渋谷レコード店日記 - アナログレコードコレクションのススメ

東京 渋谷の12インチシングル専門の中古レコード屋next. recordsで日々思ったコトやレコードについて書いてます

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渋谷の小さなレコード店が越境ECと向き合った1年間

オイラは渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を営んでいます。

気が付けばこの渋谷という街でレコード屋を始めて26年が経ちました。

ネット通販も20年以上続けています。

昔は、お目当てのレコードを探すためにレコード屋を何軒もハシゴして巡るのが当たり前でしたが、今ではスマホひとつで世界中のレコードが探せる時代になりました。

当店もそんな時代の変化に合わせながら、店頭販売だけでなくネット通販にもチカラを入れてきました。

ありがたいことに国内向けの通販は多くのお客様に利用していただけるようになり、小さなレコード店ながら全国のお客様にレコードを届けられるようになりました。

トコロがひとつだけ大きな課題がありました。

それが海外への販売です。

実店舗には毎日のように外国人のお客様が来店してくれます。

今では売上の半分以上を海外からのお客様が占めることも珍しくありません。

アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、ドイツ、シンガポール、韓国…。

世界中のレコード好き、特に12インチシングル好きが渋谷の小さなレコード店であるNext Recordsに足を運んでくれています。

それなのにネット通販では海外からホトンド注文が来ない。

この不思議な状況を何とかしたい。

そんな思いから昨年、本格的な越境ECをスタートさせました。
その時、投稿したブログ記事はコチラ
世界中にレコードを通販したい!目指せ越境EC化っ!


「これならいけるかもしれない」と思っていた

正直に言えば、オイラは越境ECにかなり期待していました。

モチロン、そう簡単ではナイとは思っていましたよ。

だけど実店舗には海外のお客様がたくさん来てくれている & インスタグラムでも海外のフォロワーが増えている。

だから少なくとも毎月ある程度の注文は入るだろうなぁ〜と思っていたのです。

海外のお客様が日本のレコード店へ注文した場合、送料が高いコトも理解しています。

だから1枚だけの注文ではなく、送料の負担を分散させるために何枚かまとめて購入してくれるのではないかなぁ〜って都合のイイ事を考えていました。

最初の1年は大きく儲けようというより、

「まずは海外のお客様に認知してもらおうっ!」

そんな気持ちでした。

トコロが現実は予想とはまったく違いました。


オーストラリアから届いた最初の注文

まぁ〜そうはいってもそれでもスタート直後は期待に胸を膨らませていたんですよね。

ナゼならサービス開始直後にオーストラリアから結構まとまった枚数の注文が入ったからです。

今でも鮮明に覚えていますよ。

20枚以上のレコードをまとめて購入していただき、金額もかなり大きなものでした。

その注文を見た時、

「あ、本当に海外でも売れるんだっ!」って思いました。

実店舗で外国人のお客様が増えている実感はありましたが、それがネット通販でも証明された瞬間でした。

そしてオイラはこう思いました。

「コレは、もしかして思ったより早く軌道に乗るかもしれないなぁ〜」

トコロが現実はそんなに甘くありませんでした。


期待のあとにやってきた長い停滞

しかし最初の注文以降、実際は思ったように売上は伸びませんでした。

ホント、注文がまったく入らない。

だけど海外からのアクセスはそこそこある。

でも売れない。

その状態が何ヶ月も続いたんですよね…ん〜コレは、正直辛かった…。

売れないコト自体も辛いのですが、それ以上に辛かったのはナンで売れないのかっていう理由が分からないコトなんですよね。

店頭なら分かりますよ。

お客様の表情を見ればナンとなく興味を持っているか分かるし、ハナシをすればナニを探しているかも分かる。

でもネット通販は違うんですよ。

世界中の誰かがサイトを見ている。

だけど何を考えているのか分からない。

ナンで買ってもらえないのかも分からない。

オイラは手探りの状態でサイトをイロイロ修正しました。

説明文を変えたり、翻訳を見直したり、配送方法を調べたり、ホント自分なりに出来る色々なコトを試しました。

しかし目に見える成果は出ませんでした。


英語でレコードを紹介し続けた日々

そんな中でも続けたコトがあります。

インスタグラムで英語のレコメンドを毎日書いて投稿するコトです。

正直、ものすごく手間がかかります。

しかも始めた当初はホトンド反応がありませんでした。

「こんなコトやってホント意味あるのかな?」

そう思ったコトが何度もあります。

だけどオイラは、いつか、ドコかでこの努力は報われるという気持ちで続けました。

やはりレコードの魅力は国境を越えると思っていたからなんですよね。

Houseも。

Discoも。

R&Bも。

HipHopも。

そしてオイラが大好きな12インチシングルも…。

良い音楽は世界共通です、その証拠に毎日世界中から様々な国籍のお客さんが店頭に訪れてレコードを買ってくれますからね〜ホント、それだけを信じて投稿し続けていました。

で、半年ホド経った頃から少しずつ変化が出始めたんですよね。

海外から問い合わせがポロポロ来るようになったのです。

オイラがインスタグラムで紹介したレコードを「このレコードは購入できますか?」とか「海外発送できますか?」なんていうメッセージが届くようになったんですよね

で、実際に購入につながったこともありました。

その時初めて、「見えないトコロでちゃんと読まれていたんだな〜」と実感しました。

だけど、越境ECを開始した当初目標としていた注文数にはまだまだゼンゼン達成出来ずにいました。


一本の営業電話が転機になった

そんなある日、一本の営業電話がお店にかかってきました。

相手は海外向けの購入代行サービスを行っている会社でした。

海外のお客様が日本の商品を購入する際に間に入って購入や発送を代行してくれるというサービスです。

以前からそういったサービスの存在は知っていました。

ヤフオクやメルカリでレコードを売買している知人からも、

「最近は購入代行経由でレコードを買う海外ユーザーが増えているんだよ」っていうハナシを聞いていましたからね。

だからオイラも少し興味がありました。

もしかしたらそういうサービスを利用すれば海外のお客様からの注文が増えるのではないか…って。

今の停滞している状況を打破できるのではないかって、そんな期待も少しありました。

トコロが営業さんのハナシを詳しく聞いてみると、オイラが思い描いていたものとはちょっと違っていたんですよね。

オイラは勝手に、

「その購入代行会社がたくさんの海外ユーザーを集めて当店のオンラインショッピングサイトへ送客してくれるのではないか」

と思っていたのです。

しかし営業さんの説明では実際には集客の主体はあくまで自分自身つまり当店の集客力にかかっているというワケです。

購入代行サービスは海外のお客様が購入しやすくする仕組みであって、お客様そのものを連れてきてくれるワケではありませんでした。

電話を切ったあと、

「ナルホドなぁ…」って思いました。

利用する価値がないというハナシではありません。

ただオイラが抱えている問題の本質はそこではナイような気がしたのです。

そしてその時、フト思ったんですよね。

もしかすると今のオイラに必要なのは新しい販路を探すコトではなく、自分のECサイトをもっと深く知るコトなんじゃないだろうかって。


店主は本当にサイトを理解しているのか?

前記しましたがオイラは20年以上ネット通販をやっています。

コレまで様々な経験を経ているのでネット通販に関してはそれなりの知見があると自負していました。

だから正直なトコロ、

「自分のサイトのコトは、自分がイチバンよく知っている」って思っていたんですよね。

どんな商品が売れるか。

どういったタイプのお客さんが買うか。

どういうレコードが今は人気なのか。

20年以上の現場で積んだ経験があるのでそれなりに理解しているつもりでした。

トコロが越境ECだけはどうも上手くいかないんですよ。

アクセス解析を見ても、

訪問者数

閲覧数

購入率

などの数字はメチャ詳細に記録されていて表示されます。

しかし数字が分かったトコロで、

「じゃあ何を改善すればイイのか」ってコトが分からない。

数字は見える、でもその数字の裏側にはどんなイミがあるのかが分からない。

ホント、そんな状態でした。

そこでオイラは、Shopify(当店が使っているショッピングカートサービス)のバックエンドに組み込まれているAIに質問してみることにしました。

ま〜たまにちょっとして手直しに使う程度でソレホドガッツリと使ったコトがなかった機能です。

正直、最初はあまり期待していませんでした。

せいぜい数字を集計してくれる程度だろうと思っていました。

トコロが、そこから予想もしなかった発見が始まったのです。


一番の誤算は「人が来ていないワケではなかった」こと

オイラはずっと「海外からのアクセスが少ないんだろうな…」って思っていました。

だからインスタグラムを頑張った。

英語の投稿も頑張った。

もっと見てもらわなければ…もっと当店の存在を知ってもらわなければってそう思っていました。

トコロが分析結果を見て驚きました。

オイラが思った以上に思った以上に世界中からアクセスがあったんですよ。

アメリカ。

オーストラリア。

シンガポール。

台湾。

韓国。

ヨーロッパ各国。

オイラが想像していた以上に多くの人がNext Recordsを見つけてくれていました。

しかもただ見ているだけではありません。

商品ページを何ページも閲覧し、レコードをカートに入れている人までいる。

コレは本当に意外でした。

問題は集客不足ではなかったのです。


台湾という予想外の発見

さらに驚いたことがありました。

オイラはオーストラリアに強い印象を持っていました。

実店舗でもオーストラリアからのお客様は本当にメチャ多いんですよね。

通販でも最初の注文はオーストラリアからでした。

だから当然、当店のECサイトでも海外からのアクセスがイチバン多いのもオーストラリアだと思っていました。

トコロが分析すると、別の国が浮かび上がってきたんですよね

それが台湾なんですよ。

台湾からのアクセスが想像以上に多く、しかも商品ページをかなりシッカリと見てくれている。

中には長時間滞在しているユーザーもいました。

さらに驚いたのは、気になったレコードをカートにまで入れている人が結構たくさんいたコトです。

だけど、最後の購入には至らない。

あと一歩のトコロで離脱してしまうといういわゆる「カート落ち」が多数起きているようでした。

これはオイラにとって大きな発見でした。

ナゼなら、

「誰も興味を持っていない」

のと、

「興味はあるケド買えない」

のでは意味がまったく違うからです。


レコードは普通のEC商品ではない

ここで改めて感じたコトがあります。

レコードは一般的なEC商品とはちょっと違うというコトです。

例えば家電や日用品なら、欲しいものを見つけたら比較して購入する。

比較的シンプルな購買行動です。

でもレコードはそういった一般消費財とは違うんですよね。

特にオリジナル盤の12インチシングルはホトンドが一点物です。

二度と出会えないかもしれない、だから興味を持つ部分があると思います。

でもスグには決められない。

で、カートに入れて考える。

後でまた見に来る。

他のレコードと比較する。

そんな独特の行動を取ります。

オイラ自身もレコードコレクターなので、その気持ちはとてもよく分かります。

だからデータを見ながら、

「ナルホド、みんな同じコトをやっているんだな」って思いました。

数字だけでは見えなかったお客様の行動が少しずつ見えてきたのです。


AIが教えてくれたのは答えではなくヒントだった

面白かったのは、AIが魔法のように答えを教えてくれたワケではないコトです。

むしろ、「ココに問題がありそうですよ」というヒントをくれた。

そんな感覚でした。

送料は分かりやすいだろうか。

海外のお客様は配送方法を理解できるだろうか。

関税の説明は十分だろうか。

商品ページの案内は親切だろうか。

そうした部分を改めて見直すキッカケになったんですよね。

オイラは自分がサイトをイチバン理解していると思っていました。

でも実際には、お客様の行動データを見続けているシステムの方が気付いているコトもあったのです。

これは素直に驚きました。


世界中の誰かに12インチシングルを届けたい

オイラは26年間レコード店を続けています。

その中でずっと思っているコトがあります。

それは12インチシングルの魅力をもっと多くの人に知ってほしいというコトです。

最近はレコード人気が復活しています。

若い人もレコードに興味を持ってくれています。

でも多くの人がイメージするレコードはLPです。

12インチシングルの魅力はまだまだ全然知られていません。

迫力のある音。

深いグルーヴ。

DJ文化から生まれた独特のエディット。

クラブで鳴らすために作られた圧倒的な存在感と音質。

オイラはそういう12インチシングルが大好きなワケです。

だから日本だけでなく、世界中のレコード好きにも12インチシングルの魅力をもっと知ってもらいたい。

その気持ちが越境ECを続けている原動力でもあります。


まだ挑戦の途中

越境ECを始めて1年。

正直に言えば目標は全然達成できていません。

オイラが最初に思い描いていた未来とは違いました。

懸命に取り組んでいる努力が空回りしているように感じたコトもあって途中で嫌になったコトもあります。

でも今回、自分のサイトを深く分析してみて思ったんですよね。

問題はあるし、課題もある…だけど改善すべき点も見えてきたってカンジなんですよね。

それは大きな前進だと思うんですよ。

以前は暗闇の中を手探りで歩いているような感覚だったんですが今はちょっと違います。

進むべき方向が少し見えてきたんですよね。

だから不思議とワクワクしています。

渋谷の小さなレコード店。

世界的な企業と比べれば本当に小さな存在です。

それでも世界中の誰かがNext Recordsのサイトを見てくれてレコードをチェックしている。

そしてお気に入りのレコードをカートに入れて悩んでくれている。

そう思うとやっぱり嬉しくなりますよ。

だけど、ナンかの事情で「ん〜やっぱり買うのヤメよう〜」ってなっているんですよね。

で、オイラの次のシゴトはそういった「買うのをヤメよう」を「やっぱり買おうっ!」ってなるような気持ちさせるにはどうすればイイのかってコトですよね。

まぁ〜国内のネット通販に関してはこの問題はある程度クリアされているので、海外特有の問題を丁寧に解決すればイイんじゃなかかなぁ〜ナンて思っています。


JANET JACKSON / WHAT HAVE YOU DONE FOR ME LATELY
JANET JACKSON / WHAT HAVE YOU DONE FOR ME LATELY の試聴
next recordsのサイトでJANET JACKSONのレコードを探してみる

Next Recordsの越境ECへの挑戦はまだ続きます。

そしていつの日か、世界中のもっと多くの人にオリジナル盤12インチシングルの魅力を届けられたら最高だなと思っています。


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12インチシングルとは何なのか、その良さをわかりやすく解説したQ&Aもゼヒ参考にしてください。
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NHK『ドキュメント72時間』を見て驚いた

先日、NHKの人気ドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』で、渋谷のタワーレコードを舞台にした「渋谷“音楽の塔” みんなのプレイリスト」が放送されていました。

オイラも興味深く見ていたのですが、その中で特に印象に残ったのが開店前の光景でした。

タワーレコード渋谷店の開店時間は午前11時なんだけど開店前から店の前には長い行列ができていて、その列には外国人の姿も数多く見られました。

正直なところ、コレはちょっと驚きました。

なぜなら今はSpotifyやApple Musicをはじめとするストリーミング全盛の時代です。

音楽はスマホひとつで聴けるし、世界中の何千万曲という楽曲に月額1000円程度でアクセスできる環境が揃っているワケです。

そんな時代に、わざわざ渋谷までやって来てCDを買う人たちが午前中のお店が開店前から並んでいる…しかもその多くが海外から来ている。

コレは、一体どういうことなのだろう?

オイラ自身、ホボ毎日渋谷に通っているワケですがまさか土日でもないフツーの午前中のタワーレコードの開店前がこんな状態になっているとは全然知りませんでした。

そんな疑問から、最近あらためて世界の音楽市場について調べてみたのです。

すると、思いもよらない事実に気づきました。

それは、日本は世界でも稀に見る「レコード・CD天国」だったというコトです。


世界の音楽市場は絶好調だった

まず驚いたのが世界の音楽市場そのものです。
001

国際レコード産業連盟(IFPI)が発表した「Global Music Report 2026」によると、2025年の世界の録音音楽市場は前年比6.4%増の317億ドルとなっていて11年連続の成長で、過去最高を更新しました。

その原動力となっているのがストリーミングです。

SpotifyやApple Musicなどの有料ストリーミング会員は世界で8億3700万人で売上全体の約7割をストリーミングが占めています。

002

つまり世界の音楽産業は、「CDからストリーミングへ移行して衰退した」のではなく、「ストリーミングによって再成長した」と言った方が正しいようです。

オイラ自身も日常的にストリーミングを利用しています。

新しい音楽との出会いという意味では本当に便利な時代になりました。

ところが、このレポートを読み進めていくと、さらに興味深い数字が出てきます。


それでもレコードは消えなかった

ストリーミングがこれだけ普及したのだから、フィジカルメディアは縮小しているって思いますよね。

しかし現実は少し違うみたいです。

レコードを含むフィジカル市場は2025年に前年比8%成長していてさらにアナログレコードは19年連続で成長を続けています。

「19年連続っ!」です。

コレはもはや一時的なブームではナイってカンジでもあります。

レコードは完全に文化として定着したと言ってイイんじゃないかなぁ。

オイラはレコード店を営んでいますから毎日レコードに囲まれて生活しているワケですが、それでもこの数字には「マジでっ!?」って思っちゃいますよ。

ナゼ人はレコードを買うのか…音だけを聴きたいならストリーミングで十分です。

しかしレコードには、ジャケットを眺める楽しさや盤をターンテーブルに乗せる儀式感に針を落とす瞬間の緊張感、さらに音楽を所有する喜びがあります。

便利さだけでは説明できない魅力が確かに存在するのワケですがそういったレコードの魅力が世界レベルで広く知れ渡ったのかなって思うんですよね。


実は日本も音楽市場が拡大している

そしてもうひとつ驚いたコトがあるんですよ…ソレは日本の音楽市場もまあまあ成長しているってコトです。

2025年の日本の音楽市場は前年比6.7%増の6410億円になっていてこの数字は過去最高を更新したようです。

日本というと、

「CDだけが売れている特殊な国」

っていうイメージをオイラは持っていたんですが実際は違うようですね。

市場の約61%はデジタルになんですね、つまり日本でもストリーミングで音楽を楽しむのが主役です。

一方でフィジカルもいまだ39%を占めているんですよね

コレ、世界的に見るとこの割合はメチャ高いんですよ。

つまり日本は、

ストリーミングも伸びている

しかもフィジカルも伸びている

という極めて珍しい市場になっています。

ちなみに日本の音楽市場規模はアメリカについで世界第2位なんですよね。


当店で起きている状況

こうした数字を改めて読み解くとこのブログでもたびたび書いている外国からのお客さんの増加について「ナルホドね〜」って思うんです。

その増加具合は、個人的な体感では10年前の10倍以上です。

10年前なら外国人のお客さんは1日に1〜2人程度でした。

トコロが2026年の今では来店客の9割以上が外国人という日も珍しくありません。

英語だけで接客が終わる日もあるくらいです。

特にコロナ禍明けの2023年以降、その増加スピードは加速していますね。

これは単なる観光客の増加だけでは説明できない現象だとカンジています。


ドコの国から来ているのか?

国別の来店状況の傾向はこんなカンジです。

当店の場合、最も多いのはオーストラリア。

次いで、

イギリス

ドイツ

フランス

イタリア

などヨーロッパ勢。

その後にアメリカやカナダが続きます。

最近では、

シンガポール

タイ

台湾

韓国

フィリピン

などアジア圏のお客さんも増えてきましたね。

以前は欧米中心でしたが、近年はアジアからの来店も明らかに増えています。

コレは、アジアの音楽市場が急成長していることとも無関係ではナイでしょうね。


で、外国人は何を買っているのか?

外国人というと、

「シティ・ポップを探している人たち」っていうイメージがあるかもしれませんね。

確かにそういうお客さんもいます。

だけど、オイラの店の場合はぜんぜん事情が違います。

当店で扱っているのは12インチシングルです。

そのため、House / Disco / HipHop / Electro などを探しに訪れる人が圧倒的に多いですね。

そして彼らの多くはかなり詳しいんですよ。

Discogsのリストを見せながら探す人もいますし、目当ての盤を最初から決めて来る人もいます。

日本に来る前からレコードを購入するために綿密にリサーチしているカンジですね。

当店を中には、

「東京のレコード店を紹介するサイトで知った」

「友人から絶対に行けと言われた」

「AIに聞いたら紹介された」

という人までいます、まぁ〜コレも時代ですね(笑)。


ナゼ外国人は日本に来るのか?

なぜ彼らは日本までレコードを買いに来るのでしょうか。

個人的には大きく3つ理由があると思っています。

理由① コンディションが良い

まず圧倒的にコレですね。

日本人は昔からモノを大切に扱います。

レコードも同じです。

40年以上前のMichael JacksonやPrinceのレコードでも驚くホド綺麗な状態で残っているコトがあります。

海外で買い付けをしていると、

「どうやったらこんな状態になるんだ?」

って思うようなボロボロの盤に出会うコトも少なくありません。

一方、日本で販売されている中古レコードはピカピカっ!

コレが世界中のレコード好きやコレクターから評価されていると思います。


理由② 価格が安い

間違いなく円安も大きな要因でしょうね…。

日本人から見ると高く感じるレコードでも、外国人から見ると驚くホド安く見えるようです。

しかもコンディションも良いっ!

だから買わない理由がないのです。

実際、日本人なら躊躇する価格のレコードを勢いよくまとめ買いしていく外国人のお客さんを何度も見ています。


理由③ レコード店が多い

コレが日本人には意外と理解されていません。

海外から来るお客さんとハナシしていると、

「自分の街にはレコード店がない」

という話をよく聞きます。

街に一軒もない…結構、それが普通みたいですね、まぁ〜日本に訪れる外国人の人のみんながLondonやParisやNew Yorkのような大都会に住んでいる人ばかりではナイですからね。

タワーレコード

ディスクユニオン

HMV

Face Records

そして当店のような専門店まで大規模店から小さなショップまで多種多様なレコード店がありますからね。

とはいえ、渋谷のレコード全盛期(90年代後半〜2000年代はじめ頃)の半分以下ですがそんな今でも、ひとつのエリアにこれだけ店が集中している都市は世界的にも珍しいのです。


タワレコ渋谷はナゼ人気なのか

ここで最初のハナシに戻ります。

ナンでタワレコ渋谷にあれだけ外国人が集まるのかです。

個人的にはやはり、「音楽の聖地」的なイメージがあるからだからだと思うんですよね。

Tower Recordsはかつて世界中の音楽ファンの憧れでした。

本国アメリカでは消滅してしまいましたが、渋谷店は今も巨大な音楽の城として存在しています。

ビル一棟まるごと音楽。

コレだけでも十分に観光資源ともいえる存在です。

しかもアナログレコード専門フロアTower Vinylまである。

レコード好きなら一度は行ってみたい場所になっているんでしょうね〜ある意味「聖地巡礼」的なカンジになっているんでしょうね。

オイラ自身、番組『ドキュメント72時間』で見た開店前の行列には正直驚きました。

特にイベント的な催しや限定アイテムが販売されているワケでもなく、撮影中の3日間開店時に行列が出来ていたのでもう、オープン前の行列がデフォルトになっているんでしょうね。

しかし世界中の音楽ファンから見れば、あれはむしろ自然な光景なのかもしれません。


日本人は気づいていない

ココまで調べたり、外国人のお客さんと接していて思うコトがあります。

それは、もしかしたら

「日本人は自分たちの音楽環境の価値に気づいていないんじゃないか」

というコトです。

日本に住んでいると、レコード店がある・中古盤がある・CDも買える…という環境を当たり前だと思っています。

しかし世界的に見れば決して当たり前ではないのかもしれませんね。

海外のレコードファンからすると、日本はパラダイスみたいに見えるのでしょうね。

実際に、当店のようなニッチな12インチシングル専門の小さなショップにも関わらず

「毎日来たいっ!」

「何時間でもいられる」

ナンてありがたいおコトバをいただくこともあります。

最初は「またまたぁ〜お世辞がお上手なんだから〜」なんて大げさに言っているのだと思いました。

でも今ならその気持ちがわかる気がしますね。


ただし少し心配なこともある

レコード人気が高まるコト自体はメチャ嬉しいことです。

しかし気になるコトもあります。

それは、良質な中古レコードがものスゴい勢いで海外へ流出しているコトです。

レコード店を営んでいる立場としてモチロン売れるのはありがたい。

でも、「このまま何年も続いたらその先はどうなるのだろう?」ってそんなコトを考える時があります。

日本のレコード文化は、何十年もかけて積み上げられてきたものです。

その財産が少しずつ海外へ流れていく。

それは喜ばしいコトでもあり、少し寂しいコトでもあります。


LONNIE SMITH / DO IT
LONNIE SMITH / DO IT の試聴
next recordsのサイトでLONNIE SMITHのレコードを探してみる

もしかすると私たちはレコード天国に住んでいる

世界の音楽市場はストリーミングによって成長を続けています。

それでもレコードは消えませんでした。

むしろ価値を高めながら生き残っています。

そして調べれば調べるホド見えてきたのは、世界とは異なる日本の特殊さでした。

・世界第2位の音楽市場。

・豊富な中古盤。

・良好なコンディション。

・数多くのレコード店。

・そして音楽メディアを大切に扱う文化。

日本に住んでいると当たり前にカンジてしまいますが、世界中の音楽ファンから見れば決して当たり前ではないんですね…コレって。

渋谷で店をやっていると、そのことを日々実感します。

もしかすると私たちは、自分たちが思っている以上に恵まれた場所にいるのかもしれませんね。

そして今日もまた、世界のどこかからレコード好きが東京を目指してやって来ます。

彼らが探しているのは単なるレコードではなく、日本が長い年月をかけて育ててきた音楽文化そのものなのかもしれませんね〜、ちょっとポエミーなシメですが(笑)


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アノ時代の記憶と世代を超えるHipHopカルチャー

先日、地方にお住まいの常連さんが久しブリに渋谷の店へ遊びに来てくれた。

「おっ、久しブリですね!」

ナンていつもの感じでハナシしていたら、

「昨日、Wu-Tang Clanのライブ行ってきたんですよ!」

とのコト。

そう、29年ぶりの来日公演。しかも最後の来日とも言われていたWu-Tang Clanのライブを観に上京してきたそうです。

オイラ自身はそこまでライブへ足を運ぶタイプではないんだけど、今回の来日は事前からかなり話題になっていたので当然知っていました。SNSでも相当盛り上がっていたし、ライブ限定グッズを買うために3〜4時間並ぶみたいに人気だったらしい。

いやいや、スゴい時代ですよね(笑)

で、その常連さんに

「盛り上がってました?」

と聞いたら、

「ヤバいくらいメチャクチャ盛り上がってましたよ!」

とのコト。

さらに印象的だったのが、

「40〜50代くらいのお客さんがめちゃ多かったですね」

というハナシだった。

まあ、そりゃそうですよね。

Wu-Tang ClanがHipHopシーンへ与えた衝撃は、90年代をリアルタイムで体験した人達にとっては特別なモノがありますからね。

初めてアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』を聴いた時の衝撃は、マジでヤバかったですからね。

ザラついたビート。荒削りなのに異常に中毒性のあるラップ。NYのストリートの空気感。あの危険な匂い。Wu-Tangの曲を聴けば90年代のあの時代の思い出が脳裏にガガガーーーーっ!とめぐりまくりますよね。

アレは単なる流行った音楽ではなく、HipHopの価値観そのものに影響を与えたカルチャーだったと思います。

だから今回のライブには、当時夢中になって聴いていた40〜50代が大集合したんだと思います。

まさに「おっさんホイホイ」状態ですね〜(笑)

でも今回、オイラが面白いなと思ったのはそこだけじゃないんですよ。

常連さんのハナシによるとライブ会場には20代くらいの若い人も結構いたらしいとのコト。

コレ、実はかなり興味深い現象だと思うんですよね。


青春時代に聴いた音楽は、一生消えない

「三つ子の魂百まで」というコトワザがあります。

幼い頃に身についた性質は一生変わらない、というイミですね。

個人的はコレ、音楽にもかなり当てはまると思うんですよ。

特に10代後半から20代前半に浴びるように聴いた音楽って、単なる好きな曲では終わらないんですよね。

ファッション。

コトバ遣い。

遊び方。

仲間。

街の景色。

その頃の空気。

全部セットになってバッチリと記憶されている。

だから人は、青春時代の音楽を聴くと、一瞬であの当時へ戻れると思うんですよね〜カラダはおっさんのままですが気持ちだけ20代みたいなカンジですが(笑)

Wu-Tang Clanの曲を聴いているというより、90年代当時の自分を再生している感覚に近いんじゃないかな…。

当店でも、昔聴いていた12インチを探しに来るお客さんはホントに多いんですよ。

「この曲、昔クラブでよく聴いてたんですよ」

「当時お金なくて買えなかったんですよね」

「オリジナル盤、やっぱり欲しくなっちゃって」

そんな会話は日常茶飯事です。

でもコレって単なる懐古趣味ではないと思うんですね。

人は音楽を通して、「自分がどういう時代を生きてきたか」を確認している部分もあるんじゃないかなって思うんですよね。

だからあの当時のレコードは面白いんでしょうね…データじゃなく、モノとして存在しているからこそ、その時代の空気ごと所有している感覚がありますからね。


でも今回のWu-Tangは、ただの懐メロライブではなかった

先にも書きましたが今回のライブが面白かったのは、40〜50代が多いお客さんのそこへ20代くらいの若い世代も混ざっていたコトです。

コレってかなり珍しいんじゃないかな。

特にHipHopというジャンルでは…なぜならHipHopって、本来かなり時代性の強い音楽だと思うんですよ。

その時代の街の空気。

ファッション。

コトバ。

社会背景。

全部と強く結びついている。

だから普通は、リアルタイム世代のものになりやすいと思います。

なのに、Wu-Tang Clanは若い世代にも届いている。

その大きな理由のひとつが、おそらくDisney+のドラマ『Wu-Tang: An American Saga』だと思います。

あのドラマ、単なる音楽ドラマじゃないんですよね。

90年代NYの空気。

貧困。

ストリート。

仲間意識。

成り上がり。

DIY精神。

そういうカルチャー全体を物語の中で丁寧に描いている。

だから若い世代は、Wu-Tangを昔のHipHopとしてではなく、ひとつの物語として体験できるみたいな感覚になっているんでしょうね。

コレって、スゴく重要だと思うんです。


今は曲より物語が音楽を再ヒットさせる時代

最近、本当にこういうケース増えましたよね〜。

Queenの『ボヘミアン・ラプソディ』。

近々公開されるMichael Jacksonの映画。

NetflixやDisney+の音楽系ドラマ。

昔のアーティストのヒストリーが映像化され、その流れで楽曲が再評価されるケースってめちゃ多いですよね。

これは完全に音楽産業的にも狙ったプロモーションになっていると思うんですよ。

でも、単なる商売だけでもないのかもしれない…。

実際、今って過去の音楽が再発見されやすい時代だと思うんですよ。

昔はラジオやMTVが音楽との出会いを作っていたんですよね。

でも今はSpotifyを開けば無限に音楽が出てくる。

さらに1日に何万曲も追加される世界でもあります。

若い人からしたら、曲が多すぎて「何を聴けばいいかわからない」状態でもあるのかもしれません。

だから今、人はその音楽に文脈を求めているっていう部分もあると思うんですよ。

そのミュージシャンがどんな人生を歩んだのか。

どんな街で生まれたのか。

なぜその曲が作られたのか。

どういう時代だったのか。

そういう背景込みで音楽を知りたがっている。

つまり今は、曲単体ではなく、物語が音楽を広げる時代なんでしょうね。


「過去の音楽」が掘り返されているワケではない

ココ、勘違いされやすい部分なんだけど、オイラは今起きている現象って、「昔の音楽を掘り返している」というより、「昔の音楽に新しい入口を作っている」感覚の方が近いと思っているんですよね。

リアルタイム世代にとってWu-Tangは「青春」だけど、若い世代にとっては「発見」だと思うんですよ。

同じ音楽を聴いていても、見ている景色がゼンゼン違うみたいなね。

40〜50代は、自分の過去を見ている。

20代は、自分が知らなかった90年代カルチャーを見ている。

でも、両方とも熱狂している。

コレって実はスゴいことだと思うんですね〜ある意味、カルチャーが世代を超えて継承されている瞬間とも言えますよね。


レコード人気の再燃も、実は同じ構造

こういった状況って、実はレコード人気にもかなり共通していると思うんです。

最近は若いお客さんの来店が本当に増えたってコトはこのブログでも何度か書きました。

しかも面白いのが、ただ安い中古盤を探しているワケじゃないんですよ。

わざわざレコード店を訪れてオリジナル盤を探していたりする。

モチロン音質へのコダワリもあると思いますが、でもそれだけじゃない。

タブン、「アノ時代の時間」を買っている部分があるんじゃないのかなって思うんです。

例えば90年代のUSオリジナル12インチ。

そこには当時のクラブカルチャーやDJ文化の空気が刻まれている。

ジャケットの質感。

レーベルデザイン。

盤の匂い。

スリーブの擦れ。

全部含めて、その時代のリアルなんですよ。

コレね…Spotify等のストリーミングでは味わえない感覚です。

だからレコードは単なる再生メディアではなく、ある意味で「カルチャーの保存装置」になっているんだと思うんです。


DJイベントでも「クラシック」が強い理由

最近のDJイベントの様子を観ていても感じるんですよ…やっぱり盛り上がるのはクラシックなんだなぁ〜って。

90年代HipHop。

R&B。

DIsco。

House。

モチロン新譜もプレイされている。

でも、結局フロアが一番反応するのは、みんなのカラダへ刷り込まれている曲だったりするんですよね。

イントロが鳴った瞬間、

「うわっ!」って空気がイッキに変わる。

アレって単なる懐かしいじゃなくってカラダが覚えているんですよね。

そして若い世代は、その熱量を見てカルチャーを知る。

「なんでこの曲でこんな盛り上がるんだろう?」

そこから掘り始める。

これはすごく健全なカルチャー継承なんじゃないのかなって思うんです。


音楽は、時代ごとに役割を変えながら生き続ける

今回のWu-Tang Clan来日公演の様子を見て、改めて思ったのは、ホント青春時代の音楽は、一生残るってコトなんだなぁって。

でも本当に強い音楽は、それだけじゃ終わらなくって次の世代にも、新しい「青春」を作るんでしょうね。

40〜50代にとっては記憶。

20代にとっては発見。

同じWu-Tangでも、意味が違う。

でもそれでイイっ。

むしろカルチャーって、そうやって形を変えながら受け継がれていくものなんだと思うんですよ。


レコードの溝には、音だけじゃなく時間が刻まれている

オイラは毎日、渋谷の店で大量のレコードを触っているワケです。

でも時々思うんですよね…レコードの溝に刻まれているのって、単なる「音」だけじゃないなって。

その時代の空気。

人の熱量。

クラブ。

街。

ファッション。

若さ。

憧れ。

そういう時間そのものが曲と一緒に刻まれている。

だから人は、何十年経ってもレコードを探し続けるんじゃないかなと思うんですよ。

もし最近レコードが気になっている人がいたら、ぜひ一度レコード店を訪れてみてください。

知識なんて全然なくて大丈夫ですよ。

むしろ、「なんか気になる」くらいが一番楽しい入り口だったりするので。

レコードって、ただ昔の音楽を聴くものじゃない。

知らなかった時代やカルチャーへ触れる入口でもあるんですよね。


BARRY WHITE / SHEET MUSIC
BARRY WHITE / SHEET MUSIC の試聴
next recordsのサイトでBARRY WHITEのレコードを探してみる


以前、どうして若い頃に聴いた音楽は、年齢を重ねた今になっても聴き続けてしまうってコトについてブログ記事に書いたコトがあります。

その時の記事は、コチラ

なぜ人は若い頃に聞いた音楽を好むのか?


この現象を「レミニッセンス・バンプ (回想バンプ)」っていうのですが音楽に於いては10代〜20代に聴いた音楽が20年とか30年の時間の経過を経て回想バンプが40〜50代にかけてグッと盛り上がるそうです。

音楽がその回想バンプのスイッチになっているってカンジなんでしょうね。

レコードに関しても「最近レコードが流行っているみたい」というニュースを見聞きしたコトで「そういや20代の頃、タンテ2台もってよく家でDJしていたな〜」っていう記憶を思い出して「久しぶりにちょっとレコード屋に行ってみようかな〜」って人も多いんですよね。

今回のWu-Tang Clanの来日公演は、音楽が持つ不思議なチカラを改めて感じさせてくれました。

ある人にとっては青春の記憶であり、ある人にとっては新しい発見でもある。

その両方が同じ場所で交差していたからこそ、あれだけ特別なライブになったのかもしれません。

レコード屋の仕事をしていると、そんな「音楽が世代をつなぐ瞬間」に時々立ち会います。

もしかするとレコードの魅力も、音の良さやモノとしての価値だけではなく、そうした時間や記憶まで受け継いでいけるところにあるのかもしれませんね。


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12インチシングルとは何なのか、その良さをわかりやすく解説したQ&Aもゼヒ参考にしてください。

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小さなレコード店だからこそ見えるものがある

渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を営んでいるNext Recordsです。

店内は正直かなり狭いです(笑)

お客さんが5人も入れば結構いっぱいになるくらいのサイズ感…でも、その狭さって実は悪いコトばかりじゃないんですよね〜むしろ、長年店をやってきてカンジるのは、小さい店だからこそ生まれる空気感や距離感って確実に存在するというコトです。

店頭には約6000枚ほどのレコードが並んでいて、さらに販売前のストックが1万枚ホドあります。
毎日そのレコードたちに囲まれながら営業しているワケですが、ここ数年はアナログレコード人気の再燃やインバウンド需要の高まりもあって、ホントご来店いただけるお客さんが増えました。

昔は「レコードなんてもう売れない時代だよね〜」ナンて言われていた時期もありましたが、今では渋谷を歩いているとフツーにレコードが入ったショップのロゴマークがプリントされたビニール袋を手に持った人をよく見かけるようになりましたね。

そんな中で、最近オイラが改めて面白いなと思っているのが、当店で昔から自然にやっている「ある接客」なんですよね。

それが、オイラ達が勝手に呼んでいる「かけ売り」です。

「かけ売り」って何なのか?

普通、小売店で「かけ売り・掛売り」と言うとツケ払いのコトですよね。

でも当店で言う「かけ売り」は全然イミが違います。

レコードを「かけて」売る。

つまり、お客さんが好きそうなレコードを店内でさり気なくプレイして、その流れで販売につながることを、オイラ達は「かけ売り」と呼んでいます。

モチロンこれは当店だけが発明した特殊な販売方法ではなくて、昔からレコード店では自然に行われてきたコトだと思います。

でも、最近フト思ったんですよ…「アレ?もしかして今って、この“かけ売り”をやってる店って意外と少ないのかもしれないな」って。

この「かけ売り」って調べてみると海外では “store play” や “in-store play” という表現はあるみたいです。ただ、それはドチラかというと「店内で流れている音楽」という意味合いが強くて、当店でやっているような「接客としてのプレイ」とは少しニュアンスが違う気がするんですよね。

だから、日本では少なくとも「かけ売り」という言葉は当店独自の呼び方なのかもしれませんね。

でも、このコトバ、結構しっくり来てるんですよ。

レコード好きは目線でわかる

レコードが好きな人って、店に入ると結構スグにわかるんですよね。

レコードの棚をパラパラめくる速度とか、立ち止まるタイミングとか、ジャケットを持ち上げる瞬間とか、そういう細かい動きにその人の音楽の好みが滲み出るみたいなカンジで。

特に面白いのが、お客さんが「おっ!?」って顔をする瞬間です。

探していたレコードを見つけた時、人ってホントにわかりやすいんですよ(笑)

急に動きがピタっと止まる。

そして、ジャケットをじーっと見始める。

レーベル面を見たり、クレジットを確認したり、プロデューサー名やミックス名をチェックしたりする。

最近だと、スマホでDiscogsなんかのページを見て確認する人も多いですね。

あの瞬間って、もうその人の「レコード好き」が全部出てるんですよね。

当店はDJニーズの高い12インチシングル専門店なので、カウンター内にはターンテーブル2台とDJミキサー、いわゆるDJセットが置いてあります。

で、実は当店のスタッフは結構お客さんの動きを見ています。

もちろんジロジロ見るわけじゃないですよ(笑)あくまでもそれとなくってカンジで。

で、お客さんが手にとってチェックしているレコードを見て

「あ〜この人、Patrick Adams周辺好きそうだな」

とか、

「キャッチーなR&Bとかで反応してるな…」

とか、ナンとなく感じ取れるんですよ。

そして、そのお客さんが見ていたレコードに近い雰囲気の曲を、店内BGMとしてさり気なく流すんです。

ココで重要なのは、「さり気なく」という部分です。

あからさまにやると押し売り感が出ちゃいますからね。

だから自然に空気の流れとして鳴らす。

すると、だいたいお客さんがチラッとコチラを見るんですよね(笑)

「アレ?なんか今イイ曲かかってるな…」みたいな顔で。

「今かかってるコレって何ですか?」

そうやって2〜3曲くらい、お客さんが好きそうなラインの曲をプレイすると、かなりの確率で「今かかってるコレって何ですか?」って訊かれるんですよね。

で、

「〇〇のXXって曲なんですよ〜」

って答えると、

「へぇ〜コレ買えるんですか?」

って続く。

モチロン、店でかけてるレコードは全部販売用ですから、

「全然買えますよ〜」

ってなる。

こういう流れ、実はかなり多いんですよね。

しかも最近カンジるのは、この「かけ売り」が外国人のお客さんにメチャ刺さるというコトです。

オイラの体感ですが、日本人のお客さんを1とすると、外国人のお客さんは5倍くらい反応しているカンジです。

これはホントに面白い現象ですね。

外国人のお客さんは「音楽体験」を楽しんでいるのかも

レコード好きに国籍や人種はあまり関係ナイと思うんですよ。

でも、接し方や反応の仕方には結構違いがあります。

日本人のお客さんって、どこかお店のスタッフからの積極的な営業スタイルを警戒するトコロってあるんですよね〜ナンか買わなきゃいけなくなるみたいなカンジになったりして。

だから店員と一定の距離感を自然と保つトコロがありますね。

モチロンそれは日本的な美学でもあると思うんです。

でも海外のお客さんって、好きなものに対して本当にダイレクトです。

「What’s this!?」

「Amazing!!」

「I love this!!」

みたいなカンジで、その場でストレートに感情を出してくれる。

だから「かけ売り」との相性がスゴく良いんですよね。

先日も海外のお客さんに、

「どうしてオレの好きな曲がわかるの?」

って真顔で聞かれました(笑)

イヤイヤ、あなたが手に取ってたレコード見て推測してるだけなんですケドね。

でも、その「自分の好みを見抜かれている感覚」が面白いのかもしれません。

時には、

「もうこれ以上聴かせないでくれ!お金なくなる!」

ナンて笑いながら言われるコトもあります。

でも、あれって単純にレコードを買っているというより、店員とのコミュニケーション込みで楽しんでいる部分も結構あるんだと思うんですよね。

今のレコード店は「かけ売り」をしなくなったのかもしれない

で、最近フト思うんです。

もしかしたら、今ってこの「かけ売り」自体が珍しくなってるんじゃないかって。

大型店では、効率性や回転率が重視されます。

スタッフも忙しい。

お客さんとの距離も遠い。

モチロンそれは悪いコトではありません。

でも、小さなレコード店って、本来もっと人間臭い場所だった気がするんですよ。

昔のレコード店って、

「コレ好きならコッチも好きだと思うよ」

とか、

「このミックス、マジでヤバいよ」

とか、そういう会話が自然に飛び交っていました。

つまり、レコード店って単に物販の場所ではなく、音楽のコミュニティ的な部分もあったと思うんですよね。

でも今はネットで何でも検索できる時代でもあります。

Spotifyで試聴できる。

Discogsで相場もわかる。

YouTubeでは映像&音も聴ける。

そんな時代だからこそ逆に、リアル店舗でしか体験できないコトに価値が出てきている気がするんですよね。

「おすすめしてください」は意外とムズい

店頭でよくあるのが、

「何かオススメありますか?」

という質問です。

でも実は、これ結構難しいんですよね。

ナゼなら、その「オススメ」って店員目線なのか、お客さん目線なのかで全然違うからなんですよ。

スタッフ側からすると名盤でも、お客さんの気分にはハマらないコトもある。

逆に、オイラ的には地味な1枚でも、その人にとって人生の1枚になるコトもある。

さらに面白いのが、

「どういう曲が好きですか?」

って訊くと、意外と明確に答えられない人も多いんですよね。

特にレコード歴が浅い人ホド、その傾向があります。

音楽単位なら好きな曲は言えるんですよ。

でもアナログレコードという括りになると、どこから選べばいいのかわからないみたいですね。

だからこそ、「かけ売り」が効くのかもしれません。

説明ではなく、空気で伝える。

コトバではなく、音で提案する。

コレって、かなりレコード的なコミュニケーションだと思うんですよね。

レコード店は「音楽との偶然の出会い」を売っているのかも

ココ最近のご来店客数の増加とかからもしかしてレコード店って、物を売っているようで、実は「体験」を売っている部分がかなり大きいんじゃないかって最近よく思うんですよね。

レコード棚を掘る感覚。

偶然見つける喜び。

店内で流れてきた曲との出会い。

知らなかった音楽に突然「ビビビっ!」ってハマる瞬間。

こういう偶然性って、レコード文化の醍醐味だと思います。

アルゴリズムのレコメンドって便利ですよね…でも、便利すぎるがゆえに、予想外の出会いが減っているコトもあるかもしれません。

その点、レコード店って不思議ですよね…自分では探そうとも思っていなかった曲が、突然眼の前に現れるコトがあるみたいなカンジのコトって時々あると思うんですよ。

しかも、その記憶には店の空気や、その時かかっていた音、会話まで全部残っていたりする。

オイラ達はレコードを売っているつもりだけど、ホントはその店で音楽に出会った記憶込みで売っているのかもしれないかもって、時々思うんですよね。

非効率だからこそ価値がある

散々「かけ売り」の良いトコロを言っていますが、正直コレってかなり非効率です(笑)

お客さんを観察して、

反応を見て、

曲を選んで、

空気を読みながらプレイする。

AIみたいに一瞬で最適解を出せるワケじゃないんですよね〜ソレっぽいレコードを選んでプレイしているコチラも結構手探りでやっていたりします。

でも、だからこそ面白いのかもしれません…コレって結構、人間っぽいんですよね。

タブン今の時代って、効率化が進みすぎたからこそ、こういう非効率な体験が逆に贅沢になってきている気がしますね〜。

しかも、レコードって元々そういう文化なんだと思います。

手間がかかる。

場所を取る。

重い。

ノイズも入る。

それでいて結構、値が張る。

でも、それでも人はレコードを愛してしまう。

それって結局、便利だからではなく、体験として豊かだからナンだと思うんですよね。


ONYX / I WANT LOVE
ONYX / I WANT LOVE の試聴
next recordsのサイトでONYXのレコードを探してみる

というワケで今日もNext Recordsでは、お客さんが棚から取り出した1枚をさり気なく横目で見ながら、

「この人、タブンこういう音好きだろうな〜」

なんて考えながらターンテーブルに針を落としています。

もしかしたら、その瞬間こそが、レコード店という場所のイチバン面白い時間なのかもしれませんね。


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26年、レコード店を続けてきて思うコト

渋谷でオリジナル盤12インチシングル専門の中古レコード店を始めて今年で26年になります。

26年…ん〜改めて数字にすると結構長いですよね〜。

でも、店をやっている本人としては、正直そこまで「26年も続けたぞい!ドヤっ!」っていう感覚は全然ナイんですよね〜もうホント、毎日店を開けて、レコードを販売して、仕入れて、盤を磨いて、値段を付けて、お客さんと話して、また次の日店を開ける…というその繰り返しを続けていたら、いつの間にか26年経っていたという感覚のほうが近いですね。

ただ、長くレコード店を続けていると、時々「店を続けてきた時間」そのものを強く実感する瞬間があったりします。

先日、オーストラリアから来た30代くらいのお客さんとハナシした時も、まさにそんな瞬間でした。


海外から渋谷へ、レコードを掘りに来る人たち

そのお客さんは以前にも何度か来店してくれていたらしく、日本に訪れた時は毎回必ずNextへ訪れているとのコトでした。

ちなみに記憶力がショボショボなオイラは、まったく覚えていなかったですが…。

免税販売だったのでパスポートを見せてもらったのだけど、そこには物凄い数の入国スタンプが押されていましたね。

「かなり日本に来てるんですね〜」ってそう声をかけると、彼は笑いながらこう言った。

「レコードを日本に買い付けに来てるんですよ」

あ〜ナルホドなぁ〜って思いました。

最近、海外から来るお客さんは本当に多いというハナシはこのブログではさんざん記事に取り上げています。

アメリカやヨーロッパはもちろんだけど、オーストラリアからのお客さんもメチャ増えている印象です。当店調べだとオーストラリアは国籍別来店数確実にベスト3にランキングしているくらいですからね。

オイラ自身、以前から「オーストラリアってかなりレコード人気が高いんだろうな」という感覚は持っていた。

実際、店に来るオーストラリア人のお客さんはみんな熱量が高いんですよ…レコードを単なるファッションや流行としてではなく、文化としてしっかり楽しんでいる人が多い印象が伝わってきますしね。

そして一般のレコード好きだけでなく海外のディーラーやバイヤーにとって、日本の中古レコード市場はいまだにかなり魅力的な存在なようです。

特に90年代から2000年代にかけて、世間ではCDがメインの音楽メディアにも関わらず日本には大量の輸入されたレコード盤が流通していましたしね。

しかも日本人は比較的レコードを丁寧に扱う人が多いしね、だから海外から見ると日本には状態の良いレコードが大量に存在しているように見えるワケってコトですね。

フツーにレコード好きで日本に訪れる人だけでなく、買い付け目的で来日する人も一定数いるんでしょうね〜あんまり自分から「買い付けに来ました〜!」って自分から言う人は多くありませんケドね。

実際、オイラが気がついていないだけでの買い付け目的で海外からレコードを探しに来る人は多いと思います。

でも、その日驚いたのは、彼が単なるフツーのレコード好きではなかったコトでした。


「アナタのお店を参考にしました」と言われた日

「実は3ヶ月くらい前に、自分のレコード店を始めたんです」

そう聞かされた瞬間、オイラは思わず「おぉ!ナイスっ!」と声を上げた。

ココ1年くらい彼は、日本へ観光に来ていたワケではなく、自分のお店をオープンさせるためにレコードの仕入れのために何度も来日していたそうです。

それだけでも十分興味深かったのだけど、そのあと彼が言ったコトバに、オイラはさらに驚きました。

「実は、お店を始める時にアナタのお店をかなり参考にしたんですよ」

ん〜コレは本当に意外だった。

26年間店を続けてきたけれど、「アナタの店を参考にした」と直接言われたのは初めてだったんですよね。

ん〜まぁ、同業者からそんなコトを言われちゃうと正直な気持ち、ちょっとウレシイですね〜。

でも同時に、どこか不思議な感覚もありました。

オイラ自身、自分の店をそんなふうに見たコトがあまり無かったからなんですよね。

オイラにとってこの店は、毎日の仕事場であり、生活そのものでもある…レコードを仕入れて、店頭に並べて、お客さんと音楽のハナシをして、また次のレコードを探すという、その積み重ねを26年間続けてきただけで、「理想の店を作ろう」とか「誰かに影響を与えよう」とか、そんなコトを意識してきたワケではないからです。

だけど、オーストラリアの若い店主は、そんなオイラの店を見て、「こんな店をやりたい」とカンジていた…。

その事実は、なんだか妙に胸に残った。


12インチシングル専門店への憧れ

しかも彼も、オイラと同じく12インチシングルが大好きだとのコト。

「本当はアナタのお店みたいに、12インチシングル専門店にしたいんですよ」

そう言ったあと、彼は少し困ったような表情を浮かべながら続けた。

「でも、実際にやるとなると難しいんですよね」

そのコトバを聞いた時、オイラはものすごくリアルな悩みだな〜って思いました。

彼の店はまだ始まって3ヶ月。今はアルバムも扱っているし、7インチも置いている。CDも扱っていてジャンルもある程度広げてレコード店をやっているそうです。

その理由はシンプルでした。

商品構成を絞りすぎると、お客さんが減ってしまうから。

つまり彼は、

「自分の理想の店を作りたい」

という気持ちと、

「でも現実には売上も必要」

という問題の間で揺れているワケです。

コレはホントに難しい問題だと思います。

しかも厄介なのは、この問題に「コレが正解だっ!」という明確な答えがナイことです。

理想を優先すれば、間口は狭くなる。

間口が狭くなれば、当然お客さんも減る可能性がある。

だから経営のコトを考えれば、もっと多くのお客さんに届く商品構成にしたほうがイイ。

でも、そこを広げすぎると、今度は「自分が本当にやりたかった店」からどんどん離れていく。

個人店をやっている人なら、この感覚はきっとよく分かると思う。

コレってレコード店に限らないですよね。

洋服屋でも、飲食店でも、雑貨店でも、結局みんな同じトコロで悩んでいるんじゃないでしょうかね〜。

自分が好きなアイテムだけで店を作りたい。

でも、好きなものだけでは店は続かないかもしれない。

その現実を前にすると、結構悩む店主は多いと思います。

彼もまさに、その入口に立っているように見えました。


「どうして12インチ専門店でやっていけるんですか?」

そしてハナシしているうちに、彼がオイラにこんな質問をしてきた。

「どうして、12インチシングルだけで26年もやっていけるんですか?」

かなりド直球の質問ですね〜(笑)

だけど、オイラはその質問に対して、意外なくらいうまく答えられなかった。

というより、改めて訊かれるまで、オイラ自身あまり深く考えたコトが無かったんですよね。

「どうして成立しているんだろう?」

そう考え始めると、逆に自分でもよく分からなくなってきた。

でも、しばらく考えてみて思ったのは、やっぱり「時代と場所」が大きかったんじゃないかというコトでした。


2000年前後の渋谷とレコードカルチャー

オイラが店を始めたのは2000年前後。

今とはレコードを取り巻く空気がまるで違っていました。

まだCDが圧倒的に強かった時代だけど、一方でDJカルチャーはものすごく盛り上がっていて渋谷にはクラブがたくさんあったし、宇田川町周辺には大小さまざまなレコード店がひしめき合っていた。

当時の渋谷には、「レコードを探しに行く」という文化そのものが存在していたと思います。

全国からDJや音楽好きが集まり、何軒もレコード店をハシゴして巡っていた、それぞれのお店には毎週新譜が入荷し、EUやUSから輸入された12インチシングルが大量に積まれていた。

つまり、12インチシングルというフォーマット自体に、まだ圧倒的な需要があった時代でした。

だから、オリジナル盤12インチ専門店という営業スタイルも成立しやすかったのかもしれません。

でも今、同じことをゼロから始めたらどうだろう。

おそらく、かなり難しいと思う。

時代が違う。

音楽の聴かれ方も違う。

レコードの意味も変わった。

昔はあくまでもDJの「道具」だった12インチが、今では「趣味」や「コレクション」としての側面を強く持っている。

もちろん、今のレコードブームには素晴らしい部分もたくさんあると思います。

若い世代がレコードに興味を持ってくれるのは本当に嬉しいし、アナログという文化が再評価されているコト自体は素晴らしいコトだと思う。

でも、オイラが店を始めた頃とは、市場の成り立ちが全然違うんですよね。

だからオイラは、彼にカンタンに「こうすればいいよ」とは言えませんでした。


レコード店は「思想」が棚に出る商売

むしろ、

「このレコードをそのまま真似しなくてもいいと思うよ」

と話した。

というのも、店って単純に商品構成だけで出来上がるものじゃないと思うんですよね。

もっと言えば、レコード店って店主の思想がそのまま棚に出る商売だと思っている。

同じHouseを扱っていても、同じHipHopを扱っていても、店によって置いてある盤は全然違うと思うんですよ

値付けも違う。

盤質の基準も違う。

棚の並べ方も違う。

その違いって結局、店主の価値観なんだと思うんですよね。

つまり、レコード店の棚って、「その人がどんな音楽をどう愛してきたか」が全部出ると思うんですよ。

そういった意味ではレコード店ってすごく面白い商売だと思うんですよね。

単なる物販ではない。

そこには、その店主がどんな時代を通ってきて、何に衝撃を受けて、どんなレコードに夢中になってきたのかが、自然と滲み出るみたいなカンジですね。

お客さんも多分、そういう部分を敏感に感じ取っていると思います。

「なんかこの店好きなんだよな」

っていう感覚の正体って、結局そこの部分なんじゃないかな〜とも思うんですよ。


理想だけでは店は続かない

個人的には今でも、理想だけでは店は続かない…って思うんですよ。

だけど、理想がない店はただレコードを並べているだけの売場になる…とも思っているワケです。

ただ、誤解してほしくないのは、オイラ自身もその答えを見つけたワケではないというコトなんですよね。

26年、レコード店を続けているケド、実際は今でも悩みまくっているんですよ。

もっとこうしたほうがイイんじゃないか。

今の時代にこのやり方でいいんだろうか。

もっと違う商品を増やすべきなのか。

逆に、もっと絞るべきなのか。

ん〜ホントもう毎日のようにこんなコトを考えているワケです。

だから、オーストラリアの若い店主の悩みは、全然他人事に思えないですよね。

店を始めて2ヶ月でも、26年でも、本質的には同じコトで悩んでいるのかもしれません。

ソレって、なんだか面白いことだな〜とも思いますね。


誰かの理想の店になっていた

そして今回の一件で、やっぱりイチバン印象に残ったのは、当店が知らないうちに「誰かの理想の店」になっていたコトでした。

別にそんなつもりで店をやってきたわけじゃないんですケドね。

ただ、こんなレコード店があれば自分はウレシイなぁ〜って思うように好きなレコードを並べ続けてきただけなんですケドね。

でも、その積み重ねを見ていた人がいた。

しかも海の向こうで。

そう考えると、店って単に商品を売る場所じゃないのかもしれませんね。

ソコに流れている空気とか、棚のクセとか、ジャンルの別け方とか選盤の偏りとか、そういうもの全部含めて、店にはその人の生き方みたいなものが出ているみたいなカンジがしますね。

そして時々、それが誰かにとっての「理想」になるコトがある。

オーストラリアから来た若いレコード店主とのハナシは、そんなコトを改めてオイラに考えさせてくれました。


GENOBIA JETER / ALL OF MY LOVE
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「仕入れはどうやっているの?」って若いレコード店主に訊くと買い付けが半分くらいで、一般からの買い取りや特にレアなタイトルはDiscogsとかから仕入れているって言ってました。

「買い付けってドコに行くの?」って訊くと「ホトンド日本だよ」って…。

まぁ〜確かに今はメチャ円安だし、海外から見ると日本は物価がメチャ安く見えますからね〜しかもレコードの仕入れに関しては、アメリカやヨーロッパへ出向くよりも効率も良さそうですしね。

地元での買い取りに関しては、時々オファーがあるケド、良いタイトルは全然ナイって言っていました。

やっぱり12インチシングルに関しては80年代〜2000年代にその国でどれくらいのDJカルチャーが浸透していたのかっていうのがその国のレコードが存在している量に深くカンケーしていますからね。

そういった意味では、12インチシングルに関しては日本は、かなり特殊なのかもしれませんね。


30分くらい会話を交わしたんですが、彼がかなり日本語を話すコトが出来たので結構、深いトコロまでオーストラリアのレコード事情を聞くコトが出来ました。

「コレが私のお店です」ってスマホに保存されている彼のお店の写真や動画を見せてもらったのですが、メチャ広くてお洒落なレコードでした。

しかも、多くのお客さんがモリモリレコードを掘ってる様子の動画は、ちょっと羨ましかったかも(笑)

オープンして3ヶ月でこの盛況ブリ、しかもお店もお洒落でカッコいい…オイラが参考にしたいくらいですよ…マジで(笑)


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