。」そんな希少性が購買意欲を後押しすることもあります。

どれも「ナルホドなぁ〜」って自分に置き換えても心当たりがある理論です。

実際、店頭に立っていると、「確かにそういうことはあるな」と感じる場面も少なくありません。

でも、オイラは同時にこうも思うんです。

「これだけでは説明しきれない何かが、まだあるんじゃないか。」って。

だって、同じように音楽を流し、同じように接客をし、同じようにSNSで紹介していても、「今日はレコード欲しい光線が出ている日」と「まったく出ていない日」があるんですから。

そこに、もうひとつ別の視点があるような気がするんですよね。

「レコード欲しい光線」は、創発という現象なのかもしれない。

行動経済学の本を読んでいると、

「あぁ、ナルホド…」と思うコトはたくさんあります。

同調行動・気分一致効果・プライミング効果・希少性効果。

どれも、店頭で見てきたお客さんの行動と重なる部分があります。

でも、それでもオイラの中には、まだ説明しきれない感覚が残ります。

例えば、ある1人のお客さんがレコードを20枚買います。

その姿を見た別のお客さんも、レコード棚へ戻ります。

さらに別のお客さんも試聴を始めます。

店内で流れている音楽が盛り上がる。

スタッフも自然とテンションが上がる。

接客にも熱が入る。

すると、お客さんも楽しそうにレコードを掘り始める。

その空気がまた次のお客さんへ伝わる。

まるで店全体が一つの生き物になったように、熱量がどんどん増幅してゆく感覚です。

逆に、静かな日はどこまでも静か…。誰も悪くない。レコードも昨日と同じで店内で流れている音楽も悪くない。

なのに、不思議なくらい静寂だけが流れている。

オイラは、この現象を見ながら、最近ある考え方に興味を持つようになりました。

それが「複雑系」や「創発」という考え方です。

ちょっと聞き慣れない少し難しいコトバですが、考え方は意外とシンプルです。

例えば、鳥の群れ。

何百羽もの鳥が空を飛んでいるのに、一斉に向きを変えます。

誰かリーダーが笛を吹いているわけではありません。

アリの行列もそうですね、一匹一匹は単純な行動をしているだけなのに、全体として見ると、とても秩序だった動きをしています。

これを「創発」と呼ぶそうです。

全体を指揮する存在はいない。

それでも全体として、ひとつの現象が生まれる。

もしかしたら人間社会にも、似たようなコトが起きているのかもしれませんね。

もちろん、お客さん同士が事前に連絡を取り合って、「今日は渋谷のレコード屋へ行こう。」なんて相談しているワケではありません。

でも、その日は同じニュースを見ていたかもしれない。

たまたま同じ音楽を聴いていたかもしれない。

SNSで同じ投稿を目にしたかもしれない。

仕事が一段落した人が多かったのかもしれない。

旅行中だったのかもしれない。

渋谷へ用事が重なっただけかもしれない。

そうした無数の小さなキッカケが、偶然同じ方向へ積み重なった結果、

「今日はレコードを買いたい。」という空気が生まれるみたいなイメージです。

そんなコトがあっても、不思議ではないような気がしています。

もちろん、これはオイラの仮説です。

「レコード欲しい光線」の正体が創発だ、と言い切るつもりはありません。

でも、26年間店頭で見てきた景色を思い返すと、この考え方が今のところ一番しっくりきています。

レコードを買う人は、音楽だけを買っているワケじゃない。

もう一つ、この仕事を続けていて感じるコトがあります。

それは、お客さんは「音楽」だけを買っているワケではないというコトです。

90年代から2000年代前半のDJブームの頃は、憧れのDJがプレイしたレコードを探す人がたくさんいました。

「あのDJと同じレコードが欲しい。」

そんな気持ちだったと思います。

心理学では「同一化」と呼ばれる考え方がありますが、まさにそんな感覚だったのでしょう。

でも、今は少し違います。

・レコードブームだから始めた人。

・ストリーミングでは味わえない音を楽しみたい人。

・大きなジャケットを飾りたい人。

・スマホではなく、「モノ」として音楽を所有したい人。

・偶然レコード店で探していた1枚に出会い、その瞬間の喜びを味わいたい人。

つまり、人それぞれが違うものを求めてレコードを買っています。

音楽を聴くため。

コレクションするため。

思い出を増やすため。

休日を楽しむため。

宝探しをするため。

その全部が重なって、「レコードを買う」という体験になっている。

だからこそ、レコードは面白いんでしょうね。

そして、その「欲しい」という感情が、ある日どこかで同期するコトがある。

オイラには、そんなふうに思えちゃうんですよね〜。

だから今日も、「来てよかった」と思える店でありたい。

もし本当に、

「レコード欲しい光線スイッチ」

なんてものがAmazonで売っていたらどうするか?

迷わず買います。(笑)1000万円でも買うと思います。

そして毎朝、お店を開ける前にポチッとスイッチを押します。

でも、そんな便利なスイッチは存在しません。

だから商売は難しい…でも、だからこそ面白いんでしょうね。

26年間お店を続けてきても、売れる日もあれば、まったく売れない日もあります。

その理由は、今でも分かりませんっ!

きっと、この先も分からないでしょうね。

でも、ひとつだけ分かっているコトがあります。

「レコード欲しい光線」を店側が自由に出すことはできない。

しかし、その光線を浴びたお客さんが店へ来てくれた時に、

「今日は来てよかったなぁ。」

「この店なら、また来たいな!」

そう思っていただける店を作るコトは、オイラたちの努力で実現できます。

26年間商売をしてきて思うのは、結局そこなんですよね。

流れは読めないし、人の気持ちも完全には分からない。

でも、お店の努力だけは自分たちで決められるし、実践できる。

だからオイラは今日も、おすすめコメントを書き綴るし、店頭でレコードを磨きます。

試聴の準備もするし、新しい入荷をレコード棚へ並べます。

「この店に来ればナニかよいレコードが必ず見つかる。」

そう思ってもらえる店を目指して、毎日お店を開けています。


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そして、この記事を読んでくれた人にも、ひとつだけ訊いてみたいコトがあります。

あなたにはありませんか?ナゼか急にレコードが欲しくなる日…って。

特に探していたワケでもないのに、気が付けばレコード店へ向かっている日。

オイラは、その不思議な現象を勝手に「レコード欲しい光線」と呼んでいます。

さて、あなたの「レコード欲しい光線」は、一体ナニがきっかけで出ているのでしょうか。


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「うわっ! このレコード、久しぶりに見たな!」

先日、いつものようにeBayをチェックしていた時のコトです。

「あっ! このレコード、久しぶりに見たな!」って思わずそんな声が出てしまうくらい超久しぶりにみかけた12インチシングルが出品されていました。

タイトルはあえて伏せておきますが、Garage系Discoの中でも当店ではメチャ人気の高いレア盤です。

実は、そのセラーからはオイラが「ゼヒ仕入れたい!」と思うようなレアタイトルが2枚も同時に出品されていました。

しかも、それだけではなくって出品リストを見てみると、全部で300枚くらいのレコードが並んでいるのですが、その内容が実にスバラシイっ!

「この人、かなり良いコレクションを持っていたんだな。」ってそんなコトが一目で分かるようなラインナップでした。

人気タイトルはもちろん、ちょっとマニアックだけど評価の高いタイトルも混ざっていて、しかも全部オリジナル盤の12インチシングルっ!12インチシングル好きなら思わずニヤリとしてしまうような内容です。

やっぱ。こういう出品リストを見ると、レコード店をやっている人間としてはワクワクするんですよね〜。

モチロン、同時にライバルも世界中から見ているワケですが(笑)。

でも、この時のオイラはそんなコトよりも、「コレは、ゼヒ仕入れたいっ!」その気持ちの方がずっと強かったですね。


レア盤は、お店の「顔」になる

Next Recordsは、いわゆるナンでも置いてあるレコード店ではありません。

比較的入手しやすい定番タイトルも扱っていますが、お店として一番チカラを入れているのは、「他のお店ではなかなか見つからないレコード」です。

一生に一度出会えるかどうか分からないような超レア盤から、マニアの間では高く評価されている隠れた名曲まで、そんなレコードを探して店頭に並べるコトが、Next Recordsらしさだと思っています。

珍しいレコードが入荷すると、お客さん同士で話題になるコトもありますしね。

「これ、入ったんですね!」

「コレ、メチャ探してたんですよ!」

そんな会話が自然に生まれるのも、このシゴトの楽しさのひとつです。

だから今回見つけた2タイトルも、「ナンとかして仕入れたいなぁ」って思うのは、ごく自然なコトでした。


「4年前に売っていたな...」

そういえば、このタイトルって最後にいつ販売したんだろう?ってフト気になって、お店の販売履歴を調べてみました。

すると驚いたコトに、そのレコードを最後に販売したのは約4年前…しかも、その1回だけ。

「えぇ〜もう4年も入荷していなかったのか。」

正直、自分でも少し驚きました。

4年前でも決して安いレコードではありませんでした。

当時でも十分レア盤と言われる存在でしたし、店頭に並べれば比較的早い段階で売れてしまう人気タイトルです。

でも、それ以前を思い返すと、年に数回くらいは入荷できていたような気がします。

まぁ〜そうカンタンに見つかるレコードではありませんでしたが、それでも、「探せば何とかなる」という感覚はまだあったんですよね。

トコロが今は違います。

「久しぶりに見つけた。」そう思って履歴を調べたら、前回から4年も空いていた。

この時点で、レコード市場が以前とはまったく違う世界になっているというコトを改めて実感したんですよね。


オイラの「モノサシ」では届かなかった

モチロン、4年前と今では状況が違うコトは分かっていますよ。

ココ数年でレコード人気が高まっているコトも知っていますし、円安や世界的なインフレの影響も理解しています。

なのでこんなふうに考えました…「前回より1.5倍くらいの販売価格になるとしても、このタイトルなら十分価値がある。」って。

利益率は多少下がってもイイ。

こういうレア度の高いレコードは利益だけではなく、お店の価値にもつながるしね…だから多少ムリをしてでも仕入れたいなぁってそんな気持ちで、オークションの終了を見守っていました。

しかしっ!.現実は、オイラが考えていたよりもずっと先を行っていたんですよね。

終了間際になると価格はドンドン上がっていき、最後の30秒ではイッキに競り上がります。

結果は...オイラが4年前に販売した価格の倍以上の落札価格で終了ぅ〜(チーン)

しかも、それは落札価格だけのハナシです。

そこにアメリカから日本までの送料。

さらに仕入れにかかる諸経費。

そして、お店として適正な利益。

それらを考えると、とても販売できる価格には収まりません。

落札結果を見た瞬間、

「わちゃーっ! コレが今の相場なのか!?」って思わず苦笑いしてしまいました。

と同時に、「オイラの中にある『このレコードならこれくらい』という価格のモノサシは、もう世界のマーケットには通用しないのかもしれない。」ってそんなコトも感じたんですよね。

レコード店として最前線に立っているつもりでも、市場は想像以上のスピードで変化していたということなんですね。

ん〜レコードは世界経済と無関係じゃなかった…オークションの結果を見ながら、オイラは改めて考えていました。

「ナンで、ココまで高くなったんだろう?」

モチロン、そのタイトル自体が人気盤であるコトは昔から知っています。

レア盤というものは、その時々の人気や評価によって価格が上下するのは珍しいコトではありませんしね。20年以上レコードを扱っていると、「昔は見向きもされなかったのに、今では高額盤」といったケースも何度も見てきましたし、その逆もあります。

だから、ある程度の値上がりは想定していたんですケドね。

でも今回カンジたのは、それだけでは説明がつかないというコトです。

レコードそのものの人気だけではなく、その背景にはもっと大きな流れがあるんじゃないかって…それが、世界の経済です。


4年間で、日本円は約19%安くなっていた

今回のオークションが終わったあと、ちょっと気になって為替レートを調べてみました。

オイラがそのレコードを前回販売した約4年前。

当時のドル円相場は、1ドル=約135円だったんですよね、そして今、2026年6月現在は1ドル=約161円です。

つまり、この4年間で日本円はアメリカドルに対して約19%も安くなったコトになります。

コレって改めて数字で見ると結構インパクトがありますよね。

例えば、レコードの価値が4年前とまったく変わっていなかったとしても、日本人が海外から買う場合は、為替だけで約19%高くなってしまうというコトです。

レコードの人気が上がったワケでもないし、希少性が増したワケでもない。

ただ円安になっただけで、仕入れ価格は上がってしまう。

ニュースで「円安」というワードは毎日のように耳にしますが、オイラにとっては、その影響が「1枚のレコードの仕入れ価格」というカタチで目の前にガーンと現れるワケです。

こういう仕事をしていると、経済ニュースが急に他人事ではなくなりますね(笑)


レコードだけじゃない。送料まで高くなっている

さらに頭を悩ませるのが送料です。

今、アメリカからレコードを1枚送ってもらうだけでも、おおよそ25〜40ドルかかるんですよ。

今の為替なら、日本円で4,000円〜6,500円くらいですね。

「送料だけでそんなに?」ってそう思われる方もいるかもしれません。

でも実際、それくらいかかることは珍しくないんですよね。

昔なら送料は必要経費くらいの感覚でした。

もちろん安いとは思いませんでしたが、レコードそのものの価格に比べれば、そこまで大きな負担ではなかったんです。ま〜ザックリと1枚12ドル〜15ドルくらいあればエアメールで送れていたんですよ。

トコロが今は全然違っていてレコード本体の価格が上がり、その上に高額な送料が乗ってくる。さらに円安。

つまり、三重苦なんですね。

レコードの値段だけを見ていても、本当の仕入れコストは見えてきません。


コロナ以降、風向きは明らかに変わった

オイラが「ナニかが変わったな」と強くカンジたのは、やはりコロナ禍以降ですね。

モチロン、それ以前からアナログレコード人気が高まっているコトは実感としてアリました。

ただ、その頃の人気の中心ってシティ・ポップだったんですよね。

日本のシティ・ポップが海外で人気になり、その流れがニュースになるコトも多かったですよね。

でも、その頃は正直言って、当店が専門としている12インチシングルには、そこまで大きな影響はなかったんですよ。

「ナンかレコードの人気はあるみたいだけど、うちとは全然違う世界のハナシかな。」ってそんな印象だったんですよね。

ところがコロナ禍を境に状況が変わりました。

シティ・ポップだけではなく、Disco、Garage、House、Hiphop、R&B…ってカンジでさまざまなジャンルへ人気が広がり始め、その波が12インチシングルにも押し寄せてきたんです。

しかも、この現象は日本だけではなくってアメリカも、ヨーロッパも、アジアも世界中でアナログレコード人気が再燃していったワケです。

つまり、以前は日本国内の相場をある程度意識していれば良かったものが、今では世界中のコレクターやレコード店と同じ市場で競争しているワケです。

渋谷に店を構えていても、仕入れの現場では世界中がライバルになっているというワケなんですね。


「仕入れ」の形も時代とともに変わってきた

そう考えると、この20数年で仕入れのスタイルそのものも大きく変わりましたね。

オイラがNext Recordsを始めた2000年頃は、海外へ直接買い付けに行くのが当たり前でした。

アメリカやヨーロッパへ飛び、レンタカーを借り、レコード店やディーラーを何軒も回って、1枚1枚掘り出していく。

今思えば体力勝負でしたが、それが一番レア盤を見つけられる方法でもありました。

トコロがインターネットが発達すると、海外ディーラーとのメールのやり取りで仕入れができるようになります。

さらに2010年前後になると、今度は現地のレコード店が次々と閉店し始めました。

音楽のデジタル化の影響もあり、アナログレコードの需要が一時的に大きく落ち込んだからです。

すると、現地へ行ってもレコードそのものが見つからない。

航空券や宿泊費をかけても、以前のようには仕入れられないというそんな時代になったんですよね。

だから当店も、海外買い付け中心から、国内買取や海外ディーラーとのメールでの取引へと少しずつシフトしてきたんです。

トコロがコロナ禍以降、その海外市場自体が再び活気を取り戻しました。

しかも、以前とは比べものにならないほどのインフレと価格高騰を伴ってです。

時代が変われば、仕入れの方法も変わる…レコード店というシゴトは、実はそんな変化の連続なのかもしれませんね。

オイラは昔、「レコードって趣味の世界だから、景気や経済とは少し違う場所にあるんじゃないか」と思ってたんですよ。

好きな音楽を聴く、お気に入りの一枚を集める、そんな純粋な趣味の世界ですからね。

でも、現実は違っていて趣味だからこそ、その背景には世界中のコレクターがいて、世界中のお金が動き、円安やインフレ、物流コストまでもが、1枚のレコードの価格に影響を与えている。

今回のeBayでの出来事は、それを改めて痛感する出来事だったように思うんですよ。

「見つかったのに仕入れられない」というイチバンつらい現実…。

以前、常連のお客様からこんな質問をされたコトがあります。

「店長、レコードが見つからないのと、見つかったけど仕入れられないのって、どっちがツライですか?」って。

その時は思わず笑ってしまいました。

「イヤ〜、どっちも超ツライですよ(笑)」ってコレが本音です。

でも、改めて考えてみると、やっぱりつらいのは「見つかったのに仕入れられない」ほうですね。

レコードが見つからないなら、まだ諦めがつきますしね。

「あぁ、今回は縁がなかったな。」ってそう思えば気持ちの整理もできます。

でも、目の前には確かにある。欲しかったレコードが、ちゃんと存在している。

あと一歩、お金を出せば手に入る…それなのに、仕入れるコトができない。

これは本当に「ヘビの生殺し」という表現がぴったりなんです(笑)

バイヤーをやっている人なら、この感覚はきっと分かってもらえるじゃないかなとって思います。


「売れる」のに、仕入れない理由

ココで、レコードに詳しくない方はこう思うかもしれません。

「人気があるんだったら、高く仕入れて、高く売ればいいんじゃない?」って。

たしかに理屈だけで考えれば、その通りなんです。

商売なんだから、仕入れ値に経費と利益を乗せて販売するっていうそれだけのハナシです。

でも、実際のレコード店は、そんな単純な世界ではありません。

例えば今回のレコード…もしオイラがあの価格で落札していたら、当然その仕入れ値をベースに販売価格を決めるコトになります。

でも、その価格を店頭に付けられるかと言われたら…正直、オイラにはできないんですよね。

モチロン、売れる可能性はあると思いますよ、レア盤ですし、探している人は必ずいると思うので。

でも、それでも「この値段では売りたくない」と思ってしまうんですよね。


オイラの中にある「価格のモノサシ」

レコード店を長くやっていると、不思議と自分の中に「モノサシ」ができます。

例えば、

「このタイトルなら、今ならこれくらい。」とか「コレは結構レアだから、この価格帯かな。」ってそんな感覚です。

モチロン、それは絶対的なモノではありませんケドね。

でも、20年以上レコードと向き合ってきた経験の積み重ねから生まれた、自分なりの相場観なんです。

トコロが最近は、そのオイラのモノサシを世界のマーケットが軽々と飛び越えていくんですよね。

eBayの落札価格。Discogsの取引履歴。海外ディーラーの販売価格。

どれを見ても、「えっ、そこまで上がるの?」っていう場面がホントに増えてきたんですよね。

そうすると、自分の感覚が古くなったのかな…とも思います。

でも、一方では日本のお客様の感覚も知っています。

だから、その間で揺れちゃうんですよね。


「仕入れ値」だけでは価格は決められない

一般のお客様には、あまり知られていないコトかもしれません。

でも、お店の販売価格というのは、仕入れ値だけで決まるワケではありません。

もちろん、仕入れ値は重要ですよ、でもそれだけではナイんです。

特にオイラが気にするのは、

「過去にいくらで販売していたか。」

「今、日本ではどれくらいの相場なのか。」

「他のお店では、どんな価格で売られているのか。」

そして何より、

「Next Recordsらしい価格なのか。」というコトです。

最近はeBayやDiscogsのおかげで、世界中の販売価格や過去の取引履歴を誰でもカンタンに見るコトができます。

つまり、お客様も調べようと思えば調べられる時代なんです。

だからこそ、お店としての価格には責任があります。

「仕入れが高かったので、この値段です。」ってそれだけでは済まされないって思うんですよ。

お店のカンバンを背負っている以上、「この店は納得できる価格を付けている」という信頼を失いたくないんですよね。


コレはレコード店だけの話ではない

この感覚は、実はレコード店だけではないような気がしています。

海外から商品を仕入れている専門店や個人で輸入販売をしている人、小さなお店の経営者はきっと同じような悩みを抱えているのではないでしょうかね。

ニュースでは、「円安」「インフレ」という一言で片付けられてしまいます。

でも、その影響は現場ではもっと具体的です。

「この商品を仕入れるか、やめるか。」

「この価格で販売するか、見送るか。」

そんなヒトツひとつの判断になって現れるんです。

テレビでは数秒で終わる経済ニュースも、オイラたち現場の人間にとっては、毎日のシゴトそのものなんですよね。

だから最近は、経済ニュースを見る目も昔とはずいぶん変わりました。

「また円安か。」ではなく、「このドル円なら、あのレコードはもうムリかもしれないな…」ナンてそんなコトを考えるようになってしまいました(泣)


それでも、お店として譲れないもの

ココ最近は、仕入れを諦めるレコードは、以前よりずっと増えてきたように思います。

体感では、ebayのウォッチリストに入れたタイトルの8割くらいは、オイラの想定を超える価格になってしまうんですよね。

以前なら普通に仕入れて出来ていたようなレコードでも、今では最後まで見届けるダケ…そんなコトも珍しくありませんね。

でも、不思議なコトに、お店として海外から仕入れる枚数そのものは、それほど減っていないんですよね。

ソレはナゼかというと単純に仕入れるレコードが内容が少しづつ変わってきたからですよね。

世界中で争奪戦になる超人気盤だけを追いかけるのではなく、「Next Recordsらしい1枚」を、もっと大切にするようになったっていうカンジですね。

当店だからこそ見つけられるレコードや「これは面白い」と思えるレコード…そんな独自のセレクションを、以前にも増して意識するようになったんです。

皮肉なコトですが、レア盤が仕入れにくくなったコトで、逆にお店らしさを見つめ直すキッカケにもなったのかもしれませんね。

確かにレア盤は魅力的ですが、それだけがレコードの魅力じゃないですしね。


「Next Recordsらしい1枚」を探すというシゴト

昔は、人気盤やレア盤をどれだけ集められるか…そんなトコロで勝負をしていた部分がメチャ多かったと思います。

まぁ〜モチロン今でも、人気盤が入荷すれば嬉しいですよ。

「コレは、ゼヒ店頭に並べてお客さんに紹介したいっ!」っていうその気持ちは昔とナニも変わりません。

でも、世界中が同じ1枚を狙う時代になった今、オイラがもっと大切にしたいと思うようになったものがあります。

それは、「Next Recordsらしいセレクション」です。

他のお店にもある人気盤だけではなく、「えっ、この曲、こんなにカッコよかったんだ。」っていうそんな発見があるレコード。

プロのDJなら知っているけケド、一般にはあまり知られていない1枚や知名度は高くないけれど、フロアでかけたら一瞬で空気が変わるような12インチ…そういうレコードって、実はまだまだたくさんあると思います。


レコードは「有名だから価値がある」とは限らない

やはり、どうしても人気タイトルには人が集まります。

爆発的なヒット曲に有名DJがプレイした1枚やメディアやSNSで紹介されたレコード…そういうタイトルは、世界中のコレクターが欲しがります。

だから価格も上がってしまう、コレは需要と供給を考えれば自然なコトです。

でも、それだけがレコードの面白さではありませんよね。

20年以上レコードを見続けてきて思うのは、

「まだ評価されていない良いレコード。」

「忘れられてしまったけれど、今聴くと新鮮なレコード。」

そんな1枚が、ホントにたくさんあるというコトです。

オイラはそういうレコードを見つけるのが好きなんですよね。

そして、お客さんに「この曲、知っていますか?」って紹介するのも好きなんですよね。

「これ、知らなかったけど最高ですね。」ってそんな感想をいただけた時は、レア盤を販売できた時とはまた違ったウレシさがあります。


キュレーションも、レコード店のシゴトだと思う

最近、「キュレーション」というコトバを耳にする機会が増えました。

カンタンに言えば、「良いモノを選び抜いて紹介するコト」です。

インターネットには情報があふれています。

eBayもDiscogsもあるし検索すれば、世界中のレコードが見つかる時代です。

でも、「何を選べばいいのか…」それは意外と結構ムズかしいのかもしれません。

だからこそ、専門店には専門店の役割があると思うんですよね。

当店が長年培ってきた経験や耳、そして現場で積み重ねてきた感覚…そういうものを通して、

「これはNext Recordsだからおすすめしたい。」そんなレコードを紹介していく。

これからのレコード店は、単に商品を並べるだけではなく、「選ぶ価値を提供する場所」になっていくのかもしれませんね。


オリジナル盤と12インチシングルへのこだわり

Next Recordsが創業以来ずっと変わらず大切にしてきたものがあります。

それは、

オリジナル盤であるコト…そして、12インチシングルであるコトです。

音楽を聴くだけなら、今はサブスクでも十分楽しめます。CDでもイイし、データでもイイ。

極端なハナシをすれば、同じ曲を聴くという意味では、どのメディアでも大きな違いはないのかもしれません。

でも、不思議なんですよね〜人はレコードという「モノ」に愛着を持つんですよね。

ジャケットを眺める。

盤を取り出す。

ターンテーブルに乗せる。

針を落とす。

そして流れてくる音。

そのヒトツひとつの行為も含めて、レコードを楽しんでいるんだと思うんです。

さらにオイラは、できることなら当時発売されたオリジナル盤を聴いていただきたいっ!

モチロン再発盤にも価値はあります。

ブートレッグにも役割があります。

でも、

「1980年代に、この音を、この盤で、多くのDJがプレイしていた。」

そんな歴史まで含めて楽しめるのがオリジナル盤の魅力なんですよ。

そして12インチシングル。

これはオイラが何度も言っていたコトですが(笑)、「音質というイミでは、本当に素晴らしい音楽メディア」なんですよ。

もっと多くの方に、その良さを知っていただけたら…って思っているんですよね。


10年後、この記事を読み返した時に

オイラはこの「渋谷レコード店日記」をカレコレもう20年以上書き続けています。

時々、昔の記事を読み返すコトもあります。

「あぁ、あの頃はこんなコトがあったな。」ってそんなふうに思い出すコトがよくあります。

だから、この記事もきっと10年後に読み返すでしょう。

その時、もしかすると、

「2026年は高い、高いって騒いでいたケド、今思えばまだ安かったなぁ。」ナンて笑っているかもしれません。

それとも逆に、「あの頃が価格のピークだったのか…。」って言っているかもしれません。

それはダレにも分かりません。

でも、ひとつだけ言えるコトがあります。

レコードというものは、欲しいと思った時に必ず次も出会えるとは限りません。

そして、価格も同じとは限りません。

だから昔からよく言われますが、

「レコードは、見つけた時が買い時。」

コレは、今の時代になってますます実感するようになりましたね。

円安やインフレ、世界的なレコード人気も送料の高騰。

そんな時代だからこそ、1枚のレコードとの出会いを、これからも大切にしていきたいと思っています。


DJ QUIK / QUIK'S GROOVE VII
DJ QUIK / QUIK'S GROOVE VII の試聴
next recordsのサイトでDJ QUIKのレコードを探してみる

そしてNext Recordsも「探していたレコードなら、まずあのお店をチェックしてみよう。」ってそう思っていただけるレコード店であり続けたいですね。

人気盤も、隠れた名盤も。オリジナル盤も、最高の12インチシングルも。

Next Recordsらしい目利きで、1枚1枚を選びながら、これからも皆さんに紹介していけたらと思っています。


Next Recordsではインスタグラムもやっています!
入魂のレコメンドで毎日、ナイスでグッドなレコードを紹介していますのでゼヒ、フォローしてくださいっ!

12インチシングルとは何なのか、その良さをわかりやすく解説したQ&Aもゼヒ参考にしてください。
12インチシングルのFAQ


渋谷の12インチシングル専門の中古レコード店next. recordsでは12インチシングルのレコードを買取をやっています!
ゼヒ、お気軽にお問い合わせください!


毎週、金曜日に新入荷のアナログレコードをサイトにUPしています。

このブログは、渋谷で唯一の12インチシングル専門のレコード屋、next recordsが、運営しています。

Next Records Shop at Shibuya Tokyo Japan.
We are a small record store but we welcome you with a huge selection of original pressed 12" singles.
If you visit Tokyo, please visit our record store!

billynichols_giveyourbodyup

気が付けば、お客さんは何時間もレコードを見ている

渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を営んでいるNext Recordsです。

店の広さは決して大きくありませんが店頭には約6000枚、さらにバックヤードには品出し前のレコードが約2000枚ホド。またストックされたレコードが2万以上という小さな個人店としてはなかなかの物量ですが、大型店と比べれば決して巨大な店ではありません。

そんな小さな店を長年続けていると、毎日いろいろなお客さんが来店してくれます。

常連さんもいれば初めてのお客さんもいます。

最近は世界的なアナログレコード人気の影響もあって、海外からのお客さんもかなり増えました。特にオーストラリア、ヨーロッパ各国、北米からのお客さんが多く、台湾や韓国、東南アジアからのお客さんも来てくれます。

店主としては、買う・買わないは別として、お店に足を運んでいただけるだけでも本当にありがたいことです。

しかし、長年店頭に立っていて、ひとつ不思議に思うことがあります。

それは、「お客さんの滞在時間がとても長い」というコト。

30分はフツーで1時間の滞在も全然珍しくありません。

で、レコード好きな人だと2時間以上レコードを見続ける人もいます。

まぁ〜常連さんだと4〜5時間というコトよくありますケドね(笑)

ご来店いただいたお客さんに熱心にレコードを見てもらえるというのは店主としてはホント嬉しいハナシです。

でも、ふと思うんですよね…「そんなに時間をかけて疲れないのだろうか?」って。


そもそもレコード探しは、とても面倒な趣味である

冷静に考えると、レコード探しというのは非常に手間のかかる行為だと思います。

お客さんの様子を見ていると、

・まず棚からレコードを抜く。

・アーティスト名 & 曲名を見る。

・コメントを読む。

・ジャケットやレーベルに記載されているプロデューサーやリリース年のクレジットをクレジットチェックする。

・さらにスマホを取り出してSpotifyやApple Music、DiscogsやYouTubeを開いて曲を検索する。

・試聴する。

・Wantリストと照らし合わせる。

・そしてまた棚に戻る。

この繰り返しを何度も行うワケです。

サブスクなら数秒で済むコトを、レコード店では何十分も何時間もかけてやっています。

客観的に見ればメチャ効率が悪いですよね…というかむしろ非効率の塊ですよ。

それなのに、多くの人が夢中になっているワケです。

これは改めて考えると不思議な現象ですよね。


実はオイラ自身も、かなり面倒なコトをしている

自分でレコード店を営むくらいなのでオイラ自身も筋金入りの12インチシングル好きなワケです。

だからレコード店に行くと、とにかく全部見たくなります。

本当に全部です。

数千枚あろうが関係ありません…全部チェックしないと気が済まないんですよ。

ナゼか。

それは経験上、思わぬお宝的レコードがドコかに隠れているというコトを知っているからなんですよね。

12インチシングルは、多くのレコード店ではLPと同じ棚に混ざっているコトがあります。

そして、その中に意外なレア盤が紛れ込んでいるたりします。

そういった状況を知っているので見落とせないんですよね。

さらに、欲しかったMixがちゃんと収録されているかとか、ブートレッグではないかとか、盤質は大丈夫かといった確認も徹底します。

正直言ってメチャ面倒ですよ。

でもやってしまうんですよね。

ナゼならやっぱり後悔したくないからなんですよ。

そして、そういう面倒な確認作業も含めて、実は結構楽しんでいる自分がいるのです。


お客さんの負担を減らしたくてQRコード試聴を始めた

そんなお客さんの様子を見ていて、

「もっと簡単に試聴できたらイイのにな〜」って思うようになりました。

以前のお客さんは、気になるレコードを見つけるたびにスマホで曲名を入力して検索していました。

ホント、傍目から見ていて大変そうでした。

そこで導入したのがQRコード試聴です。

当店オリジナルの商品札のQRコードをスマホで読み込むだけで試聴できる仕組みです。

今では多くのお客さんが利用してくれています。

「すごいサービスですねっ!」

「めちゃ便利ですね〜」

「クレイジーだ!」

海外のお客さんからそんな声をいただくこともあります。

ホトンドすべてのお客さんから好評を得ているので店主としては嬉しい限りであります。


トコロが、ひとつ予想外だったコトがある

QRコード試聴を導入した当初は、試聴が簡単になれば、お客さんは短時間で効率よくレコードを探せるようになるだろうってオイラは考えていました。

トコロが現実は少し違っていて、むしろ試聴する枚数が増えたのです。

そして滞在時間もそれホド短くなりませんでした。

便利になったのに、時間は短縮されない…これは興味深い現象でした。

そこでオイラは思ったんですよね…。

もしかするとお客さんは、

「時間短縮そのものを求めていないのではないか?」って。


レコード好きは「買い物」をしているのではなく「発見」を楽しんでいる

店頭でお客さんを観察していると面白い瞬間があります。

お目当てのレコードを見つけた瞬間です。

「おっ!コレはっ!」ってカンジでちょっと仰け反る人。

「オッシャー!キタっー!」って勢いよく棚から抜く人。

「ヨシっ!」ってカンジで小さくガッツポーズをする人。

「これ、ずっと探してたんですよ!」と報告してくれる人。

その姿は、まるで宝探しに成功した人のようです。

考えてみれば、レコード探しは宝探しに近い趣味なのかもしれませんね。

欲しいレコードを見つける喜びや知らなかった曲との出会いに思いがけない発見。

これらは効率だけでは得られない体験になっているんでしょうね。


偶然の出会いはアルゴリズムでは作れない

オイラも過去に探していたワケではないのについつい買ってしまったレコードがあるっていうコトを何度も経験しています。

その多くは店内でたまたま偶然流れていた音楽なんですよね。

「コレ、何て曲ですか?」ってレコード店のスタッフに訊いて、そのまま購入してしまうというパターン。

そんなコトが何度もあるんですよね〜。

もしネット検索だけだったら出会わなかったかもしれません。

SpotifyやYouTubeのおすすめ機能は確かに優秀だと思います。

自分の好みに近い曲を次々と紹介してくれますしね。

でも、それはどこか予定調和でもあります。

似た曲。

近い曲。

好みに合う曲。

メチャ便利です。

しかしレコード店では違います。

予想外の出会いや偶然があって寄り道があります。

そして、その寄り道こそが面白かったりするんです。


効率化の時代だからこそ、非効率が贅沢になる

あきらかに現代は効率化の時代だと思います。

欲しいものは検索すれば出てくるし、音楽もすぐ聴けます。

ネットで注文した買い物も翌日には届きますしね、ホント便利になりました。

でも面白いコトに、人は便利さだけを求めているワケではないようです。

音楽の歴史を振り返ってもそうだと思うんですよ。

レコードよりコンパクトでノイズも皆無、さらに長時間収録できるCDがレコードに変わる存在として登場しました。

さらにそもそもアイテムとして所有すらしなくてもよいサブスクが登場しました。

トコロが今、再びレコードが人気になっているワケです。

合理的に考えればメチャ不思議だと思うんですよ。

なぜ重たいレコードなのか。なぜ針を落とすのか。なぜ棚を何時間も掘るのか。

そこには便利さでは測れない価値があるからなんじゃないかなって思ったりするんですよね。


人は不便さそのものを楽しんでいるのではなく、その過程を楽しんでいるのかもしれない

QRコード試聴を導入すれば、お客さんはもっと効率的にレコードを探せるようになると思っていました。

しかし実際には違いました。

便利になったにもかかわらず、多くのお客さんは相変わらず長い時間をかけてレコードをチェックしています。

もしかすると人は、不便さそのものを求めているワケではないのではないのかなって思ったんですよね。

例えば、誰だって欲しいレコードが最初の1枚目で見つかるなら、その方が楽ですよね。

盤質のチェックもしたくないし、検索する手間もない方が良い、それは間違いありません。

しかし、レコード探しには効率だけでは説明できない魅力があります。

棚を眺めているうちに、当初探していたレコードとはまったく別の作品が気になり始める。

試聴してみたら予想以上に良かったとか、ジャケットに惹かれて手に取った1枚が、その後何年も聴き続けるお気に入りになるとか…。

そんな経験はレコード好きなら誰しもあるのではないでしょうか。

オイラ自身もそうですしね…探していたレコードを買うコトもありますが、それ以上に印象に残っているのは偶然の出会いだったりします。

店内で流れていたレコードにココロを掴まれて、そのまま購入したコトも何度もあります。

もし最初から効率だけを求めていたら、そういう出会いは生まれなかったかもしれません。

そう考えると、人が楽しんでいるのは不便さそのものではなく、

「何に出会うか分からない時間」なのかもしれませんね。


レコード店はこれからも残り続けるのだろうか

もし将来、AIが完璧に好みを分析して、「あなたが好きそうなレコードだけ」を表示してくれる時代が来たらどうなるのでしょう。

正直、オイラには分かりません。

でもひとつだけ思うコトがあります。

ネット通販が普及した時、多くの人は今後は実店舗がなくなるんじゃないかと思っていました。

しかし現実にはレコード店は今も存在しています。

場合によっては、むしろ増えている地域もありますね。

もしかしたら人は商品だけを買いに来ているワケではないのでしょうね。

店の空気感や偶然の出会いに棚を掘る時間…そうした体験もレコードに求めているのかもしれないなぁ〜って思うんですよね。

まぁ、だけどレコードは決してメインストリームにはならないでしょう。

しかしニッチな文化として、これからも生き続けるんじゃないかなぁ〜って気がしています。


BILLY NICHOLS / GIVE YOUR BODY UP TO THE MUSIC
BILLY NICHOLS / GIVE YOUR BODY UP TO THE MUSIC の試聴
next recordsのサイトでBILLY NICHOLSのレコードを探してみる

レコード好きは「探す時間」を買っている

今回改めて考えてみて思ったことがあります。

レコード好きはレコードを買っているだけではなくって、探している時間そのものを楽しんでいる。

だから店内で過ごした1時間や2時間はムダな時間ではなくって、むしろその時間こそが趣味を満喫している時間になっているんでしょうね。

効率化が進んだ時代だからこそ、あえて非効率を楽しむ…それがレコードという文化の面白さなのかもしれません。

今日も世界中のレコード店でダレかが棚を掘っています。

レコードを抜いては戻し、また抜いて、スマホで試聴して、悩んでいる。

でもその表情は辛いわけではなくってドコか楽しそうです。

もしかするとレコードの魅力とは、音楽そのものだけではなく、その音楽に出会うまでの遠回りにあるのかもしれませんね。


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12インチシングルとは何なのか、その良さをわかりやすく解説したQ&Aもゼヒ参考にしてください。

渋谷の12インチシングル専門の中古レコード店next. recordsでは12インチシングルのレコードを買取をやっています!
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毎週、金曜日に新入荷のアナログレコードをサイトにUPしています。

このブログは、渋谷で唯一の12インチシングル専門のレコード屋、next recordsが、運営しています。

Next Records Shop at Shibuya Tokyo Japan.
We are a small record store but we welcome you with a huge selection of original pressed 12" singles.
If you visit Tokyo, please visit our record store!


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